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召喚余剰人員の為、魔王は任せて異世界満喫?!  作者: 倉地冬馬
序章:余剰人員、異世界へ

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第1話 始まり:再会:サヨナラ

以前投稿していた作品を、構成や文章を見直して改めて投稿していきます。


初めて読んでくださる方にも楽しんでいただけるよう、序盤から整え直しています。

投稿頻度は少なめですが、よろしくお願いいたします。


とあるオフィスの一室。


 モノクロ調のデスクや椅子だけでなく、おしゃれでカラフルなオフィス家具が並ぶ。部屋の中には数人の社員がまばらに座り、それぞれの仕事に取り組んでいた。


 時刻は夜の二十時を過ぎている。


「携太さん、すみませんが、お先に失礼いたします」


「五次、俺ももう帰るわ」


 後輩や同期からの言葉に、その男はPCの画面から目を離すことなく、軽く手を挙げて応じた。


「お疲れ〜」


 その声は、陰キャ特有の暗さとは違う。とんでもなく疲れきっているのが伝わる、力のない声だった。


 五次携太(ごじけいた)


 それが、彼の名前である。


 携太は一度長く目を閉じ、深呼吸をしてから、もう一度画面に目を戻した。写真の編集ソフトが開かれており、画像の色調補正(しきちょうほせい)をしているようだ。


「はぁ……。俺もここまでにして、今日は帰ろうかな。また明日早く来てやろう」


 ――明日やろうは馬鹿野郎。


 とはよく聞くが、今日頑張りすぎて身体を壊したり、最悪死んでしまっては元も子もない。


 そう考えた携太は、大きく伸びをしながら欠伸(あくび)をして、ゆっくりと立ち上がった。


 戸締まりをしながら、今日も俺が最後か、と思う。


 オフィスを出て、夜なのに明るい東京の街を歩く。


 肌寒くなってきた今日この頃、ロンTにジャケットという格好では少し寒い。軽い猫背(ねこぜ)で両手をポケットに突っ込み、無造作(むぞうさ)ヘアのまま歩く携太。(はた)から見れば、どんよりとした負のオーラが漏れ出ており、近寄りがたい存在だろう。


 駅までの道のり。


 駅から家までの道のり。


 毎日、同じ一日を繰り返しているようだった。


 家の最寄駅(もよりえき)から帰る途中、いつものコンビニで割引シールの貼られた弁当を買った。


 またぼんやりと歩いていると、不意に声をかけられた。


「あ……携太くん?」


 外で声をかけられることなんて滅多(めった)にない。だから、携太は自分への声だとすぐには気づかなかった。


 徐々に聞き覚えのある声だと分かり、足を止めて振り返る。


 そこには、懐かしい顔の女性が立っていた。


 身長は百六十センチくらい。短めのボブヘア。携太と違って、季節に合った女性らしい服装をしている。


「みちる?」


 (とき)みちる。


 彼女は携太と一緒に施設で育った、数少ない幼馴染(おさななじみ)だ。


「久しぶり。何年ぶりだろうね」


 みちるは柔らかく微笑んだ。


「本当だな。元気そうで良かったよ」


「うん。今はとても楽しく過ごせてると思う。相変わらず時計ばっかりいじってるけどね」


 みちるは時計修理技能士とけいしゅうりぎのうしだ。


 女性には珍しい職業だが、彼女は器用で、細かい作業が得意だった。施設にいた頃から、壊れた時計を直したり、時計を解体しては組み直すのが好きだった。


 育ての親であるおじいさんが亡くなるまで教えてくれた技術であるため、彼女は時計に携わる仕事ができていることを誇りに思っている。


「携太くんは? 写真の仕事、順調?」


「まあ……な。食べてはいけてるよ」


 携太は濁し気味に答えた。


 順調かと言われれば、そうでもない。ただ、日々をこなしているだけだ。


 みちるは少しの間、携太を見つめた。その目には、何か言いたげな色があった。


「……そうだ、これ」


 みちるが自分の腕に着けていたブレスレットを外して、携太に差し出した。


「なに?」


「お守り。私には少し大きいんだよね。よかったら着けてよ」


 携太はそのブレスレットを受け取る。


 銀色のチェーンタイプのブレスレット。小さな青い宝石が一つ、埋め込まれている。


「綺麗だな。でも、高そう……」


「いいから。ね、着けてみて?」


「え、今?」


「うん。似合うと思うんだ」


 みちるの勢いに少し違和感を覚えたが、言われるがままに右手首に装着(そうちゃく)した。


 軽くて、着けている感じがほとんどしない。


「……どう?」


「うん、やっぱり似合う。私もサイズ違いで買って着けとくから。携太くんとお揃いで着けていたいの」


 告白ともとれなくはない、この言葉。


 携太は動揺し、言葉に詰まった。


「じゃあ、私そろそろ行くね! 絶対外さず大事にしてね〜」


 みちるは手を振りながら、駅の方へと走り去っていった。


 携太は立ち止まったまま、ブレスレットを見つめた。


 青い宝石が、街灯の光を反射して淡く光っている。


(お守り、か)


 まあ、悪い気はしない。それに、みちるからのプレゼントだ。大事にしよう。


 携太は再び歩き出し、また毎日のルーティーンに戻った。


     ◆


 アパートに帰り、弁当を食べ、風呂に入り、寝巻(ねま)きに着替えてベッドにダイブ。


(みちる、元気そうだったな)


 久しぶりに会った幼馴染のことを思い出す。


(お互い、好きなことを仕事にできてはいる……)


「それだけでも、恵まれているのかな」


 体勢を変えて、さぁ寝ようとするが――そうはいかない。


 スマートフォンを手に取り、画面を眺める。SNS、ニュース、動画。どれも興味が湧かない。


 ただ、異世界に転生や転移する漫画を読むのにはまっている携太は、満足いくまで読んでから寝るのが習慣なのだ。


 今日の疲れがひどかったのか、携太はスマホを持ったまま寝落ちしかけた。


 その時だった。


 床がふっと白く光った。


 木目の隙間から(にじ)むように――次の瞬間、部屋中がまばゆい光で満たされた。


 あまりの眩しさに、携太は目を強く閉じる。


(なっ……何が起きてるんだ)


 光が引いたときには、携太の姿も消えていた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


次回から、携太の状況が大きく変わっていきます。

続きも読んでいただけると嬉しいです。


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