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詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています  作者: Ash
アライアス

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久しぶりの・・・

 お茶会出たくないな・・・。

 テンション下がりまくりでミス・アーネットの授業も右から左。

 今日のお茶会も昨日と同じなら下がるでしょう、テンションも。

 ロリコンとヤンデレに挟まれて、まだ季節的には寒くないはずなのに寒くてしょうがなくて、暖炉に火を入れて欲しいとまで思ってしまった。

 向かいを見れば、キャッキャウフフしているお姉様がいて、そこだけ春の陽気のようで――って、同じ部屋の中だし、日差しだって平等に降り注いでいるはずなのに、なんで気温がこうも違うの?!

 なんで?! どうして?! なんて、誰かに答えをもらいたい氷結地獄が待っている。

 なんで悪役令嬢を回避しようとして、その途中に吹雪の中でお茶会をしないといけないわけ?!

 ウォルトとの婚約を回避しようとしたらロリコンと婚約するし、オスカーと他人みたいな関係が嫌だったから仲良くなろうとしたらシスコン通り越してヤンデレになるし。

 思い通りになるとは思っていないけど、どうして、こんな斜め上の方向に行くんだろう。

 ロリコンと婚約って、ヒロインの邪魔しているよね?

 掻っ攫われて結婚する場合もあるロリコンと婚約だなんて、完全に悪役令嬢。それも本人が嫌がっていても逃げられない系。ストーカーと婚約して悪役に仕立て上げられるって、どう考えても婚約破棄じゃなくて悪さしないようにとの名目で監禁されるか、これ以上浮気は許さないと殺される未来が待っているとしか思えない。

 ストーカー怖い。婚約者がストーカーって更に詰んでる

 人気者の令嬢を悪役令嬢に仕立て上げて、それを使って攻略対象と仲を深めていく乙女ゲームだからって、これはないでしょ! ウォルトは兄代わりだったから、ウォルトとの婚約なんて可愛いものだ。


 でも、それは何年か先の話。学校に通わなくて、悪役令嬢にされる危険すらないかもしれないことを考えるより、今は間近に迫ったお茶会という問題がある。

 今日のお茶会、嫌だな~。

 きっと、ヤンデレとロリコンの戦いで風邪を引く。

 だからって、ヤンデレがいないとロリコンから助けてくれる人いないし(ロリコンを目にしたら私は蛇に睨まれた蛙状態だから自力では逃げ出せない)。

 オスカーの誕生日プレゼントを買いに行った帰りのように膝の上なんかに座らせられたら、死ぬ。

 死んでしまう。

 駄目だ。風邪を引くか、死ぬかの二択しかない。

 あ。でも、礼儀作法にうるさいイオン卿がいれば、ロリコンの膝の上は回避できる。

 回避できるけど・・・ヤンデレがいないと耐えられそうにない。にこやかに笑って応対なんかできない。

 駄目だ。

 ロリコンと婚約だけでも詰んでるのに、あと一時間もしないうちに始まるお茶会のことでも詰んでる。

 ・・・仮病使うか。

 仮病使えば、明日まで時間が延びる。昨日もそう思っていたけど、何の打開策も思いつかなかった。

 こんな時、才女と言われているアグネスだったら何か思いつくのに、ウォルトの婚約者で選ばれたリーンネットじゃ無理だ。

 どうする私。どうする?!

 ヤンデレが何とかしてくれる?

 そうだ。

 オスカーが学校から帰って来るまで待とう。

 ヤンデレなら何か考えがあるかもしれない。

 そうと決まったら、勉強勉強。

 ヤンデレがお茶会も婚約もなんとかしてくれた時に備えて、しっかり知識を身に付けておかなきゃ。不憫系悪役令嬢たちとのお茶会に出る為に準備しないとね。


 私は勉強の残り二十分になって前向きになった。


 が。


 ガチャと音がしたかと思うと、子ども部屋の扉が勢いよく開けられる。


「リーンネット、元気だったか!」


 扉の向こうにいたのは金髪碧眼の王子様然とした美しい少年――ウォルトだ。


「・・・ウォルト?」


 ウォルトの奇襲が久しぶりすぎて、そのテンションについていけない。

 そんな私とは対照的にミス・アーネットはいつものように授業にならないと判断して、苦笑しながら使った教材をまとめている。


「お前が攫われたショックで寝込んでるって、オスカーに会わせてもらえなかったから、心配だったんだ。無事で良かったよ」


 そういえば、ウォルトと会うのは攫われてから初めてだ。その後は寝込んで、お姉様が帰ってきて、お茶会(の訓練)の日々で、アイリーンやマリーンとも会っていない。

 アイリーンやマリーンとは会う時間がなくて会えなかったが、ウォルトの場合はヤンデレが邪魔していたか。

 ヤンデレは本当にどうしようもないな。

 ほとんど監禁だよ。


「そうなの? 心配してくれたんだ」

「当たり前だろ。俺を誰だと思っているんだ。お前の兄なんだから、心配するのも当たり前だろ」

「いや、お兄様はオスカーだけだよ」


 ほんの数週間前まで実の兄よりも幼馴染であるウォルトのほうが兄っぽいって思っていたけど、シスコン通り越してヤンデレになったオスカーのほうが私の兄だという本音がポロリと口から漏れる。


「俺はリーンネットのことを妹のように思っているのに冷たいじゃないか」


 そう思っているのは、ウォルトだけだって。


「同い歳のウォルトをお兄様だなんて思えないよ」

「兄だと思え。優しいこの兄はお前を救いにやって来たんだからな、リーンネット」

「?」


 救うって、どうやって?

 というか、何から救う気なんだろう?

 これから私はお茶会という名の地獄に行かないといけないのに、ウォルトは何から救いに来たというんだろう?


 私がウォルトの言いたいことがわからなくて困惑していると、彼は笑顔で言った。


「婚約者がお前にふさわしいかどうか確かめてやる」

「それ救うって言わない」


 ウォルトはウォルトだった。

 救うと言うなら、いっそのこと、ロリコンとの婚約を壊して欲しい。

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