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頼みの綱は……

「クッ、魔法陣から逃れたところで、魔法に弱いとわかれば……」


 ロイの弱点を知ったマレクは、豪奢な飾りのついた黄金の杖を構えると魔法の詠唱を唱えようとする。


 しかし、


「そんな隙を与えると思うか?」

「なっ!?」


 気が付けば目の間にロイが迫っていた。

 驚愕に目を見開くマレクに、ロイは腰に吊るした剣を鞘に納めたまま思いっきり殴りつける。


「うぐぅ!」


 胴を横薙ぎにされたマレクは痛みに顔を歪め、息を吐きながら腰を折る。

 首を垂れるマレクに、上段の構えを取った表情を殺したロイが声をかける。


「心配するな。エーデルの忠告に従って命までは取らない……だが、それなりの報いは受けてもらおう」


 そう冷たく言い放つと、容赦なく剣を振り下ろした。

 ビュウ、と風を切り裂きながらロイの振り下ろした剣が、マレクの後頭部を捉えようという時、


「……させるか!」


 アベルがマレクを突き飛ばしながら割って入り、ロイの剣を受け止めてみせた。


「ぐぅ……うぐぐ………………」


 突然の横槍に、ロイは一瞬だけ驚いたように目を見開くが、すぐに双眸を細めると、両手に力を籠める。


「邪魔だっ。どけ!」

「ぐはっ!?」


 ロイは力任せに剣を振るい、アベルを手にした武器ごと吹き飛ばしてみせる。

 そのまま追撃に打って出ようとするロイだったが、 アベルの身を挺しての行動はマレクにとって僥倖だった。


「――っ、我が道を阻む者を拒め! アースシールド!」


 苦しみに顔を歪めながらもどうにか詠唱を終えたマレクが声を張り上げながら魔法を発動させる。

 すると、足元の地面がせり上がり、一枚の壁となってロイとの間を隔絶した。


 一方、ロイに吹き飛ばされ、そのまま地面をゴロゴロと転がりながらもどうにか体制を整えたアベルは、苦し気に腹部を押さえているマレクへと駆け寄る。


「ひぃ、ひぃ……マ、マレク様。大丈夫ですか?」

「…………今まで何をしていた。助けるのが遅いぞ!」

「も、申し訳ございません! その、まさか勇者があんなに早く動くとは思わず……」

「言い訳はいい! お前では話にならん。それよりライジェルはどうした? この一大事にあ奴は一体どこで何をしているのだ!?」

「そ、それが……兄貴は、ライジェルはここには来ません」

「何だと!? どういうことだ?」


 マレクからの厳しい追及に、アベルは苦虫を噛み潰したような顔をしながら告げる。


「どうもこうも、明日は武道大会の最終日ですから、明日の試合に備えて早く寝ると言っていました。おそらく今頃はベッドの中かと……」

「なん……だと!? 誰が今まであいつのサポートをしてきてやったと思っているのだ! これも全て、このような有事の際に私の手足となって働いてもらう為だというのに……おいっ、今すぐライジェルの奴をたたき起こしてこい!」

「ええっ、そ、それはちょっと……兄貴、自分の邪魔をされるのを凄く嫌うのです。前に兄貴が鍛錬をしている最中に皿を落としたメイドをボコボコにしたことがあって……」

「黙れ! いいからさっさと行くんだ!」


 マレクは怪しく目を光らせると、杖の先をアベルへと向ける。


「お前、まさか私の命令が聞けないというのか?」

「い、いえ、そ、そそんなことはないです。行きます! 今すぐに行ってまいります!」


 アベルは脂汗を流しながらブンブンと音がするほど首を振ると、逃げるように立ち去って行った。

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