表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/36

29 チェインメイル

 パンチョさんの店で装備を作ってもらったり、商会でアイテムなどを買っていると、二日などすぐに経ってしまった。


 前回の狩りから三日目の朝。ボクは冒険者ギルドでみんなを待っていた。


「おい見ろよ! ありゃ『腰巾着』が待ちぼうけじゃねえか?」

「早々にパーティを追放されたんじゃねえか?」

「またかよ! 傑作だな!」

「それよりも聞いたかよ? 『タイタンの拳』がドラゴン討伐に乗り出したんだと!」

「ああ。ギルドからの依頼だよな? ったく、すげーなぁあいつら。どこまで登っていくんだ?」

「もしかしたら、伝説のドラゴンの素材が拝めるかもな」

「ドラゴンって生きる財宝だろ? 無駄な部分がないってくらい貴重な素材らしいな」

「そんなドラゴンの素材を独り占めか。億万長者ってレベルじゃねえぜ」


 冒険者の中は、『タイタンの拳』がドラゴンを討伐する話で持ち切りだった。噂では、イグナシオたちはもうドラゴン退治に出かけた後らしい。無事だといいけど……。


「お! ペペはえーな!」

「おはよう、ペペ」

「おっはよー! いい天気だね!」

「おはようございます、ペペさん」


 しばらく待っていると、アベルたちが冒険者ギルドにやってきた。みんな装備もしっかり身に着けて、準備万全だ。でも……。


「あの、何か……?」


 セシリア。彼女だけこれといって防具を着けていない。パーティの回復を一手に引き受ける彼女の無事はパーティの生命線だ。やっぱり備えた方がいい。


「およ? セシリアがどうかしたのー?」

「ちょっと軽装すぎるかなって。勝手をして申し訳ないけど、こんなものを用意してみたんだ……」


 ボクは時空間からあるものを取り出した。


 銀色に輝くチェインメイル。ボクがパンチョさんに頼んだ二つのチェインメイルの片割れだ。もう一つは僕自身が着ている。


「これって……?」

「セシリア用に調整してもらったチェインメイルだよ。よかったらでいいんだけど、受け取ってくれないかな?」

「おぉー! ピッカピカだー! セシリアよかったじゃん!」


 ニッコニコのダリアとは裏腹にセシリアの顔色は暗い。


 余計なお世話だったかな……。


「その、ペペさんが私のことを思って用意してくれたのはわかるのですが……。さすがにこんなに高価な物は受け取れません」


 そっかぁ。


 いや、諦めるな、ペペ。これはセシリアの、ひいてはパーティメンバーの命を左右するかもしれない問題なんだ。ここで自重するべきじゃない。むしろ、どうすればセシリアが受け取ってくれるか考えるべき!


「セシリア、キミはパーティの命綱だ。セシリアが怪我をしたら、誰もそれを治すことができない。だから、セシリアはたとえ最後のパーティメンバーになっても生きなくちゃいけないんだ。でも、今のセシリアの格好はとても不安だ。戦闘では何が起こるのかわからない。もしかしたら、モンスターにバックアタックをされる日もあるだろう。これはその時の備えだと思ってほしい」

「ですが……」


 セシリアの目が迷うように揺れている。もう一押しだ!


「たしかに、セシリアが思っているように、このチェインメイルだって決して安いものじゃない。それに、もうセシリア用にサイズを調整してもらったから売ることもできないんだ。だから、どうだろう? セシリア、このチェインメイルを買わない?」

「買う? ペペさんから、このチェインメイルをですか? ですが、私は手持ちのお金が……」

「お金はある時に払ってくれればいいよ。催促も利子もない」

「それでは、ペペさんの儲けがないではないですか」

「同じパーティメンバーからお金を巻き上げようとは思わないよ」


 そんなことをすれば、ボクはイグナシオたちと同じになってしまう。それだけは嫌だった。


「セシリア、もう準備してくれたんだし、貰っておこうよ。あたしはセシリアがちゃんとした装備をしてくれた方が嬉しいなー」

「そうだな。俺もそれがいいと思う。何が起こるかわかんねえからな」

「うんうん、そうだね」


 ダリアをはじめ、アベル、クレトもセシリアを後押しする。


「わかりました。買わせていただきます」

「ボクとしては、プレゼントでもいいんだけど?」

「いくら同じパーティのメンバーであろうと、そのあたりはしっかりしないといけませんから」

「そっか」


 それから、ようやく頷いてくれたセシリアは、チェインメイルを着るために冒険者ギルドの一室を借りに行った。ダリアも付いていくようだ。


「にしてもペペ、よくチェインメイルなんて買う金があったな? さすがに前の儲けじゃ買えないだろ?」

「ちょっと臨時収入があってね。ついでにポーションとかも買っておいたよ」


 アベルにそう答えると、クレトが大きくうんうんと頷いていた。


「痛みで魔法を発動できなくなっちゃう魔法使いも多いらしいからね。セシリアが怪我をした時はそのポーションを使おう」

「うん。ボクもそれを考えていたんだ」


 魔法の発動には、集中力が必要だ。冒険者の若手の中には、怪我をしていると、痛みで上手く集中ができず、魔法を発動できない人は多い。セシリアがそうだとは決まったわけじゃないけど、チェインメイルと同様に備えは必要だろう。

お読みいただき、ありがとうございます!

よろしければ評価、ブックマークして頂けると嬉しいです。

下の☆☆☆☆☆をポチッとするだけです。

☆1つでも構いません。

どうかあなたの評価を教えてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ