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正義の条件  作者: ありと@
番外編――学園生活を覗いてみれば
85/85

ドキッ!?怪人だらけの大運動会⑧

またぼちぼち更新していきたいと思います。忙しい時期を抜けたら筆がめっきり乗らなくなってしまっていて……大分開けて申し訳ない。

ようやく調子が戻ったのでまたよろしくお願いします(^^♪



 盛り上がる運動会の熱狂。客席からは将来有望なヒーロー候補生達がスポーツマンシップに則って鎬を削っているように見えることだろう。



 しかし、アリーナに降りてみればドロっとした嫌な雰囲気を察知できる人もいるであろう。見ればBクラスがこちら、Cクラスの客席を見てニヤニヤしている。




「完膚なきまでにCクラスを敗北させたいみたいね。」



 おさげ眼鏡委員長こと石川さんもその視線を感じ取ってるようで、嫌悪感丸だしの表情でため息を吐いていた。



「まぁ、そのためのクラス分けだしな。」



 金堂が肩を竦める。だがその顔をいつものおどけた様子ではなかった。



――魔力至上主義。


 人間社会の様々な問題を解決した新エネルギーである魔力、それを大量に内包できる存在こそ優秀な人材である。そんな価値観がこの天野学園にも根付きつつある。



 実際に生物が蓄積できる魔力量は世界が定める"存在の格"に因る所が大きいというのが余計に彼らのエリート意識を刺激してタチが悪い。その結果がBクラスとCクラス(落ちこぼれ)の対立だ。魔力至上主義の価値観からすると魔力資質の低いCクラスは学園の面汚しとして隔離されているように見えるんだとか。




 実際、本当の落ちこぼれは退学どころか入学試験をパスできないのでBクラスの考え方は間違っている。それどころか3年生の"6人の例外"や2年AクラスからすればBもCも大差ないように見えている。



 中途半端なAクラスへの劣等感と落ちこぼれに見えるCクラスに挟まれたBクラスは歪んだエリート感に従って動くようになってしまった。悪意の大元を探ってみるとどうやら田辺が4月から徹底的に魔力至上主義を訴え、Cクラスを見下す風潮が伝播してしまっているようだった。




「いずれにせよ、仕掛けてくるとしたらこのあたりだろうな。」


 なんだかんだ知能指数の高いと思われる金堂による冷静な分析。次の種目――借り物競争は荒れそうだ。



「ミカン、誰かが何かしてくるかもしれない、気をつけろよ。」



 俺は出場選手の招集に応じようとするミカンの背に投げかける。すると優しく、強い声が返ってきた。



「大丈夫、殺しはしない。」




 …………そういう意味の気をつけろ(殺すな)じゃなかったんだけどな。確かに植物族の長シュルームを葬ったミカンをどうこうできる2年生なんていないだろうしな……もう俺より強いのかな……。



『いよいよ非魔力種目のトリ!借り物競争だよ~ん!この種目もルールはシンプル!コース真ん中の長机には五十嵐くんをはじめとする教師陣が徹夜で作成した借り物が書かれた紙がズラッと並んでいるよ!』



 何してんだ黒崎……ヒーロー使いが荒いとはこのことだな。そしてなぜみんな断らなかったんだ……。



『走者はその中から一枚を先着順で選んで、あ、選びなおしはダメだよ?そしてその借り物を学園内から探してゴールまで借りてきてください!』



 学園内って……この学園がどんだけ広いと思ってんだ……。侵入不可の山々を抜きにしても町の北区丸々は学園だ。まぁ、こんだけ人が来てればアリーナ内で大抵のものは揃うと思うが。

 ルールは一般的な借り物競争だな。走力に加えてくじ運が求められるゲーム性のある競技だ。Cクラスの走者たちが楽な借り物を引けるように天に祈ろう。





『それじゃ、いくよ~!第1走!』



 掛け声と運動会特有の空撃ちの音で会場のボルテージはひたすら上がる。大詰めを迎える運動会、借り物競争が始まった。



 固唾を飲んで見守る俺らの横で怪しく笑みを浮かべるBクラスの面々に嫌な予感を覚えつつ。



――――






「なにこれぇ~~~~~!」




 技術課のおっとりした女の子が間延びした声でパニックに陥る。



「ええ!?こんなのあるのかよ!?」


「無理だろ!何考えてんだ!?」





 口々に文句を上げる走者達に見ている側も怪訝な表情になっていく。第一レースが始まってから数分後、長机に辿りついた各クラス代表の5人は困ったようないらだったような声を上げながら紙を持って会場を走っている。


 長机にあったメモには借り物が書かれていて、それを会場から探さなければいけない訳だが、走者達は戸惑ってうろつくだけだ。




「一体なにが起きているんだ?」



 思わず疑問の声を上げてしまった。走者以外誰も分からないはずのトラブル。しかし答えはいつの間にか背後に寄って来ていた悪意によってもたらされた。




「フフフ、それはね……」

「お前は……Bクラスの田辺!」

「おや?キミには名乗っていないと思うのだが。有能なヒーロー候補生は名前も知れてしまうってことかな?」



 いや、体操着の胸にでかでかと書いてあるだろーが。何だコイツ。突然のIQの低そうな自慢に困惑する俺をスルーし田辺は自慢気な話をつづけた。




「実はねぇ、みんながよりよいレースを楽しめるようちょっと協力してあげたのさ、このボクがね。」

「協力?……まさかお前!?」



 嫌な予感に思わず殺気だつ。俺の雰囲気の変化を最初に感じたのは傍にいた金堂だった。そこから伝播した田辺への敵意がCクラスのみんなの視線を田辺に集める。田辺はCクラスに囲まれて臆した様子もなく種明かしをした。



「そうとも、長机に置かれたメモに無茶苦茶なお題を混ぜておいたのさ!事実を知らない走者は途方もない無理難題を探さなければならない、くくく、ははははははは!!!」





―――――――

――



 訪れる沈黙。絶望の余韻を楽しむかのように田辺は高らかに嗤う。



 俺たちCクラスの面々は周囲の仲間たちと目くばせするしかなかった。コイツはなんて――




 我慢できなくなったのか、集団の中で誰かが呟いた。





「……ちっさ。」







――――――――――――



「うわあああなんだよもう!"エリクサー"なんて世界にねーだろーが!」

「無理よ"戦車"だなんて!」


「"花壇に咲く一輪の花"?これなら……ぐっ無理だ。ヒーロー的に無理だ……!」



 走者はもっていけるはずのないインチキお題を手にパニクッている。田辺のお題から頭の悪さが伺える。



「ふははっはは。いいぞいいぞ!計画通りだ。これでBクラスの順位は確固たるものとなる。いや、このままいけばAクラスに勝つことだって……!」



 俺と金堂の近くに陣取った田辺は「計画通り」といった顔で眼鏡を光らせている。俺は気になっていたことを聞いてみることにする。



「なあ田辺、このイタズラはBクラスみんなで仕掛けたのか?」

「イタズラとは幼稚な表現だな……ックク。これはボクの独断だよ。Bクラスの優秀さをより知らしめるためのね。」



 やはり。ってことは……




「"人工衛星"!?何考えてんだこのお題!!!」




 お題の紙に絶叫している男。体操着から男がBクラスであることが伺える。



「何っ!?!!?しまった!これじゃあBクラスも無茶なお題を引いてしまうではないか!!」


「「お前超絶バカだろ!?!!?」」




 思わず白目を向いてしまう俺と金堂。幼稚を通り越して幼児でもやらないようなイタズラにうんざりする。Cクラスの面々はジト目で田辺を見るのみだ。




「~~~~~~~~キサマぁあああああああああ!!」

「ええ!?俺全然関係なくない!?!!?」



 逆上した田辺は一番近くにいたCクラス――つまり金堂鐸の胸倉を掴み上げた。今回ばかりは金堂に同情する。というか田辺頭おかしすぎるだろ!




「許さないぞ~~~!!!!!」



「理不尽だぁあ!助けてセガ!!!!体操着がのびるううううう」

「頑張れ」

「あれ、もうレースの方向いちゃってる!もっと俺を気にして!」



 何故かキレ始めた田辺と胸元をびろんびろんに伸ばした金堂の騒ぎは周囲にやや迷惑そうな顔をさせるが、盛り上がるアリーナ全体の喧噪からすれば些細なものだ。観客席的には無理難題に戸惑うヒーロー候補生も面白く映るのだろう。



「下賤なCクラス風情が!わからせてやr―――ごはああああ!?!!?」



 田辺が今にも金堂に殴りかからんとしたその時、何かが激しく衝突し、田辺が錐もみしながら吹き飛んでいった。田辺はそのまま地面でぴくぴくしている。結局なにがしたかったんだ!?


 そんな阿呆はさておき、突然田辺を吹き飛ばした張本人が息をきらして告げた。



「ハァッ……ここに居たのね。鐸!」

「へ?姉ちゃん!?」




 姉弟揃っての現実離れした青髪を揺らしながら金堂の姉、"6人の例外"第5席の金堂鏡が弟の手を掴んだ。



「時間がないわ。兎に角ついてきて頂戴。」

「え?どういうことだよ。3年も今借り物競争の最中だろ!?」



 そうだ。3年生も今は借り物競争の途中。2年生と違って田辺の細工が入っていない純粋な――



「そうよ。だから、これ」

「これは……お題の書かれた紙?」




 金堂が姉から受け取った紙を広げる。握りしめて必死に走ったからか紙は若干よれていた。俺もそっと紙をのぞき込む。



『お題:学園内にいる肉親(ただし今日居ないと言う場合は第6駐車場の石ころで可)』



「「代替措置がオカシイ!!」」



 確かにご両親がいない生徒もいるだろうから救済措置は必要だろうが、これじゃあ会場探すより駐車場行った方が楽だろ!?




「そういうわけだから、急いで!主席とパフェ賭けてるの!」



 なんとまあ乙女チックな賭け事なんだ。しかしその表情は氷のような鬼のような形相をしている。聞くところによると植物族との衝突の際は五十嵐が駆けつけるまで怪人で最も危険な分類とされる龍種に一人で食らいついていたらしい。そしてその後大和町内に戻って怪人の軍勢を氷像にしてしまったとか。恐ろしいヒーローだ。



「ホラ鐸はやく!」

「いや、でも俺脚おそいぞ!?駐車場で石拾った方が……」

「バカ!私にとって石はアナタの代わりにならないわ!」



「姉ちゃん……なんで俺を抱えてるの?」

「この方が速いわ。」


「嫌だ!ちょっとこれお姫様抱っこじゃん!!逆でしょ普通いやまあ力と速さ考えたらそうなるけどうわまって本当にこれでいくの!?待ってうわああああああああああ!!!!!!!――」





 こうして田辺を吹き飛ばした金堂姉弟は嵐のように去って行った。賑やかな運動会でなによりだ。騒がしいが温かい"家族"に怪人になる以前の記憶がない俺は羨ましさを感じていた。





―――――――――――



 レースが進み、ミカンの走順が来た。最近自分でも贔屓目になってしまっていると自覚はしている俺だが、それを込みにしてもミカンは足が遅い。いいお題を引いて欲しいところだ。


 ちなみにこれまでのレースでは時間切れになってしまった生徒もいる。

"ウエディングドレス"

"恐竜"

"ゲームボーイ"

"少年の日の思い出"

"子どもでも片手で止められる自動車な~んだ?"


 このように明らかに学園内から見つからないお題が出てしまっては仕方ない。



Bクラスの田辺が仕込んだお題は各クラスの得点のバランスを緩やかに崩しつつあった。どうでもいいけど田辺あとで黒崎に殺されちゃう可能性が……






『よーい……!』



 銃声が響き各クラスを代表する走者達が一斉に飛び出す。流石に日々の訓練を受けているみんなは陸上選手のようにいち早くトップスピードに達する。――ただ一人女の子走りをするミカンを除いて。



 控え席のCクラスからは「あちゃー」という声と微笑まし気な目線が半々といったところだ。俺がどちらなのかは言うまでもない。鐸は帰ってきてない。田辺はまだ転がっている。




 前を行く走者は早くも長机に辿りついてお題の紙を恐る恐る開いた――。




「えええ!?"ブラウン管のテレビ"?歴史の教科書でしかみたことないよ!?いや、学園の資料館にあったかな……?」

「"犬"!?シンプルにいないだろ学園内!!いや、銅像とかでもいいのかな!?」




 先頭2人は難しいお題を引いたようだ。どれが田辺のイタズラでどれが元からあったものなのかは分からないがとりあえずラッキーだ。



「"シャー芯"!これなら……!!」



 次の走者はいいカンジのお題を引いたようだ。まずいぞミカン急げミカン!



「"重鳴先輩の体操着"!?もう溶けちゃってたじゃん!!!!!!」



 その次のは明らかにイタズラだな……。今も半裸で三年会場を駆けているであろう学園次席の体操着など手に入るわけがない。この走者は事実上脱落だ。




「はぁ。ふう、ふう。」



 それからやや遅れてミカンがたどり着く。Cクラスのみんながごくりと緊張する中ミカンは選んだ紙を開いた。




「―――――!」



 その瞬間。ミカンは目を見開いて、こちらを見た。目が合ったかと思ったが気のせいだろうか?



 ミカンは決心したように紙を握ると迷わずこちらに駆けてきた。



「え?何々?」


「まさか俺の体操着か!?」

「「「「ないない」」」」


 基本的にこいつらボケ体質なんだな……


 一番の芸人金堂(ツッコミ)が抜けた穴を見事にクラスで補っている。ミカンはCクラスが控えている席までやってきてそして――今度は気のせいではない。はっきり目が遭った。




「セガ!来て!」



「お、おう。」




 俺か!?



 よく分からないまま待機列から出ていくと、ミカンは俺の手を握って引っ張る。Cクラスがその様子ににわかにざわめく。誰かが「まぁ!」とこぼしていた。


「……急ぐ。勝ちたい。」

「なんてお題だったんだ?」



「……秘密。」




 ミカンは走り出す。自然と俺も引っ張られて走り出す。





 走る。走る。決して速くはない彼女。しかし後ろを振り向かずに、必死に。





「なぁ、ほんとに、何のお題なら俺が連れていかれてるんだ?」



 純粋な疑問。まさか"怪人"とかじゃないだろうな!?




「……ナイショ。」




 どうしてもミカンは俺にお題を告げにくいみたいだ。ま、いいか。



「でも」


「ん?」






「私はセガに会えてよかった……。」



 ふと呟くミカン。前を行く彼女の感情を伺うことはできない。ただ、この時だけは微笑んでいるのかな。と思った。




 なんてお題だったんだろうな。




 いつの間にか周りの喧噪はどこへやらで俺はミカンの後ろ姿をじっと見ていた。




「俺もだ。」

「ん。」





 握られる手がわずかに強くなる。そこからは言葉がなくなった。




 相変わらず、不思議と嫌じゃない沈黙。




 走る。走る。




 俺たちはまだ出会って2か月と経たないが、コボルトと戦いルミと戦い、プラッディと戦いミカンと戦い、そして、シュルームと戦った。



 濃密な経験と彼女自身が乗り越えた苦難が、彼女の強さを支えたい。そう思う。



 だから、とにかく今は彼女がこれまで過ごせなかった日常を、できるだけ近くで盛り上げてやりたいと思う。Cクラスはそれが自然にできる良いクラスだ。



――よかった。



 俺も誰かの役に立てるのかもしれない。天野学園に入って、よかった。






 走る。走る。


 ゴールへ向かって。2人で。
















―――――――普通にミカンの脚が遅くて4位だった。






――――――――――――――――――

ここまでの点数



Aクラス

185点

Bクラス

171点

Cクラス

121点

技術課

141点

医療課

139点




子どもでも片手で止められる自動車な~んだ?


↑考えてみてね!

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