今ここにある世界
「私」はある日、猫として生まれ変わった。人間の頃の記憶はおぼろげだったが、何故か異常なほどの解放感があった。「私」は中学校の飼い猫として気ままな日々を送る。生徒の中に一人だけ、注意を惹きつけられる女子生徒がいた。彼女の正気のない目が、人間の頃の自分の目と似ていたからだった。暑さに倒れていたある日の「私」を、彼女(中元依子)は助けてくれる。それが縁となって「私」は依子の家にも出入りするようになる。そこで「私」は一匹のメス猫(ミケ)と知り合う。ミケは以前から依子の家に出入りしており、今までの依子の複雑な家庭環境による苦労を「私」に教えてくれる。そして「私」は白昼夢を見る。そこには一人の女子生徒が登場する。それは「私」が中学生の頃の記憶だった。その夢は「私」に深いトラウマを呼び起こす。体調を崩した「私」は依子の手で動物病院に運ばれる。「私」はミケから聞いた依子とのエピソードを思い出す。そこには気を狂わされた一匹の黒猫が関わることになる。そのエピソードから「私」は依子の異常なまでの自己犠牲を知る。そして「私」は夢の中の女子生徒について、自身の記憶を手繰り寄せる。その記憶は「私」の人格形成に深い影をもたらした過去だった。「私」が運び込まれた動物病院は依子の友達(芦沢鈴)の父親が営んでいた。「私」に新たな記憶がフラッシュバックする。父子家庭であるこの親子には壮絶な過去があった。その過去を人間の頃の「私」が知っていた。依子には思いを寄せる人がいた。その少年(白川悟)は生まれた頃から病気を患っていた。「私」は二人の様子を見守っている。少年は死について思い巡らす。依子は未来の可能性を思い悩む。そんな二人の会話から「私」は自分の妻との記憶を思い出す。しかしその記憶は「私」が最も思い出したくない過去だった。「私」は自分の妻との記憶を辿る。そして「私」は人間の頃の憂鬱に引き戻されるのだった。その後、依子にいくつもの辛い出来事が重なる。そして「私」と出会ったもう一人の男子生徒(杉本和彦)との縁が、物語をさらに動かしていく。絶望に落ちる依子を、果たして「私」は救い出すことができるのか。自らの重い過去と向き合いながら、新しい「今」を生きる「私」の、破滅と再生の物語を描く。
1, 猫に生まれる
2024/09/03 18:00
(改)
2, 孤独な狂乱者
2024/09/05 00:00
(改)
3, ありがとうと君は言った
2024/09/07 00:00
(改)
4, 悲しみの向こう側
2024/09/09 00:00
(改)
5, 死にまつわる回想
2024/09/12 00:00
(改)
6, 幻影を求めて
2024/09/14 00:00
(改)
7, 暴力への慟哭
2024/09/16 00:00
8, 最愛の人でした
2024/09/18 00:00
9, 哀しい恋心
2024/09/20 00:00
10, 絶望の果て
2024/09/22 00:00
11, 揺れる想い
2024/09/24 00:00
12, 大切な友達
2024/09/26 00:00
13, 運命に抗う
2024/09/28 00:00
14, 今ここにある世界
2024/09/28 00:00