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第一試合②

 もう二度と油断しない。


 そう心に決めたキリンは、ファーレスを今度こそ完膚なきまでに叩き潰す為に前へ出る。


「オラァ!」


 一瞬で間合いを詰めたキリンは、素早く重い突きを放つ。


「こいつを喰らって負けちまいな!」

「ハッ、笑えない冗談ですね」


 真正面からの真っ直ぐな攻撃なので、ファーレスは体を回転させて容易く回避すると、開店の勢いを利用してそのままキリンへと攻撃を仕掛ける。


 しかし、それこそがキリンの狙いだった。


 首を狙ったファーレスの斬撃を、わざと体を倒して回避したキリンは、地面に手をついて逆立ちすると、そのまま上下逆さまのまま蹴りをファーレスの顔目掛けて繰り出す。


 だが、


「んなっ!?」


 確実にファーレスの頭部を捉えたと思った蹴りが空を切る。

 しかも、今度こそ確実に当たると思って出した攻撃なだけに、キリンは咄嗟のことに反応できず、体制を崩してしまう。


 当然ながら、そんな致命的な隙をファーレスが見逃すはずがない。


「これで、終わりです!」

「――っ、まだだ!」


 ファーレスが繰り出してきたナイフを、キリンは左手を突き出して迎える。

 瞬間、鮮血が舞う。


「くぅぅ……」


 手のひらに穴が開く痛みに、キリンは顔をしかめる。

 しかし、左手を犠牲にした甲斐あって、ファーレスに致命的な隙を与えることに成功した。


「しまっ……」


 ファーレスが慌てて距離を取ろうとするが、その足をキリンの足払いが刈る。

 倒れるファーレスに、キリンが覆いかぶさるように馬乗りになると、右拳を振り上げる。


「この俺様の左手に、穴を開けたことはほめてやる……だがな」


 キリンは犬歯を剥き出しにして獰猛に笑うと、右拳をファーレスの胴へと叩き付ける。


「俺様の上を行くのは百万年早いぜ!」

「がはっ!?」


 回避も防御もできずまともに攻撃を受けたファーレスは、大きく跳ねたかと思うと、そのまま意識を失う。


「……一撃で仕留められなかったのは残念だが……まあ、どんな方法であれ勝ちは勝ちだ」


 ファーレスの意識がないのを確認したキリンがゆっくりと立ち上がると、審判が声高々に宣言する。


「勝者、キリン・サイフウガ!」


 勝利宣言を受けたキリンは、右拳を突き上げて歓声に応える。


 そのまま舞台から降りる……かと思われたが、


「っと、その前に確認しておくか」


 キリンは倒れているファーレスに近付くと、全身に巻かれている布を一気に引きはがす。


「……やはりな」


 そこには。ファーレス・チスの本当の姿があった。

 大柄な男だと思われたファーレスだったが、その中身は大量の布で自信を大きく見せていた小柄な男だった。

 キリンの攻撃が当たったようにみえたのも、この布部分に当たったものだろう。

 しかし、本当の大きさを悟られない様な立ち回りや、攻撃を受けた際の体の使い方の上手さは、今まで戦ってきた者の中でも、指折りだといえた。

 ファーレスの正体を暴いたキリンは、布を元の姿に戻してやると、今度こそ舞台を後にする。

 そんな死力を尽くした二人に、割れんばかりの拍手喝采が鳴り響いた。

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