ノイズ
朝から、ニュースはその話題ばかりだった。
『芸能事務所社長に続き、同じ事務所の男性マネージャーが死亡。死因は絞殺――』
画面には、
黒崎隆二の写真。
続けて、
久保田の顔写真が映し出される。
その横では、
『監察医事件ファイル』クランクイン会見の映像が流れていた。
黒崎の隣で、凛は笑っている。
画面の中の自分が、
別人みたいだった。
昨日まで普通に存在していた人間が、
数秒の映像へ変わっていく。
凛はリモコンを取り、
テレビを消した。
部屋が静かになる。
だが、
スマートフォンの振動だけは止まらなかった。
着信。
ニュース通知。
知らない番号。
テーブルの上で、
何度も震えている。
凛はスマートフォンを伏せた。
その時。
――着信が鳴った。
東城だった。
「……はい」
『起きてるか』
「はい」
東城の声は低かった。
疲れているのが分かる。
『今日は外出るな』
凛は黙る。
『マンション前、もうかなり来てる』
「……もう?」
『朝五時には、いたらしい』
東城は短く息を吐く。
『警察もまだ動いてる。コメントは事務所通すから、勝手に話すな』
「分かりました」
『あと、SNS見るな』
凛はテーブルの上のスマートフォンを見る。
振動はまだ続いていた。
『週刊誌、完全に六年前と繋げ始めてる』
凛の指先が止まる。
『さすがに異常だろ。同じ事務所の人間が続けて殺されるなんて』
東城の声は、
感情より先に現実を処理していた。
『映画は中止になるかもしれん』
その言葉だけが、
やけに頭へ残った。
凛は何も言えなかった。
「……社長を殺した人と同じだと思います」
気づけば、
そう口にしていた。
電話の向こうが静かになる。
『警察はまだ何も言ってない』
「でも――」
『今は余計なこと考えるな』
東城が遮る。
『お前まで潰れたら終わる』
通話が切れる。
部屋はまた静かになった。
凛はソファへ深くもたれる。
眠れていないせいか、
頭がぼんやりしていた。
その時。
――スマートフォンが震えた。
駿汰からだった。
『ニュース見た』
短いメッセージ。
少し遅れて、
もう一件届く。
『今すぐ戻れない。ごめん』
返信しようとして、
指が止まる。
何を書けばいいのか分からなかった。
スマートフォンを伏せる。
静かな部屋の中で、
振動音だけが小さく続いていた。




