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詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています  作者: Ash
アライアス

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オスカー視点:リアナ姉上の里帰りの裏で

 リアナ姉上が戻ってきたことで、僕は父に事情を聞きに行くことにした。王宮にある離宮から戻って来たリアナ姉上はアルバート王太子殿下の側妃として、ローズマリー王女を産んでいて、その王女も連れて戻って来てしまっている。


 ハルスタッドの血を引く王女が国王の妃として他国に輸出しているのがこの国の特色であるにもかかわらず、そのように使う王女を連れ帰って来てしまっていたのは問題だ。

 その母体であり、嫁した王女への人質である母親には一時的な里帰りは許されていない。里帰りの行き来の過程で害を為されるのを防ぐのが理由だが、実際は違う。

 ハルスタッドの本家に生まれた娘はハルスタッド一族の囮として育ち、ハルスタッドの血を引く王女を産む為に王宮の離宮に移り、情だけでそこに留まっている。離宮に留まっていられるように家族に愛着を持たせないように育てられているから、実家に戻って来るというのはまず発生しない。

 それが起きたということは、王族と離縁するという意思表示なのだ。


 王族と離縁する場合でも、王女を連れて戻ることはない。王女は王家の物であって、ハルスタッドのものではないから。

 それにもかかわらず、王女を連れて戻って来れたというのなら、それは国王の許可が降りたということだ。

 リアナ姉上が離縁したというだけの話ではない。


 国王の心を読むと言える腹心のハルスタッド伯爵家の当主がリアナ姉上の離縁とその裏の事情を何も知らされていない筈がない。それに離宮からリアナ姉上が戻るには、馬車やら持ち物の運搬などで父の協力が必要だから、詳しいことを知らない筈がない。


 リアナ姉上の帰宅で一時的に館に戻った父の後を追って書斎に入る。書斎には館にいるハルスタッド一族でまとめ役をしている男たちが既に父の帰宅を聞いて父の指示を仰ごうと待っていた。

 僕は父が彼らに指示を出す前に声をかける。


「父上。リアナ姉上が王女殿下を連れて戻られました」


 父は表情一つ変わらない。やはり、リアナ姉上が戻ってきたのには、父が手を貸している。


「ああ、オスカー。リアナたちとは、もう顔を合わせたようだな」

「よろしいのですか? 王女殿下をこの館に連れて来るなどして」


 他国の妃になる運命である王女まで連れ帰ることを父は許したのだろうか?

 許したとしたら、何故?


「ネットに貴族の嗜みをおぼえさせなければいけないからな」


 父の答えは思いもよらないものだった。

 あの子の貴族教育がリアナ姉上や王女がハルスタッド家に滞在の理由なのか?!

 だが、あの子は貴族教育など必要としない筈。

 父がこの館から出さないと約束してくれたのだ。それと引き換えに僕はあの子が孤独になるのを受け入れて、近寄らないようにした。

 あの子が寂しい思いをしているのを見ているしかなかったのに。


「あの子に貴族の嗜みを? 何故ですか? あの子はこの館から出さないと決めたではありませんか?」

「それはお前がよく知っている筈だ。お前が望んだように、ウルスタッドの息子と一時的に婚約させる話もこれでなくなった」

「・・・」


 囮であるあの子に近付いてはいけないと言われていた。それを連れて外に出たから、か。

 これは罰だ。

 あの子に近付いた僕への罰。


 ハルスタッドの本家に生まれた娘は王族に嫁いで王宮の離宮で暮らして王女を産む。

 それは本家に生まれた時点で定められていたことだが、状況によってはあの子のように王族に嫁ぐ必要のない娘も出てくる。王族に嫁がない場合は、王家に対する忠誠の高い家が選ばれる。

 宰相を輩出することの多いウォルトのウルスタッド伯爵家。あのロリコンのロクス侯爵家も内政では地味に宰相の片腕を務めている家だ。


 王族にあの子は不要だったから、館に残すか、貴族に嫁がせるかどちらかだった。

 僕は館に残すほうを父に頼んだ。

 館に残すにしても、囮に使うのは変えられない。僕が心配して近付いては囮の役目が果たせないからと、我々の力が効かない体質であるウォルトが内々の婚約者として選ばれた。

 婚約者ではあっても、ウォルトはこの家で暮らしていない。

 一緒に暮らしている家族はあの子に関心がないから、婚約者がいても一緒に暮らしていないから、囮は囮として役目を果たせる。


 あの子に家族が無関心なのは心を壊すのが目的じゃない。あの子が他者に依存しやすくして、囮にする為だ。

 ウォルトも自分が婚約者だとは知らされていないだろうが、ウォルトのおかげで、歳の近い姉妹のいないあの子は救われている筈だ。


 あの子が僕と仲良くなりたいと危険を冒したことに有頂天になるんじゃなかった。

 調子に乗った僕はあの子を連れて出かけてしまった。

 ロリコンだけでも厄介なのに、オルコット殿下にもあの子を見せてしまった。

 おかげで、あの子は攫われて・・・・・・この館に留まれなくなった。


 つくづく自分が情けない。


「今回のことでネットは王子に嫁がせることになった。第二王子とは歳が離れているから、第三王子のオルコット殿下だろう。攫われて傷物扱いされている伯爵令嬢を王子が望んで妃に迎える。正妃にはできなくとも、それで王家の寛容さは充分知らされることだろう」

「・・・」


 王家にはもうハルスタッドの娘はいらない筈なのに、イメージを良くする為にあの子を嫁がせろというのか?

 最悪だ。

 囮として使われて14歳になったら、一族の棟で暮らせるようにと父に根回しをしておいたのに。

 あの子を喜ばせたいからと、連れ出すんじゃなかった。


「オルコット殿下もネットのことを気にしていたようだし、ネットには良い話だ。事件の前から、打診もあったからな」

「・・・」


 だから、リアナ姉上が戻って来ることが許されたのか。リアナ姉上の代わりにあの子を王族に嫁がせるから。

 騒ぎを起こすリアナ姉上とあの子を入れ替えるつもりなんだろうか?


 苛立ちのあまり舌打ちしないようにするのが大変だった。


 菓子屋でオルコット殿下はしっかり見聞きして、あの子を調べていたか・・・。

 厄介なことになった。

 本当に厄介なことになった。

 ロリコンだけならなんとかできたのに、オルコット殿下にまで興味を持たれ、王家の威信が高くないからと誘拐事件を利用されることになるなんて・・・。


 なんとかしなければ。

 なんとか。

 王族に嫁いで離宮に行けば、あの子と二度と会えなくなる。

 リアナ姉上がやっていたように門越しに話をするしかなくなる。

 そうなったら、遠目でも、一目でもあの子が見られなくなる。

 リアナ姉上のように?

 リアナ姉上。そうだ。

 リアナ姉上のようなことをさせない為だ。

 その為に貴族らしくない行動をしないようにネットを躾けようと、リアナ姉上と王女が滞在することが許されたんだ。


 あの子を王族に嫁がせない為には・・・・・・どうしたらいい?

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