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第一日『Alea iacta est!(賽は投げられた)』

ここからがはじまりです。


そこまで暴れません・・・。

AM5:00 麗京市 中央区 センターズヒル 4001号室



その部屋の住人が迎える朝の風景は、いつもと変わらない。


習慣の早寝早起きをし、洋モクに火を点け起きぬけの一服をゆっくりと楽しむ。


その後は熱いシャワーを浴び、髪を乾かしながら湯を沸かす。


パンをトースターのなかに入れ、フライパンを熱しベーコンエッグを作る。


レタスを千切りトマトを添えレモンを振り掛け、沸いたお湯をゆっくりとドリップに注ぎ込む。


手際よく盛り付けたら・・・


サラダとトースト、ベーコンエッグにホットコーヒー。朝食の完成だ。


「・・・いただきます」


きちんと手を合わせ挨拶。洋食で統一された朝食を黙々と胃に入れていく。


最後の一切れを口に放り込み丁寧に飲み込む。


「我ながら、なかなかおいしかった。ごちそうさま」


やっぱり手を合わせ、挨拶。少し冷めたコーヒーに手を伸ばす。


食後のコーヒーにはこだわりがある・・・なんせ自分で豆から挽いてブレンドした逸品だ。


「ふぅ、今回のはうまくいたな」


時計を確認・・・まだ時間は十分だ。


制服に着替え髪を梳かし洗い物と洗濯を済ませたら、また洋モクに火を点ける。


たっぷりと煙を肺に溜め、一気に吐きだし余韻に浸る。


この少し鼻にさわる甘ったるい香りは、洋モク特有のもので気に入っている。


そうこうしているうちに時間だ。


ここからバス停まで5分弱。ほふく前進でいっても間に合うくらいの余裕を持って出るのが、いつもの流れだ。


「いってくる」


・・・誰もいないが、一応挨拶。寂しさが少し残るが・・・しっかりと戸締りし、マンションを出る。


そと外見とは不釣合いな高級マンションの最上階に住んでいるのだが、自分の金で買ったのだ。文句は言わせない。


朝の冷たい風を楽しみながら、ゆっくりと歩く。よく晴れた早朝が一番好きだ。


バス停が見えてきた。まだ誰もいない。いつものことだがな・・・。


それから何分経ったか・・・・少しずつ人が集まりだした。


あと二、三分すればバスも来る。また変わり栄えのない日常が始まる。


(タッタッタッタッタッタ・・・)


「あ、あぶなかったぁ!!!」


ハァハァ言いながら走ってきた誰かが隣に並ぶ。


よっぽど急いでいたのだろう。相当息が切れている。


チラリと見ると・・・意外にも目が覚めるような美青年だった。


銀色の長い髪をポニーテールにした、小顔で長身の足が長いモデル体系。目はキリリと鋭く、とがった顎。線の真っ直ぐな高めの鼻にかかった淵なしのおしゃれな眼鏡。服装もスーツに黒いロングコートを羽織った姿なのだが、決してホストのようには見えず、爽やかさと上品さを醸し出している。体中から普通のイケメンではございませんよという雰囲気が滲み出てる・・・が、正直そこまで興味はない。また前に向き直る。


と、胸の刺青が少し疼いた・・・のだが、気のせいか?


後ろの女子大生達のはしゃぐ声が聞こえてくる。本人達は小声のつもりだろうが、実に筒抜けだ。


「ねぇねぇあのカレめちゃカッコよくない??」


「マジヤバイっしょ?あたしモロタイプだしぃ〜」


・・・やっぱりこれが普通のオンナノコの反応なんだろうな。


そのまま少しざわめいた後、イケメン・・・いや、クールガイだな。の息が整ってきた。


ニコッと上品な笑顔をしながら・・・


バスを待っているのだろう(結局横目でチラ見する)


♪〜♪〜〜〜♪♪〜〜♪〜


と、突然いまどきなオンナノコの着ウタが大音量で流れる。マナーモードくらいしとけよ!と思わず言ってしまいそうになったがぐっとこらえる。・・・ったく、誰だ?後ろの女子大生達か?


「あ!浜崎ナナの新曲じゃない?」


「うっそ〜!だれだれ?」


どうやら女子大生達ではなさそうだ。まわりの人達も音源を捜す。


・・・となりのクールガイがごそごそとバックを漁りだした。え?お、おまえ?


「あれ?どこにいったのかな・・・っとあったあった♪はぁ〜い?もしもし?」




!!






あまりのことに目を見開く。おいおいおい、となりのクールガイよ!なんだその・・・ビーズでうめつくされ、なおかつ馬鹿でかいストラップがびっしり付いた無駄にド派手な真っ赤の携帯は!それにその電話のでかたって・・・。


「うん。わかってるよぉ〜(^^)ちゃーんと待機してるからさ♪うん。うん・・・はぁ〜い♪バイバ〜イ!」


クールガイは外見によく合う透き通った、耳にすんなり入ってくる少し低めの上品な声とはまったく合っていないギャル全開の喋り方で一通り話すと、能天気に笑いながら電話を切った。


イメージ丸つぶれ。ギャップとかそういうレベルを逸脱している。


周りは少しの間唖然とし、その後一気にその青年から距離を置く。まぁ私は興味がないのでそのままだが(頑固)。


少し重い感じの空気が流れる。居心地悪いな。


・・・ふいに空気をまったく読まない能天気な声で、クールガイが尋ねる。


「ねぇ、バスまだ来てないよね?」


・・・とりあえず自分じゃないだろうから無視する。


「ちょっとシカトは傷つくっスよぉ・・・そこの髪の長い超美人Jkさん!」


美人JK・・・ワタシのことか?


「ワタシのことか?」


とりあえず尋ねてみる。


「質問に質問で返すのは、すんごく失礼だよ?」


いちいちイライラさせる男だな・・・。


「ああ、そうだな。で?ワタシになにか?」


「だぁかぁらぁ!バスはもう来たのか?って訊いてるの!」


おまえにイライラされる筋合いはないのだが・・・


「その答えなら、『いいえ』だ。まだバスは来ていない。」


「よかったぁ〜♪間に合っちゃったよ!」


と、クールガイ・・・いや能天気男はいきなりホッとした顔で後ろの人達からは見えないように、胸ポケットからある【札】を取り出した。


あれは・・・確か・・・


「我が御名において願う。札より力を導きたまえぇ!んっとぉ『開』!」


体の隅々まで響きそうな低音で、札開式のディスペルを唱える。時々ギャル語で。


とたんに札から光が溢れ・・・っやはり最高ランクの人避けの術札【絶壁の式】か。


それをあんなに簡単に使うとは。さっきの刺青の疼きは偶然じゃなかったんだな。ってそれよりいきなりなんという術符使っているんだ!


後ろに居た人たちは符式の効果で全員どこかへ行ってしまった。


「おお!大成功!・・・って!なんであなたがここにいるの!?またミスッた?ヤベェ〜なぁ」


ワタシのほうを見て驚きの顔をする。感情表現の豊かな顔だな。


「いや、私には符式は効果がない。」


このペンダントおかげでな・・・とは言わないが。とりあえず答えておく。


「え?ドゥーして?」


キョトンとした顔で尋ねる能天気男。


「たぶんおまえと同じ、退魔で生計を立てておるからだろうな。」


「は?ただの美人JK(女子高生)じゃないん?」


「副業でやっておるのだ」


退魔稼業をしているものは、そのほとんどが副業で行っている場合が多い。


たしかに一回の金はいいが、どうしてもそれなりの危険が伴うのだ。毎日やっていたんじゃ体がいくつあってもたりない。


「へぇ〜その歳で!意外に世間は狭いっすネェ〜。名前は?なんて言うんスか?」


「【南上院 恋華】。一族で退魔を生業としてきた。」


こう見えても、その道では相当有名だと自負している。


「あぁね!道理で!・・・・で?それってスゴイんすか?」


・・・。


「召喚士南上院を知らぬのか?」


「え?なんで?」


イラッ!も、もういい・・・。


それよりもっと大きな疑問がある。


「そ、それにしても・・・なぜそんな大層な符式をつかったのだ?」


普通はここまで大規模な物は使わない。【絶壁の式】といったら指定された範囲内には完全無欠に人っ子一人入れなくなる(みんなほかの用事を思い出して遠回りしたりする羽目になる・・・)ほどの符式だったはずだ。


そのせいで今都心のど真ん中なのに誰もいないゴーストタウンと化している。まぁ大方予想はつくが・・・。


「あぁ〜それはね?・・・と、来ちゃったようですね〜♪」


そういって、おもむろに一点を指差す。


見ればバスが来てるだけだが・・・なるほど、【絶壁の式】の影響下では何人たりとも、それがバスであろうと何であろうと、霊体以外はゼッタイに入ってこないはずなのだ。


「なるほどな。あいつがターゲット・・・というわけか。」


「ん。そぉなんすよぉ♪昨日依頼があってねぇ?」


確かにいつものバスとは雰囲気が全く違う。それにこの気の濃度に匂い立つ陰の気配。


「悪魔・・・しかも爵位クラスのか?」


「うん。しかも厄介なことに【バロン】を名乗ってんのよぉ〜たまんないっしょ?手に負えるわきゃねっつの!!」


【バロン(男爵)】とは、大罪の次に力をもつ悪魔のことだが・・・。


と、バスが形を変え始める。だんだんと人形に近づき・・・半人半バスの奇妙な形で止まった。


いびつに突き出た黄色の目でこちらを睨む。どうやらワタシも敵と認識されたようだ。


「そういえば・・・名を聞いていなかったな。なんと言う?」


バックから拳銃ほどの大きさをした【リリーズ】を取り出しながら尋ねる。


「ん〜【零司レイシ】20歳でぇす★」


あれほどの力でワタシがまったく知らないということは・・・、成り立ての新米なのだろう。


巻き込まれてしまった物はほっとけない。さっさと終わらせるに限る。


「行くぞ」


「どこに?」


イラッ


「一緒に戦ってくれるんすか?心強いな♪」


【リリーズ】を能天気に笑う零司のこめかみに向ける・・・。


「とりあえず、な。ギャラは貰うぞ」


そう言いながら洋モクに火を付ける。



立ち上る煙が昇りかけた太陽と交錯し・・・戦いの緊張を高める。










「グフッ」


零司は煙にむせた。




「・・・・。」


「ゴホッ!ガハッ!あぁー副流煙がぁ!体を蝕む猛毒がぁ!」


「うるさいっ!変な雰囲気になるだろうが!」


「やいやいや!自分未成年じゃないんすか?なぁ〜に法に真っ向からけんか売るような行為しちゃってるんですかぁ?」


「気にするな。以上。」


「いや、それ・・・《ヴヴヴヴヴヴァァァァァァ!》おわっ!忘れてた!」


「とりあえず行くぞ!」


悪魔を睨みながら間合いを取り、


【リリーズ】のリボルバーを廻しながら告げる。


「Iurare in verba magistri.(己の言葉で誓え)」


「ラテン語?かっくぃぃ〜★」


「いちいち反応するな!」







≪ヴァヴァヴァヴァヴァ?(攻撃していいすっか?)≫




SEQUELつづく

次回、暴れます。


恋「いや、暴れられても困るのだが・・・」

作「ヤツはそのために存在するのだからね?仕方がないのさ・・・」

恋「はぁ・・・・。まぁあんまりうるさかったらこいつで・・・クスッ」

作「いや、開始第二話で傷害沙汰ですか?それよりなにそのクスッって笑いは!」

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