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新兵器

「でも、俺は特に何か魔法の効果が得られているとは思えない……キリンは?」

「俺もだ。なあ、デュランダルの旦那、本当にそんな力が発動しているのか、それにそんなのがあるのなら、今までエーデルちゃんが気付かないのはおかしくないか?」


 焦ったように捲し立てる二人に、デュランダルが冷めた声で諭す。


 ――魔法使いの娘についてはわからぬが、この力が発動したのはつい先程だ。それと、お主らがこの力を受けられないのは、魔法を受ける為の触媒を持っていない……つまり、魔法の恩恵を受ける対象でないからだ。

「じゃあ、もしかしてあの二人が急に強くなったのは?」

 ――然り。この魔法の力を存分に受けているからだろう。しかも、この魔法……通常の魔法とは違う方法で発動しているようだな。術者のいない魔法など初めて見たぞ。

「な、何だよそれ……」


 デュランダルの説明を聞いたキリンは、歯を食いしばって怒りを露わにする。


「この大会は、己の力を見せつける大会じゃなかったのか!? それが、魔法の力を使うようなイカサマ紛いのことして……こんなことが許されるのか?」

「まだイカサマだと決まったわけじゃないだろう」


 憤懣やる方ないといった様子のキリンに、ロイが落ち着いた声で話しかける。


「片方だけがその恩恵を受けているならともかく、二人とも同じ支援を受けているならば、そこまで目くじらを立てることはないんじゃないか?」

「……全員がそうだったならばな」

「えっ?」

「今のライジェルの動き……間違いなくセシル、じゃなくてセシリアだっけか? あいつと戦った時も使っていた。そうじゃなければ、防御主体で戦う重戦士があんなにあっさり負けるはずがない……それに」


 キリンはデュランダルへと視線を向けると、必死の形相で質問する。


「なあ、旦那。あの赤い髪の男が持っている剣、あの剣からは何か感じないか?」

 ――ふむ、少し待て……。


 キリンからの要望に、デュランダルはライジェルをじっと見やる……といっても、剣がじっと見ているのかどうかはわからないので、何となくそんな気がしているだけだが……


 そうこうしている間に、舞台の上の戦いに動きが出る。


 観客たちの沸き立つ声に反応してロイたちが舞台へと視線を向けると、ライジェルが剣を鞘から抜き放ち、サンが持つ布を一刀両断していた。


「あっ……」


 サンの持つ布の下から出て来た物を見て、ロイが思わず声を上げる。


 そこには本来あるはずの人としての腕はなく、熱を持たない鋼鉄の義手が取り付けられていた。

 しかも、その義手は、ただの義手ではなかった。


「どわっ!?」


 突然響いた雷のような轟音にキリンが思わず仰け反り、尻もちをつく。


「な、何だ?」

「あれだ! サンの義手を見ろ!」


 ロイが驚きながらもサンの義手を見るように声を飛ばす。

 すると、もう一発、目が覚めるような轟音が響き、会場中から悲鳴が上がる。


「ああっと、なんということでしょう。サン選手の左手、いつの間にか義手になっていたようですが、そこから何やら光弾のようなものが発射されています! こ、こんな攻撃が許され……あっ、はい、失礼しました。今、大会運営から報告が上がってきましたが、サン選手の義手は、ガトーショコラ王国が誇る魔法研究所が新たに開発した新武器だそうで、既に武器として登録されているので問題ないそうですが……初めて見る武器に、私は何と表現していいか……キャッ!?」


 サンが放った光弾の一発がマシューの座る実況席の近くに着弾し、流石のマシューも悲鳴を上げた。

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