第三日『Ecce homo!(その人を見よ!)』
30秒・・・そんだけあれば私、コーラ一気飲みできます。
敵を射抜くような眼をしながら敵に問いてみる。
「三十秒で終わらせなきゃなんないんだ・・・。ごめん。赦しを請うなら今のうちだよ?」
殺さなくていいならそれが一番。たとえ甘いと言われようとも、こればっかりは譲れないんだよね。
≪ヴォ・・・ヴォロヴォス・・・≫
・・・・。
「無理だろう。もう根まで侵されている・・・。」
やるしかない・・・な。恋レンみたいな美少女に傷をつけたことは、赦されないことだしね。
「せめて我が力で終わらせる?それが慈悲ってもんだろう?」
ボクは刀に手をかける・・・。
静かに殺気を体になじませる。
敵が間合いを少しずつ詰める。でぇ〜も無問題〜♪。
「アチシがここの間合いを支配した・・・ってかぁ?」
敵が一気にその巨大な手を伸ばす。
だがよける必要はない。なぜならそこにボクはいないから。
≪ヴォ・・・ロ・・・ス?≫
「君の目は節穴かな♪ココにいるよん!」
決して動きが速いわけではない。ただ、相手の先を読みながら間合いを把握。
それからルートを構築し、無駄を極限まで削った動きでたどっているだけだ。
間合いと見切りをマスターすれば、これくらいは意外とできるもの。
左をかわし、右の手を読む。
スピアは速いが、どうしても突き中心。ぎりぎりまでひきつけて、少しの重心移動で流していく。
右手なんてただデカイだけだし・・・。力の一点集中で弾き返す。
≪ヴァヴァヴァヴァヴァ!!≫
本能にまかせた攻撃なら、気配で動きが読めるもの。作戦のない攻撃ほど愚かな物はない・・・。
背後に回り、さらに横に動き、また前に戻る。
そのままがら空きの胸にもぐりこみ、刀をつきつけながらつぶやく。
「Acta est fabula, plaudite!(芝居は終わった。喝采せよ)」
悪魔の胸に刀を突き刺す。苦しまないように【霊核】を一気に壊す。
【霊核(人間でいう心臓)】を全て壊せば具現体は消える・・・この世界の【ロジック】のひとつだ。
悪魔はクワッと目を見開き、咆哮したかと思うと・・・
まず足、それから右手・・・と、灰になりながら消滅した。
そっと眼を閉じ、黙祷。今日も無事におわりました・・・。
っと!切り替え切り替え!お祈りなんて5秒で十分!
決してあの悪魔が弱いわけではないとは思うんだけど、そんなことはボクの知る由もねぇってことナンス★
さって、時間は手元の時計によると・・・ん〜23秒ちょいか!イェア!
はやく恋レンを治癒しにいかなきゃ。
白い灰の舞う中、ボクは恋レンのほうに顔をむけた・・・。
≪カサッ・・・カサカサッ≫
「後ろっ!」
ん?
≪バキューーーッン≫
右手をかばいながら無理やり銃の引き金をひく恋レン。
後ろを見ると・・・悪魔の左手の切っ先が、寸前で止まっていた。
・・・なんという執念・・・。
怖っ!
「あ、ありがと三角・・・」
「ワタシだって、これくらいは造作もなかったのだ。別に助けてもらわなくとも余裕「あ〜はいはい。わかったから。」む、む・・・」
〜〜〜〜〜★☆★☆★☆★〜〜〜〜ヒーリングだ★オゥイエィ!〜〜〜〜★☆★☆★☆★〜〜〜〜〜〜
「この結晶に秘められし力よ、我が力のもと、発動せよ!ん〜『兵』!」
≪ファファファファファァァァァァ♪≫
手に握ったクリスタルから、膨大な陽気が溢れ、ワタシを包む。傷も疲れも一気に治ってしまった。
「すごいな・・・。その治癒結晶は、【大天使】クラスの者が力を込めたものであろう?」
まぁそれをあんなに簡単に発動させるヤツも奴だが・・・
「あの、それよりすいません・・・なんか巻き込んじゃったみたいで・・・。」
肩を日本海溝のごとく落としてあやまってくる零司。
「いや、ワタシが勝手にやったことだ。気にされると逆に困ってしまう」
ほんとにそうだ。勝手に入って勝手にやられただけだ。
退魔業において、最も重要なものは霊力でも武器でも技術でもなく、事前の準備。
より多くの情報、それにあわせた作戦と装備に、伴う様々な危険性においての対抗策。
分かっていたはずなのだが・・・なぜか彼のことが放っておけなかった。それはやっぱり・・・
「なぜ君はそんなに力を持っているのに、あの程度の敵を目の前にしてあそこまで警戒していたのだ?」
そう。彼は警戒・・・というより怯えていたのだ。
敵が現れた瞬間に怯えるなんてのは、はっきりいってこの仕事にはゼッタイに向かないだろう。
「・・・・じつはボクね、霊力を感じることができないんすよ。生まれつきね」
はぁ?それって・・・
「その状態で退魔なんて!いくら力を持っていたとしても、死にに行くようなものじゃないか!キミはバカか?」
退魔において、霊力がないっていうのは生肉を持ってサメと追いかけっこするようなものだと思ってほしい。
「いや、だから死なないように技を磨いたわけで・・・それに退魔って、二人一組で行うのが多いじゃないですか?だからいっつも大丈夫だなぁっと・・・」
「なら何で今回は一人だったんだ?」
「いや、情報によると、中級悪魔クラスだって聞いたもんで・・・」
「はぁ・・・。なるほどな。だからあの外見を見て・・・」
「ビビリまくった訳なんよね・・・。」
そうか・・・。
「まぁ、ワタシがとやかく言うことではないがな・・・。」
立ち上がりながら、つぶやく。
「ならば、ワタシは帰らせてもらおう。その・・・なんだ。今日はと・り・あ・え・ず、助かった。」
「ちょっ、ちょっとまって!その格好で行くん?」
下を見ると・・・制服はぼろぼろになっていた。ってか汚れすぎだろっ!?いつこんなに汚した?なんか作者の悪意をひしひしと感じるぞ?
「ん?まぁどうにかなるだろ?」
まぁ格好には正直そこまで気を払っていない。ただ友人がうるさいからしているだけで・・・。
「だめだよぉ!そんな格好なんて!ガッコでしょ?今から」
「まぁ・・・そうだが・・・」
そりゃ平日の朝から制服きてバス停までジョギング・・・なんてのはありえんだろうし。
「なら、なおさら!こんなことになっちゃったのは、ボクのせいでもあるんだし・・・」
「別にかまわん」
服なんて、ジャージでも着とけば大丈夫だろ?
「そういうわけにはいかないよぉ!んっと・・・そうだ!」
そう言って、零司はポンッと手を打つ。いやな予感がする・・・が
「うち近くなんだ!来ない?来なよ♪いいでしょぉ?」
そう言いながら、答えを聞かないって雰囲気で首をかしげる。そんなクールな顔をいっぱいの笑顔でかしげられても・・・。
「いや、その・・・なんだ、学校が・・・」
「だから!その学校に行けるような状態じゃないでしょ?!もぅ!意地っ張りなんだから!」
「いや、意地とかそんなんじゃ・・・ちょ!手を引っ張るな!犯罪行為になってるぞ!」
「んもう!恋レンくらい強かったら、むしろ逆に犯罪?みたいな?」
「いや意味わからん」
そういうやりとりをしながら・・・結局着いたのは、商店街から一歩小道に入ったところにあるなかなか洒落た喫茶店と、細い道をはさんでまん前にある本屋だった。
その喫茶店は、どこかイタリアを感じさせる明るくゆったりとした場所だった。
名前は・・・
「ここがボクたちの家。【初夏凛凛】と、【ぶっくす】だよ♪」
だそうだ。【初夏凛凛】はわかるが、【ぶっくす】ってなんだよ・・・
ワタシがそうちっとばかし安直すぎやしねぇか?と頭をひねっていると、零司はそのまま喫茶店に入っていった。
「ただいま〜」
「あら〜んおかえり〜」
・・・ちょっとまて。なんだあのあきらかに男なのに女口調の声は!
いやーな予感がするぞ?
このまま帰ったほうが・・・
「恋レン!はやくはいんなよ!」
ちょ!おまえ!
「ひっぱるな!」
「だってなんか入りたくなさそうだから・・・あ?なに?やっぱり服気にしてる?」
「そんなものは始めから気にしていない!っていうかこの格好で朝の商店街を賑わせたんだからいまさら気にするも何もないだろうが!」
「なら入んなよ!ほらほらほら〜★」
いや!あの男の声が耳に残って!
≪ギィィィィッ≫
「つれてきたよ!」
「あらぁん?そのコなの?」
あぁ・・・入ってしまった・・・
【SEQUEL!】
次回、新キャラぞくぞく?
零「うん。ボクの仲間?がいっぱいくるよ!」
恋「はぁ〜。なんだかイヤな予感しかしないぞ?」
作「新キャラは濃いよ〜!キミ達消えちゃうかもね・・」
零「いや、それは・・・」
恋「ん〜まず消えるのはキサマだろうがな。」
作「ひどっ!」
九「そうよ〜作者は私たちにとってかみなんだから」
四「そうそう!だぁかぁらぁ〜わたしになんかキャワイイ男の子のフラグ立てて〜ん」
恋「いったい誰なのだ?おまえたちは!」
零「あわわわ!勝手に出てきちゃまずいよぉ!」
八「大丈夫ネ!ココはワタシにマカセルネ!ワタシのカイハツしたこのx-1098をツカエば、ニンゲンの中枢神経にサヨウして前頭葉に・・・」
零「余計にまずいでしょ!なにそのカタカナの中にところどころ混じる漢字は!」
恋「やっぱり・・・」
五「不安だね」
恋「だれ!!?」