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呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第四章~揺れる大陸~
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暗い森の戦い、その4~集結する魔術士たち④~

「ティタニア、浮かない顔だな?」

「・・・そうですね。この任務自体、やや腑に落ちないというのもありますが」

「それは俺も理解している。だが他にも何かあるのか」

「ドゥームを囮にするというのは実に適任だと思います。彼の修業に付き合う中、実は何度か本気で打ち込んだのですが」

「効果がなかったのか」

「ええ、何事もなかったのかのように起きてきました。私が本気で攻撃していることには気付いていなかったかもしれません。ですがあの打たれ強さは本物です。ドゥームをどうやれば消滅させられるのか、皆目見当もつきませんから」

「ほう」


 ライフレスが興味深そうにティタニアを見た。だがライフレスの興味はティタニアの疑問とは少し外れていた。


「ドゥームを消滅させようと考えたのか」

「ドゥームに限らず、貴方も含めて全員一度は考えましたよ。なぜなら、私たちは全員がまごうことなき悪だ。いつまでも生きていてよいものではないでしょう」

「自分も含めてか?」

「その通りです。ただ、私にはどうしても死ねない理由がある。私は自分の目的が達成されれば、いつ死んでもいいのです」

「儚い言葉だが、伝説の剣帝の目的とは気になるところだな」

「私以外の誰かにとっては、実に他愛のないことです。いずれ話す機会もあるでしょうが、それはまたそのうちに。それよりも今はドゥームだ。

 彼は絶対に殺した方がよいと思います。彼の能力は問題ではない。彼の存在はいずれ我々だけでなく、この世の生命全てにとって危険になるでしょう」

「奇遇だな。俺も同じことを考えたことがある。それにユグドラシルか。奴も同じようなことを言っていた」

「実力ではない。彼に接している者にはそう感じさせる何かがあるのです。杞憂ならよいのですが、三者が同じような意見を抱くのなら間違いはないのでしょう。できることなら、この任務の間にでも消えていただきたい」

「そこまで考えるのならいっそ、今消してしまえばいいではないか」


 ライフレスが物騒な提案をする。だがティタニアは首を振った。


「いえ、そこまでは。仮にも仲間ですから」

「律儀なことだ、苦労するな」

「・・・それ以上に、今回戦うであろうカレヴァンとかいう敵の正体が気にかかります。敵に相対せぬうちから仲間割れもないでしょうから」


 ティタニアは慎重に言い残すと、ドゥームの様子を再度うかがう。冗談めかしてドゥームはそろそろと森の方に向かっていたが、森が深くなったところにいざ足を踏み入れたところ、その表情が一気に引き締まった。森の中から明確な殺意が飛んできたからである。姿こそ見せないが、明らかにドゥームを攻撃しようという意志が感じられる。


「僕に喧嘩売ろうってのかよ。上等だ!」


 ドゥームは迎撃しようと構えたが、森の中から飛来したものを見てすぐにその気をなくした。森から飛んできたのは、無数の枝や木の葉。ただし、それらは森を切り裂きながら飛んでくる、必殺の一撃。そして視界を埋め尽くすほどの一群は、撃ち落とすには数が多すぎた。

 ドゥームは出しかけた悪霊を束ねて、球の中に丸まるように自らを守った。無数の攻撃がドゥームの悪霊に弾かれ、ドゥームは守勢一方ながらも余裕を持ってやり過ごそうとした。


「ふんっ、僕の守りを抜けるものなら抜いて・・・ん?」


 ドゥームは中に通じてくる衝撃がなくなったことに気が付いた。とっさにこの守りの姿勢を取ったが、同時に外の様子を伺うこともできないのである。外で何が起こっているかはわかりようもない。

 少しの浮遊感と閉塞感。ドゥームは外の様子が変わったことを悟ると、守りに回していた悪霊を解いた。そして外の様子を確認したのである。


「ちっ、そういうことか!」


 ドゥームを囲っていたのは、無数の枝。網のように張り巡らされた枝が、ドゥームをどこかに連れ去ろうとするところだったのだ。球体がなくなったことで枝はドゥーム本人をつかみ取ろうと一斉に襲い掛かったが、ドゥームは体を靄に変形させてするりと逃げた。


「最初からこうしておけばよかったよ。どのみち半実体しかもたない僕にとって、普通の攻撃なんて効かないんだから」


 そうドゥームが言い終わるか終らないか。ドゥーム目がけて槍のように伸びてきた枝が、ドゥームの体を刺し貫いていた。何ともないことをドゥームは主張しようとするが、その体の異変に気付く。


「・・・あれ?」


 ドゥームの口から少し血が流れた。ミリアザールの攻撃すらほとんど受け流すことに成功したドゥーム。今は油断していたとはいえ、確実に痛手を負っている。

 ドゥームが目の前に迫りくる槍のような木の攻撃の群れを見ると、初めて彼はこの森の異常性を恐れた。


「オシリア!」


 オシリアがドゥームに襲いくる木々の攻撃を念動力でまとめて叩き潰すと、ドゥームは自分を貫く枝を破壊してその場を離脱した。そして、深くなっている森から少し距離を取り、ライフレスとティタニアの元まで撤退したのだ。



続く

次回投稿は、9/12(金)10:00です。

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