数年後
コトコトコト
鍋が蓋を揺らしている
芳しい香りが厨房に充満してる
やっぱ冬はオデンだよな
店を継いでから幾度目の冬なのだろうか
親父はまだ義母を見つけられないのだろうか
そんな事を考えながら
鍋の火力を調整する俺なのである
「店長さんおはようございます」
明るい娘の声が聞こえた
「おはよー」
艶やかな声が聞こえた
我が店の看板娘とマドンナである
二人のお陰で今日も満員御礼となるのであろう
そろそろ料理人でも増やすかな
そんな事を考えれる程の繁盛である
オデンの火を更に緩めて厨房から出る
年齢通りの笑顔になった
有美漢字は当て字である
元々ハッとする美人であった
タマコさんは色香が出てきて
商店街のマドンナの称号を不動のものにしている
俺の用意してる朝食は
相も変わらず猫飯と
俺と有美はパン食である
飲み物はホットミルクと珈琲の違いはあるけど…
そんなわけで今日も開店するのであった
「今日辺りスライムさん来るかなー?」
有美が楽しげに言う
初めて見た時は悲鳴をあげたくせに
苦笑混じりに思ってしまう
何を隠そう俺の初めての客は常連客だったのだ
大体2週に一度は来店されるのである
但し同じスライムかは謎なのだが…
注文は何時も「六甲のおいしい◯」であるから
きっと同じスライムなのだろう
タマコさんが注文ミスしてなければだが…
そんな事を考えてたら
最初のお客様が第二扉を開けて来店してきた
犬頭である
タマコさんの知り合いで俺をガイドした犬頭なのだが
実は有美の家庭教師でもある
有美の頭の出来が思ったよりも良かったから
俺とタマコさんでは教えるのが困難になり彼を頼ったのである
学者が本業の犬頭さんなのであった
ショートケーキとミルクティー
何時もと同じ注文である
店を継いでからわかったのだが
ファンタジーの住民は殆どが同じ注文をするのである
その為に当店を利用してるそうだ
他の料理を食べたい時は別の店に行くそうである
お客様の姿を見るだけで注文がわかるので大助かりではあるけどね
ああそだ
有美はまだ学生である
まだお仕事はさせてないのだが
すでにマスコット状態で
お客様を当店に呼び込んでくれている
そんな彼女だが
このまま従業員にするかは悩みだしてる最中なのである




