春が待ち遠しいけど、来てほしくない
冬は、やはり嫌いだ。アルカディアは、バンズ村よりは雪は積もらないけど、風が冷たい。
でも、ヨナは光の魔法を習得したので、春になったらバンズ村に帰るんだ。だから、春に早くなって欲しいけど、来て欲しくない複雑な気持ち。
「火食い鳥の餌は大丈夫なの?」
サリーが飼っている蜂の何匹かは死んじゃった。
「私の世話が悪かったのでしょうか?」とアリエル師匠に尋ねていたけど「全部は冬越しできないのよ」と慰められていた。
私は、秋に雄の火食い鳥は二羽を残して、他のは潰してフライドチキンにした。
全部を残したら、餌が足りなくなるし、雄は卵を産まないからね。前世の感覚だと可哀想! って感じだけど、ここは子どもにも厳しい世界。
冬場に雛を孵す気がないので、雄は要らないのだ。
オリビィエ師匠は、春に雛を増やしたら良いとアドバイスをくれた。
なぜなら、卵を使った料理が好評だし、卵もよく売れるから増やして欲しいと要求が多いから。
「他の森の人も火食い鳥を飼えば良いのに」と言ったら、アリエル師匠に笑われた。
「アルカディアの森の人は、面倒くさい火食い鳥の世話なんかしたくないのよ。でも、森で見つけた卵は……いつ生んだのか分からないから食べにくいし」
確かに、火食い鳥を狩って、卵が近くにあったとしても、食べる勇気はない。
だって、温めていたら……半分ヒヨコになっているのを食べる文化があるのは、テレビで見で知っていたけど、私は無理!
森の人も無理なんだろう。スイーツにも卵を使うし、料理にも、マヨネーズにも!
マヨラー、多い気がする。卵サンド、集会所に置いたら、すぐに売れるもの。
火食い鳥や蜂の為には、早く春になって欲しい。
でも、ヨナがいなくなるのは寂しい。ヨシも寂しいと思うよ。
ジミーは、気にしていないかも? 学舎では、勉強面は苦労しているけど、武術は年上のメンバーとやり合っている。
光の魔法は、ヨシと同じぐらい。でも、夏までには習得できそうな予感。
これ、私が光の魔法で苦労していた時、他の学舎のメンバーに「あと少しだよ!」と励まされていたんだよね。
その時は、単に口だけで激励しているのだと思ったけど、自分で光の魔法を使えるようになって、ちょこっとジミーやヨシが訓練しているのを見ると、何となく「もうちょっとだよ!」と分かるようになったんだ。
サリーも、よく励ましてくれていたけど、私も二人の背中を押しておくよ。
たださぁ、リュミェールって光の魔法を賜っているから、やはり規格外に上手いんだ。
ジミーと体術ではタイマンを張っているから、光の魔法をなかなか習得できないのを見ていられないって態度。
勿論、メンター・マグスに叱られているけど、ジミーって口が重いし、何も感じてない風だけど、割とよく周りを見ているんだよね。
そうじゃないと良い狩人になれないんだけどさ。
「ジミー、あんなへなちょこの言うことなんか気にしないで良いわ。夏までには、光の魔法を習得できるし、夏休みは放牧に行けるわ」
あれ? マリエールって、いつの間にかジミーと仲良くなったのかな?
それに、ジミーも可愛いマリエールの言葉に「ああ、狩りにも行きたい」と返事をしている。
そりゃ、普通のことだけど、ジミーがだよ! 女の子とちゃんと会話している。驚いた。
サリーはエレグレースと一緒に、リュミェールに「年下の子を虐めるなんて格好悪いわ!」と厳しくお説教だ。
「春になったら、ヨシ達の見本にならないといけないのよ。私も、学舎を卒業するのだから、リュミェールもヘプトスやマリエールを助けて、皆を指導しなきゃいけないわ」
ああ、そうか! エレグレースも学舎を卒業するのだ。
「アルカディアから出ていくの?」
同じ風の師匠に付いているエレグレースにサリーが質問する。
「まさか! ドラゴンを討伐できないもの!」
だよね! エレグレースは、ガリウスと同様に師匠の元で修業しながら、ドラゴンを倒せるように頑張るそうだ。
「それと、お金も貯めなきゃ、人間の街ではまともな暮らしはできないもの」
アルカディアの森の人は、大人になったら、人間の街で暮らすのが一般的みたい。だからこそ、卒業試験が厳しいのだ。
森の人って、綺麗だから、親は心配だよね。男だってね!
春は待ち遠しいけど……複雑な気持ちだよ。ヨナだけでなく、エレグレースも学舎を卒業だなんてさ。




