2-50 魔棘大亀
次の日の朝早く、俺と真美子は、エルミアルさんに連れられてエルフの里に入った。
エルミアルさんには転移ゲート魔法陣で、色々と半結界付きエリアとか回らせられてから着いたので、この里の場所が良くわからない。かなり用心深い。
それで、エルフの長老とかエルフの王子とかに挨拶をして、魔棘大亀のいる洞窟に出発した。
エルフの王子とその従者が案内してくれた。
エルフの王子はアクラレオンLV1398、その従者はハルバカンLV1471どちらも男性だ。
2人ともイケメン。エルフは美男美女だからな。
そして、魔水晶に捕らわれてるエルフの姫はアリアエルLV1381。アクラレオンの妹だ。
洞窟の入り口に着いた。
森の中の丘の下に、ぽっかり口が空いていた。入り口は、3人横1列になって通れるくらい広かった。
念のため転移ゲート魔法陣を近くに作った。
そして、入り口で俺はハルバカンと話を始める。
「ここがその、魔棘大亀のいる洞窟です。テツ殿。」
「ハルバカンさん、中には他に魔物は出るんですか?」
「出るかもしれませんが、前回の魔棘大亀のとき、全て、洞窟内の魔物を倒してしまったので出る確率は少ないです。」
「それと、中の道は一本道ですか?」
「いいえ、少し、細く分かれているところもあるので、案内します。」
「それじゃお願いするよ。さあ、真美子、行こう。」
「はい。テツさん。」
そして、魔法で”ライト”を灯し、ハルバカンの後を俺と真美子、そして、アクラレオン王子の順で洞窟の中に入っていった。
洞窟の中は、かなり湿っていて、地面が緩かった。
地面が滑るので、途中から飛行魔法に切り替えて全員進んだ。
そして、奥のかなり開けた空間に出た。そこは足首位に水が溜まっていて、開けた空間すべてに水が広がっていた。
周りには光を出すコケや草があって、うっすらと照らす明かりで、その開けた空間空間の全体の広さを識別できる。大きさは大きい大学のグランドくらいあった。
その開けた空間の右端に岩みたいなものがあってその上の水晶に光が反射していた。
あれが魔棘大亀か。
その水晶の周りには棘みたいなものがあった。
「あれです。あれが、魔棘大亀です。」
とハルバカンが、その俺の見ていた物体を指さした。
そのハルバカンの声と同時に、魔棘大亀が動き出しこちらに向かって来た。
「アリアエル。」
と今まで無口だった、アクラレオン王子が呟いた。
”ライト”に照らされたその顔は、いまにも飛び出しそうなのを堪えている感じだった。
「ハルバカンさん、それでは、打ち合わせ通り、あの水晶を背中から剥して倒せばいいんだよな。」
「はいそうです。テツ殿。」
「よし、行ってくる。」
と俺は、飛行魔法で魔棘大亀に向かった。
作戦は真美子たちが氷の魔法で、魔棘大亀の周りまでの足元の水を凍らせてくれる手筈となっている。
ピシーン!
と、魔棘大亀の周りまでの水が全て凍り、魔棘大亀は動きが止まった。
氷の魔法を使用したのは、周りに影響が少ない魔法をだからだ。
今回はダンジョンではないので、自然修復が無く周りを壊してしまうと元に戻らない。
放出系の魔法は洞窟にダメージを与えてしまうのから、崩れて生き埋めになってしまう。
また、前回魔棘大亀を大勢で取り囲んだ時に、魔棘大亀は高密度の電気壁を周りに発生させたので、みんなかなりの被害にあったという。
だから、今回は俺一人で攻撃してみる事になった。
そして、俺は、魔棘大亀に近づく。
すると、魔棘大亀はその棘を伸ばして攻撃してきた。
シユーン!
キーン!
俺は、剣でその棘を受け滑らせながら飛ぶ。
そこに、魔棘大亀は高密度の電気壁を周りに発生させた。
バリバリバリバリバリ!
俺はその高密度の電気壁を切り裂き無効化させた。
シュン!シュン!シュン!シュン!
そして俺は、魔棘大亀の棘をすべて切り取り、その背中に乗ってアリアエルの水晶を引っ張っる。
それに反応して、魔棘大亀は甲羅から黒い渦の様なものを出した。
ゴゴゴゴ!
これは!”RVP”?
俺は足元に結界を張りその黒い渦を防ぎながら、足を渦から遠のける。
更にそれと同時に、魔棘大亀は電気と炎の渦を辺りかまわず発生させた。
ゴバアアアアアア!バリバリバリバリバリ!
真美子たちは、それを魔法防壁で防いでいる。
俺も魔法防壁を展開する。
しかし今度は天井が崩れてきた。
俺はみんなに叫んだ。
「みんな地上へ逃げろ!俺は転移で帰る!」
直後に俺と真美子達の間の天井が崩れてしまった。
俺はすぐさまオリジナルの結界防壁を球状に展開し、俺と魔棘大亀を囲った。
俺と魔棘大亀は結界に包まれながら土砂に埋まった。
◇
さっき足元に張った黒い渦用の結界は、すべて”侵食”されてしまい消滅していた。
しかし、魔棘大亀の甲羅から出ている黒い渦は、ある一定の範囲の甲羅から出されており、しかも約25センチ以上伸びてこなかった。
どうも”RVP”では無いようだ。
俺の知識では、黒い渦には”特殊攻撃イレーズ”か、同じ能力の”侵食”で相殺するしかない。
エルフの姫の入った水晶を根元から剣で切り取り、俺は大量の魔力を使って疑似”侵食”をぶつけた。
ゴゴゴゴゴ!
俺の疑似”侵食”は魔棘大亀の甲羅だけじゃなく、黒い渦が無い魔棘大亀の裏側にも伸びた。
おかげで、魔棘大亀を楽に取り込めそうだ。
数時間が経った。土砂の中の球状結界防壁はまだ持ちそうだ。
魔棘大亀はもう俺が取り込み済みだ。
その情報量が半端じゃ無かったが、甲羅の”水晶”以外、ほとんど役立つ情報が無かった。
”RVP”の情報は既に持っている。今、重複している情報を消去している所だ。
この魔棘大亀は”RVP”が”侵食”途中の魔物の一部が使途の攻撃で飛び散り、その一部が侵入して変異したものであった。
だから、変化が中途半端で止まって魔物のままだ。
また、取り込んだ情報から判明した、使途が使っていた”特殊攻撃イレーズ”が俺の使っていたものと違っていた。結界の部分がお粗末だった。古い時代の物だろう。これじゃ一部飛び散るな。
そしてこの魔棘大亀の”侵食”は俺より不完全。改変が出来なく分解してしまっている。
魔物なので吸収した情報が生かせていない。ちょうどハードディスクのゴミファイルみたいだ。
まあ、俺も”RVP”のデータは使いこなせていないが。
あと、この魔棘大亀の”侵食”は俺と同じく魔力で疑似的に作りだしているので短時間で消える。
つまり、グラスで感知してもすぐ消えてしまっていたため、使途の処分を免れていたのだろう。
”侵食”を使わなければ、ステータスが分からない魔棘大亀だからな。”特殊攻撃イレーズ”の安全装置で撃てない。
とにかく疲れた。魔力もかなり減っている。
俺は土魔法で球状結界防壁の外を固め、空気通す穴を洞窟の空気のある空間まで、同じく土魔法と風魔法で掘った。
しばらく仮眠を取った。




