第9話「チーム“松竹梅”」
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“ネオゴブリン帝国”による門司港襲撃事件が解決したその日、魔法師育成学園高等部に戻ってきた俺達(ユリア先輩も含む)は、そこで改めてチーム“雪月花”先輩達とチーム“松竹梅”先輩に感謝すると共に、俺やユウナにとっては初対面となる“松竹梅”先輩達と自己紹介をすることになった。
「は〜い、というわけでまずはあたいからね!
“マギキュリィフィア”に変身する美咲松果だよ〜!風紀委員委員長やってま〜す!マサトっち、改めてよろよろ〜♪」
セミロングのギャル風紀委員長であるショウカ先輩が、ギャルっぽいピースをしながらぴょんぴょん跳ねている。
すると、やはりその大きなお胸がばいんばいん!と上下に揺れて、非常に目のやり場に困る。
ちなみにだが、今この場にいるのは、俺以外にはユウトとユウキとユウナ、ユリア先輩に、“雪月花”先輩と“松竹梅”先輩の10人の美少女達なわけだが、その全員がバスト90超え(一番小さいセツナ先輩で91)だと言うのだからなかなかにえげつない…
さらに余談ではあるが、これだけの美巨乳美少女達が揃っているにも関わらず、変身した俺のバストサイズはこのメンバーに負けじ劣らずどころか、少なくとも“雪月花”先輩達と“松竹梅”先輩達の6人には勝っているというのが、我が事ながら恐ろしい…
バストサイズがインフレし過ぎていて、美巨乳美少女が周りにいるのが当たり前になりつつある…
閑話休題。
続いて、同じく見た目はギャルなショートボブで、頭の横にお下げをした先輩が自己紹介してくれた。
「んじゃ、次はちづるの番ねー♪
ちづるの名前はー、綺羅竹鶴、“マギキュリィフュンフ”やってまーす♪てか、“フュンフ”ってめっちゃ言い辛くてウケるよねー!
あ、ちなみにちづるは風紀委員の副委員長やってんだけどー、ってか風紀委員副委員長も言い辛くね?マヂウケるわー!ってな感じでよろしくねー♪」
そう言って俺に右手を差し出してきたので、俺も右手を出して握手を交わした。
「あ、はい、よろしくお願いします」
「うん、よろしくねー、マサちゃん♪ちなみにー、マサちゃんって、ギャル系女子は苦手ー?」
「え?いや、そんなことは無いですけど…?」
「マヂー!?なら、ちづるにもワンチャンある感じー?」
と、“雪月花”先輩と“松竹梅”先輩の中では一番の巨乳をばるんばるん震わせながら、俺にセックスアピールしてくるチヅル先輩。
「えっと、その…、」
「チヅル様?マサト様が困ってらっしゃるので、その辺にされては?」
と、黒髪ロングヘアをなびかせながら、俺とチヅル先輩の間に入ってきた、“松竹梅”先輩の中の最後の一人。
先輩は、ロングスカートの裾を両手で掴み、膝を折り曲げてお辞儀をするカーテシーで、自己紹介を始めた。
「初めまして、マサト様、私は風紀委員の補佐をしております黄金梅衣、“マギキュリィゼクス”と申します。以後、よしなに」
「あ、ど、どうも…!」
これまでのギャル二人とはうって変わってザ・お嬢様なメイ先輩に、逆に違和感を覚えてしまった。
何故、こんな真面目が服を着て歩いているような人がギャル二人と風紀委員を…?
いや、それを言うなら、ギャル二人が風紀を取り締まる立場にいるという方が違和感なのだが、ギャルの方が多数を占めてしまっているせいで、おかしなことになっているのだ。
「マサト様、人を見た目や言動で判断してはいけませんよ?」
と、俺の思考を読んだのか、メイ先輩がこう言った。
「ショウカ様やチヅル様は、確かに見た目や言動や態度はこんなですが、正義感にとても強く、風紀やルールは絶対に守るという信念を持たれております。その証拠に、これまでの学園生活で、無遅刻や無断欠席は勿論、校則違反などは一切されておりません」
「いや〜、それ程でもあるけどね〜♪」
「まぁ、ちづるはそんなショウカちゃんに惚れて風紀委員に入ったんだけどねー」
ちょっと驚いた。
人は見かけによらないものなんだな…
「まぁ、魔校自体がそんなに校則厳しくないってのもあるんだけどねー」
「だから、ショウカ君達のような風紀委員が許されているとも言える」
と、今度はセツナ先輩とカノン先輩がそう言った。
確かに、魔法師育成学園の校則は、髪型や服飾品に関する規定は明記されていない。
服装に関しては、制服着用以外には、過度な着崩しは厳禁程度で、スカートの流さとか、上着などの規定は特に無い、割と自由な校風となっている。
「で、でも…、それでも、ショウカさん達は…、真面目に、風紀委員やられてて…、偉いと、思います……!」
と、カノン先輩の背中に隠れたツキネ先輩が、おどおどしながらも、ショウカ先輩達のフォローをした。
ツキネ先輩は、極度に男性が苦手なようで、半径5メートル圏内に男性がいるだけで緊張して話せなくなるそうなのだが、俺に対してだけは、誰かの背中に隠れながらなら、少しは話せる、ということらしい(“魔法少女”に変身出来るから、半分女性みたいに思われてるのかな?)。
「そう言って褒めてくれるのはツキネっちだけっちゃ〜ん♪ありがとね〜♪」
ショウカ先輩はそう言いながら、ツキネ先輩の頭をよしよしする。
一方のツキネ先輩は、頬を赤く染めて照れながらも、特にそれを嫌がっている様子は無かった。
こうして見る限り、“雪月花”先輩達と“松竹梅”先輩達の6人の仲は、とても良好なようだ。
だからこそというか、5人がネオゴブリンの媚薬の効果が現れた時に、カノン先輩からのキスをあっさり受け入れたのかもしれない。
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それから、事後処理の引き継ぎなどを終えた緑川博士と、翠山博士、それに碧風博士の三人が俺達の元にやって来たので、改めて俺達の経験した状況を説明した。
「ふむ…、女性を発情させる体液を持つネオゴブリンを名乗るゴブリン集団…、話には聞いていたが、なかなかに厄介だな…」
「ええ。これまでは、女性の“戦闘魔法師”であれば楽に倒せてたゴブリン達でしたが…、まさかそれに対してゴブリン達が進化してくるとは…」
「だけど、毒耐性のある花音ちゃんや、変身した優人君には効かなかったんだよね?」
「ああ、おまけにその二人とキスをしたことで、発情状態が解消されたということからも、風霧君と黒霧兄君、いやこの場合はマジョリティブラックと言うべきか?この二人の体液には、ネオゴブリンの媚薬を中和する効果があると考えていいだろう」
「それを調べるためにも、二人の体液サンプルと、黒霧君とキスをした朱月さん及び赤城さん達、それから風霧さんとキスをした野薔薇さんと鷹橋さん及び“松竹梅”の皆さんの身体検査をさせて頂きますが、問題ありませんか?」
翠山博士の問に、俺達は了承した。
他のゴブリン被害にあった人達とは別に、ユリア先輩がわざわざ第12魔高まで来てもらったのはそのためだ。
他の被害にあった人達は、それぞれ別の魔法医療センターなどに運ばれて身体検査を行ったり、治療を受けたりしているところで、ゴブリンの媚薬効果に関しては、その特効薬こそ今のところ無いが、ある程度性欲を発散させることで、その症状がある程度緩和されていると聞いている。
だが、その完全治癒には時間がかかる見通しらしい。
故に、ユウト達やセツナ先輩達のように、俺やカノン先輩とキスをしただけで、症状が全く無くなっている例は他に無く(この後の検査の結果からも、後遺症などは見られなかった)、俺とカノン先輩の体液に、ゴブリンの媚薬を中和する成分が含まれているのなら、それを元に特効薬が作れるハズだ。
「まぁ、現時点で一番手っ取り早いのは、ボクとマサト君の二人で手分けして被害にあった女性達全員にキスをしていくことだけど、」
「さすがにそれは止めてね、カノンちゃん!」
「そうだよ、カノンっち〜!あたいらなら全然問題無いけど、さすがに見ず知らずの女性達の唇を奪って回るのは、風紀委員的にもあまりよろしくは無いかな〜?」
というカノン先輩の無茶苦茶な案は、セツナ先輩とショウカ先輩によって止められた。
当のカノン先輩は、至極残念そうだったが…
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ユウト達の身体検査などが終わる頃には、もう夜も遅い時間となっていた。
先輩達は明日の始業式の準備があるため、俺達より先に寮へと帰っていた。
ユリア先輩は、俺達よりも長い間ゴブリンの体液に触れていたため、念の為にということで、緑川博士の元、一晩中検査を行うことにするそうだ。
そんなこんなで、俺とユウト、ユウキ、ユウナの四人は、“桜寮”へと帰って来た。
帰寮すると、まず真っ先にマリ達が出迎えてくれた。
俺達は、マリ達に心配をかけたことを謝り、全員無事だということを改めて報告して、マリ達を安心させた。
その後、“桜寮”で俺達の帰りを待っていたというシホ学園長が俺達の前にやって来て、こう言った。
「急で申し訳無いのじゃが、明日、月曜の夜、つまりは入学式の前々日じゃが、ここ“桜寮”で、妾主催による新入生歓迎パーティーを開きたいと思うとるので、マサト達も予定を開けておくように!特にマサトは強制参加じゃから、忘れるでないぞ?」
「新入生歓迎パーティー、ですか?」
マリ達は、今日の昼の時点ですでに話を聞いていたようで、ゴブリン騒動に巻き込まれて寮にいなかった俺達だけが、今聞かされたことになる。
「うむ。大半は中学からの顔見知りじゃが、中には高校から魔校に進学した者もおるし、他の“魔法都市”から編入してきた者もおるから、その親睦会を含めたパーティーを毎年やっておるのじゃ。
例年では、入学式かその翌日の夜にやっておるのじゃが、今年はお主や新設された“ヴァルキリー科”もあるじゃろ?
“ヴァルキリー科”は入学式までのサプライズのつもりじゃったが、すでに一部の生徒の間では噂になっておるし、それより何より男で“魔法少女”なマサトという存在が特異過ぎるからのぅ…
じゃから、入学式後の混乱を少しでも避けるために、入学式前に歓迎パーティーをした方が良いと思ったのじゃ」
「な、なるほど…
分かりました。明日は特に予定は入れてませんので、大丈夫だと思います」
「そうか。
ならば、明日の夜18時から、場所はここ“桜寮”の一階、食堂で行うから時間厳守で。
服装は制服でも、私服でも、コスプレでも、何なら“魔法少女”に変身して来ても構わんぞ?」
「さ、さすがに用もなく“魔法少女”に変身するのは色々マズいと思いますよ…?」
ということで、俺達は入学式前に開かれる、新入生歓迎パーティーに参加することになったのだった。




