こんなはずじゃなかった……
「その不遜な顔が、驚きに染まる瞬間はさぞ見物だろうねぇ」
うちの部長は、A部の部長から言われて俺達の事をチラリと見た。
『恐らく、君らの考えは正しい。心の準備をしておくように』
そういう意味の込められた視線であろう。
俺と鳥は、うちの部長に向けて同時にコクリと頷いた。
「うちに入ってきた逸材を見て、度肝を抜かすなよぅ……まずは一人目!」
相手の部長がそう言うと、一人の男子生徒が入ってきた。その顔を見てみると、俺のことを見て驚きの顔をしている。
俺はその男子生徒。五十家の視線から、目をそらした。
「一年では、有名で人気もあり、多くの女子達を、うちの部に引き込んでくれるであろう、大型の新星! 五十家渉君だ!」
部長の本音を交えつつ、五十家の事を紹介してきた。
「続いては……」
分かってる……咲さんだろう?
俺はそう言葉が口から出てきそうになるのを堪えながら、相手の部長の言葉を待った。
「先日の一年生限定のミスコンでは堂々の一位! それとは裏腹に、氷の女と呼ばれており、周囲からは美人で孤高の存在として見られている!」
咲さんの事については、徹底的に調べたつもりであったが、まだ取りこぼしがあったようである。ミスコンが開かれているのなんて、今まで知らなかったし、氷の女なんて呼ばれているなんてまったく知らなかった……
そして、咲さんは、Aの部長が言い終わる前に入ってきた。
「志士屋 咲たんだ!」
敬称が『~たん』かよ、それを、全く気にしていない感じの咲さんは、無表情で部室の中に入ってきた。
「あれ……かなりイラついているよ……すっごい無表情……」
俺に向けて、鳥が言ってきた。怒れば無表情になるって人は結構いる……咲さんもそういうタイプだったのか……
そして鳥は、俺がしたようにして、咲さんからの視線から逃げるようにして、顔を咲さんから逸らした。
咲さんは、ジト目で鳥の事を見ている。見るだけでは、怒りなんかの感情を汲み取ることはできないが、あれは、怒っているときの顔なのだそうだ……
うちの部長と、A部の部長との小競り合いが、それから少々続いた。
それから、A部の部長が一通り満足して部室をさった後、俺と鳥はうちの部長からジトリと睨まれる事になった。
「ちゃんと、B部に来るように言わなかったのは失敗だったな」
「そのせいで、あいつの無駄話に付き合わされることになったし……」という部長。俺達のミスのせいで、A部の部長に火をつけて、『うちに新入りが入った』などという自慢話を聞かされる事になったのだ。
「あの二人はどうするつもりだ? B部に勧誘をしてみるかい?」
俺と鳥の会話を聞いていた部長は、大体の事を把握している様子だ。
「もちろん、B部にもう一度勧誘をしてみます」
鳥も、うんうんと頷く。それを見た部長は、満足そうにして言う。
「あの二人を勧誘してくる役は、君たち任せた。僕にできる事といえばマンガを買ってくる事くらいだ。あの二人が読みたがっているマンガがあるなら調達をしてこよう。何でも言ってくれ」
そう言ってくれた部長。
俺と鳥は、視線を合わせて五十家と咲さんをこの部に呼んでくる事を確認し合った。




