恋
登場人物増えました。
学校の中のことを描こうとしたらこうなりました。
久し振りなので、エピソード1をちらりと見て人物名を確かめる、私。あはは。
(2026年8月7日追記)
書き直しました。文章の繋がりも何を伝えたかったかもわかるようにと読んで確認しながら修正しましたので、どうぞよろしくお願いします。
「盲点という言葉は、相手の頭はもちろんのこと。こちらの仲間の頭の中にも思い浮かばなかったことだという」
「う、うん。それが」
「ああ。俺は思いもしなかった」
ミノルの顔は真剣な表情をしている。それがやっかいだと今度は何事を考えているのかと隣で相槌を打つクラスの友人。彼は、ミノルの話しを聞きながら、とあるクラスメートを見ていた。
「恋か」
ミノルは窓の外の方を見ながら言うと、立っている友人はこう言って慌てだした。
「な、なんだ。どうした?」
その友人の慌てっぷりに気づいていないようでミノルは真剣なまなざしのまま、
「いや。みんな俺の知らない内に恋愛するようなお年頃になったんだと思ってな」
突拍子もない話しの仕方にも驚きながら、おやじ臭く語りだしたこのクラスで唯一こうして毎回の休み時間一緒に居るのかと言えるくらいに一緒に居る相手であるが、こんな突拍子もないことを言うとは。と、そこまで考えて出会ってからのことを思い出した。そういえば時々こうして突拍子もない物言いをすることがあった。確かあの頃の話題は、グラビアアイドルの位置づけについて語っていた。意味が解らないと。あれは完全に大人の世界の話しじゃないのか。青年というか俺たち世代もターゲットにして。と言っていたような。冷静になって考えろ。彼らも商売。若いうちからそういった作品や写真に触れさせることで性に対するこの世に溢れている商品わかりやすいので言えばアダルトな物を将来お金を稼いだら買わせようと、我々若者世代に夢を抱かせているんだ。つまり将来への投資だよ。などと落ち着かせるために俺も熱くなって説明していた。そう友人が頷いていう。
「ミノル。俺とお前は同じ教室で学ぶ生徒だ。そのセリフだとお前は俺よりもオッサンになっていなきゃならない。お前は俺と同じ年齢なんだぞ。つまりそのセリフはおっさんのセリフなんだと認識してくれ。ビックリさせるな。いろんな意味で」
下を向いたミノルは、小さく「ごめん」と謝った。シュンとしている。
「分かればよろしい」
ため息をついて、ちらりととあるクラスメートを視界に入れた後に、ミノルへ視線を向ける友人立川悟。
「それで、どんな理由があってそう発言するに至ったんだ」
「俺気づいたんだ。当たり前のように、朝、我が家に居る男子生徒の行動理由が分かったんだ」
「は?」
「朝うちで飯食って一緒に登校している男がいるって言っただろう?」
「ああ、はい。聞いてる。同じ学校の、確か白石とかいう」
「いや、菊池だったはず」
「それが、どうした。妹の知り合いだろう」
「俺なんでこのことに気が付かなかったんだってさぁ」
「だからんだ。休み時間終っちゃうぞ」ぼそりと俺の話聞いてるかと尋ねる友人に構うことなくミノルは続けた。
「サクに気があるから菊池は朝来るんだ」
「ああ、その行動力には驚かされるけどなぁ。恐らくそうだろうなぁ」
大きなため息をついてミノルは机に突っ伏してぼそりと言った。
「あいつが恋愛感情を向けられるなんて、そんなことがあるんだ」
「なんだ。お前は妹を何だと思っているんだ。お前だって妹や弟にあたる相手に対して可愛いなぁとか思ったりするんだろ」
「せめて、妹だけで説明してくれ。なぜ弟を入れた」
「昨今の世情を鑑みて」
「かんがみてって?!」
予鈴がなって友人立川が席に帰っていった。
ミノルはその時立川の様子を眺めていた。何気ない行為だったが、確かに立川は自分の席に座る前、右隣の隣に座ろうとしている女子生徒へと視線を向けていた。確か図書委員の人だったと思う。苗字は有栖川だったか。
そこまで考えて、ミノルはハッとした。
まさか、クラスメートで友人の立川が恋をしている。しかも同じクラスの有栖川さんに。こ、これは・・・・・・お、俺は。俺もしている、が。2.5次元の女優さん相手に。な、なんだか。友人と有栖川も妹のサクと菊池も遠い存在のように思えてきた。俺、俺も学園に居る女子に恋をしなければ。
右手をガッツポーズするミノルに、教室に入ってきた先生の目に直ぐ飛び込んできた。先生は、フッと笑って、学生だもんなぁと思って応援する気持ちになっているのだろうか。彼のガッツポーズには触れずに、授業を進めていく。
妹のサクを想っているだろう菊池は、春のうららかな気候の中、校内の桜の木の下で猫が寝っ転がっている姿を窓際の席から眺めてほほ笑んでいた。
一方、サクは女性友達と何やら談笑している。
楽しい学校生活。鶯も鳴いていた。
菊池は先生にノートの返却をクラスの全員分を頼まれた。なんとか移動させて、自分のクラスメートへ返却している頃。ミノルは、友人立川に尋ねた。
「俺の理想の相手はこの学校に居るのか?」
「お前は俺を名うての占い師か何かかと思っているのか?」
「どうなんだ?」
「聞けよ!」
「声が大きい」
「はぁ」立川のため息は大きなものになって、体全身で現わしている。
周囲の生徒はみな思った。聞こえていると。はっきりと内容も聞こえていると。避難のためなのか立川の席の隣の生徒たちは、自分の席から離れていっていた。
それをなんとなく察した立川は、怒りに任せてミノルに言った。
「ついてこい」
「おう!」
威勢は良いが、どういう内容なのか知ってしまっているクラスメートは、呆れたり面白がったりしつつも黙って見守っている。
二人の姿が教室を出た時に、「追いかける?」と確認するクラスメートまでいた。無言で落ち着いて歩いて追いかける男子生徒と女子生徒が居た。
立川は噂話で聞いてきた人気のある女子生徒をひとりまたひとりとミノルへ紹介していった。もちろん、実際に相手に応対していただいたわけではない。教室に行って扉を開けて彼女がそのひとりだと説明をする。ミノルは確かに可愛いと言って舞い上がる。時には、立川にすでに付き合っている彼氏がいることを告げられてしょげている。ミノルはただ紹介しているだけなのに彼氏がいると分かるとしょげていた。
そんな二人が訪れた教室では彼らが去った後に、どういう理由で来ていたのか分かってしまった生徒たちを中心にくすくすと笑いが起こっていた。
すべて説明し終わった立川にミノルは告げる。
「俺はいったい誰を選べばいいのか?」
もう動じることもない立川は、ミノルの肩に手を置いて、
「心配するな。お前は選ばなくていい。相手に選ばれるかどうかという立場だ」
立川を見るミノルの顔が真剣身を増す。
少し気圧された立川は伝えてしまった。
「試しに紹介した相手のいないフリーの人に告白してみろ」
「ああ、それしか方法はないようだな」
ミノルの返事もズレていることに頭の中でめまいのようなものを感じた立川だったが、冗談のノリだろうと信じているので、「ああ」と認めてしまった。その後にぶつぶつ言っているミノルのその言葉の端々に「どう告白を」や「誰に」という声が聞こえてきたので、肝を冷やした立川は、言葉を付け加えた。
「お前はそこまで馬鹿だとは思わなかった。本当に実行するなら相手に失礼のないように実行しろよ。それから結果を報告するように」
「わかった」
立川は事前にどう動くのかを聞く気力を残していなかった。立川はその日、ミノルのことを知っている友人に電話でこのエピソードのことを話しをしてどう振舞えばよいのか自分の中で考え方や今後の言動についてを整理した。
「おまえたち仲が良いとは思っていたが、そうかおまえがミノルの子守をしているのか」とぼそりと言われたことが立川には嬉しい気持ちが微量と苛立たしさが九割を占めていた。
「冗談じゃない」と言って、その友人との通話を終らせた。
「本当に告白するのか」と立川が悩んでいる頃、ミノルは、
「誰にどう伝えればいいのか」
と自分の部屋でぶつくさ言っていた。ミノルは一生懸命思い出そうとする。みな見た目も可愛い子たちなのだが、いかんせん。誰がどんな名前だったのか思い出せない。
とにかく、行動のクリアを目指すなら、相手の名前を書かずに「好きです。付き合ってください」と本文を書いて、俺の名前を書いておけばいいか。と思い出せる人数の紙を用意し、その文言を書いた。書いて気持ちがすっきりしたミノルは、携帯電話で立川に知らせる。
「手紙を書いた。明日下駄箱に入れたいから、付き合ってくれっと」
その連絡文を呼んだ立川は、ぶったまげたと言って、飛び上がった。ぶったまげたは驚いたという意味の言葉で、立川は父親の影響でこの言葉を知っていた。
「あいつ馬鹿なのか?」
真剣に立川はミノルの突拍子もない行動とその後の行動力について、腕を組んで考えるも、自分が納得できる理論で成り立つはずもなく立川は頭を抱えた。
「ええい。ままよ。と時代劇の殿さまのように怒って、そのことについてはそのままにしておいて、眠る支度をした。なかなか寝つきが悪い夜となった。
翌朝、ミノルが見かけた立川の顔は、暗い表情をしてた。目元の潤いも足りないようだ。ミノルから声を掛ける。
「よう、おはよう」
「ああ」
立川がイラついているように思う。
「寝不足か?」
「誰のせいだと思っているんだ」
「寝薬も刺した方がいいぞ。フェイシャルマスクも」
「誰が持ってるっていうんだよ」
「保健の先生」
「はははははは。訊いたおれがバカだった」
「おまえはおれよりも成績はいいんだから」
「わかった」
立川は自分の席に向かって行ってしまった。
俺は意を決して、教室に現れた有栖川さんに声を掛ける。
「おはよう」
「え、おはよう」
「あの、申し訳ないんだけど。今日の授業にある英語のノートを借りたいのだけれど」
「いいけれど。なんで私なのか理由を聞いてもいい?」
「きっちり単語の意味だけじゃなく理由も書いてありそうだと思ったから」
「はははははは。君にとって私は出来る女子ということかな」
「うーん、そうだね。ちゃっかりでしっかり者のイメージがある」
「あのね。ちゃっかりは褒めてないから」
「あははははは。そこは冗談ということで」
「わかった。今日の授業の時には返してね」
「ああ、分かった」
有栖川さんがノートを取り出している間に立川の方を見ると、こちらを凝視していた。やっぱりあいつは彼女のことが好きなのだろう。隠す気もないのか、表情に出ている。俺にもわかるくらいの状態になっていることに、憐れみさえ浮かんだ。
「はい」
「ああ、ありがとう」
「汚さないでね」
「最善を尽くす」
「どういうこと」
と有栖川さんがころころと笑う。
ああ、こういうのは確かに楽しいし彼女も可愛い。なるほど立川。俺にはおまえの気持ちがわかるぞと思いながら、有栖川さんにお礼を言って、ノートを持って自分の席に移動した。
実際にノートの取り忘れがあるのでこれは有難い。さっそく自分の英語のノートを開いて、照らし合わせていく。ああ、ここだ。そう思った時だった。
「俺にも見せて」
と立川が言ってきた。ミノルは思った。来たと。
「それならノートの持ち主に直接自分で自分も借りて見たいと伝えろよ」
すると、「お、おう。そうする」と言って、立川が有栖川さんに照れ臭そうにしながら声を掛けている。なんて微笑ましい光景なんだ。
俺は勉学に励むぞ。と昨日の自分の悩みや行いなど棚に上げていそしみだした。
予定のチャイムがなる頃には大半を写し終えていた。しょうがない立川に長く持たせてやろうと、ミノルは一時間目の後の休憩中に有栖川さんに写し終わったことを伝えて、立川にノートを渡すことを伝えた。彼女は「うん、お願い分かった」と返事をしてくれた。なので、立川に近づくと待っていたようで声を掛けると、素早くこちらに向き合ってくれた。有栖川さんに借りているノートを立川に渡す。立川のノートを見る目といったらなかった。
「汚さないように」
と彼女に言われたひとことを付け加えて自分の席に移動した。
立川の後ろ姿。少女漫画のように花を浮かべて想像すると、なんとも初々しい青春の二文字が浮かんでくる。
うん、俺はやった。友人のために一肌脱いだのだ。
自分で書いた数枚の手紙の存在をすっかり忘れていたミノルは、家に帰ってからしまい込んでいたその手紙の数々を鞄の奥から見つけて、家で悶えていた。
「恥ずかしい!」
立川に比べて俺の行動は恥ずかしいそのものだ。誰かそう誰に想いを寄せているのか。その特定された存在が居てこそ青春ではなかろうか。
不特定に手紙を渡すなど。
ああ、恥ずかしい。俺の幼過ぎる青春の在り様に気が付いて、恥ずかしさの余り手足をじたばたさせて、家具にぶつけて、「痛い」と泣いて静まった。
時々青春を満喫するために突き進む学生さんの勢いってやつが描けていたら嬉しいです。
学生の時に夢中になったことなにかありますか。
思い出すきっかけになったら嬉しい嬉しい嬉しい。




