↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています  作者: Ash
ウォルト

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/46

【web小話】彼女と私(アライアス・ロクス)

『かげろう狂詩曲~蝶は檻の中~』の公式HPに掲載されたリーンネットとシルヴィアの偽者が学校を入学した前後の話です。

 最初、ハルスタッド一族が入学してくるという話に私はあまり興味を持たなかった。

 彼らは騎士科の教師以上の技術を身に付けて入学してくる。その人気は容姿の整った王族や高位貴族の令息以上の人気を持つ。男女問わずに。

 だが、私が興味を持つ謂れはない。

 彼らの誰かしかが必ず学校に在学しているのだから。



 私が興味を持っているのは彼女だけ。

 ハルスタッドの館の前を通りかかった時に偶然見かけた彼女。


 それまでも彼女を見かけたことはあったかもしれないが、館の窓から寂しそうに外を眺めているのを見かけるまでは気にも留めていなかった。

 黒い巻き毛をした物憂げな表情の少女は出ることを許されていない外の世界に憧れているのだろう。ハルスタッド一族の女性はここと王宮の一角、男子禁制の場所にしかおらず、彼女らの姿を見ることを許されている場所は限られている。そのことから考えても、彼女が外に憧れを抱いてもおかしくない。

 注意して彼女を観察するようになってわかったことだが、彼女はいつも侍女か家庭教師に声をかけられるまで外を眺めていた。


 そんな彼女が館の外に出ることも、次第に判明した。

 今までは気にも留めていなかったハルスタッドの館の前庭で遊ぶ子どもたちが彼女だったのだ。もう一人はこの国で一般的な金髪の男の子ども。

 門の中とはいえ、二人の傍には護衛の姿が見える。

 彼女ももう一人の子どもも護衛の存在を気にも留めず、駆けまわったり、何かを一緒に見つけて笑い合っている。

 彼女は重たげな目元を緩め、頬を紅潮させ、赤い唇をほころばせて笑う。その口からは子ども特有で甲高いのにずっと聞いていたいような声が漏れている。

 彼女の声は想像したこともなかった。遠くから見ているだけの存在だったので、声など想像できなかった。

 想像したところで、実際に耳にできるとは思わなかった声。



 私は許せなかった。

 彼女と共に遊ぶ子どもを。


 私は許せなかった。

 彼女を傍で見られる護衛を。


 彼女の声を聞けるような傍にいられる他の男共を。

 彼女に笑顔を向けられているあの子どもを。



 やがて、あの子どもが学校に入ってきた。


 ウォルト・ウルスタッド

 代々、宰相を輩出するウルスタッド伯爵家の嫡男。王族以外でハルスタッド一族を娶ることが許されている限られた家の跡取り。それは私の家も同じだが、あの子どもは彼女と遊ぶことを許されていた。

 それは代々の宰相とハルスタッド当主の仲が良いからだ。このことは誰もが知っている。

 そして、今のハルスタッド当主の3人の娘は既に王族に嫁した。宰相家の嫡男と歳の近い彼女が誰に嫁ぐかはあの二人が幼馴染という関係からして疑いようもない。


 彼女が名前を呼んでいた気もしたが、その時は無視していた。彼女が呼ぶ名は私であって、あの子どもの名ではないと思ったから。


 なんて忌々しい。


 どうにか、私の評価を落とさないように排除できればと願わずにはいられない。

 私の評価が下がってしまえば、いずれ爵位を受け継ぐ身であっても、彼女を得る機会がなくなってしまう。それでは元も子もない。

 機会を狙っていたが、ウォルト・ウルスタッドは人望の厚い人物だった。何某かの失敗も笑い飛ばしてしまうか、仲間が支えてしまって、私の計画はうまくいかない。


 なんて忌々しい。



 そして、今度のハルスタッド一族の入学話が来た。

 今、私がしなければならないのはウォルト・ウルスタッドの大失態を作り出すこと。彼女と結婚できないような身にすること。それだけだ。


 そう考えていた矢先に追加情報が来る。

 今度、入学してくるハルスタッド一族は学校始まって以来、初のハルスタッド一族の女性。

 この学校の女生徒の入学年齢は16歳以上と決まっている。二年前にウォルト・ウルスタッドが入学してきたのだから、同じ年頃の彼女かもしれない。

 私はわずかに希望を抱いた。


 入学してくるハルスタッド一族の女性の名はリーンネット・ハルスタッド。

 これは彼女の名前なのか?

 それとも別の人物の名前なのか?

 彼女であれば同じ学校の敷地内で過ごせると私は喜んだ。ことによってはあの笑顔を傍で、もしかすればそれを私に向けてくれるかもしれない。

 別の人物だとしても、彼女のことを聞き出せるかもしれない。それどころか、彼女との橋渡しをしてくれるのではないかと思った。



 そして入学してきたのは別の人物ではなくて彼女だった。

 私は自分の幸運に歓喜した。

 しかし、考え違いをしていたとわかったのは、入学式が終わってから。

 彼女はハルスタッド一族。そして、私とあのウォルト・ウルスタッド以外はハルスタッド一族の女性を見たこともないということから、多くの者が彼女の美貌に目を止め、近寄ろうとし、ウォルト・ウルスタッドの名がそれを追い払う。


 ウォルト・ウルスタッドの名が何故、彼女に群がる者を追い払うのか?

 それはウォルト・ウルスタッドが彼女と婚約しているからだ。


 ウォルト・ウルスタッドめ!!



 ウォルト・ウルスタッドには腹が立つが、彼女がこうして学校に在籍していることが嬉しい。


「ミス・リーンネット」


 伯爵令嬢である彼女には生まれながらレディの敬称を使わなければならないが、家より個人の教育に重きを置く学校の規則通り、在籍している女学生の敬称であるミスを付けて彼女を呼び止める。

 これは男子学生も同様で、あのウォルト・ウルスタッドにもミスターでよい。学校では本人がそれに値しなくても、最低限の礼儀だけは守ることが求められている。

 本来、貴族同士では次男以降でない限り、ファーストネームを呼ばれる習慣はない。爵位名はそれを襲爵している本人、家名はその長男と決まっているからだ。次男以降はサー・何某やらミスター・何某とファーストネームで呼ばれる。だが、先程の敬称の規則は教師にも適応されているので、私の場合は「アライアス先生」となる。

 彼女は意図せず私の名を呼ぶことになるこの制度は素晴らしい。


「なんでしょうか、アライアス先生」


 彼女は私が声をかけても何ら警戒せずに素直に返事を返してくれる。彼女のことを知ろうとして得たハルスタッド一族の情報からするとあまりに不用心だ。

 それでも、こうして彼女がウォルト・ウルスタッドに準じた態度で接してくれるのも、私を教師として信頼しているからだろう。

 あのウォルト・ウルスタッドのことを完全に信頼し、慕っているのは悔しいが、私がただの教師の一人として見られているのは疑いようもない事実。

 彼女にとって、私はこの学校で顔を合わせたばかりの存在にすぎない。


「配布物を運ぶのを手伝ってもらいたいのだが、忙しいだろうか?」

「大丈夫ですわ。喜んでお手伝いいたします」


 淡い笑顔でそう頷いてくれる彼女に付け込まずにいられない私がいる。

ゲームでは、館の敷地内から出て、外の世界である学校に通えるようになったリーンネットは学校生活を目いっぱい楽しんでいます。

それをストーカー歴○年で熟成した歪みを持つアライアスは自分の都合が良いように解釈しています。


『おはよう、オスカー!』で”ロリコンはウォルトとは逆に手伝いを必要としている”とあるのは、リーンネットに手伝わそうとしているからです。それをゲームではシルヴィアの偽者が声をかけて率先して手伝っていました。


ゲームのリーンネットはシルヴィアの偽者のおかげで、アライアスの魔の手から逃れて兄の襲撃事件が起きるまでは楽しい学校生活が送れました。

さて、本編のアライアスはゲーム同様、既にストーカーになっているのでしょうか?

それとも、あれが初対面だったのでしょうか?


いくつもの伏線を回収しないまま、ウォルトの章はこれで終わります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。