第41話:自立
アローメイドリバーの土手、満開の藤の下で広げられたライクハウスの牛丼。その安価なプラスチック容器から立ち上る湯気は、西三河の夕日に照らされ、まるで黄金のオーラを纏っているかのようだった。
パパに返す三万円の入った月給袋と手に入れたばかりの楽市楽座カードを握りしめ、美香子ちゃんの靴で地を踏みしめる。
そして…震える声で精一杯の提案をした。
「あの……えっと……みんなで、写真……とりたい……」
その言葉が発せられた瞬間、パパの動きは音速を超えた。
「…………撮るに決まっているだろうッ!!」
対岸から、ライト・バズーカを装着したカメラ部隊が現れる!!
「Clock! 最高の光量を確保しろ。我が息子の初任給による牛丼が、世界で最も神々しく写る角度を探り、我が一族の歴史に刻むのだッ!」
「承知いたしました、旦那様。ドローン部隊、上空30メートルで待機。藤の花びらの舞い散る速度を、坊ちゃまのシャッターチャンスに合わせて秒速5センチメートルに固定いたします」
―スチャッ。
「旦那様、流石の風格でございます……赤井殿、もう少し左へ。黄田殿、牛丼の蓋はまだ開けないでください、湯気がレンズを曇らせます。青山殿はそのまま……とくさん殿、その軍手は演出上『粋』ですので許可します。苔玉頭カーボンユニット、フレームアウトしております。座らないように」
「うおっ、なんかスゲーことになった! パパさん、気合入りすぎだって!」
「……やれやれ。だが、この異常なまでの演出……悪くない」
「あぁ~、いい匂い! 早く食べたいけど、写真はバッチリ撮ってね!」
熱血系の赤井が、ドローンの風圧に髪を乱しながら叫ぶ。クールな青山が、計算された角度でポーズを決める。そして黄田が、牛丼の容器を愛おしそうに抱きしめた。
「ボウズ…自撮り棒が震えてるが…スマホ、落とすんじゃねえぞ?」
とくさんが呆れ半分に呟き、その横でみどりがClockに詰め寄る。
「ちょっと! 私の写りも完璧にしなさいよ、電気羊! 光の祝福を留めるのよ!」
僕は、美香子ちゃんに貰ったこのビスポーク・シューズでしっかりと大地を踏み締め、顔を真っ赤にしながらも、仲間たちの真ん中でレンズを見つめた。
「マスター!!ボクのアームで支えるよ!!VRでの人馬一体、思い出して!!ブォォォォン!!」
「ビギー…ありがとう…あ、あの、みんな、並んで……」
「…はい、チーズ!!」
カシャッ!!
軽いシャッター音が響き渡る。その瞬間、ビギーが「おめでとう、マスター!ミッション攻略成功だよ!ブォォォォン!!」と喜びの排ガスで藤の花びらを空高く舞い上げた。
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宴が終わり、夜の帳が下りる頃。
僕は、自動運転するEV(※違法です)の窓から、遠ざかるアローサイドリバーの藤を見つめていた。
『本当に……終わったんだな。いや、始まったんだ。……俺は、もう吃るだけの引きこもりじゃない。……労働の重みを知り、牛丼の注文という名の死線を越え、……そして、仲間と一緒に笑えるようになったんだッ! 世界はこんなに広かったのかッ!』
足元の美しい革靴が、しっくりと馴染んでいる。イタリアの空の下にいるであろう彼女に、この「自立の輝き」を届けるために、震える指で今日の一枚をアップロードした。
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写真:豪華な東屋の前で、牛丼を掲げて笑う僕と、個性が爆発している騎士団、パパ、とくさん、みどり、そしてビギー、Clock。藤が奇跡的な密度で舞っている。
みんなと、お花見。
初めてのお給料で、一人でみんなの牛丼を買いました。
本当はすごく緊張したけど……おいしいって言ってもらえて、よかった。
パパ、来てくれてありがとう。みんな、一緒に食べてくれてありがとう。
一生、忘れられない味になりました。
この靴のおかげで、一歩踏み出す勇気が出たよ!!
#お花見 #初給料 #牛丼 #みんな大好き #ありがとう#西三河 #ちょっと恥ずかしいけど #最高の1日
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名無しさん:
え、何この映画のワンシーンみたいな写真!? 豪華すぎて草www
通りすがり:
妖精さん、本当にいい顔してる。おめでとう! こっちまで泣けてきた。
MIKA@修行中:
ちょっとはいい顔するようになったじゃん。せいぜい頑張りなさいよ。……バーカwww
匿名さん:
うわwwwMIKAがデレたwww
Anonymous:
マジかwww MIKAwww草www
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三河の夜空に、不器用なエンジン音が響き渡る。
僕の「自立」という名の冒険は、まだ始まったばかりだ。
だが、その足元には、もう迷いはない。
自分だけの足で、自分だけの靴で。ゆっくりだが着実に進んでいく。
「籠の鳥」は今、西三河の潮風に乗って、高く、高く羽ばたく。
おわり
気ままな初投稿で、お見苦しいところも多かったとは思いますが
これにて完走です。ご愛読本当にありがとうございました。
皆様の日常のほんの一助になれていたなら、ちょっとうれしいかも。




