Person 2
※この小説には同じ漢字で違う読みの男女が出てきます。読み間違えにご注意ください。(一応、全てにおいてルビをふってあります)
カラン コロン・・・
「いらっしゃいませ。相沢 澪様。こちらへどうぞ。あなたのお好きなものを既にお作りしております。」
私がその店に入ると、私と同じ年ぐらいのマスターがそう言った。
「な、なんで私の名前知ってるんですか・・・・?」
不思議に思ってそう聞くと、
「それは秘密です。 あ、こちらをどうぞ。ヨーグルトシェイクです。」
「あ、ありがとうございます。」
私は本当に好きな飲み物が出てきてビビったが、そのヨーグルトシェイクはとてもおいしかった。
チリン・・・・
ふとそんな音が聞こえた気がした。
「あ、故人さまがお待ちですよ。」
「え・・・・?」
私がそう聞くとマスターはこう言った。
「この喫茶店は浮世と天界をつないでいまして、故人様と生き人が強く引き合った時にしか、はいれないようになっ
ているんですよ。」
「・・・私、だれと・・・?」
「では、行ってらっしゃいませ。」
そうマスターが言うと私は何もなかったところにできていた扉のなかに吸い込まれていった。
* * *
「 澪、 」
「あなたはミオ・・・?」
「久しぶり。澪。君のことをここでずっと待っていたんだ。」
そうだ。彼は私のイマジナリーフレンド。現実にいるはずのない友達のはず。なのになんでここにいるの・・? もう二度と会えるはずなんて無いと思っていたのに。
「え、ミオは、もともとは人間だったの・・・?」
「僕はっ・・・、ごっ、ごめん。自分の口からは言えないよ。」
「・・・・そっか。言えないこと聞いてごめん。」
私は少しがっかりした。気づくと私たちの机の上には二つのヨーグルトシェイクが置いてあった。それを手に取って飲んでいると
「そういえば、澪は来月から大学生だよな? 受験どうだった?」
「ちゃんと頑張ったかいがあって、第一志望のとこに受かったよ。」
「そっかぁ。よかったなぁ・・。」
そんな他愛もない話をしているとまたどこからか ピピピピピピピピピピピ・・・ という音が聞こえてきた。
すると突然ミオが話をさえぎって言った。
「あ、もう時間か。じゃあね、またいつか、」
「え、ミオ?」
そしてまた突然私は壁の中に吸い込まれていった。
「澪、 ごめんなぁ・・。 兄ちゃん、生きていられなくって。 ・・・・ほんとは澪と一緒にいきていたかったよ・・。」
* * *
「ただいまぁー。」
やっぱり今年も誰もいない。毎年毎年この日は必ず親は家に帰ってこない。
あ、なんか置いてある。
“澪、おかえりなさい。今日は夜みんなで外食だから服を必
ず着替えておきなさい。大事な話をするからね。十九時頃に
迎えに行くからすぐ行けるようにしとくのよ。
お母さんより“
え、なんで今年はこんな置手紙があるんだろう・・?
* * *
「澪~。」
「ママ、」
「行くわよ。早く車のって。」
「うん。」
「ねぇ、ママ。」
「なに?」
「今日って何の日?」
「・・・・・・澪の命日。」
「ミオ? え、な、なんでママ、ミオのこと知ってるの・・?」
「あとで話すから。」
そうママは強く言ったが、心なしか泣いているようにきこえた。・・ほんとミオって何者なんだろう。
* * *
「澪、お母さん、こっちだぞ。」
「あ、パパ。」
案内された席は四人掛けだった。三人しかいないはずなのに四席とも水が置いてある。私は不思議に思って
「誰かもう一人来るの?」
と聞くと
「きっともう居るとおもうよ。・・・・澪が。」
とパパが少しうつむきながら言った。 やっぱりパパも知ってる。なんでなの?
「ねぇ、なんでママとパパはミオのこと知ってるの?」
「逆になんで澪が知ってるかお父さんの方が知りたいよ。」
「え、小さい頃、ミオは私のそばにずっといてくれたよ?」
そう私が言うとパパは身を乗り出してこう言った。
「澪のことがみえるのか?」
「見えるも何も一緒にいてくれたって言ったじゃん。」
パパはそっとため息をついた。そして
「・・・・・そばにいるなら顔見せてくれよ、澪。」
と半泣きで言い、ママも
「本当、そうよね。生みの親に顔見せずに・・・。」
と半泣きで言った。
「 ねぇ、 澪? 」
そう私の耳元で囁いたのは・・・澪だった。いつの間にか澪は私の隣に立っていたのだ。
「ミオ、いるじゃん。」
私がそう言うとパパが
「そこに・・澪がいる‥のか?」
と言い、
「ねぇ、澪に座っていいよって言ってあげて。」
と、ママは言った。
「座っていいってさ。ミオ。」
私がそう言うとミオは
「あ、これ、僕の席だったんだ。」
と私に言って椅子を引いて座った。その椅子の動きは見えたようでパパは、
「本当にいるのか‥‥。」
といい、ママは
「本当に見えたら・・・よかったのにね・・。」
と悲しげにそっと小声でつぶやいた。私は両親の顔をゆっくりと眺めていた。するといきなり左肩を叩かれて、
「少しの時間だけですがご希望にお答えできますよ。」
と恐らくあの喫茶店で私の接客をしてくれたマスターだと分かった。なので振り向こうとすると、
「いけませんっ!」
といきなり言われて慌てて振り向くのをやめた。すると
「突然失礼しました。ここで振り向いてしまうとご両親に気づかれてしまいます。私たち死人はあなた方SeaGrass以外には見えないので仕方ないですが。なので一時的に見えるようにすることもできますがどういたしましょう。・・・あ、そのままじゃ答えられませんよね。えっと、見えるようにしてほしいなら右手で、やらなくてもいいなら左手で、背中を掻く、とかどうでしょう?」
と言われたのですぐさま右手で背中を掻いた。
「承知いたしました。では気づかれないように私が隠れてから術をかけます。」
そう彼女が言った数秒後、やけにミオがはっきり見えるよう
になった。
「澪・・・・・・? あなた澪なの・・?」
「ほんとに澪なのか・・?」
「父さん、母さん、久しぶり。二十年ぶりぐらいかな。毎年毎年このレストランで供養してくれているのに顔を見せれなくてごめんなさい。」
「澪っ! こんなにおっきくなっちゃって、」
「・・・・今生きていたらこうなってただけだよ。すぐまた母さんたちは僕のこと見えなくなるから澪にほんとのことを言うなら今だと思うよ。」
「・・・そうね。」
そう頷いてママは重い口を開いた。
「澪は澪の五つ上の実のお兄ちゃんで、生まれてすぐに亡くなったの。生まれつき心臓の弁と壁がなくてね。その当時でも今の医療技術でも治すことが出来なくって。それからしばらくして澪が生まれたのよ。その時はね澪がもう一回帰ってきてくれたんだと思ってね、あなたに同じ漢字でれいって名前を付けたの。・・・・・それがまさか澪が澪のこと見守ってくれてたなんてねぇ。」
「父さんは澪が澪のこと見守ってくれていてうれしいよ。・・・・最後に澪が消える前に抱きしめてもいいか?」
そうパパが言うとミオはにっこりとほほ笑んで
「もちろん。 ほら、母さんも。」
とママとパパと抱きしめ合っていた。私はその三人を外から部外者のように眺めていた。
最後にミオは私のほうを向いてにっこりと笑い、「ありがとう、澪。」と言い、今度は私にも見えなくなった。
* * *
カランコロン・・・
「いらしゃいませ。・・・あぁまたいらしたんですね、相沢 澪様。」
「この前はありがとうございました。・・・・・何といえばいいか、ちょっとわからないんですけど。」
「いえいえ、それがSeaGrassのマスターの務めですから。」
「あのっ!、そういえば、」
「はい、何でしょう。」
「マスターの名前・・・教えてもらってもいい・・ですか・・・・?」
「もちろんです。私はReiと言います。」
マスターは自分の名札をつまんで見せてくれた。
「・・・Reiっ⁈ え、私とおんなじ名前じゃないですか。」
「正確には名前ではなくマスターコードネームですが。」
「マスターコードネーム・・?」
「ええ。私たちSeaGrassのマスターはすでに亡くなっている死人です。なので生きていたときの名前から少し名を取ってこのようなコードネームが付けられるのです。必ず大文字アルファベット一個+小文字アルファベット数個+小文字のⅠ(アイ)によってあらわされます。」
「そうなんですか。」
「確かにそう言われてみれば名前、一緒でしたね。・・・・・・・・私みたいな人生は送ってほしくありませんが。」
「・・・・え。」
「ほんとうの話ですよ。・・・・・・でも、まあ、良かったです。色々と。」
「そっ、そうですか。 そういえば前回ここに来た時にお会計してなくて、」
「あぁ、すいません。私が慌ててて説明していませんでした。ここは心に傷を負った人、故人様に招待された人、故人様と通じ合った人しか入れないようになっているので、基本的にはその方たち、通称SEAGRASSの方々からはお代はいただきません。ですが、REDMAKER、いわゆる死因の原因となった人からはその罪の重さに応じてSEAGRASSの方々のお代を払ってもらってるので大丈夫ですよ。」
「そうなんですね! よかったぁ、食い逃げしたかと思っててひやひやしてたんです。」
「誠に申し訳ございませんっ。」
「いえいえ、大丈夫です。・・・・・そういえばミオは?」
「相沢 澪様は・・・・・もうこの世界にはいらっしゃいません。」
「え、」
「未練が消えた今、ここ、無限回廊にいる理由はありませんので。」
「・・・・・ここってそういう場所なんですか?」
「ええ。反対にある死人側のSeaGrassの入り口は無限回廊という未練がある人が半強制的に送られる場所につながっていて、未練がなくなったら天界、いわゆる天国と地獄にいけるようになってるんです。」
「ということは・・・・・・私が未練だった・・・?」
「あ、伝言を預かっています。」
「え、なんて、」
「“父さんと母さんには気の毒だが僕のことは忘れてもらう。これからは澪としっかり向き合ってほしいから。これからもずっと見守ってるからな。じゃあな。澪。“ だそうですよ。」
* * *
今日も大学へ行く。なぜか懐かしい気配を覚えて授業中にふと横を見る。そこにはあの日と同じ笑い方をしたミオがいて、
泣きだしそうになる私に向かい、フフッと笑った。




