第14話「二年生組の魔法少女」
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学園生活三日目。
この日は魔法少女クラスとしての初実技授業の日だ。
座学の授業では魔法少女クラス、魔砲少女クラス及び戦乙女科の三クラス合同だったが、今日の実技授業ではそれぞれに分かれた上で、三学年合同(戦乙女科はまだ一年生しかいないが)での授業となる。
いずれは実技授業も三クラス合同にして、それぞれの特性を生かしたコンビネーションなどを練習していく予定だそうだ。
「そういや、三年の【雪月花】先輩達とはもう何度か顔合わせしとるけど、二年の先輩達とは初めてやな」
「そっか、確かにマサト君はまだ会ったことないんやね」
体操着に着替えた俺達は、屋内訓練施設に集まっていた。
今この場にいるのは、俺とマリ、ユウト、フレンダ、そして緑川博士の妹のサンゴの五人、つまりは一年の魔法少女達のみだ。
先輩達はまだ来ていない。
「【雪月花】先輩達も結構キャラ濃い先輩達やけど、二年生の先輩達もキャラ濃い人ばっかやけんなー」
「まともなのはボク達一年生だけだよ」
「いや、ボクからすればユウトちゃんとフレンダちゃんも結構キャラ濃いと思うけどね…」
「本当にまともなんは私とサンゴちゃんくらいっちゃん」
「あはは…」
そんな話をしていると、緑川博士と共に、六人の少女達が訓練施設に入って来た。
その内三人は【雪月花】先輩だったから、残りの三人が二年生の先輩達なのだろう。
「待たせたね、一年生の諸君!
では、これより魔法少女クラスの実技授業を始めようと思うが、その前に自己紹介をしてもらおう。もうすでに皆顔馴染みだとは思うが、黒霧兄君と二年生諸君は初顔合わせだろうしね」
と緑川博士が言うので、最初は自己紹介から始まった。
「じゃあ、まずは三年生から」
「はーい!あたしは野薔薇雪音!生徒会長やってまーす!えっとー、水の魔法師でー、マジョリティローズに変身します!マギアデバイスは杖型だよ、よろしくー♪」
「わ、わたしは…、鷹橋月音、です…。生徒会の会計をやってて…、えっと、それで…、雷の魔法師で、マジョリティホークに変身します。マギアデバイスは弓型、です。よろしくお願いします…!」
「やぁ、ボクは風霧花音、生徒会副会長をやっているよ。身長は161cm、スリーサイズは上から93、54、85、誕生日は7月21日、好きなタイプはカワイイ女の子とカッコよくてカワイイ男子さ。恋人募集中なので、ボクに食べられたい子達はいつでも声をかけてくれたまえ♪…え?ああ、そっか、炎の魔法師でマジョリティウインディに変身する、マギアデバイスは長剣型だよ、よろしくね♪」
相変わらずカノン先輩はぶっ飛んでるなー…
他の皆も「またか…」みたいな感じで呆れ顔をしている…、いや、約一名以外は。
「うむ、では続いては二年生、自己紹介を頼む」
緑川博士がそう言うと、最初に口を開いたのは、カノン先輩の自己紹介をうっとりとした表情で聞いていたセミロングの先輩だった。
「はい!あたしは海原詩奈です!水の魔法師で、〈マジョリティオーシャン〉に変身します!マギアデバイスはカノン先輩と同じ長剣型です!よろしくお願いします!あ!あと、好きな人はカノン先輩ですっ!!キャッ♥」
「「「「知ってる」」」」
「ふふ♥シイナ君、今夜は寝かせないよ♪」
シイナ先輩の発言に、セツナ先輩とツキネ先輩と残り二人の二年生の先輩がツッコミ、カノン先輩がボケなのか本気なのかよく分からない答えを返した。
どうやらシイナ先輩がカノン先輩のことを好きなのは周知のことらしい。
続いて、二人目の二年生の先輩、ショートポニーテールの外国人っぽい見た目の少女が自己紹介を始めた。
「ワタシはリーリア・スカイウォーカーです!第7魔法都市生まれの第12魔法都市育ちなので、この通り、日本語はペラペラでーす!むしろ英語は少ししか話せません、アイムソーリー♪えー、あと何話すんだっけ?あ!そうそう、ワタシは炎の魔法師で、〈マジョリティスカイ〉に変身します!マギアデバイスは杖型です!皆、よろしくね〜♪」
ちなみに、第7魔法都市とはイギリスの旧ロンドンのことだ。
そして、最後の一人、ツインテールの先輩が自己紹介を始めた。
「私は石動蘭!雷の魔法師で〈マジョリティロック〉に変身します!マギアデバイスは鎌型!よろしくお願いしまーす♪」
そう言ってパチン!とウィンクしてみせたラン先輩。
その視線はマリに向けられていたような気がしたが気のせいだろうか…?
その後は、俺達一年生が自己紹介をし、いよいよ魔法の実技授業が始まった。
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初回の今日は、【マジョリティ】システムに慣れることをメインとした授業が行われた。
と言っても、すでに実戦経験のある【雪月花】先輩や、春休み期間を利用して練習をさせてもらった俺を除く一年生はほぼ【マジョリティ】システムを使いこなせていたため、主に二年生組と俺のための授業みたいになっていた。
俺も最初の頃よりは使いこなせているが、それでもまだ完璧とは言えない…
一方、二年生の先輩達は、変身して魔法を使うのがほぼ初めて(マギアコンパクトの動作チェックで始業式の日に一度だけ変身しているらしい)ということなので、その扱い方に苦戦していた。
「うわっ!?やっ、ヤバっ!?」
「こ、これが魔法少女の力ですかっ!?」
「魔石による魔法使用時とは全然勝手が違いますね!威力を抑えたつもりでもかなりの反動が来ます…!」
何故、二年生が今回ほぼ初めてのマジストーンの使用になったのかについては様々な理由があったそうだ。
まず、最優先とされたのがマリ達一年生組。
これは今年度から魔法少女クラスを発足するに当たって、最低限新入生が在籍していなければ形にならないだろうということで、マリ達は中三の終わり頃からマジストーンを与えられて特別授業が行われていたという。
続いて、三年生組の【雪月花】先輩達。
【雪月花】先輩達に関しては、高校二年生にしてすでに戦闘魔法師としての実戦レベルに至っていたことから、実戦で魔法少女の力をアピールし、国などから研究予算を出してもらうための広告塔としての役割を果たしてもらうために、早い段階からマジストーンを与えられていたそうだ。
その結果、俺がマジョリティブラックに変身するきっかけとなった魔物災害の際に、いち早く魔法少女として駆け付けてその実力を内外にアピールすることに成功し、研究予算は増額、その結果、二年生組のマジストーンを予定より早く完成させることが出来たのだという。
「え!?二年生のマジストーンは完成してなかったんですか!?」
「ああ、当初の予定では五月のゴールデンウィーク明けまでに完成出来ればいいな〜、という感じだったんだ。だからそういう意味では、あの日翼タイガーが出現してくれたことには感謝しているし、それに、翼タイガーが出現しなければ、黒霧兄君がマジョリティブラックに変身することも無かっただろうからね」
マジストーンは従来の魔石とは異なり、その製造コストや原料にかなりの費用がかかるため大量生産は難しいらしい。
だから、三月までの予算ではギリギリ二年生のマジストーンは作れなかったが、【雪月花】先輩(とおまけ程度に俺)の活躍で、追加予算を貰うことが出来、その予算で二年生のマジストーンを完成させられた、ということらしい。
「その割には、俺以外には使えないマジストーンブラックなんてものを作る余裕はあったんですね…?」
「あっはっはっは!これは手痛いところを突かれたなっ!いやはや、研究者というのは難儀なものでね!誰にも使えないと分かっていても、つい研究欲が抑えきれなくてね!まぁ、結果的に君という適合者と出会えたのだから良かったじゃないか!」
そうして魔法少女としては出遅れてしまった二年生の先輩達だが、戦闘魔法師としての訓練はマリ達よりも一年多くしてきているため、すぐにコツを掴み、その日の内には魔法少女の力を使いこなせるようになっていた。
さすがは先輩達だ…!
「ってことは、まだ使いこなせてないのは俺だけってことか…」
「まぁまぁ、マサト君、気にする必要は無いっちゃん!」
「そうっちゃん!それに、使いこなせてねぇつっても、機動力はオレらん中じゃ一番やし、命中精度が低いのだって、広範囲高威力の魔法でカバーすりゃどうとでもなるって!」
「そうそう!それにマサトがダメな部分はボク達でカバーするから大丈夫だよ!」
落ち込む俺をマリとユウト、フレンダが励ましてくれる。
「そうだぞ、黒霧兄君!一人が全てにおいて完璧である必要は無いんだ!
いくら【マジョリティ】システムが優れているとはいえ、単独での任務をさせる気はこちらにもない。基本は三人以上、理想は魔法少女、魔砲少女、戦乙女の三位一体の形で運用していきたいと考えているからな!」
緑川博士もそういう風に言ってくれた。
さらに先輩達もやって来て俺に声をかけてくれる。
「ま、そうは言われても、男子として好きな女の子達を守れるだけの力は欲しいよね?どうだい、マサト君?この後、ボクと二人っきりで秘密の訓練をしないかい?」
「はいはい、カノンちゃんは黙ってあっちに行こうねー」
「ご、ごめんね?マサト君…?カノンちゃんの言葉は気にしないでね…?」
「はいはい!カノン先輩!あたしと二人っきりの夜の秘密訓練して下さいっ!!」
「シイナー?カノン先輩は夜のとは一言も言ってないよー?」
「そんなことより!私はマジョリティブラックの闇の魔法に興味があります!!人類史上唯一の闇の魔法師にして、唯一の男性魔法少女!!はぁ…!はぁ…!実に興味深いですっ!!今度じっくり研究させてもらえませんかっ!?」
「はいはい、落ち着きたまえ諸君!今日の実戦授業はここまでだ!」
なんかラン先輩の目がヤバかったが、間に緑川博士が入ってくれたことで事なきを得た。
それから博士がこう続けた。
「マギアコンパクトはもう君達の物だから、この後、自主訓練などでは自由に使用してくれて構わない。だが、学園の敷地外での使用は、私か学園の教師の許可が無ければ使用出来ないので気を付けるように!以上、解散っ!あ、黒霧兄君だけは少し残っててくれ」
緑川博士のその号令で、実技授業の初回はお開きとなった。
*
その後、訓練施設内に残った俺と何故かその場に一緒に残っているマリとユウトとフレンダ、さらに同じように実技授業を終えたマチとユウキとマリア、ユウナとレンカ、さらにユイとユウまでやって来て、緑川博士の説明を聞くことになった。
「何やらギャラリーが多いようだが、黒霧兄君の関係者達ばかりのようだからちょうどいいな」
「ちょうどいい、とは…?」
「実はね、黒霧兄君のマギアコンパクトにだけ他の皆のには無いオプションを追加しておいたんだ!その名も、〈TSモード〉だっ!!」
「「「「「TSモード?」」」」」
なんかその字面ですでに嫌な予感はしていたが、続く緑川博士の説明で俺の嫌な予感は的中することとなる。
「〈TransSexualモード〉、つまりは黒霧兄君が日常でも少女の身体でいられるようにするモードだ」
「ぬぁあにぃいいいいいっ!?」
と、その後に「やっちまったなぁ!」というセリフが続きそうな、杵と臼でネタを披露していたという大昔のお笑い芸人のようなリアクションをするユウ。
「それってつまり、普段からマサトが少女の身体でいられるようにするモードってことかぁっ!?」
「うん、だから緑川先生そう言ってたよね、ユウ君…?」
興奮のあまり緑川博士の説明と同じ事を繰り返すユウと、それに冷静にツッコむユイ。
「おお…!ま、マジでか…!?そんなん反則っちゃろ…っ!?」
「そ、それはやべぇな…!!女子になったマサトとデートとか…、そんなんアタイの理性が持たねぇ…っ!!」
「その場合、何て呼んだらいいと…?マサト?それとも、マサちゃん?はぁ…、はぁ…♥」
ユウトとユウキとユウナの【アカユウトリオ】は、早くも少女姿になった俺と日常を過ごす様子を妄想して鼻息荒くしていた。
一方、冷静なのはマリとマチとマリアだった。
「う〜ん…、確かに少女姿のマサト君は見てみたいっちゃけど……」
「妹としては少し複雑な気分…」
「変身した姿とはまた違うもんね…」
「ちなみに、このモードは魔法少女としての力は使えない代わりに、普通に着替えたりすることが可能になっている。
初期状態では制服姿が登録されているが、制服を脱いで別の服に着替えることも出来るし、何なら裸になってそのまま風呂に入ったりすることも出来るぞ?」
「「「マサト君(お兄ちゃん)今すぐTSモード起動してっ!!」」」
着替えが出来るという緑川博士の説明にあっさりと手のひら返すマリ達。
…あくまで、着替えが出来るという部分に興味を示したんだよな……?
「……、女の子マサト君と一緒にお風呂に入って女の子の部分を……、うふふ♥」
「……、お兄ちゃん、いやお姉ちゃんとお風呂、お姉ちゃんとお風呂……、はぁ、はぁ…♥」
「……、マサト君どんな服が似合うかな〜?やっぱ清楚なワンピース?それともゴスロリ?いやいや……、ぶつぶつ…」
三人が何やら小声でぶつぶつと言っているが、聞こえなかったことにしよう。
「んー、でも普段から少女の姿にってそれなんか意味あるん?」
「確かに。入学前ならまだしも今さら過ぎない?」
と、意外にも現実的な意見を出すレンカとフレンダ。
そうなのだ。
女子科に入学するために普段から女子の姿に変身していなくてはならないということなら分かるが、もうすでに男子として女子科に入学している以上は、このTSモードはあまり意味が無いような…?
「いくつか理由はある。
一つは、黒霧兄君の【魔女】の〈呪い〉による副作用の治療だ。
マジョリティブラックの姿である限り、〈呪い〉による発作は起こらないことと、マジョリティブラックに変身して以降は男子に戻っても発作の症状が改善されつつあることが分かった」
緑川博士の言う通り、確かに俺がマジョリティブラックになって以降は発作を抑えるための薬を飲む量が減り、発作が起きても軽い咳程度で済むようになってきていた。
「これは恐らくだが、女体化することで、〈呪い〉に対しての抗体が出来つつあるということだろう。であれば、普段の生活においても常時とまでは言わないが、一日数時間程度女子として過ごすことで、黒霧兄君の〈呪い〉による症状はいずれ完治するのではないかと考えている」
「おお!良かったじゃん、マサト!」
「なるほどな〜、ちなみに他の理由っちゅうのは?」
「うむ、もう一つは単純に、女子の身体に普段から慣れておくことで魔法少女となった時のパフォーマンスをより高いレベルでこなせるようにするためだ。
特に黒霧兄君の場合は、変身前と後で胸の重量の増減が半端じゃないだろうからな」
「あ〜…!」
「確かにその通りやな。ブラックのおっぱいえげつないもんな〜…」
確かに、初めて変身した時よりはこの胸の重さやスースーする股間にも慣れてはきたが、激しく動くとどうしても普段との違和感がぬぐえない。
そういう意味では確かにTSモードは有効なように思えるが…
「まぁ、そのモードを使うも使わないも黒霧兄君の自由だ。
ああ、それとTSモードに関してはさっきも言ったが、ただ性別を変換するだけで魔法を使える状態では無いから学園敷地外での使用もOKだ。とはいえ、悪用はしないでくれたまえよ?」
「はい、分かりました。〈呪い〉による発作を治せるということなら、とりあえずは女子寮の中だけで使用してみ、」
「マサトっ!!今すぐTSモード起動して俺とデートに行こうっ!!」
すると、目を血走らせて興奮したユウが俺に襲いかからんばかりの勢いで飛びついてきた。
「は、はぁっ!?んなことするわけっ、」
「ちょ待てっちゃっ!TSマサトとデートするんはオレらが先っちゃっ!!」
「そうだぜっ!デートするなら恋人であるアタイらと行くに決まってるだろうがっ!!」
「ユウさんにはハーレムの女の子達がおるんやけ、その子らとデートに行ってあげんと!」
そんなユウを、【アカユウトリオ】が蹴散らして俺に抱きついてきた。
「痛いっ!?でもユウト達に蹴られるなんて最高だっ!!もっと蹴ってくれ…、じゃなくっ!俺だってマサトの、いやマジョリティブラックのハーレムメンバー(仮)なんだっ!デートに行く権利くらいはあるハズだっ!!」
「自分で(仮)ってよく言えるな…」
「というか、(仮)の時点でデートに行く権利なんてねぇよ…」
「そもそも、誰もユウさんのことハーレムメンバー(仮)とすら認めとらんけんね?」
「そんな…っ!?せ、せめてハーレムメンバー(仮)くらいには、」
「はいはい、これ以上ユウ君が絡むとややこしくなるから、あたし達は退散しようねー」
「ちょっ!?お姉ちゃんっ!?待ってくれっ!!せめてTSモードのマサトの姿を一目だけでも…っ!?あぁああ……!」
駄々をこね始めたユウを、ユイが引きずって連れて帰った。
「さっ!邪魔者はおらんくなったけん、早速デートに行こうぜ、マサト!」
「いや、デートって、さすがにTSモードで町中を歩く勇気は、」
「マサトに似合うカワイイ服とかいっぱい買おうぜっ!」
「いいね!あ!それなら下着とかも必要になるよね!」
俺の意見は無視して盛り上がる【アカユウトリオ】。
さらにそこへもう一人、
「それなら私も一緒に行きたいですっ!マサト君の服、私も一緒に選びたいですっ!」
「ま、マリアも!?」
「おお!いいぜ!マリアも一緒に行こう!何なら他の皆も、」
「「待ってっ!!」」
と、マリとマチの二人がユウト達に待ったをかけた。
「ん?二人はTSマサトとデート行きたくないと?」
「勿論、デートにも行きたい。だけどその前に…、」
「TSお兄ちゃんとお風呂に入るのが先だよっ!!」
「「「「っ!?その手があったかっ!?」」」」
「いや無ぇからっ!!」
「あっはっはっはっ!!ホンマオモロいなぁっ!マサトはん達はっ!!毎日毎日ホンマに飽きへんわっ!あっはっはっ!!」
「やれやれ…、結局まともなのはボクだけってことだね」
緑川博士が残していった爆弾を巡って、その後もしばらくドタバタが続くのであった……




