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9話 黒い皇族についての話

//12.31:少し最後の時間割の部分を変更しました。



 ということでやって来ました燈火の部屋!

 いや正確にはその扉の前なんだけどね。

 いやー、正直今日色々やらかした上にクラスで一人だけの伝説級スキル持ちだからねぇ、面倒事が多そうで入るのが憚られるんだよ。

 実際伝説級(レジェンダリー)職業なら燈火とあともう一人、今から会うメンバーの中にいるんだけどさ。

 何よりクセの強い奴らだからってのがあるんだけど。


 といってもさっさと入らない限りその面倒事は片付かないし、恐らく明日以降質問漬けになることだろうから意を決して入ることにする。


 「お、やっと来たか悠。もう皆揃ってるぞ!」


 「わりぃ、ちょっと部屋が遠くてさ」


 「え、お前そんな部屋遠いのか?」


 「大体ここまで5分程」


 「…お前、明日辺り死んでねぇだろうな?」


 「・・・」


 燈火よ、それは俺も懸念していることだ。

 否定できないので黙りだが、正直あからさまに部屋を離してる時点で『お前今から殺しマース』と言ってるようなもんだしな。


 さて、入って唐突のヤバそうな話題のせいか何故かフリーズしてる奴が大半だが(勝手に)話を進めていこうと思う。


 「で、話ってなんだ? 大体察してはいるが一応確認しておきたい」


 「ああ、今そこに来て貰ってフリーズしてるヤツらも同じ要件だが、要は皇族が黒いって話だ」


 やっぱりそうか…

 というか、隠密がいるかもしれないここでそんな事話してバレないのか?


 「ああ、それに関してはそこに居る忍者(笑)が居ないことは把握してるらしい」


 「ちょ、なんで(笑)が付くのよ! 私は職業として【忍】になってるだけだってば!」


 そういって状態異常からいつの間にか復活していたのは、身長150cmほどでショートボブの似合う小柄な少女、『夜久(やどめ) (しのぶ)』である。

 その低身長と童顔のせいで制服を着ていないとよく中学生や小学生と間違われるらしい。

 恐らく忍者に(笑)が付いているのは、元々小柄な割に足が早く手先が器用なせいで忍者とか呼ばれてた時期があったからだろう。


 もしかしてそういう個性とかが職業などに影響してるのか?

 だとしたら無職で属性無しの俺は…

 いや、もうよそう。悲しくなるだけだ。

 話も逸れてるし戻す方が良いよな?

 …うんそうだ、そうしよう。


 「で、忍者(笑)さんはどのような方法でそれを探ったんで?」


 「だからぁ…もういいよそれで、どうせ聞かないんだろうし。探った方法は簡単、【忍】の効果で底上げされた[気配察知]ってスキルで探ったんだよ」


 「へぇ、職業にはそんな効果が」


 なるほどなぁ。

 そう言えば今俺無職だけど、就職ってできんのかな?

 さすがに永久に無理ってはずも、ハロワ行かなきゃダメってことでも無いだろうけど心配だわ。


 あとやっぱり隠密付けなかったのは忍みたいに察知系特化のやつがいるからかな?

 俺のところはただ単に、あわよくば凍死しろとかのヤベぇ事が理由なんだろうけど。


 「あれ、悠君の職業なんだっけ?」


 「無職ですがなにか」


 「あー、そう言えばそうだったね。忘れてたよ」


 …もういいさ、俺は無職で。

 無職でもなんでもできるようになった人だっているじゃん?

 だから無職にも希望が──

 あ、ダメだ、あの人のは成長チートだからじゃん。

 俺のはチートですらないから積みやんけ。


 俺が人知れず無職であることが原因で詰んでることを今更ながらに悟っていると、いつの間にか復活していた『文月(ふづき) 冬侍(とうじ)』が話を本来の路線に戻し始めた。


 こいつは学校一のイケメンと言われるほどの美形で、常にテストの成績はどの教科も上位3位以内をキープしているとんでもなく頭の良い奴だ。

 なんで俺らとバカやってるのにこいつだけ頭良いのかは謎だ。


 「まあ悠が無職なのは置いといて、皇族云々について話を戻そうか」


 「はぁ、なんでそうお前らは人の傷を抉って行くかなぁ」


 「まあまあ、もちつけ悠。お前が沈んでるといつまでも話が進まん。ということで、あとのことは頼んだぞ」


 あ、そう言えばそうだったな。

 いまのってもしや、あそこで一番に切り出した俺が話を進めてくれって事なのか?

 まあとりあえず俺にできるところまでは進めてみるか。


 「それもそうだな。残り時間も少ないし早速始めようか」


 他のまだ会話に参加してない3人もこちらに耳を傾けてくる。

 いやお前らいつの間に…


 「まず初めにこの国の皇帝、俺らが召喚された時俺らの事なんて読んでた?」


 「確か…『勇者諸君』とか凄く偉そうな物言いだったよな」


 真っ先に答えたのは『剛田(ごうだ) 拳斗(けんと)』。

 どこかの普段は強欲なのに映画版になると急に漢になる剛田くんと違って、図体はでかくない。

 ただし格闘技と握力はとんでもなく強く、時たま部活で参加した空手の全国大会で入賞を果たすほどだ。

 といっても『天は二物を与えず』とも言う通り、成績の方はお察しだ。


 「ああ、その通り。暗に自分達の方が上だってのをアピールしてたよな。他にも召喚しといたのに『来てくれて』とかも言ってたな。まずこの時点でラノベ読者のお前らならわかるだろうが、この傲慢な態度からして厄介事を持ってきそうなのはわかるだろう。そして二つ目、あの時のアイツの提案した契約の内容、誰か覚えてるか?」


 「私覚えてますよ。たしか要求が『国の要求する戦闘への参加』『権力濫用の禁止』『国の法律への遵法』で、代価が『国から危害を受けない』『城内での衣食住の保証』『下級貴族程度の権力』だったと思います」


 うわ、すげぇな全部当たってる。

 俺よりよっぽど<叡智>使いこなせそうだよな。

 俺なんて<叡智>の効果のおかげであの時まともに話を聞けたくらいなんだし。


 一応紹介しとくと、この天才は『(かんなぎ) 紗雪(さゆき)』といい、成績は冬侍を越して全教科1か2位。全国模試でも常に上位を取り続けてるいい意味で頭のおかしいやつだ。

 しかもどこかいいとこのお嬢様らしく、家はすんごい豪邸だ。見たことないけど。

 ホント、なんでこんな平凡な田舎高校来たんだか謎だよ。 


 たぶん巫さんなら答えは分かってるだろうが、パターン的に最後の一人に振るのがセオリーってもんだろう。


 「じゃあ葵癒(あおい)、この契約の問題点は?」


 「はぁ、なんで私なのよ。ま、分かってたことだし答えてあげるわよ。要求の1つめが隷属を意味してて、保証の1は効果対象が曖昧すぎて、あとはアンタの訂正したのを考慮すると行動の自由が保証されてないって事ね。というか今更だけど、この契約が本当だって確証はあるの?」


 うわぁ、痛いところをついてきたなー。

 こいつは『神農(しんのう) 葵癒(あおい)』という名前とは裏腹にかなりのツンデレ?で、学校の名物の一つでもある存在だ。

 まあこのツンデレ?も見る人によれば癒しになるんだろうけど、正直痛いところばっかついてくるからなぁ、俺には毒にしかなってない気がする。

 因みに髪型は近年稀に見るツインテである。


 「正解だ。契約については俺のスキルのことも交えて話さないといけないからちょっと待ってくれ。とまあこんなふうに落ち着いて考えてみれば問題点は浮き彫りになってくるわけで、召喚時の混乱に乗じて隷属させようって魂胆だったんだろう」


 「なるほどなぁ。てことはお前に契約変えてもらわなかったら俺たちマズかったのか?」


 「そうだろうな。こんなやたらと隷属させてくるような国が勇者なんて兵器手に入れても使わないわけないだろうしな。あとはあのウェスカーとか言う暫定宰相も俺たちに対して差別的な態度をとってたし、最悪死ぬまで奴隷、良くて戦争に兵器扱いで用いられてただろう」


 「やっぱりか。助かったぜ悠! よくやった!」


 フッフッフ、ほとんど<叡智>のおかげとはいえ鼻が高いぜ! いや、クォーターなので物理的にも鼻が高いのだが、例え的にな。


 「で、そのアンタのスキルついてはいつ説明すんのよ」


 「おっとそうだった。じゃあ簡単に説明していくか」


 俺の持つ謎スキルと[並列意思]については触れずに、会話しながら練っていた説明を語っていく。

 勿論契約については触れて。

 ああ、契約自体はアルファがステータス弄ってた時に見つけたらしく、やっぱり<叡智>がないと見えないらしい。


 そして<叡智>の能力を聞く度に唖然としていく6人。

 いやぁ、初めて異世界らしく俺SUGEEEEEEEとかできたんじゃね?

 こっち来てそうそうに皇族に目をつけられ、ステータスは偏り過ぎて逆の意味で俺SUGEEEEEEEになっていたけど、ついにきたか!?

 と思ったら


 「悠、それは誰にも言ってないだろうな!?」


 危険なフラグだったらしい。


 「うおっ、どうしたんだよ冬侍。誰にも言うわけないだろ?」


 「もしその存在が国に伝われば、最悪暗殺されるよ? だから何があっても、使えないってことにした方がいいよ」


 なんで…ってそういうことか。

 話した事の中に『森羅万象』の効果もあり、それによってこの国の真実が知られるかもしれないからか。

 中途半端に嘘ついてボロが出るのも不味いし、そもそも外部に影響しないんだから使えないことにすればいっか。


 「確かにそうだな。気をつけるよ」


 「ああ、そうしてくれ」


 そのあとは一頻り今後の予定の確認だとか皇族についての補足だとか雑談やらステータスの見せ合いやらを行ったのだが、


 「マジかよ。俺そんなこと聞いてないよ?」


 「あー、やっぱりお前んとこは情報をあえて回さなかったんじゃねぇか?」


 「だろうな。実際メイドの呼び鈴もそれとは見た目が違うし、みんなこのタイプなら俺のは魔道具じゃないただの呼び鈴だろうな」


 燈火の部屋にあった魔道具の呼び鈴と俺の部屋にあった呼び鈴は、明らかに形が違う。

 あえて危害を加えないラインの嫌がらせをしてくるあたり、皇帝が相当陰湿で腐っていることがわかるってものよ。


 明日の予定を俺は知らされていなかったが、実は朝7時に朝食、8刻から12刻までが座学、13刻まで休憩で、13刻から17刻までが武器の取り回し等の実技があるらしい。

 この世界には昼食の概念がないらしく、休憩がてら間食する事しかしないそうだ。

 風呂は今日は無しで、明日は17時からだと。

 飯はそのあとだ。

 ちなみに一日は24分割されており、午前午後の概念の代わりに『表』と『裏』という表し方もするらしい。


 あとはこの時間の話を聞いていて気付いた事が、どうやらこの世界と元の世界の時間がちょうど同じタイミングでこちらに来たらしく、こちらの世界は向こうの世界換算で1日25時間(メイド談)なので、その時間のタイミングが召喚やら帰還やらに関係しているのではないかと言う事。

 もし違ってぬか喜びさせると悪いので、ある程度確証を持てるようになるまでは秘蔵しとくけどさ。

 あとはちゃんとこの世界にも時計の概念はあるとさ。

 色々と違いがあるらしいがそれは座学で、との事だった。


 「さて、じゃあそろそろお開きにすっか。明日も早いしな」


 「そうするか」


 明日も早いので、もう部屋に帰って寝よう。

 スキルも鍛えたいので悪いがアルファとベータに頑張ってもらおう。

 目指すはスキル進化だ。

 そして、明日俺が時間通りに朝食やらに参加したらどんな顔をするだろうと密かに楽しみにしながら部屋に戻るのであった。

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