休息と通報
MPK―――トレインの被害に遭いながら何とか帰還した俺達は、一旦激しい戦いで傷んだ心身を癒す為に街の広場で休憩をしていた。
すると、俺が座っていたベンチの隣に座っている白髪剣士、白桃が謎の質問を投げかけてきた。
「……」
「……えーっとカガミ…」
「…どうかしたか?」
「だいじょぶそ?」
「???」
「何というか……表情が今まで以上に疲労感マシマシだね……」
「……確かに、こんなゆったりとした時間、何十年ぶりだろうか……」
「……?」
そう返すと、白桃がポカーンとしだした。
……白桃の方こそ大丈夫なのだろうか。魔法使いタイプの俺と違い、白桃は前線に立ち敵と直接相対する戦士タイプだ。
その分、俺以上に15分間での疲れは激しいだろうからな。
そして、俺は今感じている事を伝える。
「なあ白桃」
「何ぃー?」
「なんか俺たち、やけに注目されてないか?」
「まあ、確かに。視線をバッチリ感じるねぇー。」
間延びした声で、白桃はそう返した。
実際、こちらに関心を持つ様な視線を複数感じるのは確かだ。
ちょいちょいコソコソ話の様な行動も見られるが、どうせ大した事は言っていないだろう。
まあ、直接ちょっかいを掛けてこなければ問題は無い。そう、思ってしまったのが悪かったのか何なのか、俺たちの前―――というかバッチリ俺たちに向かって声を荒げる男が現れた。
「おい!お前らぁ!お前らチーターだろ!?」
は?チーター???何言ってんだこいつ?
「―――俺ら、しっかりと人間なんだが?」
「ぷっ…ふふふ…か、カガミ……」
「え?なんか変なこと言ったか俺?」
俺は別にサバンナに生息していて時速110キロ位のスピードで走れる地上最速の肉食目ネコ科の動物じゃないんだが……?
白桃が肩を揺らして小さく笑うと、男がみるみると赤面していった。だが、それは羞恥による赤面ではなく、怒りによる変化だった様で―――
「お、おおおおお前ぇー!俺様をおちょくってんのか!?通報だ!通報してやる!良いのか?」
何か追い詰められた時の権力者みたいな事を言っているな……
とはいえ、別に俺たちは通報される様な事はしていない筈なので、正直通報されても痛くも痒くも無い。
「まあ、通報したいのならご勝手に……」
「そもそも、私たち何もしてないしね……」
白桃が少し困ったように苦笑する。
すると、パパっと通報されてパパっと無罪放免―――という感じになると思ったんだが、何故か男が粘ってきた。
「本当に良いのか?通報してしまうぞ!」
「いや、通報するならするで、さっさとしてくれよ……」
「そ、そうだ!お前らがどうしても許して欲しいというのなら、お前らの持ってるお金とアイテム全部くれよ!それで許してやる!」
……な、何だこいつ……話が通じねぇ……俺の上司かよ……
というか結局はそれが目的なのか……
そして男は、更にもう一つの選択肢を提示する。
「そ、それかそこの白髪っ子!俺の所に来い!こんな冴えないおっさんとこに居ても腐るだけだぞ!ほら、俺なら可愛がってあげられるぞ!」
その男の言葉が限度を超えたのか、白桃が声を上げる。
「今の、迷惑行為に接触気味だから通報しちゃうよ?」
「なっ……そ、そんな訳ない!俺はお前の為に―――」
白桃がスパパ!と素早い動作でウィンドウを操作し、空中に指を投下した瞬間、男が半透明になり、男から発する音が全て無くなった―――というより身体を動かせなくなったようだ。
『―――通報を確認。過去行動データを参照、統合し、一時的に現状の加害者、被害者を決定しました』
『現在、加害者側の罪科を算出中―――完了』
『一時的なアカウントの凍結を行います』
『もし、この結論を訂正したい場合は、FAO公式サイト、『アカウント関連窓口』にてお願いします―――』
そんな合成音声の言葉が聞こえた後、その文言が書かれたウィンドウが出てきたと同時に半透明だった男がポリゴンに包まれ、完全に消えていった。




