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103/124

103.私、注目の的ですから

「その者達をどうなさいますか?」


 高僧達の悪妃呼びはひと先ず捨て置いて、膝をついて謝罪の姿勢を取る大僧正に静かに問うてみます。


「見習いに落とし、再教育する機会をお与え下さい」

「「そんな?!

何故です?!」」

「命だけは助けよ、と?」

「「い、命?!」」


 先程から、仲良く揃って騒がしいですね。


 私の知る僧侶の多くは、静寂の中に身を置き、そこに侘び寂びと悟りの境地を見出しておりました。

高僧とはそのような者であると思いこんでいたようです。


「貴妃の噂を鵜呑みにしたばかりか、僧たる者が悪評に染まるなどあってはならぬ事。

また度重なる非礼、首を切られても致し方なき事。

なれど命だけはどうか……」


 とうとう床に頭をつけた最大の謝罪の姿勢、叩頭(こうとう)を行います。

大僧正に関しては、幾らか私の噂を聞いても、特段態度を変えていたわけでは無さそうですね。


「「申し訳ございませんでした!

どうか、どうか命だけはご勘弁下さい!」」


 この2人は相変わらず息ピッタリ。

叩頭も同時に行いました。

仲良き事は美しきかな、と考えてあげるべきでしょうか。


「ふむ……」


 粥を食べつつ聞いておりましたが、椀に一杯ですからね。

すぐに終わってしまいました。


 残る2つをチラリと見れば……椀が目の前から消えましたよ?!

いつの間にか座っていた私を挟むように移動した2人の手に?!


 膝上の子猫ちゃんを見下ろしますが、そうですか、朝寝中ですか。

けしかけるのは止めましょう。


 あ、食べましたね。


 成長期の主人におすそ分けしようとする心意気は……そうですか、完食ですか。

粥ですからね、飲みこみやすいですよね、完食ですか、そうですか。


 2人が椀を置き、後ろに下がるまでにざっと数十秒。

その間額を床につけたままだった3人を改めて見やります。


「面を上げなさい。

そこの2人は放逐処分、此度に関わった者達の再教育を徹底するよう望みます」

「「そんな?!」」


 私の申し出に悲鳴のように飛び上がる高僧達。


「1つ、大事な事を忘れているようですね。

私はこの帝国の、帝国法に基づいて皇帝陛下の正式なる妻となっております。

法印大僧正として、高僧となる者の素行悪しと降格させるのは、あるまで吉香(ジシャン)寺内での話。

だから皇帝陛下の妻に対して、直接的に無礼を働いた者を許せというのは、道理が通りません。

誰から何を聞いたのか知りませんが、偉い人なのですよ、私」

「し、しかし私達は初代皇帝陛下である、天斌嵐仙ティエンビンランシェン高祖の陵墓を守る選ばれた僧!」

「そうだ!

祖を守りし特別な我らを罰するなど……」

「黙らぬか!」


 大僧正が一喝し、後ろを振り返り威圧した後、再び叩頭しました。

魔力を乗せて威圧したからか、斜め後ろの2人は尻もちをついてしまいました。


「高祖の安らかなる眠りと、子孫たる皇族方への教えを伝える一助となるなる事こそが、この寺の拙僧らの存在意義だと常々申しておるはず。

皇族が吉香(ジシャン)寺を格別として扱うのは、それ故。

時に高祖の教えに従い皇族方を律したとしても、決して我らが優れていると奢るでない。

ましてや本来の存在意義も忘れ、皇族への敬意を抱けぬならば、お主らはこの寺の僧と認められぬ。

即刻、ここより去れ」


 一喝したからこそ、余計にそう感じるのでしょうが、静かにそう告げました。


 左鬼(ズォグイ)に目配せすれば、2人の襟首を掴んで外へ引きずられて行きます。


 青白い顔で大僧正の決定に余程衝撃を受けたのでしょう。

ガタガタと絶望に打ち震えています。


 しかし根性ですね。


「あ……悪妃め……」

「……おのれ……覚えていろ……」


 私を睨みながらの悪態は、忘れないようです。


 左鬼(ズォグイ)は開いた扉からブン、と元高僧達を放り出しました。

かなり痛そうな音がしましたが、気の毒に思う気持ちは起きませんね。


 再び入らぬようにする為、彼も外へ出てから扉を閉めます。


「さて、面を上げて、そこにお掛けなさい」


 再びですが、ずっと叩頭したまま静止していた大僧正に声をかけ、目線を合わせてから、口を開きます。


「特に私から他者へ何か伝える事はありません。

しかしこの事は陛下を始め、朝廷の幾人かに伝わると思っていて下さい。

私、注目の的ですから」


 そう、間諜は後宮の小屋にいる時同様、そこ、ここにいたりします。

いつも通り、邪魔な時以外、あえて放置していましたから。

いつもご覧頂きありがとうございます。

ブックマーク、ポイント頂いた方にも心から感謝を。

励みになりますm(_ _)m


さてさて、お知らせです。

昨日からお休みしていた以下の作品を投稿しています。

よろしければご覧下さいm(_ _)m


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