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詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています  作者: Ash
アライアス

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姉の知人は美形ばかり

 私がベッドで静養させられている間、姉のリーンリアナと姪のローズマリーは毎日会いに来てくれた。傍にいるヤンデレに「リーンネットが疲れるから」とすぐに追い払われてたけど。

 疲れるのは、お前のせいだよ。とヤンデレに言いたい。


 ようやく、ベッドから解放されたら、姉や姪とのお茶会が私の日常に加えられた。

 その代わり、一族の棟に行くことが制限され、行く時は前もってジェニングスに伝えて一族の男性の迎えをちゃんと待つようにときつく言い聞かせられた。


 で、姉や姪とお茶会をするんだけど、これがすごく大変。お茶を用意するのは侍女の仕事だけど、お茶会で出すお茶の葉やお菓子などを決めなくちゃいけない。

 それに姉や姪だけだと思ったら、姉の知人も招かれることになって、毎回、席順を決めたり、招待状を書かされたりする。


 毎日、そんな手間をかけてお茶会をするんだけど、その最中も紅茶の勧め方や飲み方、お菓子の食べ方などの細かいことまで指導される。

 ついでに、ミス・アーネットが言葉遣いの授業を始めて、それもお茶会の時に使えないと指導される。


 かなり辛い。

 勉強が嫌だって思っていたのが、甘えだとしか思えないくらい辛い日々だった。


 リーンリアナはともかく、なんで私より幼いローズマリーまでそんなことができるのかわからない。

 ローズマリーができるんだからと、私も頑張るけど、あっぷあっぷ。


 ゲームの世界だからか、お茶会に呼ばれる姉の知人は美形ぞろい。美形じゃない人もいるけど、それはモブと呼ばれるくらいで、姉が呼ぶ知人を顔で選んでいるんじゃないかと思っている。

 そんな人たちの前で私は色々なことを注意されながら、間違ったことをしないように気を張り詰める苦痛の時間を過ごす。


 今日はまだローズマリーがいないから、私(10歳)以外はほぼ30歳前後。

 年齢的に辛い。

 平均年齢を私が下げまくっていても、30歳未満にできるかどうか。

 話を合わせてくれていても、辛い。


 姉とにこやかに談笑しているプラチナブロンドの男性とダークブロンドの男性が目に入って更に憂鬱になった。

 姉の知人は目の前のベッケンバウアー公爵・・をはじめ、同じ伯爵家出身だったり、職業的に地位が高い王宮での勤め人である近衛騎士や文官なのだ。


 姉の知人は顔がいいだけじゃなくて、地位もあるから余計に失敗できない。


 以前、お茶会に来てくれた姉の知人のモブ顔さんによると、貴族には二種類の違いがあって、我が家やウォルトの家のような伯爵家は国を支える重要な役目を担い、子爵や男爵と呼ばれる貴族はこういう家か王家に仕える立場らしい。だから、子爵や男爵は国の為に尽力した人物などに与えられることも多い。


 我がハルスタッド伯爵家が何の役目を果たしている家なのか気になる。

 何故なら、我がハルスタッド伯爵家には領地がないのだ。


 え? 私が知らないだけじゃないかって?

 これはウォルトから聞いた話だけど、普通なら伯爵以上の高位の貴族は秋に領地に戻って、税を徴収して、春から初夏にかけて都に戻って来て領地が近隣にはない貴族と交流を持つそうだ。

 そう言えば、ウォルトも一週間ぐらい姿を見せない時期があると思ったけど、それは領地に戻って周辺に領地を持つ子爵や男爵、土地の持ち主などと顔を合わせる必要があるから、らしい。

 元々顔を合わすことが少ない両親や兄がウォルトのように領地に行っている様子はないし、モブ顔さんに聞いてみたところ、ハルスタッド伯爵家には領地がないのが判明した。


 モブ顔さん曰く、伯爵以上の家で領地を持たないのは、臣籍に下った王族以外だと極めて珍しいことらしい。

 それもそのはず。

 伯爵家は災害や他国からの侵略などの有事の際に周辺の子爵家や男爵家を指揮することが求められる地域の要。平時においては地域の治安の責任者として軽犯罪の有罪無罪を決めたり、殺人や強盗などの重犯罪の捜査をする役目もあるらしい。

 だけど、ウォルトのお父さんのように都にいなければいけない職務を持つ場合は、代理人を決めて、代わりにしてもらったらいいとか。


 ちなみに伯爵家が実質、国を支える重要な役目を担っているということは、それ以上の爵位はどうかというと、侯爵は伯爵の中でも特に尽力をして、地域の要以外にも重用されることになった家(代々、宰相やってるウォルトの家もその資格はある)。公爵は王族が臣籍に下って王家の血筋を後世に伝える役目のある家、だそうだ。


 ここで、現実に戻ると。

 王家の血筋を後世に伝える家の男性といざ何かあったら陣頭指揮をとる家の男性が目の前にいる。


 立場的には伯爵家の子息でも跡継ぎじゃないイオン卿は私と同じ身分と見ていい(と、モブ顔さんが言ってた)。

 ただし、ベッケンバウアー公爵の側近なので、そちらもあわせて見たら、丁重に接しておくほうがいい人物。イオン卿の心象が公爵に伝わると考えてまず間違いない。

 私はベッケンバウアー公爵にどんな印象を持たれてもかまわないけど、公爵は姉の知人なのだ。姉の立場も考えて行動しておいたほうがいい。

 誰かの立場を考えて行動するなんて初めてだ。その上、マナーとか色々考えないといけないお茶会だから難しい。個人的に親しい人間しか呼ばないお茶会でも、正式なお茶会に出られる技術を身に付ける訓練の一環だからって、話す相手の身分も考えて行動しろって、無茶振りしすぎ。


 ・・・。

 言葉遣いもなっていない私が緊張するのも仕方ない。

 なんで、余計なことまで教えてくれたの、モブ顔さん。


 泣きたい気分で笑顔を作り、姉とベッケンバウアー公爵の遣り取りを見ているイオン卿に意識を向ける。


「姉と公爵・・・様は仲が良 ・・・よろしいの・・・ですね」


 言葉を何箇所か間違えたけど、そこはごり押しする。

 イオン卿は苦笑した。


「まあ、付き合いも長いのでそう見えるかもしれませんね」

「違うんですか?」


 なんでイオン卿が苦笑したのかわからないので尋ねる。

 基本的にイオン卿は物腰が柔らかで優しい。


「大人には色々とあります。レディ・リーンネットは気になさらなくていいですよ」


 こんなふうに言うことは厳しかったり、冷たいところはあるけど。


「そういうもの・・・でしょうか?」

「貴族の会話とはそういうものです。遠まわしな言い方なのはまだ手始め。言葉ではない目くばせや仕草だったり、前後に誰が話しかけたのかなど、交友関係を知った上で相手の言いたいこと、思っていること、何をするのかまで読まなければいけませんから」

「姉と公爵様のこともそうなのですか?」

「ええ。ですから、このことはお気になさらずとも結構です。今は親しい人物だけのお茶会ですしね」


 親しい人物の筈なのに、貴族の会話をして表面上は穏やかな姉とベッケンバウアー公爵。

 どこが親しい人物なんだろう?

 大人の考えることって、わからない・・・。


「それなのに、どうしてこんなに大変なんでしょうか、イオン卿?」

「お茶会はマナーと社交術を身に付ける訓練と実践ですからね。レディ・リーンネットは身内と行うお茶会もご経験がないと言うので、これでもくだけたお茶会なんですよ」

「これでくだけているんですか?」

「ええ」


 と言って、澄ました顔でイオン卿はお茶の入っているカップに口を付ける。

 イオン卿は言葉以外は優しいけど、時々怖い。


「・・・」


 お茶会怖い。


 だって、姉の知人を招いたこのお茶会は家族とのお茶会の次の段階である親しい人物とのお茶会のように見えて、親しい(?)人物とのお茶会+即席これであなたもお茶会のマナーと貴族の常識が身に付くスパルタ講座のようなものなのだ。

 招かれた姉の知人を講師に貴族の常識がこれでもかと話題に選ばれ、優雅で楽しい思いをしているのは私以外。解説好きなモブ顔さんたちがそれはもう、目をキラキラさせて、生き生きと話してくれる時間である。

 姉の知人たちから見たら、これは私の為に行っている貴族教育だそうで・・・・・・死にそう。

 本来なら女親や家庭教師(女性)がするべきことを独身の貴族男性から習っているのは、特別扱いされていると言ってもいい筈が異常としか思えない。

 それもこれも、姉の頼みで行われているとか・・・・・・それをする筈の母は何故関与してこない?

 ツッコミどころ満載である。


「このお茶会に慣れたら、次は同じような年頃の令嬢の参加するお茶会にしましょう。ご希望の令嬢はいますか?」


 勝手に次の段階のセッティングが始まってる!!

 なんで、姉の知人であるイオン卿が私のお茶会のセッティングしてんのと思うでしょう?


 それは母ではなく、何故か姉が私の貴族教育に名乗りを上げてきて、実際にその総指揮をとっているのが、ベッケンバウアー公爵の教育係だったイオン卿だから。


 次の段階のお茶会のセッティングを彼がしていてもおかしくはない。

 ・・・本当におかしくないのか、疑問が残るけど。

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