バス
胸の奥に、光が宿っているかのようだ....。
僕は、軽い足取りで地下道を下り、国道の向かいにある
丘の上キャンパス行きの直通バス乗り場に向かった。
時間がまだ早いせいか、バス乗り場にいるのは1年生ばかりだ。
1年生は、教養過程の講義があるのでこんな時間から出なくてはならない。
なぜ、3年の僕がこんな時間に出るのか?ちょっと、大学の図書館で探し物があったからだ。
「柳先輩。」
バスを待っていた列の中ほどから、可愛らしい声がして僕ははっ、とする。
この声は.....。
そう、1年の夏名ちゃん。軽音楽サークルに入ってきた子だったっけな。
小柄でよく弾む声、丸顔で色白。よく笑う可愛らしい子で
サークルでとても人気の子だった。文系らしく
いつも、何か文庫本を持っている子だった。
「ああ、カナちゃんおはよ。」
「おはようございます(ッ)」、と、(ッ)が、入るような感じの喋り方が独特で
なーんとなくアニメキャラっぽいところが、1年の男子学生の間で人気だった。
特に、ご本人がアニメキャラを意識してる訳ではないのだけれども
これは世代、と言うか...子供の頃にそういうアニメを見ていたから
そういう刷り込みがあるのだろうか、とも思う。
誰にでも愛らしく振舞う子なので、皆に人気があった。
僕も、この子と話している時には「可愛いな」と思う。
そういうものだと思う。
生態学の本を見たり、文化人類学や比較行動学の本を斜め読みすると
どうやら、男の僕から見る女の子の可愛らしさ、と言うのは
若年の個体に対する庇護の性質から来る物だろう、と思う。
喩えて言うなら、赤ちゃんを可愛いと思うようにプログラムされているのと同じだ。
年を重ねた女の人が、何時までも若々しくありたいと願うのも道理だ。
だから、大抵の女の子にはそう思うように出来ているのだろう.....。
そこまで考えて、はた、と思う。
僕にとって、昨日のリョーコさんは何なのだろう?どういう存在で惹かれるのだろうか、と。
解らなくなり、ふと考えこむ。




