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受難の王子とガチャ魔法  作者: 間中未森


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9/9

よくわからないけど解決したらしい

 かわりに僕たちが行くからと、マカを説得する。


「リオン殿下も村に」

「ダメだよ。クラウスは僕の護衛でしょ」

「しかし」

「クラウス」


 クラウスの気持ちもわかるけど、こんなことをやってる状況じゃない。僕が強く言えば、クラウスもそれ以上は何も言わない。

 川沿いを上がって、池に向かう。そろそろかというところで、何かがぶつかり合う音がした。


「ジグ! ルカ!」


 二人が小型の魔物二体と戦っていた。けれど、ジグは防戦一方だ。


「くそっ、魔鳥だけじゃないのかよ!」


 クラウスが舌打ちとともに、応戦に入る。僕は、少し離れたところで、肩をひそめていた子どもたちを見つけた。四人いるから、彼らがマカの仲間だろう。


「怪我はない?」


 声をかけると、子どもたちは青い顔をしながら首を縦に振った。大丈夫そうだ。


「歩けそうなら、ここから離れよう」

「あ……」


 恐怖で身体が震えている。まあ、そうだよね。僕だって怖いんだから、僕より年下の子どもが怖くないわけない。

 無理には動かせないと判断し、みんなで草叢に身を隠す。

 縄張りの外らしく、魔鳥に動きはない。

 戦闘にクラウスが加わったことで、ルカがジグの方に駆け寄る。ジグが食い止めている背後を狙って、ルカが魔物を切りつける。確実に急所を捉え、一体が倒れた。

 クラウスも向かってくる魔物に剣で応じる。熊のような魔物の爪を避けて、クラウスが魔物の死角に入りこんだ。一瞬の隙を逃さず、剣を下から振り上げる。魔物の腕が身体から切り離され、ちぎれた腕が弧を描き落ちる。

 その瞬間、今まで何の反応も示さなかった魔鳥が一斉に飛び立った。腕が落ちた場所は、魔鳥の縄張りの中だったらしい。

 突然の魔鳥の動きに、クラウスの反応が遅れた。腕を落とされた魔物が、身体ごとクラウスに押しつぶそうと倒れ込む。そこに魔鳥が一斉に襲いかかろうとする。


「っ!」


 ジグが咄嗟に何かを叫んだ。杖から夥しい光が放たれる。ジグの魔法だ。

 魔物と魔鳥が光に飲み込まれる。僕の脳裏に魔蛇の出来事が過った。彼等にどんな変化が起きるのか想像できない。

 すると、光の中から何かが次々に池に落ちてきた。


「え」


 目の前の池に、両手程の大きさの白い楕円状の塊が大量に浮いている。なかには、塊同士でぶつかったのか、割れてしまっている。割れた塊からは、黄色い液状のものが流れ出ている。


「卵……?」


 呆然としていると、草叢から何かが近づいてきた。

小型の魔蛇だ。しかも、魔蛇の目はハートマークになっている。勘弁してくれ、またかよ。

だが、魔蛇は僕たちではなく、卵の池に飛び込み、口を最大限に開けて卵を食べ始めた。勢いよく十個ほど食べたところで、胴がパンパンに膨れて、魔蛇は動けなくなった。

 正気を取り戻したルカが、魔蛇に向けてナイフを投げる。魔蛇はあっさりと絶命した。

 魔鳥が卵なら、魔物がどうなったのかと視線を動かすと、クラウスから少し離れたところに二匹の魔カエルがいた。魔カエルは、魔物ではあるが人は襲わない。僕は、安堵の息を吐く。

 魔カエルは、魔蛇が絶命したのを見て池に飛び込んだ。割れた卵に顔を突っ込み、中身を食べてはじめる。カエルって、卵食べるんだ……。


「ラッキー、魔カエルじゃん」


 僕と子供たちの傍にきたジグが、魔カエルの様子を見ながら喜ぶ。


「あんまり知られてないけどね、魔カエルには雨を呼ぶ力があるんだよ」

「そうなの?」


 何が起きているのかわかっていない子供たちと一緒に池を見ていると、卵を食べていた一匹の魔カエルが、顔を空に向けてゲコと一鳴きした。すると、土の中から、数匹の魔カエルが出てきた。


「ゲコ」

「ゲコゲコ」

「「ゲコゲーコ」」

「「ゲコゲーコゲッゲゲコー」」


 会話のようだった声が、次第にリズムを持ち辺り一帯に広がる。風が吹いて、草叢が大きく揺れた。空が急に暗くなる。

 ポツ。

 頬に何かが当たった。

 ポツ、ポツ。


「あ……?」

「雨だ!」


 子どもの一人が大きな声で叫んだ。



 

子どもたちを支えながら村に戻ると、三カ月ぶりの雨に大騒ぎだった。村中の人が、全身で雨を浴びている。


「マカ!」

「みんな! 無事だったのか!」


マカが仲間を見つけて駆け寄ってきた。互いに喜び合う姿に、僕も嬉しくなる。ただ、気持ちはわかるけど、そろそろ家に入ろう?

 茶屋で雨に濡れた身体を拭いていると、従業員が温かい茶を運んでくれた。雨が降り出したとはいえ、まだ水が少ない状況での心遣いに気持ちが温かくなる。外では、少しでも雨を貯めようと、入れ物を出す人が溢れていた。僕たち四人は、茶をいただきながらそれを眺めていた。


「「ありがとうございました」」


店主とマカの父親がやってきて、頭を下げて礼を述べる。僕は、何もやってないんだけどね。


「ほら、お前もちゃんと挨拶しろ」


 そう言われて、二人の後ろからマカが顔を出す。


「……あ、ありがとよ」


 うーん、不機嫌な顔で目が泳いでいるのは照れ隠しなのか?

雨が降らなくなった原因は、結局わからないままだった。ジグの推測では、おそらく魔鳥の存在があの辺りに住んでいた魔カエルに影響したのかもしれないということだった。なんにせよ、これで元に戻ったなら安心だね。

 夜になっても雨はやむことがなく、僕たちは、店主の好意で茶屋に泊めてもらった。雨の中の野営は辛いので、店主の好意はありがたかった。屋根があるって大事。

 次の朝も、雨は続いていた。店主によれば、雨が降らなくなる前は、一度降ると五日ぐらいは続いていたらしい。

 ルカが店主の傘を借りて野営場所に戻り、馬車で茶屋まで迎えに来てくれた。僕たちは、泊めてもらった礼を述べて村を後にした。


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