咲さんと、五十家を、部室で待っていると
放課後になり、俺と鳥は、サブカルチャー部 Bの部室で、五十家と咲さんが来るのを待っていた。
「お前の方は本当に成功したんだろうな?」
俺は目の前で、マンガを読んでいる鳥に向けて聞いた。
「うん。簡単だったよ。口では渋るような事を言ってたけど、本当は入りたかったみたいな感じで……」
鳥が話した内容は、このようなものであった。
「咲。お願いがあるんだけど……」
鳥は後ろめたいものを感じながらも、咲に話しかけた。
「私と一緒に、サブカルチャー部に入ってくれないかな?」
鳥がそう言うと咲は、ゆっくりと顔を鳥に向けた。
「鳥がそんな事を言うなんて、珍しいね。『マンガがいくら好きでも、あの部に入るのはない』とか言っていなかった?」
「ああ……それは……」
鳥は、サブカルチャー部のA部を見たときに、そう言ったのだ。
「サブカルチャー部って……」
サブカルチャー部は二つあり、自分はB部に入っている事を説明しようとした鳥だが、説明をする前に、咲が話を続けた。
「実は、前から入りたかったんだけど、鳥がああ言っていたんで、入るに入れなかった」
咲はどうやら、前からサブカルチャー部に入りたかったらしい。
鳥がサブカルチャー部を嫌っていたから言い出せなかったのだというのだ。
「放課後になったら部室に行く。待ってて」
そう言い、咲はいつもの調子に戻った。
「ちょっと待て……」
俺はその話に、疑問を感じていた。
「その話を聞くに……」
なんか、咲さんはA部の方に行ってしまいそうな感じだな……
「そういえば、私達が入っているのはB部だって事を言っていない……」
そういえば、俺も五十家にB部だという事を伝えていなかった……
サブカルチャー部として有名なのは、A部の方だ。
有名というか、悪目立ちをしている。
学校の隅の教室にあるにも関わらず、ドアにいっぱいアニメのポスターを貼ってあり、のぞき窓から中を見ると、マンガ、フィギュア、ガンプラなど、部屋いっぱいにアニメグッズが並んでいる。
その異質な空間に、俺はたまらず躊躇をするくらいだ。
あそこまで、『俺はオタクです』的なアピールをするA部は、何を考えているのかわからなかった。
「ちょっと……A部の様子を見てくる……」
そう言い、俺は椅子から立ち上がった。
それに合わせ、無言の鳥も立ち上がる。
俺達の様子を、部長も見ていた。
「多分、二人がA部に行ってしまっているなら、もうすぐこっちに来ると思うぞ」
なんの事はない。
そういった感じで読んでいたマンガを机の上に置いた部長。
そこに、ノックも無しにサブカルチャー部Bのドアが開けられる音がした。
「やっぱりこの部室は、閑散としているな。いらないガマンなんかしていないで、もっと物を置けばいいのにねぇ」
このねっとりとしたような喋り方だけでも、誰がやってきたかが分かる。
A部の部長だ。
A部の部長は、まさにオタクといった感じの風貌をしている。B部の部長はデブであるが、A部の部長は、ガリに出っ歯にメガネという、B部の部長とはまったく逆のオタクの見本みたいな人だ。
俺達の部が気に入らないようで、何かにつけてちょっかいをつけてくる。
「新入部員でも入ったか?」
B部の部長が、A部の部長に向けて言う。うちのB部の部長は、見た目によらす頭がいい。テストの成績だって、毎回トップテンに入っているぐらいなんだそうだ。
「いつもながら、君はせっかちだねぇ。まあ、分かっているの隠すこともないかなぁ……」
俺と鳥は、緊張をしながらA部の部長の事を見た。
「一気に二人もうちの部に入ってきてねぇ。知名度の高いうちの部は大変さぁ。新入部員がどんどん入ってくる」
「A部の場合は、悪目立ちをしているだけだろう」
うちの部長が、言った。
たしかにその通りだ。文化部の部室のなかで、A部の入口には、ポスターが貼ってあり、存在感がハンパないくらいにある。




