初仕事
お待たせしました、第6話です。
今回は海月ふかについて紹介します。
名前:海月ふか(うみつき ふか)
身体的特徴:髪型は重めのボブカットで、髪色は黒
目付きはタレ目で目が死んでいる。
服装:基本的にラフな格好が多く、自由な服装でいる。
好物:ゲーム、アニメ、フィギュア、映画
苦手なもの:射撃訓練、虫、夏
趣味:人間観察
引き続き楽しんでいただければ幸いです!
「花菜さーん! 朝ですよ朝! 初・出・勤!!」
洋館の客室に響く、鼓膜を容赦なく震わせる元気すぎる声と、バァン! という勢いのある破裂音とともに、鷹百奈花菜は意識を強制浮上させられた。パジャマ代わりに借りたスウェット姿のまま、重い瞼をノロノロと持ち上げる。そこには、ドアを開け放ち、にんまりと笑顔で仁王立ちしている海月ふかの姿があった。
「んだようるさいなぁ……出勤〜? どこ行くってんだよどこにぃ」
花菜は信じられないほどに低い声で恨めしげに毒づいた。昨日、あれほど感動の退職届を提出し、ついに掴み取ったはずのアラームをかけずに眠れる無職の朝。それが蓋を開けてみれば、朝から年下の上司に部屋のドアを勢いよくぶち開けられているのだ。
「あはは、そんな怖い顔しないでくださいよ花菜さん! 閻魔様からさっそく緊急の初任務を受信しちゃったんです。ほらほら、十五分で支度して一階のリビングに降りてきてくださいね!」
重い足取りで階段を下り、花菜が一階のリビングへ降りていくと、そこにはすでに人外のメンバーたちが思い思いの姿で集まっていた。ソファの端に置かれた真新しい衣類の山を指差しながら、軍帽を被ったヒガノが涼しい顔で花菜を振り返る。
「あ、花菜さん、そこの装備に着替えてね」
「装備ぃ……? どれどんなもんよ」
花菜が眉をひそめてその装備を引っ掴み、じろじろと眺める。
「致命傷を避ける程度のものですねぇ、あ、武器はこの刀です」
ふかが装備の山の横に置かれていた、華美な装飾の一切ない実用性だけを研ぎ澄ましたような黒塗りの一振りを取り出して手渡した。花菜はそれを鞘ごと受け取り、重みを確かめるように上下に揺らす。
「シンプルな形だな。……まぁ、あの角材に比べりゃ100倍頑丈そうでいいわ」
「角材と比べないでくださいよ! 一応それ、特殊合金製なんですからね!」
ふかが呆れたようにツッコむ横で、花菜はさっさとその装備へと着替えを始めるのだった。
花菜が着替えを済ませ、ほかのメンバーと玄関へ向かうと、マリーが見送りをした。球体関節の指先をドレスの前できちんと揃え、小さな頭を丁寧にしおらしく下げる。
「それでは皆さん、行ってらっしゃいませ」
「マリーちゃんは来ないんですか?」
ふかが不思議そうに問いかけると、マリーは少しだけ青い瞳を曇らせて、申し訳なさそうに俯いた。
「はい、私は戦闘が苦手なので、お力になれず申し訳ありません……」
「いやいや、全然大丈夫ですよ! それじゃあ行ってきます!」
ふかが明るく笑って手を振ると、マリーの表情にもホッとしたような柔らかな灯りがともる。そうして一行はガミーのタクシーに乗り込み、現世の空間を滑るように疾走して、目的の現場へと向かった。
やがて到着した場所は、かなり雰囲気のあるボロボロの廃マンションだった。
「おいおい……アタシ圧死とか嫌だからな?」
花菜が嫌そうに呟くと、アスベルマが笑いながら宣言した。
「ガッハッハ!そんな心配は全くねぇ!何せ俺らにはルーシーが居るからな!ルーシー、防御は頼んだぜ?」
「は、はい!よろしくお願いします!…じゃなくて頑張りますっ!」
「じゃ、じゃあ入りましょうか…」
早く仕事を終わらせたいらしく、ユウアが急かす。
そうして煤けてボロボロになった廃マンションの敷地内へと、早速一歩足を踏み入れる。アスファルトの隙間から伸びた雑草を踏みしめながら、ふと気になったことを花菜が口にした。
「そういやアタシ、幽霊とか見たのは昨日が初めてだけど大丈夫なのか?」
「あ、それはですねぇ?」
マンションの敷地に大きなふかの得意げな声が響いた。「この部隊って人外が多いじゃないですか。なのでその影響から、普段は霊感が全く無いような人でも、自然と見えちゃうんですよこれがー!」
「へぇ、便利なもんだな」
花菜は腰の黒塗りの刀の柄に手をかけ、フッと不敵に笑った。見えるのであれば、あとは昨日と同じように物理で分からせるだけだ。
「あ、それでですね、ここで目撃されてる怪異なんですが……白くて爪の長い、のっぺりした高身長の化け物だとか。もしくは、知人を目撃したなんて噂話もあります。ですから、擬態とか、成り代わり系の怪異の可能性も全然有り得ますね……とりあえず一階から調べましょうかぁ」
ふかの冷静な分析を聞きながら割れた自動ドアを潜り、薄暗いエントランスロビーへと進む。すると、隣を歩いていたヒガノが静かに口を開いた。
「今回って手分けとかするの? マンションそこそこ広いけど」
「いえ、それはやめましょう」
ヒガノの効率的な提案を、ズバッとふかのが即座にとどめた。
「もし成り替わったりするタイプの怪異なら、単独行動中に誰かが成り変わられても気づきにくいですから、危険です」
誰もいないはずの薄暗いロビーに、メンバーたちの緊張感が一気に張り詰めた。全員が「隣にいる仲間が本物か」を疑わなければならない、最悪の心理戦が幕を開けようとしていた。
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