↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
亡者逃走中 in 現世  作者: 安達夷三郎
第三章、第三章、宿泊学習はトラブルだらけ
PR
12/20

十二話

すると、材料を前にして美穂ちゃんがひと言。


「ごめん。私、料理下手なんだよね」


どうやら美穂ちゃん、料理はあまりしたことないみたいで。


「大丈夫だよ。じゃあ、野菜は私が切るね」


そう言うと、申し訳なさそうに目の前で両手を合わせた。


全然気にしてないから大丈夫だよ。


「本当にごめん!代わりに火起こしでもなんでもやるから!」


そしたらそこで変成くんが飯盒をサッと差し出して。


「じゃあ、米炊くのお願いしても良い?」


「うん、お米ね。オッケー!」


そうして私と変成くんは野菜を切る係、美穂ちゃんはお米係、他の子達はカレーの係になった。


「じゃあ私、お米取りに行ってきまーす」


美穂ちゃんがそう言って先生のところへ行くのを見送った後は、二人で早速野菜を分担して切り始める。


私はとりあえず、ジャガイモの皮むきからすることに。


変成くんは玉ねぎ、私はジャガイモ。


それぞれ手元に集中しながら、聞こえてくるのは包丁のリズムだけ——


……と言いたいところだけど、現実はそう上手くいかない。


「えっと……先生、お米ってどれくらい持っていけばいいんですか?」


少し離れたところで、美穂ちゃんの声が聞こえてくる。

「六人分なら、このくらいだな」


「えっ、 こんなに炊けますか!?」


「炊くんだよ」


先生は呆れながらそう言った。


その後、少しお米が焦げたりなどのプチハプニングがあれど、美味しいおこげカレーが作れた。


✳✳✳


一日目の活動を終えた後はお風呂に入って、同じ部屋の女の子五人でのガールズトークが始まった。


「美穂ちゃんは好きな人いないの?」


「え〜……部活の先輩がちょっと気になってて……」


「きゃー!そうだんだ!」


みんな、好きな男子や気になる人の話で大盛り上がり。


そして、やっぱり話題に上がってきたのは、


「でもうちのクラスと言えば楓くんだよね〜」


変成くんだった。


変成くんのファンクラブは何故か『貴公子楓を見守る会』という名前が付き、上級生の子まで入会しているという程の人気っぷり。


「ねぇねぇ、真宵ちゃんは楓くんといつも一緒にいるけど、幼馴染なんだよね」


「え!?」


急に話を振られて、びっくりしてしまう。


「やっぱり、楓くんの小さい時の話とか聞きたい!」


「私も!」


「お願い!白崎さん!」


みんながぐいっと身を乗り出してくる。


部屋の空気が、一気に『暴露会』に変わってしまった。


「え、えっと……小さい頃の話?」


「そう!なんかないの?可愛いエピソードとか!」


「楓くんって完璧って感じだけど、昔はドジだったとか!」


「泣き虫だったとか!」


四方八方から質問の嵐。


私は完全に逃げ場を失った。


確かに変成くんとは幼い頃から一緒だったけど、あの人、幼少期から完成されてた気がするんだよね……。


というか、昔から落ち着いてて……むしろ私の方がいろいろ世話されてた。


でも、みんなのキラキラした期待の目がまぶしすぎて、「ごめん、特にない」なんて言いにくい。


「えっと……」


苦し紛れに、なんとか思い出を探る。


(何かあったはず……なんか……なんか……!)


宋としょーくんにグループのメッセージアプリで『変成くんの小さい頃の可愛いエピソードって何かある!?友達に聞かれてさ〜』と送ったら、即既読が付いた。


―――なになに、恋バナ〜?w


―――川のことでも言っとけ


(あ、あれ……)


しょーくんのメールでひとつだけ、思い出が引っかかった。


「……あの、小さい頃、川で遊んだ時に……」


「うんうん!」


「どうしたの!?」


みんなの期待が天井を突き抜けそうだ。


「……私が足を滑らせて転んで……水飲んじゃって……」


「え!?真宵ちゃんが!?」


「で、でね、そしたら……」


あまりに可愛くない自分のエピソードに、喉が詰まる。


「楓くんが、泣いた」


「「「ぇぇぇぇぇぇぇ!?」」」


部屋が揺れた。


「な、泣いたって……楓くんが!?」


「嘘でしょ!? あのクールな楓くんが!?」


「真宵ちゃんが溺れたと思って……?」


泣いたのが変成くんと宋、怒ったのがしょーくん。


(今思い返すと恥ずかしいかも......)


「やばっ……真宵ちゃん、絶対特別じゃん!」


「幼馴染に泣かれるヒロイン、本当に存在したんだ……」


「楓くん、真宵ちゃんのこと小さい頃から守ってたんだねぇ〜!」


みんながもう勝手に盛り上がってる。


美穂ちゃんも「少女漫画の世界じゃん……!」と目を輝かせていた。


ガールズトークがひと段落した後、何故か男子の部屋に行こう!ということになった。


「お邪魔しまーす」


「遊びに来たぞー」


女子五人で男子部屋を訪ねると、そこは大部屋の和室でクラスメイトの男子八人がゲームをしたり雑誌を読んだりしてくつろいでいた。


そこには変成くんもいて。


だけど、何とも言えない渋い表情で私のことをじっと見たかと思うと、すぐにパッと目を逸らす。


(あれ?何か不機嫌……?)


心当たりはこれといったものはないんだよね〜と頭を捻っていたらその時、部屋にいた男子の一人が私達の方に駆け寄ってきた。


「女子が来るとか最高!良かったらカードゲームしない?」


「良いね!やりたーい!」


「よし、じゃあみんな入ってよ」


他の子達に誘導されるがまま着いていくと、ちょうど変成くんを含めた四人でカードゲームをしている途中だった。


「次から女子も入れてやろうぜ〜」


「良いね良いね!」


「このゲーム定員七人だったよね。全員は無理じゃない?」


それを聞いて、思わず遠慮しようとしたら、サッと美穂ちゃんが手を上げた。


「じゃあ私と真宵は待っとくから、先に澪(みお)達先にどうぞ〜」


「え、良いの?」


「うん、メンバー交代しながらやろうよ」


すかさず提案してくれたので、先に澪ちゃん達がやることになり、私と美穂ちゃんは傍で待つことに。


男女七人がゲームでワイワイ盛り上がる傍で、美穂ちゃんとスマホで動画を見たりしながらまったり過ごす。


すると、みんなの楽しそうな会話が聞こえてくる。


「てかさ、楓くんって好きな人いないの?」


「あ、私も気になる!」


「いない」


変成くんが即答したのを聞いて、男子達がはやし立てる。


「信じらんないよなぁ〜!あんなモテるのに入学以来、全部の告白を断ってるらしいぜ」


「良いよな〜、一人くらい分けてくれよ〜」


「その中に付き合ってみたい子とかいなかったの?」


美穂ちゃんが尋ねると、楓くんは頷いた。


「いないね」


「そっかぁ……」


それにしても熱気すごいなぁ……。何だか暑くなっちゃったよ。


そう思った私は、美穂ちゃんにひと言告げ、一旦部屋を出て飲み物を買いに行くことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。