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ビューティー  作者: 宇目 観月(うめ みづき)
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ある日、伯母さんの衣装室を整理してい

ると、彼女のお気に入りだった籐椅子の

上に、分厚いアルバムが置いてあるのに

気づいた。


めくってみると、それは僕が生まれてか

ら社会人になるまでのアルバムだった。


僕が生まれた頃の写真や七五三の時の

写真、僕が学生時代の入学式や卒業式

の写真、成人式の写真、社会人になっ

た頃の写真なんかが、たくさん貼って

あった。


伯母さんは丁寧な文字で、一枚一枚に

タイトルを付けてた。


そう言えば伯母さんは、僕が小さい頃から

何かにつけて静岡まで駆けつけてくれたも

のだ。


一緒にアルバムをめくりながら、紗英が

こう言った。


「伯母さんは、いつもこの籐椅子に座って

ビューティーと一緒にこのアルバムを見て

たんだわ。だからあんなにビューティーは

この部屋に拘ってたのよ。伯母さんは啓太

のこと、実の息子の様に思ってたのね」


アルバムの最後のページには、こう書いて

あった。


《私のビューティフル・メモリーズ》


在りし日の伯母さんとビューティーの姿が

目に浮かんで来て、僕は泣いた。



※※※※※※



三年後、僕は紗英と結婚した。


僕等は脱サラし、小さな喫茶店を始めた。

クラシックしか流さない上品なカフェ。


伯母さんの屋敷の一角を増築し、店舗を

構えた。


美味しい珈琲に軽食とスイーツ。珈琲豆を

はじめ、静岡の父が経営する茶農園の玉露

や抹茶なども販売してる。


住宅街なので最初は赤字覚悟で営業を始め

たが、意外に繁盛してる。客層を絞ったの

が良かったのかも知れない。


最近はネットでも珈琲と緑茶の販売を開始

した。



ある日の午後、紗英がこう言った。


「ねえねえ啓太、また犬飼おうよ」


「えっ、今何て言った?」


僕はカウンターの中で豆を挽きながら、

驚いて聞き返した。


彼女は赤い三角巾に緑のエプロンをつけ、

物憂げにカウンターに頬杖をついている。

暇な時間帯だった。


三十歳になっても、童顔の紗英は高校生く

らいに見える。


この店が繁盛しているのも、彼女の明るく

魅力的なキャラに負うところが大きい。



「私、ビューティーが死んで色々考えたん

だけどさ…ペットって元々人間より寿命が

短いでしょ?」


「…」


「ビューティーがあのまま何事もなく健康

に過ごしていたとしても、いずれは私たち

よりも先に亡くなったと思わない?」


「そりゃあ、そうかも知れないけど…」


「啓太がさあ、ペットを亡くす悲しさを、

二度と味わいたくない気持ちは、私にもよ

く分かるよ。でもお…私最近こう思う様に

したの」


「はあ?」


僕は彼女が何を言おうとしてるのか、よく

分からなかった。


「ペットも人間も、同じ限りある命よね?

だったら、共に生きてる間だけ、一緒に

楽しく暮らした方が素敵だと思わない?」



僕の心に、ようやく紗英の言葉の意味が沁

み込んで来た。


すると突然、僕の中でビューティーと共に

暮らした日々がキラキラと輝き始めた。



僕は庭に面した大きなガラス窓から、緑の

芝生を眺めた。


花壇の隣りに、ビューティーの小さな墓碑

が見える。


ビューティーが嬉しそうに吠えた様な気が

した。


僕は一度大きく深呼吸するとこう言った。



「じゃあ今度は…どんな犬を飼う?」


「もう、フレンチ・ブルドッグに決まってる

でしょ!」


そう言って、紗英は嬉しそうに笑った。




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