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Miracle Sweets Princess  作者: ロマンス王子
第一章 出会い編
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第一話 甘くはいかない新戦士

 むかーしむかしあるところに、人間の悪意から産まれた悪い怪物がいました。怪物は独自の目的を持ち、人間界を侵攻しようとしました。しかし影あるところ必ず光があります。人間界を怪物から守ろうと指輪の宝石に選ばれた戦士が怪物を倒し、無事世界を守ることができました。それでも善悪は表裏一体、人間の悪意が尽きない限り必ず戦いは繰り返されます。そしてまた戦いが始まるのです。



 よく晴れた朝、大人も子供も仕事や学校に向かおうと歩き出す。それは彼女も例外ではなかった。


「はぁ……。」


 ベージュの髪を後ろで結び、スーツ姿で溜め息を吐く女性の姿があった。彼女の名は桜江(さくらえ)千須佳(ちずか)、27歳の平凡な会社員だ。千須佳は今日も憂鬱な気分になりながら仕事に向かう。


「桜江!今日もまたやらかしたのか!」

「も、申し訳ございません!」


 千須佳は会社で上司に怒鳴られる。どうやら何か仕事で失敗をしたらしい。


「はぁ……。」

「また怒られたのか、桜江。」


 自席に戻ってまた溜め息を吐く千須佳に一人の男性社員が話しかける。


「苦木先輩、すみません……。」


 千須佳は男性社員に答える。彼の名は苦木(にがき)流馬(りゅうま)、千須佳よりも二歳年上の29歳で千須佳が新入社員だった時の教育係を勤めていた先輩社員だ。今でも千須佳の良き相談相手となっている。


「桜江、お前ももう若手じゃなくなるんだからこのくらいしっかりしないとな。」

「そうですよね……。」


 流馬は千須佳を鼓舞する。千須佳も流馬の言葉には素直に励まされるような気持ちになっていた。



 その日の帰り道、千須佳はふと道中のコンビニの方に目を配る。そこには学生服を着た高校生くらいの男性を見つける。その男性はコンビニの前で大きく足を開いてしゃがみ込み、レジ袋からコンビニで買ったと思われる物を取り出しては食べていた。


「うわぁ……、柄の悪い高校生だな。関わらないようにしよ。」


 そう思った千須佳はコンビニの横を通り過ぎた。千須佳が通り過ぎた後、コンビニの自動ドアから小柄な少年が現れる。少し天然パーマのかかった少年は暗い表情を浮かべていた。


「おい。」

「はい?」


 高校生の男性は少年に話しかける。ふいに話しかけられた少年は驚いて目を丸くしてしまう。


「もしかして、お前もサボりか?」

「あ、えっと……、はい。」


 男性は少年に学校を怠けているのかと尋ね、少年は躊躇いつつも自白してしまう。すると男性は微笑む。


「そうか、俺もだ。」


 男性はそう言うと少年にスペースを譲るように座っている位置を少し移動する。


「ほら。」

「すみません、失礼します。」


 男性は少年に声を掛け、少年は男性の横に立つ。


氷山(ひやま)雪大(せつと)。」

「え?」

「俺の名前だ。雪大って呼んでくれていいぜ。」

「あ、はい……。僕は水無(みずなし)西瓜(すいか)って言います。小学六年生です。」


 男性と少年はそれぞれ自己紹介をする。どうやら二人はそれぞれ氷山雪大と水無西瓜というらしい。そして雪大は西瓜に学校をサボったことについて尋ねる。


「西瓜、学校で嫌なことでもあったか?」

「特別嫌なことがあったわけではないんですが、何となく居づらいというか……。」

「俺と一緒だな。俺ももう高校二年生だけど、全然クラスに馴染めなくてな。」

「雪大さんも?」


 西瓜は学校に何となく居づらさを感じて怠けていることを明かす。すると雪大も同じ理由で怠けていることを明かし、西瓜は親近感を覚え笑みがこぼれてしまう。


「何だ、お前も笑うんだな。」

「あ、すみません。ちょっと嬉しくなっちゃって。」


 西瓜が笑ったのを見て雪大も嬉しさを覚える。


「俺達、コンビニ(たむろ)仲間だな。」

「はい。」


 雪大は西瓜に自分達のことをコンビニ屯仲間だと言い、西瓜も頷き二人は軽く拳を突き合わせるのだった。



 一方、千須佳が帰り道を歩いているところにランドセルを落とし中の教科書やノートをばら撒いてしまった小学生くらいの小柄な少女がいた。


「やっば~!」


 慌てる少女に千須佳は歩み寄る。


「大丈夫?拾うの手伝うよ。」

「あ、ありがとうございます!」


 千須佳は少女に声を掛け、ばら撒かれた教科書やノートを拾う。少女は嬉しくなる。


「はい、これで大丈夫だね。」

「助かりました!」


 千須佳は全ての本をランドセルに戻し、少女に渡す。少女は嬉しくなり勢いよく深々と頭を下げる。


「じゃあ私、そろそろ行くね。」

「待って下さい!せめてお名前だけでも……。」

「え、せめて……?」


 千須佳は突然の少女の脈絡のない言葉に驚くが、特に名前を教えて困ることもないので普通に教える。


「えっと……、桜江千須佳って言います……。」

「千須佳さん!何て素敵なお名前でしょう!」

「そうかな……?」


 千須佳はやけにオーバーなリアクションを取る少女に戸惑う。


「私、仁科(にしな)(あんず)って言います!ピッチピチの小学四年生です!」


 少女は仁科杏と名乗る。


「じゃあ杏ちゃん、そろそろ……。」

「はい!このご恩は一生忘れません!またどこかで会いましょう!」


 千須佳はそろそろ杏の元を後にしようとする。杏は最後までご機嫌な様子で千須佳に別れを告げるのだった。


「何か……、元気な子だなぁ……。」


 千須佳は杏にそんな印象を抱きながら帰る。

 何気ない日常を送る千須佳だったが、既に運命の歯車は動き始めていた。


 一方、人間界とは別の世界にある暗い世界に禍々しいオーラを放つ城があった。その中に野菜のケールを身に纏ったような怪物とゴーヤを身に纏ったような怪物がいた。


「人間界への侵攻の時だな、ケールス。」

「俺達の力を見せつける時が来たのだ、ゴーヤイド。」


 二体の怪物はそれぞれ互いをケールス、ゴーヤイドと呼ぶ。


「俺が行く。人間界へ行って支配してきてやる。」


 ケールを身に纏ったような怪物、ケールスはそう言って人間界へ赴く。ゴーヤを身に纏ったような怪物、ゴーヤイドはケールスを見送るのだった。



 明くる日、千須佳はいつものように仕事に向かい上司に怒鳴られる。


「桜江!いい加減にしろ!」

「はいすみません!」


 いつものように上司に怒られた千須佳は自席に着いてまた流馬に声を掛けられる。


「大丈夫か?桜江。」

「すみません先輩、毎日お見苦しいところを……。」


 千須佳は毎日気を遣ってくれる流馬に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。



 その日の帰り道、千須佳は憂鬱な気持ちに浸っていた。千須佳は今の会社に新卒入社してから要領の悪さで迷惑を掛けてばかりだった。流馬は千須佳と年齢も入社年もあまり変わらないが、流馬は千須佳と違って要領も良くすぐに役職を持つようになっていた。


「はぁ……、早く苦木先輩みたいになりたいな。」


 千須佳はそんなことを思いながら溜め息を吐く。

 千須佳が人生に彩りを感じられなくなっていたようなそんな時、街から悲鳴が聞こえる。


「きゃーーーーーー!」

「え、あっちの方?」


 千須佳は悲鳴に驚き、聞こえた街の方へ向かう。



 千須佳が駆けつけた時、街でケールスが暴れていた。


「何あれ?怪物?」


 千須佳はその光景に唖然としてしまう。


「さあて、そろそろやりますか。」


 ケールスはそう言うと道行く男性の腕を掴み、話しかける。


「お前、ムカついていることはないか?」

「は?」

「いいから話せよ、相手になってやるぜ。」


 ケールスは男性の悩みに寄り添うようなことを言う。その誘惑に負け、男性は鬱憤を吐露する。


「俺はな、真面目に働いてたんだよ!それなのに財政難だか何だか知らねえけどこの俺をクビにしやがって!もうどうにでもなっちまえ!」

「ほぉ……、つまり?」

「この世界なんか消えてなくなっちまえ!」

「悪意頂きました!」


 男性はリストラに遭ったことを話し、心にもない暴言を吐く。その悪意を見せた男性にケールスは微笑む。


「その悪意、解放しろ!」


 ケールスはそう言うと男性の頭に手を翳す。すると男性から黒いオーラが現れる。そしてその黒いオーラから新しい怪物が現れる。


「ほぉ、いいマリスだな。」

「マリス?」


 ケールスは怪物のことをマリスという。


「マリス、存分に暴れろ!この世界を苦くしてやれ!」

「嘘、また怪物が暴れるの?」


 ケールスはそう言ってマリスを暴れさせる。千須佳はまた怪物が暴れることを警戒する。そしてマリスはケールスに言われるがまま暴れ出す。


「こ、こっちに来る!」


 千須佳は襲い掛かるマリスに怯える。そして他の人々が逃げ惑う中、千須佳は逃げ遅れてしまう。


「ちょっと、こっち来ないで!」


 千須佳がマリスを追い払おうとした時、遠くから堂々と歩く二人の女性の姿があった。一人はツインテールをした女性で、パフェを食べている。少し後ろを歩くもう一人の女性は黒髪のストレートロングで清楚な佇まいをしていた。二人の女性がケールスとマリスの前に立つと、ストレートロングの女性が前に立つ。


「皆様、どうぞお控えなさって下さい。」

「あ?何だそれ。」


 ケールスはストレートロングの女性の言葉に戸惑い、マリス共々その場に立ち尽くす。そして女性は口上を続ける。


「ここにおわすお方をどなたと心得ましょう。このお方こそ悪の組織と戦い続ける由緒正しき指輪の戦士、双見(ふたみ)アラモード様であらせられます。」


 ストレートロングの女性はツインテールの女性を双見アラモードと紹介する。その女性の口上に、その場にいた全員が呆然としてしまう。


「元将軍の人?そんなわけないよね?」


 千須佳は元将軍のような紹介に戸惑う。そしてツインテールの女性はパフェを食べ終わる。


「竹月ちゃん。」

「はい。」

「昨日の時代劇面白かった?」

「はい、とても面白かったです。」

「そっか。ごめんねつないでもらっちゃって、パフェ食べ終わってなかったからさ。」

「いえ、大変光栄でした。」


 ツインテールの女性はストレートロングの女性と軽く言葉を交わし、持っていたパフェの器を渡す。そしてケールスとマリスの前に立ち、ポケットから指輪を取り出す。


「この指輪が目に入らぬか、ってね。」

「何だその指輪は?」


 ツインテールの女性が見せたその指輪にはオパールの宝石があった。ケールスは指輪を睨みつける。


「そっか、知らないんだ。」


 女性はケールスが指輪を初めて見たような反応を示したのを見て、何かを察する。そして指輪を左手の中指に嵌める。すると、左手の手首にブレスレットが現れる。


「ゴブリン!オパール!パフェ!」


 女性はそう叫ぶとブレスレットにあるダイヤルを回して矢印を合わせる。するとブレスレットから甲高い女性の声が響く。


「It's so sweet!」


 そしてツインテールの女性はブレスレットを胸の前に持って来て、真剣な目を見せる。


「スイートチェンジ!」


 その掛け声と共にブレスレットにあるディスクを勢いよく回す。すると女性の体はみるみるうちに姿を変えてしまう。

 その戦士はホイップクリームクリームやチョコソース、シリアルやフルーツなどパフェを構成する物の意匠が散りばめられたドレスを身に纏っていた。


「何あれ、ヒーロー……?」


 その姿に千須佳は目を丸くする。


「私こそが伝説のスイーツ戦士、その名もレジェンスウィーテス。短い間だけどよろしくね。」


 戦士は自身のことをレジェンスウィーテスだと名乗る。そしてレジェンスウィーテスはゆっくりと歩きだす。


「けっ、お前一人に何ができるってんだ。マリス、やっちまえ!」


 ケールスはマリスに命令し、マリスはレジェンスウィーテスに向かって走り出す。そしてマリスが拳を振り下ろす。しかしレジェンスウィーテスは動じることなく片手で受け止めてしまう。


「へへ〜ん。」


 レジェンスウィーテスはそう微笑むとマリスの拳を振り払い頭を蹴り上げる。そして膝の裏を蹴ってマリスを横たわらせ、腹を勢いよく踏みつける。


「こんなもんか。」


 マリスを踏みつけたレジェンスウィーテスは余裕綽々な態度を取る。すると後ろからケールスが飛び掛かる。


「隙ありだぜ!」


 しかしレジェンスウィーテスは動じることなくケールスにナイフを投げつけ、胸に突き刺す。


「うわぁぁ!」

「誰が隙ありって?」


 ケールスはそのまま落ちてしまう。そしてレジェンスウィーテスはマリスを蹴り飛ばして指をパチンと鳴らす。するとマリスの頭上に巨大なお菓子の家が現れる。


「甘い甘いお菓子の家、しっかり味わってね。」


 レジェンスウィーテスはマリスに優しい声でそう言うとお菓子の家を勢いよく落としマリスを踏み潰す。そしてマリスは消滅してしまう。


「くっっ……、何だこいつは。ここは一時撤退だ!」


 マリスを失ったケールスはそう言い残し人間界を去るのだった。

 レジェンスウィーテスは元の女性の姿に戻り、逃げ遅れた千須佳の元に歩み寄る。


「大丈夫?」

「あ、はい……、ありがとうございます。」


 女性は千須佳に手を差し伸べ、千須佳は漸く立ち上がる。すると、女性のポケットから光が漏れ出す。


「ん?」

「な……、何かありました?」


 女性はそのポケットに気づき何かを取り出す。千須佳は何をするのかとヒヤヒヤするが、女性が取り出したのはダイヤモンドの指輪だった。指輪は千須佳に呼応するように光る。


「おぉ~。」

「あの、その指輪は?」


 千須佳はダイヤモンドの指輪に戸惑う。すると女性は先ほどのストレートロングの女性を呼び出す。


「竹月ちゃん。」

「はい。」

「見つけたよ、ダイヤモンドの戦士。」

「本当ですか?良かったです。」

「ダイヤモンドの戦士?」


 千須佳は二人が何の話をしているのか全くわからなかった。そんな千須佳にストレートロングの女性が話しかける。


「この後時間はございますか?」

「え?……はい。」


 千須佳は女性に言われるがままその誘いに乗ってしまうのだった。



 千須佳が二人の女性に連れて来られた場所はとあるスイーツショップだった。


「それでは改めまして、三浦(みうら)竹月(たかつき)と申します。」

「双見アラモードで~す。」

「……桜江千須佳です。」


 ストレートロングの女性は三浦竹月、ツインテールの女性は双見アラモードと名乗る。千須佳も自己紹介をする。


「それで、ダイヤモンドの戦士というのは?もしかしてさっきの怪物と戦う戦士ってことですか?」


 千須佳は改めてアラモードの言っていたダイヤモンドの戦士というものを尋ねる。


「はい、先ほどの怪物は悪の組織ダークビタビターズの幹部。以前にも何度か悪の組織がこの世界を侵攻しようとしたのですが、その度に指輪の戦士が戦い滅ぼしてきました。」

「指輪の戦士、もしかしてさっきのアラモードさんもその一人ってことですか?」

「そう、私はオパールの戦士レジェンスウィーテス。七年前もオパールの戦士として戦ってて、今回また戦うことになった感じ。」

「そうなんですね……。」


 千須佳はアラモードと竹月が淡々と悪の組織や戦士という言葉を口にすることが俄かに信じ難かった。しかし千須佳は確かに自分の目で戦いを目撃したので信じざるを得なかった。


「えっと……、指輪の戦士というのはとりあえずわかりました。でも何で私がその戦士に?」

「さぁね、戦士を選ぶのは指輪の宝石の意思だから。」

「はい。特にダイヤモンドの戦士は戦いの切り札となる存在、ダイヤモンドの指輪は資格者が胎児の頃よりその資格を与えるのです。」

「胎児?ってことは私、お腹の中にいるときからマークされてたってことですか?」

「ま、そういうことだね。」

「サラッと言うんですね……。」


 アラモードと竹月はダイヤモンドの戦士について明かす。千須佳はかなりの大事であろう情報を淡々と話す二人に唖然としてしまう。そして竹月が千須佳に尋ねる。


「それで千須佳さん。」

「はい?」

「戦いますか?」

「え?」


 千須佳は竹月の質問に驚いてしまう。てっきり千須佳は戦士として戦うことを強要されるものだと思い込んでいたため、この質問は意外だった。


「あの、戦わなくてもいいんですか?」

「はい、(わたくし)達は決して戦いを強要しない主義ですので。」

「そうなんですか……。でも、ダイヤモンドの戦士って切り札って仰ってましたよね?もし私が戦わないと言ったらどうなるんですか?」

「まあ、この世界は敵の手に渡るだろうね。」

「あ、なるほど……。」


 千須佳は何となく断れない状況になっていたことを察する。千須佳は戦いに関して全く自信がなかったが、二人の誘いに乗ることにする。


「あの、戦います。何か、戦わなきゃいけないなって。」

「本当ですか⁉ありがとうございます。」

「これからよろしくね。」


 千須佳は戦士になることを決める。千須佳の返答に竹月もアラモードも喜ぶ。


「ご注文をお伺いします。」

「あ、そういえばまだだっけ。」


 ここで店員が三人の元に来て注文を取る。千須佳は話に夢中になっていて注文をしていなかったことに気づく。


「えっと、じゃあチーズケーキで。」

「菱餅をお願い致します。」

「おすすめのパフェ下さい。」

「パ、パフェ……?」


 千須佳はチーズケーキ、竹月は菱餅、アラモードはパフェを頼む。千須佳はアラモードがパフェを頼んだことに驚いてしまう。


「アラモードさん、さっきもパフェを食べていませんでした?」

「うん、でも今は食べてないから。」

「アラモードさんは常にパフェを食べられるので、パフェを何度も注文するのは然程不思議なことでもないのです。」

「えぇ……。」


 千須佳は戦いの前にもパフェを食べていたアラモードがまたパフェを注文していることが不思議だったが、アラモードは常にパフェを食べるということを聞き呆然としてしまう。


「お待たせしました。本日のおすすめ特大爆盛パフェです。」

「ラッキー。」

「えぇ……。」


 しばらくして店員がパフェを持ってきたが、それはあまりに大きいパフェだった。そんなパフェでも嬉しそうに食べるアラモードに、千須佳はまた呆然とするのだった。



 その日の帰り道、千須佳は色々なことがあり過ぎて疲弊し切っていた。


「はぁ……、ちょっと疲れちゃったな。」


 千須佳は突然非現実的な光景を見せられ、更に自分がその戦士になることを未だに受け入れられずにいた。そして千須佳はふと近くのコンビニに立ち寄る。


「あ……。」


 千須佳はコンビニに入った瞬間、ふとスイーツコーナーのチーズケーキが目に入る。


「チーズケーキ……、今日くらい良いよね。」


 千須佳は帰宅後の密かな楽しみとしてチーズケーキを買うのだった。



 一方その頃、ダークビタビターズでは戻ってきたケールスがゴーヤイドに指輪の戦士のことを話す。


「ちっ、何なんだあいつ。」

「指輪の戦士か、それは厄介な奴がいたもんだ。」


 ゴーヤイドもケールスの話から、指輪の戦士レジェンスウィーテスに警戒する。


「また行くか?ケールス。」

「ああ、このままじゃ俺の気が済まねぇ。」


 ケールスは再び人間界へ侵攻に行くと語る。ゴーヤイドはそんなケールスにある提案をする。


「なあケールス、それならマリスをもっと増やしたらどうだ?」

「そうか!それなら指輪の戦士も手出しはできまい。」


 ケールスはゴーヤイドの助言に頷き、人間界へ再び赴くのだった。



 明くる日、千須佳は仕事が休日ということでゆっくり寝床に着いていた。


「うん……、もうこんな時間か。」


 千須佳はいつも以上に眠気が残るまま目覚める。


「まだ眠い……。仕方がないか、昨日は大変だったもんな。」


 千須佳は未だ戦士になったことを受け入れられずにいた。


「まあいいや。今日は休みだし、もう少し寝ていよう。」


 そう言って千須佳が再び横たわろうとした時、千須佳の携帯電話が鳴る。


「え……、竹月さん⁉」


 着信は竹月からだった。千須佳は恐る恐る電話に出る。


「もしもし、竹月さん?」

「千須佳さん!またダークビタビターズが現れました!すぐ戦場に来られますか?」

「あ……、はい。場所を教えてもらっていいですか?」


 竹月からの電話はダークビタビターズが現れたというものだった。千須佳は戦士任命からすぐに戦うことになったことに少し荷が重かったが、とりあえず戦いの場に赴くことにする。



 千須佳が竹月から聞いた街中に着いた時、ケールスが沢山のマリスを率いて暴れていた。


「嘘、昨日よりも多いんだけど!」

「はははは!これで戦士とやらも一網打尽だ!」


 ケールスは沢山のマリスを引き連れていたことで勝利を確信していた。そしてアラモードと竹月も駆けつける。


「大丈夫ですか?千須佳さん。」

「竹月さん、アラモードさん。」


 駆けつけた二人はマリスの多さに驚く。


「これは……、厄介ですね。」

「そうだね、でもまあ私達なら行けるでしょ。ね、千須佳ちゃん。」

「え?あ、はい。」


 アラモードは余裕を感じ、千須佳にも何故か同意を求める。千須佳はアラモードの言うままに頷くしかなかった。


「行くよ。」

「はい!」


 そして千須佳はアラモードのと共に前線に出て指輪を左手の中指に嵌める。すると二人の左手にそれぞれブレスレットが現れる。


「ゴブリン!オパール!パフェ!」

「エルフ!ダイヤモンド!チーズケーキ!」


 二人はそれぞれ戦士の力である幻獣、宝石、スイーツを叫ぶ。そして二人はブレスレットのダイヤルを矢印に合わせる。しかし、千須佳のブレスレットは何故か矢印が五つあった。


「あれ?」

「何かあった?」

「すみませんアラモードさん、ダイヤルってどこに合わせたらいいですか?」

「そんなにある?」


 千須佳は咄嗟にアラモードに、ダイヤルの合わせ位置を尋ねる。しかしアラモードのブレスレットは五つも矢印がなかったため、千須佳のブレスレットについてわからなかった。


「これじゃない?何かこの矢印の所ダイヤモンドっぽいし。」

「そうですか?」


 アラモードはブレスレットにある五つの矢印の内、とある矢印の箇所が銀色だったためそこに合わせるのではないかと言う。千須佳は疑問に思いながらもアラモードの言う矢印にダイヤルを合わせる。


「It's so sweet!」

「行けた!行けましたアラモードさん!」

「おぉ~。」


 ブレスレットから音声が流れ、千須佳は正解だったと喜ぶ。千須佳は改めて敵の前に立ち、構える。


「スイートチェンジ!」

「特大爆盛チェンジ!」

「あれ⁉」


 千須佳は昨日アラモードが叫んだ通りスイートチェンジと叫ぶが、アラモードは何故か昨日と違う特大爆盛チェンジと叫ぶ。千須佳は戸惑いながらブレスレットのディスクを回す。そして二人は戦士へとその姿を変える。

 千須佳が姿を変えたその戦士は、チーズケーキのような淡い黄色のドレスに身を包んでいて、腰にはレーザー銃を携えていた。


「ちょっとアラモードさん、掛け声ってスイートチェンジじゃなかったんですか?」

「え?掛け声なんて適当でいいよ。昨日の特大爆盛パフェが美味しかったからさ。」

「そうなんですね……。」


 千須佳はアラモードに掛け声について尋ねるが、適当でいいとの返答に呆れてしまう。


「よし、じゃあ行こうか!」

「はい!」


 そして二人の戦士は沢山のマリスとケールスに向かって走り出す。


「全く、まさか二人になるとはな。だがこれだけのマリスがいれば関係ねぇ!やっちまえ!」


 ケールスもマリスに命令し、戦士達に立ち向かわせる。


「はっ!」


 千須佳は腰にあったレーザー銃を引き、身軽な動きでマリスを撃ち抜き一掃する。


「おぉ~!この銃凄い!」


 千須佳はその銃の威力に感心する。しかしマリスの数はそれでも多く、千須佳はすぐにピンチに陥る。


「え、ちょっと来ないで!」


 千須佳は沢山のマリスに翻弄されてしまう。マリスが千須佳を囲みタコ殴りする中、千須佳の頭の中に声が聞こえる。


「おい、ここはどこだよ⁉」

「え、誰?」


 千須佳は突然の声に戸惑う。しかもそれは一人だけではなかった。


「誰じゃねぇだろ、こっちは身動き取れないんだよ。」

「本当です!早くここから出して下さい!」

「あの、僕この後予定が……。」

「え、あと三人⁉」


 千須佳は頭に聞こえてくる声が四人いることを知る。一人は成人男性のような声、一人はもう少し若い男性の声、一人は少年の声、そして一人は少女のような声だった。


「四人もいるの⁉」

「うるせぇよ!お前こそ誰なんだよ!」

「私はその……、今戦ってる戦士だよ!」

「戦士?この体たらくでですか?」

「余計なお世話だよ!」


 千須佳の聞こえる声は千須佳に文句を垂れる。


「戦士でも何でもいいから、名前を教えろよ。」

「そうですね、とりあえず名前がわかれば……。」

「名前?ええと……。」


 千須佳は名前を尋ねられる。それを聞いた千須佳は、レジェンスウィーテスのような戦士の名前を決めていなかったことを思い出す。そして千須佳はふと持っていたレーザー銃が目に入り、戦士になる時に選んだチーズケーキのことを思い出す。


「そうだ、チーズレーザー!」

「「「「えぇ~!」」」」


 千須佳は自身の戦士の名をチーズレーザーに決める。しかし千須佳に聞こえる声の四人は不服そうに叫ぶ。


「おい、何だそのダサい名前は。」

「戦士なんですからもうちょっとカッコいい名前にして下さい。」

「ていうか戦士の名前じゃなくてお前の名前を教えろよ。」

「そうですね、できればそっちのお名前を……。」

「うるさ~い!名前は後で教えるから今はチーズレーザーで決定ね!」


 千須佳はまたも文句を垂れる四人を大声でねじ伏せ、チーズレーザーという名前に決定する。


「チーズレーザーの初陣、華々しく決めるよ!」


 そしてチーズレーザーは立ち上がり、マリスに立ち向かう。名前を決めたチーズレーザーは吹っ切れたようにマリスを攻め立てる。


「はっっ!」


 チーズレーザーは四方八方に飛び回り、レーザー光線でマリスを撃ち抜く。


「レーザー強ぇ……。」


 チーズレーザーの中にいる若い男性の声はチーズレーザーの身のこなしに感心する。そしてマリスが残り少なくなったところで、レジェンスウィーテスはチーズレーザーに声を掛ける。


「チーズレーザー!そろそろマリスを一ヶ所に集めて!」

「わかりました!」


 チーズレーザーはレジェンスウィーテスの言葉でマリスを一ヶ所に集める。


「よし、行くよ!」

「はい!」


 マリスを一ヶ所に集めたチーズレーザー、レジェンスウィーテスはマリスの頭上にお菓子の家を召喚する。


「来ましたお菓子の家!」


 チーズレーザーはお菓子の家の真下から逃れ、お菓子の家は大量にいたマリスを潰し消滅させる。しかし、まだ一体だけマリスが残っていた。


「うわ、まだいた。」


 チーズレーザーは力をブレスレットに込め、ディスクを回す。するとブレスレットからレーザー銃に力が流れる。


「レーザーストライク!」


 チーズレーザーはレーザー銃を両手で握り締め、マリスに向かってレーザー光線を放つ。マリスは消滅する。


「はぁはぁ……、疲れちゃった。」

「ま、技の名前は普通だな。」

「うるさい。」


 戦いを終えたチーズレーザーは一気に疲労感を覚えてしまう。成人男性のような声はレーザーストライクという名前にまずまずの評価をする。


「くっっ……、厄介な戦士が増えやがって。また一時撤退だ!」


 ケールスはマリスを倒されてしまい、一時撤退をする。戦いに疲弊したチーズレーザーは指輪を外し、元の千須佳の姿に戻る。


「お疲れ様ですアラモードさん、千須佳さん。」

「ありがと竹月ちゃん。」

「ありがとうございます。」


 竹月は元の姿に戻った千須佳とアラモードに歩み寄り労う。そして千須佳はすっかり頭の中に声が聞こえなくなったことを確認する。


「聞こえなくなった。戦士になっている間だけなのかな?」

「そう言えば、さっき誰と話してたの?」


 アラモードは千須佳が一人で誰かと喋っていたように見えていたため、不思議に思い千須佳に尋ねる。


「ああ、それなんですけどね。ちょっと場所を移動してからお話していいですか?」

「そうですね。千須佳さんも初戦闘でお疲れでしょうし、少し場所を変えましょう。」

「ありがとうございます。」


 千須佳はすっかり疲れ切ってしまったため、場所を変えることを提案する。アラモードと竹月も賛同し、三人で移動するのだった。

 この物語は、桜江千須佳を中心とした五人の物語である。


 お読み頂きありがとうございます。作者のロマンス王子です。「Miracle Princess」シリーズの最新作として「Miracle Sweets Princess」を投稿致しました。まだ全話書き切っていないのですが、ひとまず第一章として八話ほど投稿致します。第二章以降はまた期間が空くと思いますが、気長に待って頂けると幸いです。

 マシュマロも開設致しましたので、宜しければ作者マイページから飛んで頂いてそちらからもコメントしてみて下さい。

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