第35話:叔母上にそっくりな少女~ルーカス視点~
確かに彼女の生い立ちや置かれている環境を見ると、同情はする。でも僕は、今の生活を乱されたくはない。
叔父上や叔母上を、その子に取られたくはない。
でも…
“分かりました、叔父上や叔母上が決めた事ですので、僕は従いますよ”
いつものいい子の癖が、出てしまったのだ。だが、この状況で嫌だなんて言えなかった。
“ありがとう、ルーカス。きっとルーカスとも、仲良くなれるよ”
そう言うと、叔父上は嬉しそうに笑ったのだ。それからというもの、叔父上は叔母上の姪の為に、部屋の準備はもちろん、ドレスや宝石までありとあらゆるものを準備し始めたのだ。
この屋敷に来た時、その子が貴族令嬢として暮らせるようにと…
どうして叔父上は、あんなに嬉しそうなのだろう。叔父上はもう、僕の事はどうでもよくなってしまったのかな…
このまま叔父上と叔母上に捨てられたら…そう思うと、気が気ではなかった。そんな中、ついに叔母上たちが帰国する日を迎えた。叔父上と一緒に、港まで迎えに行く。正直僕は、迎えなんて行きたくなかった。
このままその子がこの国に、僕の家に来なければいいのに。そう何度願ったか。会いたくない、僕から叔母上や叔父上を奪う女になんて。そんな女と、仲良くなんて出来る訳がない。
でも、そんな風に僕が思っていたら、きっと叔父上も叔母上も傷つくだろう。2人を悲しませる事なんて、したくはない。僕の中で、色々な感情が入り混じる。そんな中、ついに船がやって来た。
そして叔母上と一緒に降りてきた少女を見て、僕は驚愕した。ガリガリにやせ細った体に、今にも倒れそうなくらい青白い肌。そして傷みかかった髪の毛。
これが本当に貴族令嬢なのか…そう思うほどの姿だったのだ。だが、顔の造りは叔母上によく似ていた。いいや、写真に写る若い頃の叔母上とその姉にそっくりだ。
それにしても、こんな少女をここまでボロボロにするだなんて…気が付くと彼女に話しかけていた。僕が話しかけると、それは嬉しそうに笑ったのだ。ただ話しかけただけなのに、何がそんなに嬉しいのだろう。
困惑する中、馬車に乗り込み、家を目指した。それにしても、本当に痩せているな。腕なんて、掴んだら折れてしまいそうだ。これが魔力を提供した令嬢の末路なのか?やはり魔力提供とは、恐ろしいものだ。
こんなに顔色も悪くて、起きているだけでも辛いのではないのか?それなのに馬車で3時間も揺られて、大丈夫なのか?考える事といえば、この子の事ばかり。
そんな僕に叔父上が
“ルーカス、サリーばかり見つめて、どうしたのだい?”
そんな事を聞いて来たのだ。
“別に見つめていた訳ではありません。ただ…体も細いし、顔色もあまり良くないので、馬車での移動が辛いのではないかと思って…”
つい思っていた事を言ってしまった。さすがに体の事を言うのは、失礼だったかな?そう思ったのだが
“ルーカス様はお優しいのですね。私の体の事を心配してくださるだなんて。見た目はこんなんですが、叔母様のお陰でゆっくり休めたので、以外と元気なのですよ”
そう言ってにっこり笑ったサリー。その瞬間、急に胸の鼓動が早くなるのを感じた。一体僕は、どうしてしまったのだろう…
しっかりしないと!それにしても、笑った顔が本当に叔母上にそっくりだな…姪だからなかな…
何だか変に緊張してしまった。僕らしくない、しっかりしないと。
気を取り直して、サリーの好きなものや嫌いなものなど、当たり障りのない質問をしていく。そうか、サリーは本が好きなのか。そういえば今、王都で人気の恋愛小説があったな。早速取り寄せて…て、僕は何を考えているんだ。
どうして僕が、この子の事を気にかけないといけないんだ。そうだ、この子は僕から叔父上と叔母上を奪うかもしれない相手なんだ。
とにかく、油断は禁物、警戒態勢で行かないと。




