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異世界制圧奮闘記  作者: 大九
第3章 入学編
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第3話 主従の溝

今話は将来を考え、長めに書きました。リハビリもそろそろ終了かな。

と言っても2000字超え位ですけど。

トルチェと一緒に掲示板を見に行く。でも、既に結果を知っている身としてはなんとも張り合いがない。結果を見ると、僕が首席、トルチェが次席、そしてメグが三席であった。トルチェは得意げに僕にくっつき、注目を集めた。羨望の眼差しを向けられたが、首席だと解ると今度は憎しみの眼差しに変わった。いや、だから好きでくっつかせている訳ではないんだから。

『ご主人様?ご主人様に殺意を向けている人間が30人ほどいますが、殺っちゃっていいですか?』

いやいやいや、ダメだから。サフィ、最近出番が少ないからって病まないで!

「トルチェ、とりあえず合格証貰って早くここから離れよう。」

僕たちは早々に書類をもらって、二高を後にした。メグとはあれから結局会えなかった。でも、首席、次席、三席の3人だ。今後も弄る、ではなく仲良くする機会が多いだろう。


家に向かう前にトルチェの宿に向かった。引越しは明日でもいいじゃないかって言ったんだけど、もう今日から僕の家に来るらしい。宿に着くと、アニーがトルチェに抱きついた。そして、そのままチラリとこちらを見た直後、

「おかえりなさいませ、お嬢様。結果はいかがでした。もちろん首席合格ですよね、お嬢様?お嬢様の実力を持ってすればそんな事楽勝です。ああ、今から入学式が楽しみです、お嬢様。私、当日のために映像記録魔法の開発をしているんです。絶対当日までに完成させます!そして、お嬢様の新入生挨拶という、至高の舞台を子々孫々、永久に伝えていきます。」

あの野郎(女だけど)、僕のことをいなかったことにしやがった。徹底的に無視を決め込んでいやがる。

「ちょっと、アニー。離してってば。一応、報告。無事、合格できたわ。本年度、二高次席合格者がこの私。残念だけど、新入生挨拶は私じゃないわ。それはこっちにいるダーリンの仕事。」

アニーは、この世のものとは思えない、顔をこっちに向けた後、再びトルチェに満面の笑みを向けて、のたまった。

「お嬢様、私、掃除がしっかりできていなかったようです。ここに大きなゴミがあるようですわ。時間はかかりませんので片付けてしまってよろしいでしょうか?」

「ダメよ、アニー。これはゴミではなく、私のダーリン。私たちは今日からダーリンの家に住むんだから。」

「お、お嬢様。いけません。今までは結果発表前のお戯れと思って黙認させて頂きましたが、こればかりはいけません。御身を大切にして下さいませ。へい、ではなくお父上も嘆き悲しみます。お立場をご理解くださいませ。」

なんか、きな臭い話になってきた。そもそもトルチェはこの国の相当凄いお嬢様みたいだ。あれかな?将来は王家に輿入れさせて王妃様になる予定とか。

しばらく、2人のにらみ合いが続いた。

「アニーは、私とお父さま、どっちが大切だというの?」

「それはもちろん、お嬢様です。お嬢様の将来を考えてこその進言でございます。それに、このままではそこのゴミクズにも多大な迷惑をかけてしまうかもしれません。」

「ダーリンはそんな障害、簡単に乗り越えられるわ。それに、将来を考えてこその行動よ。お父さまの後継としてダーリン以外に務まるとは思えない。それとも何?アニーは、あんな貴族のボンボンでお父さまの後が務まると、いえ、私を幸せに出来ると思っているの?」

最早、トルチェはアニーに掴みかかっていた。

「それでも、こればかりはなりません。どうしてもと言うなら、私はこれ以上お仕えすることは出来ません。今この場で、自害をお命じください。」

「そう、解ったわ。」

すっと、トルチェの周りの空気が下がった。トルチェはその表情を失った顔でアニーに言った。

「アニエス・フラーベル、私への不敬の罪により、今この場で自らの胸に剣を突き立てなさい。今までの感謝を表して、私の剣を貸してあげましょう。」

そう言うと、トルチェは肩にのっている水精霊リースに命じて水でできた剣を取り出した。

「ちょっと、トルチェ。本気でそれを言ってるの?アニーも何本気で死のうとしてるのさ。」

しかし僕の言葉は2人には届かなかった。アニーは受け取ったその剣をまさにその胸に突き立てようとした。

「ちぃ、サフィ!」

『わかってます、ご主人様!』

僕はサフィに命じて風により剣を吹き飛ばさせた。

「ダーリン、これは私たち主従の問題なの。邪魔しないで。」

「ゴミクズに同情されるほど、私は落ち潰れておりません。」

僕はカッとなってトルチェの頬を叩いた。女の子を叩くのはちょっと気が引けたけど、これは譲ることが出来ない。アニーの方はサフィに命じて変なことをしないように牽制してもらっている。

「トルチェ、君は今まで誰かの命を奪ったことはあるかい?」

トルチェは叩かれたことがよほどショックだったのか、呆然としている。僕はトルチェの頬に手を当て正面を向かせる。ちょうど、僕の両手でトルチェの顔を包み込むような格好になった。

「トルチェ、人の命を奪うってことはとても重いことなんだよ。アニーは本気で自分の命を賭けて主の不正を正そうとしたんだ。トルチェはその思いを汲み取ってあげなくちゃいけない。何より、ここでアニーに自害させたとあっては、トルチェの父上は何があろうともトルチェの思い通りにはさせないと思うよ。」

トルチェの目からは涙が溢れ出した。少し冷静になってきて自分のしたことがわかってきたのだろう。

「お嬢様のその成長を見られて私は満足です。しかしお嬢様にはたらいた不敬は誰が許そうとも私自身が許せません。願わくば、今後もお嬢様のお世話がしたかった。」

『駄目です!!』

後ろを振り向くと、アニーが取りすがるサフィを振り払って、隠し持っていたナイフを振り上げ、自らの胸に突き刺そうとしていた。

「いやー!アニー、やめて!!!」

トルチェの絶叫が響く。しかし、アニーは笑みを浮かべそのナイフを振り下ろした。直後、ドサッという音と共に何かが倒れ、辺りに血の海が広がった。

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