第7話「ゴブリン襲来」
*
俺とユウト、ユウナ、ユウキの四人で門司港レトロエリアの景色を楽しんでいると、俺達のスマホから突然ビーッ!ビーッ!というけたたましい警報音が鳴り始め、その直後に自動音声による警告が聞こえてきた。
『警告っ!!門司港和布刈エリアのマナ結界の破損を確認!!周辺区域にいる人達は念の為直ちに避難をっ!!』
「和布刈エリアって…、」
「すぐ近くじゃねぇか!!」
「マナ結界の破損って、まさかまた魔物が侵入してきたの!?」
「いや、だとしたらそう言うハズだ!」
ユウキの言う通り魔物がマナ結界を破って都市内に入って来た場合は『魔物侵入!!』と真っ先にアナウンスがあるハズだ。
これはゴブリンなどの魔生物の場合も同じで、『マナ結界の破損』というアナウンスはあまり聞いたことの無い警報だ。
何故なら、魔物や魔生物が侵入したということはマナ結界が破られたことは明らかなので、わざわざ『マナ結界の破損』と言う必要は無いのだ。
「一体何が起きとーと…?」
とそこへ、今度は俺のスマホに着信があった。発信者は緑川博士だった。
俺はなんとなくそうしなければいけない気がして、音声がこの場にいる全員に聞こえるようにしてから電話に出た。
「もしもし、博士ですか?」
『ああ、黒霧兄君、デート中にすまないね、そこに赤城君達は揃っているかい?』
「ああ!オレもユウナもユウキも、全員いるぜ!」
緑川博士の問に、俺に代わってユウトが答えた。
『その声は赤城君か!君達もこの音声を聞いているんだね?』
「ええ、聞いています、緑川先生」
「それで、何があったんだよ緑川博士?今、和布刈エリアのマナ結界が破損したって…、」
『ああ、その件で君達に連絡したんだ。君達の持つデバイスのGPS情報を確認したら、ちょうど君達が門司港レトロエリアにいることが分かったんでね』
実はデートに向かうにあたって、俺達は念の為にということでマギアコンパクトなどの変身用デバイスを携帯することを許可されていた。
そして、これらのデバイスにはGPSチップが仕込まれていて、何かあった時のために博士達がすぐに対応出来るよう位置情報だけは常に監視されていた。
勿論、何も無ければそれで良かったわけなのだが、デート最終日に限ってその何かが起きてしまった。
「それで緑川博士、一体何があったんです?」
改めて俺が尋ねると緑川博士はこう答えた。
『ああ、念の為君達には変身してその場に待機していてもらいたいんだ』
「え、変身ですか!?」
「まさか、やっぱ何かが侵入してきたと!?」
『まだ未確認情報ではあるが、和布刈神社の辺りの海岸線からゴブリンが侵入してきているらしい。今はまだ一部SNSの情報だけで正式な通報などはされておらず、とりあえず現地駐在の戦闘魔法師数名が現場に向かって状況を確認するということだったが、』
と、そのタイミングで再びスマホからビーッ!ビーッ!というけたたましい警報音が鳴り、直後に自動音声による警告が聞こえてきた。
『都市内に魔生物侵入!!門司港和布刈エリアに魔生物侵入!!周辺区域にいる人達は直ちに避難をっ!!』
『…どうやら、ゴブリンの侵入は間違いなかったようだね』
同じように警報アナウンスを聞いていた緑川博士がそう言った。
「でも、何でだ!?普通、ゴブリンが侵入してきたってんなら真っ先にそうアナウンスがあったハズだろ!?」
マナ結界は常にそれ専門の魔法師達によって監視されていて、マナ結界に近付いてきたものやそれを破壊して侵入してきたものの正体はすぐに判明して、緊急警報アラートと共に魔法都市守衛魔法師部隊(略して守衛隊)へと通達が行き、そこで戦闘魔法師達が対応にあたることになっている。
なのに今回はゴブリンの接近どころか侵入すらも、直接現地の戦闘魔法師が確認しなければ分からなかったというのはどういうことなのか?
ユウキのそのもっともな質問に、緑川博士は曖昧な答えを返してきた。
『恐らくは…、ゴブリン達の中に侵入を隠蔽するような高度な魔術を使用出来るゴブリン達の上位種、〈ゴブリンマジシャン〉のような存在がいるのかもしれない』
ゴブリンにはいくつかの種類が存在する。
棍棒のような武器と簡易の魔術しか扱えないゴブリン、より強力な腕力や魔術を扱える〈グレートゴブリン〉、この辺りが通常の下級ゴブリン種だが、彼らより上位の種となるゴブリンマジシャンは、人語を解しより高度な魔術を扱い、ゴブリン達を束ねるリーダー的存在となることが多い。
さらにその他の上位種には、高さ五メートル以上の巨体をほこる〈ゴブリンジャイアント〉や、そんな彼らゴブリン種を従えるゴブリンの王〈ゴブリンキング〉などが存在している。
『いずれにしても、私からの指示は変わらない。君達は今すぐに変身してその場で待機し、万が一レトロエリアにまでゴブリン達がやって来た場合に備えておいてくれたまえ』
「和布刈エリアには行かんでいいんですか?」
ユウトが尋ねると緑川博士はこう答えた。
『ああ。君達魔法少女、魔砲少女、戦乙女の力は、すでに一般戦闘魔法師に及ぶ程の力を持ってはいるがそれはあくまでも力があるというだけだ。
君達にはまだ圧倒的に実戦経験が足りていない。故に、力があるだけでは現役の戦闘魔法師達の足を引っ張るだけだろう。
だから、君達は和布刈エリアの戦闘には参加せず、万が一レトロエリアにまでゴブリンが侵入してきた場合に、逃げ遅れた人々の避難を手伝ったりしてあげてくれたまえ。
まぁ、雑魚ゴブリンを殲滅する程度ならば良い実戦経験にはなると思うので構わないが、くれぐれも上位種ゴブリンには迂闊に手を出さず、現地の戦闘魔法師達の指示に従ってくれたまえ』
「「「「了解しました!」」」」
そこでスマホの通話を終えると、俺達はそれぞれの変身デバイスを持って変身した。
「「『マギアコンパクト起動』!」」
「『マギアナックルセットアップ』!」
「『武装化』!」
その瞬間、俺達は眩い光に包まれて、俺はマジョリティブラックに、ユウトはマジョリティレッド、ユウキはマギキュリィツヴァイ、そしてユウナがヴァルキリールビーの姿へと変身した。
*
改めて魔生物とは、核戦争後の核汚染された土地にて生き延びていた生物がマナを吸収したことで突然変異を起こして生まれた生命体の一つだ。
突然変異によって生まれた生物の内、魔術を扱えない生命体が魔物、魔術を扱える生命体が魔生物というわけだ。
そうして生まれた魔生物にはゴブリンやオークなどと呼ばれる種が存在し、人間のように二足歩行をする生命体だ。
また、魔生物に共通する特徴として、生物としてのオスのみしか存在せず、繁殖するには人間種の女性を母体とする必要があるため、繁殖期になると定期的に魔法都市へと侵攻してくる性質がある。
だが、大概の場合はマナ結界を突破する前に発見、制圧され、ここ数年は少なくとも魔法都市内での魔生物による被害はゼロだった。
*
俺達が変身を完了すると、今度は通信器にもなっている俺達の変身デバイスから緑川博士からの通信が入った。
『さて、とりあえず君達はこれから現地の第12魔法都市守衛魔法師部隊に所属する戦闘魔法師と、門司港駅前市場で働く民間の戦闘魔法師の諸君と協力して事態に当たってもらう。
だが、先程も言ったが君達の役目はあくまで逃げ遅れた人々がいた場合の避難誘導などであって、ゴブリン達と戦闘を行うことではない。そのことを忘れないでくれたまえよ?』
「はい、分かっています、緑川博士」
「ま、和布刈エリアで侵攻を食い留めてくれれば、アタイらの出番は無ぇってことですよね?」
『紅垣君の言う通りだ。だが…、ゴブリンマジシャンクラスが万が一にも複数いたりすると少々厄介かもしれん』
ゴブリンマジシャンは知能も高いため、力の強いだけの魔物や魔獣なんかより余程厄介な相手かもしれない、と緑川博士は言う。
とにもかくにも、俺達はここで待機し、和布刈エリアでの騒動が落ち着くのを祈ることにした。
『そうそう!君達の元に、民間の戦闘魔法師が一人向かっているそうだから、万が一の時は彼女と協力して事に当たってくれ!
私は第12守衛隊と対策を練るために、一度通信を切るよ』
緑川博士からの通信が切れたタイミングで、俺達の頭上から戦闘魔法師の衣装を身に纏った女性、つい先程も会ったばかりのユリア先輩が現れた。
「やぁ、君達!まさかこんなに早く再会するとは思いもしなかったね」
「ユリア姐っ!」
「おお、それがユウトの魔法少女姿か!めちゃくちゃ可愛いじゃないか!それに、ユウキの魔砲少女姿もクールで素敵じゃないか!そして、ユウナちゃんの戦乙女だっけ?スタイリッシュでカッコいいじゃないか!ん?というか正式発表前なのにここで変身しても大丈夫なのかい?」
「あ、多分大丈夫かと。緑川先生からの指示でもありますし」
「そうか、なら問題無いな!そして…、君は本当にマサト君かい?なんとも愛らしい素敵な少女にしか見えないのだが…」
「あ〜…、はい、俺は正真正銘マサトです。何故か変身すると性転換しちゃうみたいで…」
「いやはや、驚いた…!ユウトから軽く話は聞いていたが、こうして目の当たりにすると信じられないな…!というか、アタシより可愛いのは少し嫉妬するな…、胸もアタシと同じくらいあるし…!」
ちなみにユリア先輩のバストサイズは98、変身した俺より一センチだけ大きい。
「そんなことよりユリア姐!市場の方は大丈夫と?」
ユウトの問にユリア先輩は「ああ!」と力強く頷いてからこう続けた。
「市場の方はアタイ以外の戦闘魔法師の人達が守ってくれてるし、お客さん達は念の為緊急避難シェルターに退避してもらってる。
市場以外の施設でも似たような状況で、レトロエリアに住む地元の人達も今順に避難していってるところだそうだ。
問題はレトロエリアに観光に来てて、建物外にいる人達だな」
魔法都市に住む人達はこうした緊急事態に備えて、常に緊急避難場所である避難シェルターの位置やそこまでの行き方などはほぼ完璧に把握している。
だが、それはあくまで自分達の生活範囲内での話で、観光地にもなっている門司港レトロエリアには地元民ではない観光客も多い。
そのため避難シェルターの場所を知らない人が多くいて、軽くパニックになりかけているという。
「そういうわけだから、アタシら民間戦闘魔法師の人達や、守衛隊の人達が手分けしてそういう人達の避難誘導をしてるとこだ」
「じゃあ、わたし達はそのお手伝いをすればいいんですね?」
ユウナの確認の質問に、ユリア先輩は「ああ、頼めるかい?」と尋ね返してきたので、俺達は揃って頷いた。
「じゃあ、手分けして建物の外にいる観光客を見つけ出して避難シェルターへ案内していこう。
何事も無ければそれでいいが、何か起こる前に出来るだけ早く済ませよう!」
「「「「了解っ!!」」」」
そして、俺達はユリア先輩の魔法デバイスの通信器と周波数を合わせて何かあればすぐに互いに連絡を取り合えるようにしてから、門司港レトロエリアで、まだ避難シェルターに向かえていない人々を探しに散開した。
*
一方その頃、ゴブリンが上陸した和布刈エリアでは…
『ギャギャギャァアアーッ!!』
「きゃぁあああっ!!やめてっ!あんっ!?そんなっ、嫌ゃぁあああっ!!抜いて抜いっ…、ぎひぃいいいいいっんっ♥♥」
不運にも逃げ遅れた数人の女性達が裸に剥かれ、そこかしこでゴブリンに襲われレイプされていた。
それだけでなく、女性を守ろうとして殺された男性数名の遺体もあった。
ゴブリン達にとって人間種の女性は子孫を残すための大事な孕み袋だが、人間種の男性は繁殖行為を邪魔する敵でしか無かったからそこに一切の容赦は無かった。
そうして女性達をレイプするゴブリン達を、片っ端から駆除していく戦闘魔法師達。
「おのれゴブリン共っ!!女性達から離れろぉおおおっ!!『ファイアボゥル』っ!!」
『ギャギャギャギャァアアアアアッ!?!?』
炎の魔法を喰らい燃え尽きるゴブリン。
その燃えカスから、カランと魔石がこぼれ落ちた。
魔生物の体内には〈魔石細胞〉と呼ばれる特殊な細胞が存在し、これが大気中のマナを体内に取り込むことで自身の魔力とし、魔生物は魔術を扱えるようになるというわけだ。
そしてその死体からは、この魔石細胞が固体化した魔石だけが残るというわけだ。
「君、大丈夫だったかい?」
「うぐ…っ、ひく…っ!は、はい…、あ、ありがとう…、ございます……」
ゴブリンを倒した戦闘魔法師は落ちた魔石を回収すると、先程まで襲われていた女性を助け起こし安全な場所まで連れて行く。
ちなみに今現場にいる戦闘魔法師は全員が女性だ。
男性の戦闘魔法師も数は少ないが存在しているのだが、こと魔生物、特にゴブリンを相手にする場合は女性の戦闘魔法師が対処する場合が多い。
というのも、先程説明した通り彼らの本能として人間種の男性は殺すべき存在だが、女性は生かして子供を産ませるべき存在なのだ。
従って、例え戦闘魔法師であっても相手が女性である限り、魔生物達は敵意を向けてくることは無くあっさりとスキを見せる。
そのため、魔生物出現の際には女性の戦闘魔法師が向かった方が迅速にかつ最小限の被害で事態を鎮圧出来るというわけだ。
それが特に顕著なのがゴブリンで、彼らは一般のゴブリンであっても男性戦闘魔法師ではかなり手こずる程の戦闘能力を持つが、女性戦闘魔法師には何の抵抗も出来ずに殺されてしまうという雑魚敵扱いされていた。
「だが…、雑魚でもこれだけの数が集まると厄介だ…!」
現場に来た第12守衛隊所属の現場リーダーである黒髪ロングに眼鏡をかけた戦闘魔法師の女性が、もう何体目になるか分からないゴブリンを倒しながらそう言った。
「というか、これだけの数が接近していたのに都市内に侵入されるまで気付かないなんておかしいっしょ!?」
また別のギャルっぽい見た目をした戦闘魔法師が、そんな愚痴をこぼしながら目の前のゴブリンをまた一体葬った。
「これはやはり、何処かに高度な魔術を操るゴブリンマジシャンがいると考えるべきだな…!」
リーダーである女性が、今度は目の前に襲いかかってきた(当然目的は、そのリーダーを倒すことでは無く犯すことである)グレートゴブリンを足に炎を纏わせた上段回し蹴りで蹴り飛ばし瞬殺した。
「でも、そのゴブリンマジシャンを探そうにも、こう雑魚の数が多過ぎちゃ…、」
『フォフォフォ…、儂を呼んだかのぉぅ…?』
ギャルっぽい見た目の戦闘魔法師の目と鼻の先に、突然、右手に仰々しい杖を持つ老人のような見た目をしたゴブリンが現れた。
「なっ!?いつの間に…っ、」
「その子から離れろっ!『ファイアアロー』っ!!」
リーダーの女性が咄嗟に振り向き、その老人のような見た目のゴブリンへと向けて炎の矢を放った。
『おっとと、危ないのぉ…!』
だが、リーダーの放った『ファイアアロー』は空を切り、老人のような見た目のゴブリンは姿を消していた。
「く…っ!?ゴブリンマジシャンめ…っ!何処だ!?何処に行った!?」
リーダーとギャルっぽい見た目の戦闘魔法師がキョロキョロと周囲へ視線を向けて探していると、再び老人のような声が聞こえてきた。
『心配せずとも儂は逃げも隠れもせんし、そもそもお主らと戦り合う気なんて無いぞ?』
二人が声のした方へ視線を向けると、そこには多くのゴブリンやグレートゴブリンを背後に従えたゴブリンマジシャンの姿があった。
「な…っ!?」
「う、嘘でしょ…っ!?まだあんなに雑魚共が…っ!?っていうか、どっからそんなに現れたのさっ!?」
明らかに異常な数のゴブリン達とそれを従えるゴブリンマジシャンに恐怖する二人。
だが、そんな二人に構わずゴブリンマジシャンは、ニヤニヤと薄気味悪く笑いながらこう言った。
『儂らは、お主らと殺り合いたいのでは無く、お主らとただヤりたいだけなのじゃよ…!』
そして、持っていた杖でコンコンと地面を数回叩くと、人間サイズのゴブリンより一回りほど大きなグレートゴブリン数人が前へと出てきた。
その身体には、裸に剥かれた第12守衛隊の女性戦闘魔法師達が、一人ずつ大の字にされて磔にされていた。
「な…っ!?メイっ!?アキナっ!?」
「ミスズ先輩までっ!?なっ、なんて事をっ!!」
『フォフォフォ!コヤツらは特に儂が気に入った女子達でのぅ、そのままヤるのも勿体なかったからこうしてグレートゴブリンの身体に括り付けて、しばらく鑑賞品として眺めておこうかと思ってのぅ…!勿論、その後は儂らの子孫を残すための孕み袋となってもらうがの…!』
グレートゴブリンの身体に磔にされた女性達をよく見ると、その手首から先と足首から先がグレートゴブリンの体内にめり込むようにして吸収されており、グレートゴブリンと一体化させられているようだった。
そして、その磔にされた女性達は皆発情しているのか、頬を染めたり舌を出してヨダレを垂らしながら白目を剥き、乳首は完全に勃起していて、股間からは尿では無い透明な体液を垂れ流していた。
「えへへへ〜♥ゴブリンしゃま〜……♥」
「はやく…、わらひの膣内にぃ…、ゴブリンしゃまの逞しいモノくだしゃい〜……♥♥」
「もうわらひのお✕✕✕、限界なんでしゅ〜…♥♥」
女性達は自我を失っているのか呂律の回らない口調で、ゴブリン達のモノを欲しがる卑猥な発言をぶつぶつと呟いていた。
「彼女達に何をしたっ!?」
仲間を捕らわれ怒りに燃えるリーダーに対し、ゴブリンマジシャンはひょうひょうとした態度を崩さない。
『ククク…、別に特別なことはしておらんよ?ただ、彼女らが儂らの魅力に気付き自ら股を開く気になったというだけじゃ』
「ふざけたことを…っ!!キサマ達をぶっ倒すっ!!」
『ククク、勇ましい女子じゃのぅ…!実に儂好みじゃ!特に気に入ったぞ!
よし!決めた!お主だけは儂専用の性玩具として一生大事にしてやるぞい…ッ!』
リーダーの女性戦闘魔法師を自分のモノとすべく、ゴブリンマジシャンの目が妖しく光った。
*
「え?和布刈エリアでの戦闘が劣勢だから、レトロエリアで待機中の第12守衛隊の戦闘魔法師達をそちらに向かわせたい?」
門司港レトロエリアで、逃げ遅れた人々を探して飛び回っていたユリアの元に通信が入った。
それによると、和布刈エリアに派遣された第12守衛隊の戦闘魔法師達だが、ゴブリン集団のリーダーと思われるゴブリンマジシャンと接触し、その戦闘で次々と倒されていっているためレトロエリアにて待機していた第12守衛隊の戦闘魔法師達を応援に向かわせたいとのことだった。
「…了解です。今のところこっちは問題無いので自分達だけでも何とかなります、…はい、……健闘を祈ります」
そこで通信を終えたユリアは少々信じ難い思いでいっぱいだった。
(まさか、いくら数が多いと言ってもゴブリンごときに守衛隊の面々が苦戦するなんて…、ゴブリンマジシャン、聞いてはいたがそこまで厄介な敵なのか…?)
ユリアはつい数週間前まで高校生で、プロの戦闘魔法師としてはまだまだルーキーだ。
しかし、高校三年時から授業の一環として第12守衛隊の隊員達と共に魔物討伐や魔獣討伐、魔生物討伐などの実戦を経験しており、その中でゴブリン退治もしたことがあった。
だが、その際にはゴブリンマジシャンのような上位種の存在は確認されなかったため、実感としてゴブリンマジシャンの強さがどれ程のものか分かっていなかった。
考えたくないことだが、もしレトロエリアから加勢に向かった守衛隊の戦闘魔法師達がゴブリンマジシャンの手に落ちるようなことがあった場合、次に呼び出しがかかるのは自分達民間の戦闘魔法師、そして、まだ現場経験の浅い魔法少女達にも声がかかる可能性が出てくると…、
(…いや、今は先ず目の前の仕事に集中しよう!他に逃げ遅れた人達はいないか……、と、なんだぁ!?)
ユリアの視線の先、そこはかつて巌流島へと渡る連絡船の乗り場があった場所(現在、関門海峡が特殊な許可を得なければ船を出せない区域となっているため、巌流島への立ち入りは禁止となっている)で、その歴史を知るためのモニュメントだったり、かつて島にあった宮本武蔵と佐々木小次郎の像などが移築された場所に、観光客と思われる男女が十数名程いた。
彼らは関門海峡をバックに写真撮影をしたり、武蔵と小次郎の像の真似をして写真撮影をしたりしていた。
(おいおい、いくらなんでも呑気過ぎるだろ…っ!何やってんだアイツら!?)
ユリアが近付いていくとその理由が分かった。
「HAHAHA!ナンダカンダトキカレタラ〜?」
「Yeah!コタエテアゲルガヨノナサケーッ!」
なんと、彼らは外国からの観光客で旧ニューヨークシティの第3魔法都市からやって来たツアー客のようだった。
魔法都市間を移動する旅行は、都市内にある『長距離転移』魔法技術を用いたワープゲートを使えば一瞬で、かつてのように飛行機や豪華客船で時間をかけて移動するということは無くなり、比較的手軽に世界旅行が楽しめるようにはなった。
だが、その移動自体は制限されており、一度ゲートを使うのに大量のマナを必要とするため、一日の移動人数や発動回数が限られており、手軽ではあるが簡単には魔法都市間を移動出来ないというのが現状だ。
現状では、魔法師やその関係者、国の官僚達が国際間の取り決めを行う際に使用する他には富裕層がツアーとして利用するくらいだ。
故に、今ユリアの目の前にいる彼らも第3魔法都市の富裕層で、ツアーか何かで来ているのだろう。
「あ〜…、え~っと…、は、ハロー?」
とりあえずユリアは、そのツアー客達に片言の英語で話しかけた。
だが、
「Oh!Japanese Magical Girl!」
「Wao!So nice!And very cute!」
「あ、あ〜…、あはは、えっと…、サンキューベリーマッチ…?」
「Yeah!ペラペラ!ペラペラ〜?」
「あ…、えっと…、な、何だって?」
「ペラペラ〜!ペラペラのペラ〜!」
「っ!?!?」
どうやら彼らは日本語が話せないらしく、そのせいで日本語による警報アラートも分からず観光を続けていたようだ。
いや、そもそも彼らの持つスマホは海外製のため、日本の各都市の行政が危険区域にいる人達向けに発信する警報アラートを受信出来なかった可能性があり、警報が発令していること自体にそもそも気付いていなかった。
そして、運の悪いことにユリアの方は英語が全く分からなかったので彼らが何を言いたいのかさっぱり分からなかった。
「あー!あー!と、とにかく!ここは危険っ!デンジャー!だから、逃げて!プリーズエスケープ!」
ユリアは、とりあえず自分の知ってる単語でツアー客達に危機を伝えようとし、ツアー客の方もそのユリアの必死さから、何となく事態を察したのか大人しくユリアの指示に従って避難シェルターの方へと向かってくれた。
「ふぅ〜…、なんとかなったな…」
「おーい、ユリア姐ー!」
と、そこへマジョリティレッドことユウトがやって来た。
「おお、ユウトか!そっちはどんな感じだ?」
「ああ!オレの見回った範囲やと、もう人はおらんかったぜ!」
「そっか、なら他の三人と合流して…、」
と、その時ピシピシ!とガラスにヒビが入るような音が突然聞こえてきた。
「え?今の音、何、」
直後、パリーン!とガラスが割れるような音がしたかと思うと、宮本武蔵と佐々木小次郎の像の向こう側、門司港レトロエリアと関門海峡を隔てる海岸線上に張られたマナ結界が割れ、そこからゴブリン達が大量に押し寄せてきたのだ。
『『『『『クケケケケケーッ!!』』』』』
「なっ!?」
「ゴブリン達が急にっ!?」
ユリアとレッドが驚くのも無理は無く、マナ結界の向こう側、つまり関門海峡には一切の異常が見られず穏やかな海が広がっているのが見えていた。
なのに、マナ結界の割れ目からは、続々とまるでゴブリンが割れ目から生まれてくるかのごとく、大量に第12魔法都市内へと侵入してくるのだ。
「くっ、ユリア姐、どうする!?」
「…ダメだっ!さっきまで通じてた無線が通じねぇ!それに、何故か警報アラートも発せられてねぇし色々おかしいっ!!」
そう、先程和布刈エリアのマナ結界が破損した時や、和布刈エリアにゴブリンが侵入したことが発覚した時にはスマホを通じての警報アラートが発せられていたのだが、今回はそのアラートが発せられていないのだ。
そして、ついさっきまで第12守衛隊と通信出来ていたハズなのにそれすらも出来なくなっていた。
「…オレもだ!緑川先生と連絡が取れねぇっ!」
レッドの方も、マギアコンパクトの通信機能を使って緑川博士と連絡を取ろうとしたが、連絡が付かなかった。
「ち…っ、ジャミングか何かされてるのか…?」
「ユリア姐、どうする!?」
レッドの問に、ユリアは先輩戦闘魔法師として冷静に判断を下した。
「マジョリティレッド!お前はひとまずここから逃げろ!」
「えっ!?でも、」
ユリアの逃げろという指示に不満を覚えたレッドが言い返そうとする前に、ユリアは立て続けにこう指示を出した。
「そして、他の三人、マジョリティブラック達と合流し次第、雑魚ゴブリン達の排除を頼む!もし逃げ遅れた人がまだいたら、その人達の避難を最優先に!」
「りょ、了解!」
「お前達の【マジョリティ】システムがすげぇのは知ってるが、お前達はまだ戦闘の素人だ!だから絶対に単独行動はするな!いいな!?」
ユリアは最後にそう付け加えるとレッドの返答も聞かず、マナ結界を超えてこちらへ向かってくるゴブリン達の方へと駆け出して行った。
「ユリア姐も気を付けて!」
レッドはユリアにそう返すと、マジョリティブラック達と合流するために『飛行』魔法を使ってその場を離れていった。
「さて…、雑魚共の討伐といきますかね…っ!!」
ユリアは手始めに、ゴブリンの先頭集団に対して両手を開くように向けて魔法を放った。
「『ファイアバースト』っ!!」
『『『『『グギャギャギャァアアアアアッ!?!?』』』』』
炎の上位魔法で広範囲を燃え尽くす『ファイアバースト』により、一気にゴブリンの数を減らしたユリア。
だが、残ったゴブリンやグレートゴブリン達は、燃え尽きる前のゴブリン達の屍を踏み付けて目の前の孕み袋へと向かって進行してくる。
『『『クケケケケケ…ッ!』』』
『『ゲゲゲゲゲーッ!!』』
「ったく、雑魚共が…っ!いいよ、かかって来いよ!アタイが全員まとめて相手してやるよっ!!」
『フォフォフォ…!ここにも威勢のいい女子がおるのぅ…!』
突然、ユリアの背後からしわがれた老人のような声が聞こえてきた。
「っ!?」
ユリアが咄嗟に振り向くと、ユリアの目と鼻の先に老人のような見た目をしたゴブリン、ゴブリンマジシャンが立っていた。
突然の事態に一瞬頭が真っ白になったが、持ち前の反射神経でユリアは即座に右側面へと移動し、ゴブリン集団とゴブリンマジシャン双方から距離を取った。
『フォフォフォ!いい判断じゃ。あの場で儂から距離を取ろうと後ろに下がれば、ゴブリン達の集団に突っ込むことになり、今頃はゴブリン達の孕み袋となっておったじゃろうからのぅ…!フォフォフォ!』
「てめぇが…、ゴブリン共の親玉、ゴブリンマジシャンか?」
ユリアはいつでも魔法を放てるよう、左腕にはめた魔石の入ったマギアリングと呼ばれる腕輪型デバイスに力を込めた。
『フォフォフォ!その問の答えは半分間違いで半分正解じゃ。
儂の種族名はゴブリンマジシャン、個体名はまだない。
そして、儂は今ここにおる【ネオゴブリン帝国】の民のリーダーということになる』
ゴブリンマジシャンはそう言って、左手に持った仰々しい見た目の杖でコンコン!と地面を数回叩いた。
ここにいるユリアは知らないことだったが、今彼女の目の前にいるゴブリンマジシャンは和布刈エリアに現れたゴブリンマジシャンとは別の個体だった。
「【ネオゴブリン帝国】だぁ〜…?てめぇ、何を言って…、っ!?」
その時、ユリアの身体に異変が起きた。
急に全身が熱くなり、特に下腹部、子宮のある辺りがじわじわと熱を持ち、股間からはぬめっとした、興奮した時に分泌される熱い体液が溢れ落ちてくるのが分かった。
「な…、なんだ…、これ……!?」
『フォフォフォ!どうやら、お主も儂らの魅力に股を開きたがっておるようじゃなぁ…!』
「な…っ!?ふざけんっ…、あ…っ!?」
直後、ユリアは腰を抜かしたかのように、下半身の力が入らずガクン!と膝から崩れ落ちてしまった。
「ちっきしょう…!?なんだこれっ!?新手の魔術なのか…っ!?」
『フォフォフォ!それこそ、我ら〈ネオゴブリン〉の持つ新たな力、『魅力』というわけじゃよ…っ!』
「ちゃ…、『魅力』だとぉ…っ!?ふざけたことを…、きゃんっ!?」
その時、グレートゴブリンがユリアを背後から羽交い締めにしてその動きを封じた。
すると、グレートゴブリンに触れられた所からぞくぞくっ!という痺れにも似た感覚がユリアの全身に走った。
「あ…っ♥くそっ、離せ…っ、ゃんっ♥」
『フォフォフォ…!そう言いつつ、声には色気が混じってきておるぞ…?』
「ちっくしょう…!あんっ♥ふざけんな…っ、はぁんっ♥な、何なんだよ!?何だってんだよぉっ!?あぁんっ♥♥」
ユリアはグレートゴブリンに触られる度に感じてしまい、自身の意思とは無関係に嬌声をあげさせられてしまう。
『フォフォフォ…!では、お主は儂の第一夫人としてた〜っぷりと可愛がってやるとするかのぉ…!』
ゴブリンマジシャンが左手に持った杖でココン!と短く二回地面を叩くと、二人のゴブリンがユリアの正面にやって来て、彼女の着ていた戦闘魔法師の衣装をビリビリに引き裂き、ユリアを一糸纏わぬ姿にしてしまった。
「きゃあああああああっ!?やっ、やめろぉおおおおおっ!!あはぁああんっ♥♥」
『フォフォフォ…!では、早速、お主の身体、頂くとしようかのぉう…!』
ゴブリンマジシャンが嫌らしい笑みを浮かべながらユリアへと手を伸ばしていった……




