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虹色の扉 番外編  作者: ひめみや
9/23

My Dearest One ~彼女との夕食~

しばらく、お互いについての会話をしていたのだが、空腹になって来たので、オリバーはパスタとサラダを作った。


彼女が来るので、一応冷蔵庫に材料を補充しておいたが、いつも自分が食べているものを作っただけであったのに、マキはオリバーの腕前に感嘆していた。


作るのは厭わないし、一人暮らしが長いので、家事も一通りなんでもこなせる。


夕食を共にしながら、おしゃべりは続いていて、彼女はよくしゃべったが、うるさいとは全く思わなかった。


話の流れから、彼女が日本で生まれ育ったということが判明した。


「すごいな。あなたには全く日本語の訛りがありませんね」


そう言って、オリバーはマキの取り皿のパスタとサラダが少なくなってきたのを見て、大皿からよそった。


サンクス、と、軽くオリバーに礼を言ってから本題に戻り、


「そうですか?それはありがとうございます。お褒めいただいて光栄です」


と、今度はイギリス英語で言った彼女。オリバーが今度は感嘆する方となった。


「前夫のイギリス英語に慣れてたし、多分、耳がいいのかも。アメリカ生活も十年以上になりますしね」


ワインのせいで顔がほんのり赤くなった彼女がそう言った。少なくなればオリバーが注ぎ足すので、そのままにして飲んでいる。


よく話を聞いてみれば、彼女の前夫が、オリバーの友人の親戚という繋がりらしい。



デザートにリンゴのクランブルを食べながら、もちろんマキはまた、クランブルに添えるカスタードまでもオリバーの手作りなのに感動していたのだが、ワインも進み、かなりくだけた話をするようになった。


「ほー。じゃあ、オリバーは、人嫌いってとこまではいかないけど、煩わしく思うこともあるからこんな田舎に引き籠っちゃったのねー」


「いえ、充分人嫌いです。特に、アカデミックな世界は、妬みや嫉みというのがものすごいので」


「ああ、なんかわかるような気がする・・・。日本には『出る杭は打たれる』ってことわざがあるの。


権威とか肩書きとか、狭い世界ではそんなものが重要視されて、集団になって毛色の違うものを排除したりね。そんなことする暇があるなら、きちんと自分の為すべきことをやんなさいって感じよね」


「わたしもそう思います」




楽しい夜となった。


一人でいるのを淋しいとはもう思わなくなったオリバーだったが、たまにはこうして誰かと他愛ないことを話しながら、グラスを傾けるのも良いな、と思えた。


ここにも友人がいるし、彼らと会うこともある。いつも一人でいるわけではない。


イギリスに帰れば、友人はもっといて、健在である両親や姉、その家族もいる。パートナーもいたことはあった。


が、今はここでの独り暮らしを気に入っている。静かで、何者にも邪魔をされない自由な暮らし。


(面白い女性だな)


オリバーは数杯のワインですっかりゴキゲンになった彼女を見て微笑んだ。

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