第14話「量産型戦乙女性能テスト」
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会議のあった翌日の火曜日、その放課後。
俺達は戦乙女科の新校舎内にある屋内訓練施設に集まっていた。
「いやー!よく集まってくれたね!
というわけで、今から量産型戦乙女、〈汎用型戦乙女〉の性能テストを行うよー!」
そう言ったのは【ヴァルキリー】システムの開発者である碧風博士だ。
そう、いよいよ【ヴァルキリー】システムの量産化の目途が立ったということで、俺達はその性能テストを行うために集まっていたのだ。
ちなみに今この場にいるのは、TSモードで女体化した俺とマリとマリア、ユウトとユウキとユウナの六人だ。
マチとフレンダとユイ、それにレンカはそれぞれに用事があるらしくてこの場にはいない。
ユウに関してはこの場に来たがっていたが、ハーレムの女子達に誘われて放課後デートに行った(『マサトの戦乙女姿めっっっちゃ見たいけど、彼女達を放っておくことも出来んのだ…っ!』と血涙を流す程に悔しがっていたが)。
「さて、汎用型戦乙女というのは、その名の通り、個人専用の乙女石ではなく、誰もが使用可能な〈汎用乙女石〉を用いて変身するタイプの【ヴァルキリー】システムだ!
ちなみに、『プロト』は本来は『初期型』などの意味を表す冠詞で、『汎用型』という意味は持っていないが、『ジェネリック』とかだと長過ぎるし、語呂もあまり良くないから『プロト』と付けたんだ。まぁ、この量産型は個人用の戦乙女を手にするまでの初期装備的な感じで運用していくわけだから、そういう意味では『プロト』と言っても間違いでは無いしね!」
碧風博士が説明をしながら機械セッティング作業を進めていく。
「やべぇ、オレ超楽しみだ!!」
「アタイもめっちゃ興奮してる!!特にユウトの戦乙女姿にめっちゃ期待っ!!」
興奮した様子のユウトとユウキだが、今回の性能テストにあたっては俺以外にもユウトとユウキも参加することになっている(マリは見学で、マリアとユウナは先輩戦乙女として指南役)。
まぁ、二人の気持ちは分かる、というか俺自身もかなり興奮してるからな!
戦闘用のアーマーを纏って戦うってのは、変身ヒーローに憧れたことのある身としては夢にまで見た光景だ。
魔法少女も変身ヒーロー(ヒロイン)ではあるが、それとはまた少し違うワクワク感がある!
「よし、準備完了だ!じゃあ、優人君、結都ちゃん、悠貴ちゃん、これをどうぞ!」
機械のセッティングを終えた碧風博士が俺達に、中央に黒っぽい石の付いたネックレスを渡してくれた。
「その石が君達を戦乙女にするためのアイテム、汎用乙女石だ!
それを手に掴んで『武装化』と叫ぶことで変身するんだ!」
「「「おーっ!!」」」
碧風博士からは汎用乙女石の付いたネックレスを受け取った俺達はそれを首にかけた。
その後、汎用乙女石を右手に握って三人同時に叫んだ。
「「「『武装化』っ!!」」」
すると、汎用乙女石から白い光が溢れ出し、俺達の全身を包み込む。
その光の中で、胸には胸元の大きく開いたアーマー、腰にはヘソ出しのコルセット、背中には菱形の羽が装着され、レオタード状のボトムスに、腰に巻かれたベルトからはお尻と太ももを守るようにスカート状のアーマー(正面側は三角形に切り取られていて、Vラインが見えている)が展開され、両手には肘の少し上から掌までを覆うアームカバーが装着され、両足には股下十センチメートル下から全体を覆うロングブーツが装着されていく。
やがて光が晴れると、白を基調としつつ、要所に黒いラインの入ったお揃いのアーマーに身を包んだ三人の姿が現れた。
「成功だっ!量産型戦乙女、汎用型戦乙女の完成だっ!!」
「ヤバっ!?マサトめっちゃカッコカワイイやん!!」
「そういうユウトもカッコカワイイぞっ!!はぁ…!はぁ…っ!」
「ユウトとユウキも最高に似合っとーやん!!」
俺達は互いに互いを褒め合った。
そこへマリとマリア、ユウナもやって来る。
「汎用型戦乙女の衣装は三人とも共通なんやねー」
「よく見れば、私達の戦装束とは少しデザインが違うんだね」
「本当だ!オリジナルの戦乙女にはあった、腰のくびれ部分にあった大きなリボンが無くなっとー!」
「ああ!よく気付いたね郁凪ちゃん!量産型だからコストカット的な意味合いも含めて、戦装束のデザインは簡素化されてるんだ」
「ちなみに使える魔法属性はどうなっとーとですか?」
ユウトの質問に碧風博士が興奮した様子でこう答える。
「いい質問だね、結都ちゃん!!
汎用型戦乙女の扱う疑似魔法の属性はズバリ〈無〉!つまり、四属性混合の属性となるんだ!」
「え!?それって、魔砲と同じってことですか?」
ユウキの問にますます気分を良くする碧風博士。
「そう!悠貴ちゃんの言う通りだよっ!!
【プロトヴァルキリー】システムには瑠衣ちゃんの開発した【マギキュリィ】システムを参考にして作られたんだ!
〈疑似魔砲〉とも言えるこのシステムを使えば、魔法師は勿論、魔法を使ったことのない非魔法師であっても比較的簡単に高威力の攻撃を出すことが出来るからね!」
その後も碧風博士は、「本来量産型の試験はもっと先にやる予定だったんだけど、ゴブリンに続いて魔女教やら擬似魔人やらの事件が続いているから一刻も早く運用を開始しなければということで、うんたらかんたら……」と語り続けていたが、あまりにも長過ぎたので割愛させていただく。
要するに、魔法師以外にも即戦力となりうる人材を確保したいから、量産型戦乙女の生産計画を早めたということらしい。
「……というわけだから、早速性能テストといこう!
基本は魔砲とおなじだから、ここは魔砲少女である悠貴ちゃんからテストしてもらおうかな?」
「よっしゃ!了解だぜ!」
碧風博士に指名されたユウキが訓練施設の中央へと移動すると、リアルホログラムの魔獣〈ガロメ〉が現れた。
ガロメはカブト虫のような見た目をしており、大きさは五〜十メートル程度あるが、今回の個体は五メートル程度の最小サイズだった。
その主な攻撃方法は、頭の角による攻撃と、その角から放つ電撃攻撃。
またその背中の甲羅は頑丈で、物理攻撃には無敵の強さを誇るが、腹の肉は柔らかく、水や氷、炎の攻撃に弱いという弱点がある。
「では悠貴ちゃん、準備はいいかな?」
「おうよ!」
「では、テスト開始だ!」
碧風博士の合図と共に、リアルホログラムのガロメがユウキに角を向けて電撃を放った。
それを空へと飛んで回避するユウキ。
「いきなりかよ!容赦ねぇなー!」
『オンドゥドゥドゥドゥ…ッ!!』
「お返しするぜ!『戦装具・剣起動』っ!」
ユウキがそう叫ぶと、右手に戦装具の剣が現れた。
ちなみに、汎用型戦乙女の戦装具は全員共通で剣と銃とのこと。
「そりゃぁああああっ!!『ブレードスラッシュ』っ!!」
ユウキが剣を構えて魔砲(正確には擬似魔砲)を放つと、ガロメは咄嗟に硬い背中の甲羅を向けてガードするが、ユウキの放った魔砲はガロメの硬い甲羅を斬り裂いたのだ。
『オンドゥルルルゥウウウッ!?』
「おおっ!!さっすがは魔砲だ!!一撃の威力が半端ねぇっ!!」
『オンドゥルルゥウウウ…ッ!!』
だが致命傷には至らず、ガロメは再びユウキの方に向き直ると、再び角の先端から電撃を放つ。
「おっと!そんな攻撃当たらねぇよっ!!」
対してユウキはそれらの電撃を空中を飛びながら華麗に回避していく。
その様子を見ていたユウトが驚きの表情を浮かべながらこう言った。
「ユウキの奴、あんなに『飛行』魔法上手かったか?」
「なんかマサト君みたいな軌道の飛び方しとーね」
同じように驚きの表情を浮かべていたマリがそう言うと、碧風博士がこう言った。
「【ヴァルキリー】システムの飛行法は『飛行』魔法を科学技術で補ったものだからね、通常の『飛行』魔法では難しい軌道の飛び方も可能なのさ!
まぁ、優人君のように『飛行』魔法に適正があってかなり複雑な軌道を描いて飛ぶことの出来る魔法師も確かにいるけどね。あと、悠貴ちゃんの飛び方が優人君に似てるのは、それだけ優人君の飛び方を見ていたということじゃないかな?」
そう碧風博士が説明している間にも、状況は動いていた。
自慢の電撃攻撃が当たらないことに業を煮やしたガロメが、背中の甲羅を開き、そこから薄い飛行用の羽を伸ばすと、空中にいるユウキへと角を突き出しながら向かって行ったのだ。
『オンドゥルルルルルルッ!!』
「電気がダメなら直接ってか!?いいぜ、かかってきなっ!!」
対してユウキは空中で静止し剣を構えて迎撃の体勢をとった。
『ドゥルルルルルルッ!!』
「でやぁああああああっ!!『ブレードスラッシュ』っ!!」
ユウキとガロメが空中ですれ違った直後、ガロメの角が真ん中から切断された。
『オンッ!?』
「自慢の角もその状態じゃ何の役にも立たねぇな!」
そして再び空中で向かい合う両者。
『オンドゥドゥドゥドゥドゥッ!!』
自慢の角を斬られた怒りから再びユウキへと突進していくガロメだったが、こうなるとユウキの独壇場だ。
「弱点の腹がガラ空きだぜ!『破邪の斬撃』っ!!」
ユウキがそう叫ぶと、剣の刀身が太く伸び、三メートル程の大剣に変化したかと思うと、その刃全体に膨大な魔力を纏わせて横薙ぎに剣を振るった。
『オン…ッ!?!?』
横薙ぎに振るわれた剣は、ガロメを真横に切断し、斬られたガロメはその切断面から上下に向かってゆっくりと消滅していった。
「テスト終了だ!いやー!良かったよ、悠貴ちゃん!!実にお手本的な擬似魔砲の使い方だった!!汎用型戦乙女としての戦闘データもバッチリだよ!!」
「ありがとうございました!!」
戦闘を終えたユウキは、碧風博士からの称賛を浴びながら俺達の元へと戻って来た。
「いやー!戦乙女いいな!!めっちゃカッコいい!!特にあの必殺技とかすっげぇいい!!」
「分かるっ!!メッチャいいよな!!オレもなんか魔法放つ時にオリジナルの技名とか考えようかな!?」
「じゃあ、ユウキちゃんもユウトちゃんも戦乙女科に編入する?」
そんな感じで盛り上がる【アカユウトリオ】を横目に見ながら、俺もまた内心で興奮しっ放しだった。
技名が厨二心をくすぐられるというのは勿論あるが、それだけでなく、戦装束姿のユウキが戦う姿は、魔砲少女装束姿のユウキとはまた違う魅力に溢れていて、そういう意味でも興奮が抑えきれなかった。
その後、データ処理を終えた碧風博士が今度はユウトに声をかけた。
「よし、じゃあ次は結都ちゃんのテストだけど、結都ちゃんの相手は郁凪ちゃんにしてもらおうかな!」
「お!オレは対人戦か!」
「うん、今後は魔女教の魔法師だったり擬似魔人だったりを相手にすることも増えるだろうし、それ以外にもネオゴブリンのような未知の敵と遭遇しないとも限らない。
そうしたあらゆる状況に対応するためにも対人戦のデータをとっておきたいんだ。ああ、勿論訓練用の非殺傷設定魔法陣を使うから、二人とも全力でやってもらって大丈夫だよ!」
【ヴァルキリー】システムは、乙女石によって大気中から収集したマナを使って、戦装束や戦装具に組み込まれた魔法陣を起動することで擬似魔法(魔砲)を発動するシステムとなっている。
だから、この組み込まれた魔法陣を書き換えることで非殺傷設定の擬似魔法(魔砲)に変えることが出来るという。
非殺傷設定であれば、物理的なダメージや傷を負うことは無いので、戦乙女同士の戦闘訓練をするのに最適というわけだ。
「よっしゃ!じゃあ、ユウナ!オレと勝負だっ!!」
「いいよ、魔法少女のユウトちゃんにはまだ敵わんけど、今のユウトちゃん相手なら負けんけんね!『武装化』っ!!」
ユウナが自身の乙女石である〈終焉の紅玉〉を手に掴んで叫ぶと、ユウナの姿は赤を基調とした戦装束を身に纏ったヴァルキリールビーへと変身した。
「っしゃ!行くぜ、ルビー!」
「ええ!かかってきなさいっ!」
こうして二人の戦乙女による対人テストが始まった。
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「よし!そこまで!二人とも、戦闘をやめて戻って来て!」
ルビーとユウトの戦いはなかなかの激闘だった。
当初は、魔砲の威力と、非魔法師であるルビーよりも『飛行』魔法に慣れているユウトがその機動力で優勢に立ち回っていたが、ルビーの元々の運動神経の高さと戦乙女としての戦闘経験の僅かな差から、最終的にはルビーがユウトを追い詰める形で決着がついた。
「あーっ!負けたー!っぱ戦乙女戦やとまだルビーには勝てんかー!」
「でもギリギリやったよ。初めての変身であそこまで動けるなんて、さすがはユウトちゃんやね!」
互いに健闘を称えあうユウトとルビー。
そこへ、観戦していたユウキがやって来てこう言った。
「にしても、量産型でも普通の戦乙女とほぼ同等の力を発揮出来るもんなんだなー」
「それはそうさ!でなければ実戦では使えないからね。とはいえ、量産型は武器が共通だからね、人によって得手不得手もあるから、やはり個人用に武器などをカスタマイズした本来の戦乙女の方が性能的には若干優れているということにはなるかな」
ユウキの疑問に碧風博士がそう答えた。
「まぁ今回の場合は、結都ちゃんが魔法師としての経験が多かったから、性能以上の成果を出せたとも言えるだろうね。
さて、じゃあ次は優人君と麻里亜ちゃんによる対人テストをやってもらおうかな!」
「了解しました!」
「え!?俺はマリアとやるんですか!?」
碧風博士の言葉に、俺は驚きの声をあげた一方で、マリアは普通に了承の言葉を返していたことから、マリアは事前にこのことを知らされていたようだ。
「それは勿論!さっきも言ったが、量産型計画を早めた理由の一つに魔女教対策というのがあるからね。リアルホログラムより対人戦のデータが多い方が助かるんだ。それとも、優人君的には麻里亜ちゃんと戦うのに抵抗があるのかな?」
「それは…、」
「私なら大丈夫だよ、マサト君!私、マサト君が相手でも負けるつもりはないからね!」
当のマリア本人がどうやらやる気のようなので、ここで俺が断るわけにはいかないだろう。
「分かった、お手柔らかに頼むぜ、マリア!」
「了解っ!『武装化』っ!!」
マリアが自身の乙女石である〈光輝なる真珠〉を手に掴んで叫ぶと、マリアの姿は白を基調とした戦装束を身に纏ったヴァルキリーパールへと変身した。
そして互いに訓練施設の真ん中に移動し、ある程度距離をとって構えた。
「では、優人君とヴァルキリーパールによる対人戦テスト開始!」
「『戦装具・銃起動』っ!」
「『戦装具・機銃起動』っ!」
碧風博士の合図で、俺達はそれぞれの戦装束を同時に装備し、互いに技を放った。
「『アクセルシュート』っ!!」
「水龍の息吹っ!!」
俺の放った魔砲の弾丸はパールが連続して同じ軌道で放った無数の水の弾丸によってあっさりと相殺されてしまう。
「なっ!?」
「威力じゃ私の水の弾丸一発は魔砲の弾丸一発に負けるけど、数撃てば魔砲の弾丸を相殺することは出来るのよ!」
「理屈じゃそうやろうけど、同じ軌道で連射出来るのはおかしいし、そもそもほぼ同時に放った俺の弾丸に対して正確に狙いを付けられるのもおかしいやろ!?」
「戦乙女に変身すると、身体能力や動体視力なんかも上昇するからね!」
そう言いながらパールが俺に向かって水の弾丸を次々と放ってくる。
俺はそれらを複雑な軌道を描いて飛ぶことで避けつつ、パールのスキを伺う。
「くっ!?やっぱりマサト君の『飛行』能力はヤバいね…っ!動きを予測しながら撃ってるのに全然当たらない…っ!」
最初の一発は互いに静止した状態から放ったものだったので、パールはこちらの放った弾丸の軌道に合わせて、水の弾丸を同一軌道で連射することで相殺してみせた。
ならば、パールにも予測出来ない変則的な動きで撹乱してしまえばいい!
「おいおいマサトの奴、またえげつない速さと軌道で飛んでんなー…」
「あの動き、魔法少女以上だぜ…!?」
「これは想定以上の動きだねっ!!元々の彼の『飛行』魔法に対する適性と【ヴァルキリー】システムによる飛行補助システムが合わさって、まさに優人君独自の『飛行』魔法へと昇華している感じだっ!!スゴいよっ!!最高だよ、優人君っ!!」
「さすがはマサト!」
「マサト君もスゴいけど、マリアちゃんも負けるなー!」
俺達の戦闘を観覧しているユウト達の声が聞こえてくるが、今は目の前のパールの動きに集中する。
そして、ほんの一瞬パールにスキが出来たのを見逃さなかった。
「『戦装具・剣起動』っ!」
戦装具を剣に換装させ、変則軌道でパールを撹乱しながらその背後をとった俺は、パールに向けて剣を振り下ろした。
「『破邪の斬…っ、」
「待ってたよ、マサト君!」
その瞬間、俺はまんまとパールの策略にはめられたことを知った。
パールは振り向きざまに、俺の振り下ろした剣を機銃で受け止めたのだ。
「動きが読めないなら、そっちからこっちに来てもらえばいい、ってね!」
「まさか、わざとスキを作って俺を誘い出した…!?」
「御名答っ!『戦装具・刀起動』っ!」
パールは俺の剣を受け止めている機銃を刀へと換装し、続けて技を放つ。
「『水龍の嘶き』っ!!」
パールの刀によって俺の剣が真ん中から切断される。
「く…っ!?」
このまま追撃を受けるわけにはいかないと思った俺は、咄嗟に地面を蹴って後方に飛ぼうとする。
「甘いよっ!!」
しかし、俺のその行動を読んでいたパールは、腰のくびれ部分に装着されているリボン、その結び目から下にテールのように長く伸びた部分をさらに伸ばして俺の左足首に絡みつかせてきた。
「なっ!?そのリボン伸びるのかよ!?」
「おおっ!!あのリボンにはそんな使い方が!?」
「え!?先生も知らんかったと!?」
俺が驚くのと同時に、観覧していた碧風博士も驚いている様子だった(それにツッコミを入れたのはマリだ)。
まぁ、【ヴァルキリー】システム自体はマリアのいた並行世界の技術で、碧風博士はそれを模倣して作っているに過ぎないから、本人でも把握しきれていない機能があってもおかしくはない、のか……?
それはともかく、碧風博士も知らなかったそのリボンの機能で左足首を掴まれてその場から逃げられなくなった俺の首筋に、パールが刀の刃先を突き付けたことで俺達の対人戦テストはあっさりと終わった。
「はい、これで私の勝ちだね♪」
「くそぉ…、もうちょっと善戦出来るかと思ったんやが……!」
「二人ともお疲れ様!いやー、これまたいいデータが取れたよ!!優人君も麻里亜ちゃんもありがとねー!!」
こうして量産型戦乙女の性能テストは終わり、俺達は汎用乙女石を碧風博士に返却した。
少しだけ名残惜しさを感じていると、最後に碧風博士がこう言った。
「心配せずとも、今日のデータを元に君達専用の乙女石を作る予定だからね!」
「本当ですか!?」
「マジか!?」
「よっしゃー!!」
「それって、マサト君達を戦乙女科にスカウトするってことですか?」
マリの質問に碧風博士は首を横に振りながらこう答えた。
「いや、そうじゃないよ。
万が一魔法少女、もしくは魔砲少女の力が使えなくなった時の保険としてだよ」
「魔法少女に変身出来なくなった時の保険、ですか…?」
「うん。麻里亜ちゃんの思い出した並行世界の記憶の話を聞くと、麻里亜ちゃんは一次的に魔法師として戦えなくなったから戦乙女になったということらしい。その理由や原因までは本人もまだ思い出せていないようだが、君達にも同じような状況に陥らないとは限らないからね、選択肢はいくつもあった方がいいということだよ!」
ということで、俺は将来的に〈ヴァルキリーブラック(仮)〉として戦う日が来るかもしれないという事実に胸を躍らせながら、皆と一緒に寮に戻るのだった。
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それから数日の間は何事も無い日々が続いた。
その間に、『幼児集団誘拐事件』に巻き込まれたが、その後魔法師の道を歩まず、一般人として暮らしている少女達の保護が進んでいった。
すでに擬似魔人となってしまった少女達は、元の人間に戻る事は難しいが、外科的手術によって外見の整形と、不完全な魔操細胞を安定化させるための魔石を身につけさせることで、その暴走を防ぐことに成功している。
しかし、誘拐事件に巻き込まれた一部の少女達の行方が分からなくなっているという不安要素も同時に出て来た。
その行方不明になっている少女達は、擬似魔人の騒動以降に忽然と姿を消したらしく、守衛隊や博士達は魔女教の仕業ではないかとしてその行方を探している。
そんな不安要素のことが気になりつつも、気が付けば世間はゴールデンウィークと呼ばれる五月の長期休暇に入っていた。




