ジョージ殿下とサリーのIFストーリー~ジョージ視点~【25】
「ここにお母様が、眠っていらっしゃるのですね」
確かにお墓には“マリア・ローレティエン”と記されている。ここにサリーの母上が眠っているのか。
サリーが持ってきた青いバラを供え、皆で手を合わせる。
マリア夫人、サリーを生んでくださり、ありがとうございます。あなたは僕の元にサリーを嫁がせるのを嫌がっていた様ですが、必ず僕がサリーを幸せにします。ですから、見ていてください。これからサリーが、幸せになる姿を。
そう伝え、ゆっくりと顔をあげた。隣ではサリーが、涙を流しながら手を合わせていた。ローレティエン公爵もサレオ殿も、ずっと手を合わせている。きっと皆、夫人に伝えたい気持ちが沢山あるのだろう。
「ジョージ様、お待たせして申し訳ございません」
「サリー、もういいのかい?」
「はい、お母様に伝えたい事を全て伝えましたから」
まだ瞳から涙がこぼれ落ちているサリーの頬を、そっと拭いた。公爵やサレオ殿も、どうやら伝えたい事を伝えられた様だ。
「それではお母様、また来ますね」
サリーが最後に挨拶をして、その場を去ろうとした時だった。
“ジョージ殿下、皆を連れて来てくださり、ありがとうございました”
女性の声と共に、温かく柔らかな風が、頬をかすめたのだ。びっくりして振り返るが、誰もいない。今の声は…
「ジョージ様、今お母様の声が聞こえた様な…“サリー、どうか幸せになって”と」
「私も聞こえた。あの声はマリアだった」
「俺も母上の声が…」
どうやら皆、それぞれ夫人の声が聞こえた様だ。
「夫人はきっと、今でもあなた達家族の傍でずっと見守って下さっているのですね。今日家族みんなで来てくれた事を、喜んでいらっしゃるのでしょう」
「そうかもしれませんね。殿下、今日ここに来られたのも、あなた様のお陰です。あなた様がマリアの思いを、私たちに教えて下さったら。そしてサリーと私たちの架け橋になって下さったからです。
本当にありがとうございました」
公爵が僕に頭を下げたのだ。
「僕はお礼を言われる様なことは、しておりませんよ。サリーの幸せを考えた時、父親や兄とすれ違ったままだなんて、嫌だろうと思っただけですから。サリーの幸せが、僕の幸せでもありますから」
「まあ、ジョージ様ったら」
「さあ、冷えて来たし帰ろう。サリーが風邪をひいたら大変だからね」
「はい、帰りましょう」
~半年後~
「あなたがサリーちゃんね。マリアにそっくりだわ」
「初めまして、アマリリス叔母様」
真っ白なウエディングドレスに身を包んだサリーが、マレリス王国からやって来た叔母上と初対面を迎えていた。隣にはグラッサム公爵とルーカス殿の姿も。
ルーカス殿…正直あまりサリーを会わせたくはなかった。だが…元気そうでよかった。
「あの…あなた様がジョージ殿下ですか!あなた様のお陰で、僕は命を取り留める事が出来たのです。本当にありがとうございました」
僕を見つけ、必死に頭を下げるルーカス殿。
「ジョージ殿下、息子を助けていただき、本当にありがとうございます。あなた様は命の恩人ですわ」
「なんとお礼を言えばいいか…それも自分のやった事は、内緒にしてほしいだなんて。本当に謙虚な方だ」
ルーカス殿に続き、グラッサム公爵とアマリリス夫人もこちらにやって来て、頭を下げている。内緒にしてくれと言ったのだが…まあいいか。
「その事は気にしないで下さい。それよりも、せっかくミレンズ王国に来たのですから、ゆっくりして行ってくださいね」
そっと話題を変えた。
「ジョージ様、ルーカス様の病気を治したとは?」
不思議そうに問いかけてくるサリー。
「ちょっと薬を提供しただけだよ。大したことはしていないから。それよりもサリー。叔母上に会えてよかったね。今日はマレリス王国から王太子殿下も来てくれているし。彼は古くからの友人なんだ。
これからは積極的に、マレリス王国とも交流と持って行こうね」
「はい、そうしたいですわ」
嬉しそうに笑ったサリー。
「皆様、そろそろ式が始まります。どうか会場へ。ジョージ殿下とサリー様も、ご準備を」
「まあ、そんな時間なのね。それでは私共はこれで一旦失礼いたしますわ」
アマリリス夫人たちを見送り、僕たちも入場の準備に取り掛かる。
「ジョージ様、私と結婚して下さり、ありがとうございます。ジョージ様のお陰で、家族とも和解出来ました。お母様の深い愛を知る事も出来ました。信頼できる友人も出来ました。
ずっと独りぼっちだった私に寄り添い、沢山の大切な人を与えて下さり、ありがとうございました。私、今とても幸せですわ」
「サリー…僕も今日という日を迎えられて、本当に幸せだよ。君が傍にいてくれるだけで、僕は何だってできる。これから2人で、もっともっと素敵な国を作って行こう。この国で暮す全ての人が、幸せに暮らせる国を」
「はい、もちろんですわ」
1度目の生の時、僕は皆から非常に優秀な王と言われた。義理とはいえ、家族に囲まれていた。傍から見れば、きっと幸せな人生だっただろう。
だが…
ずっと僕の心は孤独だった。心にぽっかり穴が空いたような気持ちの中、必死に生きてきた。ずっと1人で戦ってきたのだ。
だが今回の生では、サリーがいてくれる。サリーがいてくれるだけで、僕の心は温かい気持ちで満たされる。
1度目の生の時は僕が愚かだったばかりに、サリーを傷つけたあげく、失ってしまった。何度も何度も後悔した。もし人生をやり直せたら、そう何度も願った。
そんな僕の願いが叶い、今2度目の生を生きている。1度目の生の時より、サリーは幸せか、そう言われると、正直わからない。もしかすると、1度目の生の時の方が、サリーは幸せかもしれない。
それでも僕は、これからもサリーを大切にしたい。サリーと共に生きていきたい。そしてこの命が尽きるとき、幸せだったと思ってもらえる様に…
サリー、愛しているよ。もう二度と、手放したりはしない。これからもずっと一緒だよ。2人で必ず幸せになろうね。
おしまい
~あとがき~
これにてIFストーリー完結です。
最後までお読みいただき、ありがとうございましたm(__)m




