変わってしまったハルミナ
こんばんは、お読み頂き有難うございます。
滅茶苦茶間が空いてすみません。
「来年、成人になってしまうわね……」
やべえわ。
ボヤボヤしてた訳でも無いのに、ノーチート&ロースペックなせいで大ピンチよ。このままでは、特に解決方法が見つからないまま、星は落ちる未来でホノリアは16歳になっちまいそうなのよおお。
最早……エマヌエルと結婚しちゃおうかしら。そしたら、イサ姉様の野望は潰えないかなあ……。
いやね、一応滅茶苦茶になってる誤解を何とかしようとしたのよ。
イサ姉様の母親の過去を知らせようとしたら悲劇のヒロインムーブされたり、皇帝であるお父様に誤解を解かそうとしたら悲劇のヒロインムーブされたりヒロインムーブされたり……。それからそれからウガアアア! と吠えたいくらいね!
何なのよアイツ! 対話の余地ゼロ! 世界征服でもしたい訳!?
しかも、新規の使用人の中には私が悪役ムーブして、イサ姉様を虐めてるって誤解も一部で広まってるし! この頃お勉強もちゃーんとして、普通に皇女業務もしてるから、元からいる使用人は呆れてるのよ。でも……キレそうよ! 誹謗中傷、ブチ切れよ!
「もう、あの姉さんを暗殺したらどうだ……」
「それは最終手段よ……」
エマヌエルもまーまー格好良く……まあ、外見はフツメン寄りのイケメンよね。勿論中身は優しいし賢いし素敵よ。私に優しいし今は健やかに生きてるし! これからもちゃーんと生かすし!
勇者レイの方が見た目はいいけど、ハルミナ姉様スキー過ぎて中身がイケてないから!
私? ……きっと来年にはスマート皇女になっていると思うわ。呪いか太るバフでも掛かってんのかってレベルで痩せねえのよ。ふん、原作の呪いだろうと今はいいのよ。
エマヌエルとお互いに命が助かるなら、太ましかろうとポッチャリだろうと耐えてみせるわ。バカにしたらぶん殴れる権力も今なら有るもの! 大人皇族の手前でもね!
そして、一応ハルミナ姉様も生きているの!
何故か、操られたかのようにあの後の横日差しの日に出そうになったから、地下の精霊入り和風ツボに沈めておいたわ。
そしたら、外に出ずにセーフ! 正気を取り戻したみたい!
……とは、いかなかったのよね。
「……あら、ご機嫌よう」
「ハルミナ姉様……」
「悲しい顔をしないで、ホノリア……」
あの快活さが消えてしまったのよ。いきなり儚い姫君にクラスチェンジしてしまったの。
人格変わってしまったのよ!
絶対何か盛ったでしょ、イサ姉様のヤツ!!
「……レイは何処へ行ってしまったのかしら」
「貼り付いてないの?」
「……きっと、不甲斐ない私に愛想が尽きたのかしら……」
「はあ!? ちょ、止めてよ! ハルミナ姉様から図々しさを抜いた自虐ムーブなんて!」
「ホノリア」
「ハルミナ姉様はそのままでいてよおおお!」
「でも、ホノリア……」
「お腹も痛くないのに儚げに笑わないで、陽キャでしょ!」
「私は死ぬ筈の命だったから……」
ずっとこれ!
ずーっと最近、悲劇のヒロインムーブ!
まるで誰かがコロッと入れ替わったかのような……入れ替わった?
「ねえ、エマヌエル」
「何だよ」
「最近、星は落ちた?」
「ああ、6つ……」
「横日差しの日は?」
「ひとつ……あ」
まさか。
まさかまさかまさか。
逃れさせたかと思ったのに、まさかハルミナ姉様は、イサ姉様にあの時に……命を落としていたら……。 私が入れ替わることが出来たのだから、ハルミナ姉様も……無い訳じゃ、無いの?
嫌な予感に心臓が苦しい。滅茶苦茶に煩くて、鳴り止まない……。
「死んだ命は星になり、星は落ちて地上の命と入れ替わる……」
「ハルミナ姉様……」
「敵を欺くには、先ず味方からってねっ」
……ん?
あの喋り方……。
「まー、任しといてよ。ハルミナは悪いようには願わない」
「???」
いや、何あの喋り方。
ハルミナ姉様の声なのに、変ね。
横のエマヌエルも訝しんでるわ。
「ハルミナはちゃんと元気だから」
「いや、え?」
……スサスサッって、足音控えめに行っちゃった……。
あの、ドタバタ歩いてたハルミナ姉様が……。
「だから、変わってしまったハルミナを取り戻したいと……思いませんか?」
ん?
この声は……。ボソボソっとだけど、キャッチしたわよ! 流石ロースペックなれど、レアキャラね私!
「もうひとりの姉さんと、勇者……」
「……あのふたり、密会……?」
あのヤシの下に……日除けの意味もないわね、この時間じゃ。滅茶苦茶暑そう。じゃなくてよ!
つ、次から次へと何なのよ……。考察の暇、無い訳!?
声高な悲劇のヒロインムーブって厄介ですね。