第6話「恋人達と過ごす日々③」
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中学最後の春休み、その最後の日曜日となる本日、恋人達とのデート三日目は、ユウト、ユウナ、ユウキの三人と第12魔法都市門司港エリアへとやって来た。
「じゃあ、今日は改めてよろしくね、ユウキちゃん?」
「お、おう!こちらこそ、よろしくな、ユウナ!」
「まぁまぁ二人とも!そんな畏まらんと、今日はデートなんやし楽しんでいこうぜ!」
このメンバーの中では、ユウナとユウキがほぼ初対面(一昨日と昨日の二日間で仲を深め合ったようだが)で、ユウトだけはお互いのことをよく知っているという感じだ。
三人共に、赤を基調とした動きやすいスポーティな服装で、ユウナだけが半袖シャツ、ユウトとユウキはノースリーブのシャツで、ボトムスは三人共に短パンで、ユウトが黒、ユウキが青、ユウナが白の短パンというスタイルだった。
三人共に爆乳でスタイルも抜群なため、シャツを押し上げる胸元や、短パンからチラ見えする太ももがやたらとエロかった。
そんな【アカユウトリオ】(三人共苗字の【アカ】と名前の【ユウ】が共通しているから、【雪月花】先輩達のような呼び方をしようということで、勝手に自分達でそう名付けたらしい)とやって来た門司港エリアだが集合時間が朝の七時前とかなり早い時間帯だった。
「日曜日のこの時間に門司港エリアに来たってことは、目的地は…?」
「そう!今日オレ達とデートしてもらうのはここ!門司港駅前市場だっ!!」
ユウトが両手で示した先には、関門海峡で捕れた新鮮な魚介類を扱う第12魔法都市でも一番の魚市場、門司港駅前市場だ。
これは、元々旧山口県下関市にあった、旧唐戸市場が門司港駅前に移転してきたものとなる。
旧山口県は、かつての核戦争とその後の魔獣災害による被害から未だ完全には復興出来ておらず、魔法都市化されていない。
そのため、漁師さん達を含む旧唐戸市場で働いていた人達の仕事が著しく制限されることとなり、このままでは伝統ある市場が潰れてしまうということになった。
そこで、山口が復興するまでの間の暫定措置として、市場を一時的に門司港エリアに移設し、そこで市場としての活動を再開して伝統を残そうとしたのだそうだ。
そうして再開した門司港駅前市場は、かつての市場と同様に一般客も訪れることが出来、新鮮な魚介類を安い値段で買えたり、その場で食べることが出来る市場となっている。
市場なので普段はもっと早い時間から開場しているが、日曜日は一般客がメインの客層となるため、朝の八時からの開場となっている。
「というわけで、今日は四人で新鮮な海鮮食べ歩きデートだ!!」
昨日はラーメンで、今日は海鮮か…
まぁ、ラーメンよりは身体に良さそうだし、何より新鮮な魚介の刺身はマジで美味いし、中には普段食べられないような希少でかつ高価な海鮮がここでは信じられない程の安値で買えたりするからお得感もある(別にラーメンが不健康で不味いと言ってるわけではなく、ラーメンだって普通に美味いし、高級なものは高級だし、味噌ラーメンなんて味噌を使ってるから身体にもいいハズだ)。
しかし、それはそれとして気になるのは、やはり初デートで海鮮食べ歩きなんて(俺が考えたデートプランではないとはいえ)他の二人が難色を示すのではないかと思ったが、
「実はわたし、門司港駅前市場って来るの初めてなんよね!めっちゃ楽しみっ♪」
「アタイは何回かあるけど、マジで普段食ってるスーパーの刺身とかが偽物なんじゃねぇかってくらい新鮮で美味いもんしかねぇから、覚悟しとった方がいいぜ?」
ユウナもユウキもノリノリで楽しそうにしていたのでほっと一安心。
「マサトは色々考えすぎなんやって!」
そんな俺の考えを見透かしてか、ユウトが俺の左側にやって来て肩を組みながらそんな風に言った。
ユウトが肩を組んでくるのは昔からよくある流れで、その度に豊満なユウトのおっぱいが俺の身体に当たって、毎度ヒヤヒヤしていたのだが、恋人となった今は改めてこの柔らかくてモチモチした弾力に俺の心臓はドキドキしていた。
「マリやフレンダも言っとったっちゃろ?何もデートやけんって気張らんで普通に、いつも通りに皆で楽しく過ごせればいいっちゃん!それが、オレらのデートスタイルってことで!」
「そうそう、ユウトちゃんの言う通り!」
すると、今度はユウナが俺の右腕を掴んでギュッと両腕で挟み込むように抱きついてきた。
そうすると、ユウナの豊満なおっぱいに挟まれた俺の右腕から柔らかくて沈み込むような優しい弾力が伝わってきて俺の心臓はさらに高鳴った。
「楽しくなくちゃデートやないけんね!変に堅苦しくお上品にまとまるより、こんな風に皆と気楽にナチュラルに弾けた方がわたし達らしくていいって思うな♪」
「あーっ!!二人ともズリぃぞ!?アタイだってマサトに抱きつきたいのにっ!!」
そんな両手に花状態の俺を見て、一人あぶれてしまったユウキが悔しそうに地団駄を踏んでいた。
「いやー、悪ぃな、ユウキ!マサトの左右はオレらが頂いた!」
「ごめんね、ユウキちゃん?でも、こういうのは早い者勝ちやけんね?」
「後で代わっちゃるけん、今は我慢してくれ!」
「いーや!我慢出来ん!アタイだって今日のデート楽しみにしてたんだから、一秒たりとも無駄にはしたくねぇっ!!」
そう言うとユウキは、なんと、俺の正面から抱きついてきたのだ!
「へへっ♪マ〜サト♪」
「ちょっ、ユウキっ!?」
むぎゅぅっ!と俺の胸板に押し付けられるユウキの豊満な爆乳の柔らかさとほのかに漂ってくる優しい女子の香りに、俺の心臓は今にも胸を突き破って飛び出してきそうだった。
「というかユウキ、これ、歩き辛いんだが…?」
「じゃあ、もっとギュッと抱きついた方がいいか?」
「いや、そういう問題でなく…」
「ってか、ユウキ、抱きつくんなら後ろからのがいいっちゃない?」
「後ろからだと、マサトの顔が見えねぇじゃん!」
「でも、その体勢はちょっと…、ねぇ?」
「大丈夫だ!アタイ、運動神経には自信あるからな!」
いや、だとしても、さすがにこれは恥ずかしい…、とはユウキの前で言えなかった。
ギュッと抱きつかれた上に、上目遣いでユウキに見つめられるともう何も言えなくなってしまう!
そんなこんなで、左から98、右から97、そして正面に100というとんでもないおっぱいに全身を包まれながら俺達は市場へと向かうのだった。
*
開場前にも関わらず、入口前には大勢の客が押し寄せてきていた。
客層は多種多様で、子供連れの家族や若い女性の集団や女性同士のカップルなどなど、幅広い年齢層の人達が集まっている。
ここでもやはり男子は少数派で、特に爆乳美少女三人と共にいる俺は悪目立ちしまくっていた。
「おー!やっぱ人多いなー!」
「今日が春休み最後の日曜日やしね〜、そのせいか家族連れがやっぱ多いっぽいね」
「マサト、はぐれないようにずっとこのままアタイとくっついてようぜ♪」
「いや、さすがにそれやと何も買えんやろ!中に入ったら離れてくれよ?」
そんな冗談交じりの会話をしながら待つことしばし、いよいよ市場が開場し、大勢の客が新鮮な海鮮を求めて中へと入って行った。
市場内では、各漁師さん達が自ら仕入れた魚介類を捌いて刺身にしたりお寿司にしたり海鮮丼として盛り付けたものだったり、はたまた煮たり焼いたりしたものだったりを店頭に並べて販売しており、それらを客が各店に並んで購入し、購入した物は市場内の飲食スペースや、市場外に出て目の前の関門海峡を眺めながら食べたりする。
で、各店舗によって扱っている魚介の種類が異なっていたり、通常市場には出回らない希少部位を扱っていたりする場合もある。
そして、この客の多さから、当然ながら人気な魚種や通常は高くて手が出せないような安い高級魚だったり希少部位だったりはあっという間に売切れてしまう可能性もあるため、開場を待っている間に俺達は役割分担を決めた。
「っしゃあ!行くぜ行くぜ行くぜぇっ!!じゃあ、さっき話した通りアタイは一般魚種の刺身を中心に買ってくるぜ!」
「オレはフグやマグロなんかの高級魚及び、希少部位の確保を!」
「わたしは揚げ物系を中心に!」
「俺は海鮮丼や寿司、その他飲み物なんかを!」
「それぞれ目的のブツを回収したら、さっき決めた待ち合わせ場所で!」
「「「「いざっ!!」」」」
散っ!と俺達は蜘蛛の子を散らすかのごとく四方に別れ、人混みをぬって目的の店舗へとそれぞれ向かった。
目的の店舗や取り扱い魚種などは、門司港駅前市場の公式アプリなどから調べることが出来、当日の入荷状況なんかもそれで把握することが出来るため、開場前に予め誰が何処に行くかなどを決めておいた。
だから俺達は迷うことなく目的の店舗へと向かい、目的の品物を人数分確保することが出来た。
デートなのだから皆で色々回った方が良かったかもしれないが、それで目当ての品物を買えなかったらそれはそれでショックなので、俺達は効率を重視したというわけだ。
まさに、『花より団子』が俺達のデート、というわけだ。
*
それから十数分後、俺達は予め決めておいた待ち合わせ場所、門司港駅前の噴水広場にあるベンチへ戦利品を持って集合した。
噴水広場に付いた俺はユウト達の姿を探したのだが見つからず、どうやら俺が一番乗りだったらしいと分かり、それならばと場所取りのためにいくつかあるベンチの中から空いているベンチを探した。
市場からそれなりに近い場所のため、他にも市場で買い物した客がここの広場を利用していて、ベンチが空いているかどうかだけが心配だったのだが、上手い具合に一つだけ空いていたためそこを確保し、ユウト達を待つことにした。
すると、次にやって来たのはユウナだった。
「あ!いたいた!マサトー!」
「おう!無事買えたと?」
「うん!ばっちり!」
ユウナの両手には大量の買い物袋が握られており、中には魚介の揚げ物の入ったプラスチック容器がいくつも入っているのが見えた。
「マサトの方も買えたみたいやね?」
ユウナはベンチに置いておいた俺の戦利品、新鮮な魚介の刺身や、海鮮丼、そして蓋付きの魚介出汁のお吸い物に、ペットボトル飲料の入った買い物袋を見ながらそう言った。
「ああ!マアジやマサバの寿司もあったけん、買っといたぞ!」
「マジで!?それって刺身の状態!?」
「勿論!あとごまさば丼もな!」
「おーっ!!それめっちゃ楽しみっ!!」
九州では、マサバと言えば刺身で食べるのが一般的だ。
勿論、マサバは味噌煮なんかにしても抜群に美味しいのだが、九州の甘口醤油に付けて食べる生のマサバの刺身に勝る味は無いと、個人的には思っている。
生のマサバの刺身の味を知ってしまったら、しめさばなんて不味くてとてもじゃないが食えたもんじゃないと思える。
それ程までに新鮮なマサバの生の刺身は美味いし、これを醤油、みりん、ごまで和えた福岡の郷土料理ごまさばにして、温かいご飯の上に乗せて食べれば、もうなんとも言えない極上の味わいで、下手な食レポではなくマジで美味い以外の言葉が出てこない程に美味なのだっ!
人によっては生のマサバにはアニサキスがいるから食べられないなどと宣う輩がいるが、俺は生まれてこの方アニサキスによる食中毒なんてかかったことはない。
そもそも、アニサキスなんて冷凍保存しておくことで死滅するし、よく噛んで食べれば普通に死ぬしで全く問題無いのだ。
(作者注:あくまで個人の意見です。アニサキスなどが気になる方は、九州のお店で出されている以外での生サバ食は極力控えましょう)
ちなみに、ごまさばというマサバの料理とは別に、ゴマサバというマサバとは別のサバの仲間がいるので微妙にややこしい…
それはともかく、こうした中々普通の店では買うことの出来ない希少なマサバの刺身(マサバは足が早いため、九州と言えど一般的なスーパーなんかには刺身として出回ることはほとんど無い)を新鮮なまま、しかも安く買えるというのが、ここ門司港駅前市場の素晴らしい点だ。
「あとはユウキちゃんとユウトちゃんだけど…、」
「おーい!マサトー!ユウナー!」
そんな話をしていると、ちょうどユウキがこちらに手を振りながらやって来るのが見えた。
ユウキもまた大量の買い物袋を抱えていて、その表情から目当ての品はあらかた買えたのだろうと察しが付いた。
「二人とも早かったな!」
「うん、揚げ物を扱ってる店はそこまで人多くなかったけん」
「俺は上手いこと混雑を避けつつ、いいタイミングで並べたりしたけんな」
「なるほどな!お!ごまさば丼あるじゃん!!アタイ、ごまさば大好きなんだよ!!」
「お、そっか!それは良かった!他にもマサバの刺身を使った寿司とかもあるぞ!」
「マジか!アタイもマサバの刺身は買ってきたが、マサバの刺身なんていくらあっても困らんもんな!」
ユウキもマサバの刺身が好物のようで良かった。
聞けば、ユウキは幼い頃から門司港駅前市場に来ていて生粋の魚好き、特にマサバが大好きなのだという。
「アタイ、小さい頃はここの護衛戦闘魔法師になるのが夢だったんだぜ?」
「刺身が食べ放題だから?」
「そういうこと!」
護衛戦闘魔法師とは、漁師達が海で安全に漁をするために、漁師に雇われた戦闘魔法師のことだ。
関門海峡には多くの魔物や、海に浮かぶ島にはゴブリンなどの魔生物が生息している。
そうした魔物達から魔法都市を守るために海岸線にはマナ結界が張られていて、海側から都市内へは魔物や魔生物が侵入してこないようになっているが、海に出れば当然、魔物や魔生物達から襲われる危険性は高まる。
そんな魔物や魔生物達から漁師達を守り、安全に漁をするために戦闘魔法師達が雇われているというわけだ。
「ま、今でもまだその夢は捨ててねぇけどな!」
かつては、都市防衛や都市開発、魔生物達に奪われた土地を奪還するための兵士として、戦闘魔法師達は否応無く戦場に駆り出され、産業面での魔法師の運用はどうしても後回しにされてきた。
しかし、ある程度魔法都市の整備開発が進み、その中で魔法師育成学園の設備が充実していき、戦闘魔法師の数が増えてきたからこそ戦闘魔法師の職業選択の自由が生まれて、今では戦場以外で活躍する戦闘魔法師達が出てきたというわけだ。
「ユウキちゃんが護衛戦闘魔法師になるなら、わたしも一緒になろっかな〜?わたしの場合は護衛戦乙女って感じになるんかな?」
「お!いいじゃん!そんならユウトも一緒に【アカユウトリオ】で漁師さん達の護衛隊やろうぜ!?ってか、いっそアタイらで漁師になっちまうか!?漁師兼魔法師みたいな感じで!」
「おー!なんか、そういうのもいいね!」
【アカユウトリオ】で漁師か〜…
その姿を想像して、何故か三人が際どいビキニ姿で船に乗って漁をしている姿が思い浮かんでしまった。
いやいや!何考えてんだ!?さすがにそんな痴女な漁師がいてたまるかっ!!
「そっ、そういやユウトはまだなん?」
俺は雑念を振り払うべくまだ戻って来ないユウトの名前を出した。
「ユウトは確かレア食材とか高級魚種の店回ってるんだっけか?」
「ユウトちゃんの回ってるお店、アプリで見ると、結構人気店みたいやけん時間かかっとるんかもね〜…」
「アプリの今日の入荷状況見ると、超希少部位のマグロの脳天とか、極上の関門だことか入荷してるみてぇだから、その分客が殺到してんのかもな〜!」
マグロの脳天とは、その名の通りマグロの脳で、一匹のマグロから一個しか取れない希少部位なため、通常市場に出回るようなことは無いかなりの希少部位だ。
俺も一度食べたことはあるが、マグロの価値観を上書きさせられる程美味かった!
九州ではマグロなんかよりマサバの方がよほど馴染みがあって美味いため、マグロを食べてもそこまで美味しいとは感じなかったのだが、脳天だけは本当に別格の味だった。
そして関門だこは、関門海峡の激しい潮流の中で育った、身の引き締まったマダコで、足が短く太く、食感がぷりぷりしており、さらに栄養豊富なエサを食べて育つことで旨味が凝縮されているのが特徴だ。
地域ブランドとして地元では昔から根強い人気を誇る食材だ。
そんな話をしながらユウトを待っていると、
「あ!いたいた!おーい、お待たせー!!」
当のユウトがこちらへ走って来るのが見えたのだが、一人では無かった。
「あれ?誰か一緒にいる…?」
「ん?あれ!?ユリア先輩じゃないですか!!どうしてここに!?」
ユウキがユリア先輩と声をかけたユウトの隣にいるその女性は、戦闘魔法師の衣装の上から、〈あかつき魚屋〉と書かれた前掛けをしていた。
「やぁ、ユウキも久し振りだね!っと、それから、そちらの可愛らしい女の子がユウナちゃんで、君がユウト達の恋人のマサト君だね?
初めまして、アタシは朱月結莉亜、今年魔法師育成学園を卒業してたばかりで、今は実家のあかつき魚屋で護衛戦闘魔法師の仕事をしながら漁師の仕事も手伝っているんだ」
なんと、まさに先程ユウキが言っていた、戦闘魔法師と漁師の仕事を両立している先輩だった!
「えぇ!?ユリア先輩、実家が漁師だったんですか!?初耳ですよ!?」
「あはは!まぁ、確かに言ってなかったな」
「だろ!?オレも店番してたユリア姐にばったり会ってビックリしたっちゃん!」
「いやー、アタシも驚いたよ!まさか、卒業してすぐ中学の後輩…、おっと、もう君達は高校生か、それに仕事場で会えるとは思ってもみなかったからね!」
ユリア先輩はユウト達が高校入学と同時に卒業しているから、学園での直接的な絡みは無かったが、中高の合同演習などで知り合いよく面倒をみてもらっていたという。
「ユウトもユウキも優秀な後輩だったからな!きっと素晴らしい魔法師になるとは思っていたが、まさか次世代型戦闘魔法師である魔法少女と魔砲少女の第一期生に選ばれるとはね〜!アタシも先輩として鼻が高いよ!」
「いや〜、それ程でも…!そ、それで、先輩はどうしてユウトと一緒に?」
「いや何、せっかくだから挨拶と、あの男嫌いで有名だったユウキがとうとう男の恋人を持ったってんでそのお祝いも兼ねてな!」
そう言って、ユリア先輩が俺達の前に置いたのは豪華な刺身の盛り合わせセットだった!
「フグにマサバにマアジは勿論、ハマチにマダイにケンサキイカ、そして、今日の目玉の極上関門だこに、マグロの脳天に、大トロ中トロまで!全部アタシからの奢りだ!」
「「ええっ!?」」
「いやっ、ちょっ…!?マジで!?先輩、さすがにこれをタダでってのは…!?」
俺とユウナ、ユウキが驚く中、ユリア先輩は「あはははは!気にするな!」と高笑いをした後にこう続けた。
「これはアタシからのお祝いの気持ちと、将来の優秀な魔法師に対しての先行投資ってやつさ!だから、遠慮なく頂いてくれ!」
「食べきれん場合のことも考えて、保冷剤と氷、それに保冷バックも貰ったけん、残った分はマリ達へのお土産にしようぜ!」
と、ユウトが発泡スチロール製の保冷バックを掲げて見せた。
恐らくその中に氷や保冷剤が入っているのだろう。
「ええ!?そ、そんな物まで!?本当にいいんですか!?」
「いいんだよ、ユウナちゃん!このバックは古くなって、そろそろ処分しようかと思ってたやつだからね。むしろ、処分品を押し付けるような形になって申し訳ない」
「いっ、いえいえ!?そんな!!」
「そうですよ!頂けるだけ十分です!ありがとうございます!」
ユウナに続いて俺もユリア先輩に頭を下げて謝意を伝えた。
すると、ユリア先輩が、ポンと俺の頭に手を置いてこう言った。
「ユウトとユウキのこと、それにユウナちゃんやマリ達のことよろしく頼んだよ!」
「あ…、は、はい…!」
「じゃあ、アタシはそろそろ帰るよ」
俺から手を離したユリア先輩は、そのまま俺達に背を向けて来た道を戻り始めた。
そんなユリア先輩にユウキが声をかけた。
「え!?もう行くんですか!?一緒に食べていきません?」
「いやいや、君達のデートの邪魔をする程、アタシは野暮じゃないんでね。それに仕事の途中で抜けて来てるからな、そろそろ戻らないと!」
「そ、そうですか…」
「何、またいつでもここで会えるさ!
平日は漁の手伝いで海に出てるけど、土日祝日はアタシも店員として店に出る予定だから!
今度は、マリやフレンダ達も連れて店に来てくれ!さすがに毎回タダってわけにはいかないが、それなりにサービスはさせてもらうよ!」
「はい!ありがとうございます!」
「わざわざサンキューな、ユリア姐!また絶対買いに行くけんっ!!」
「「ありがとうございました!!」」
俺達のお礼の言葉を背に受けながら、ユリア先輩は颯爽と市場の方へと歩いていった。
*
それから俺達は絶品の海鮮料理に舌鼓を打ちながら、何気無い日常の会話に花を咲かせた。
ユウキは初対面の時こそ険悪な雰囲気だったが、恋人になってからは素直でとても可愛らしい表情を見せる素敵な女の子だと分かった。
彼女は聞き役に徹することが多く、俺やユウトのバカ話にユウナがツッコむ様をとても楽しそうに眺めていた。
趣味の話題では、俺とユウトが特撮好きで、俺とユウナがアニメ好きという共通点から、そっち系の話題が多く、ユウキには退屈なのでは無いかと思っていたが、彼女は俺達の話をメモを取りながら聞いていた。
何をメモしているのか聞いてみれば、ユウキは好きな人の趣味に合わせるのが好きみたいで、中学時代もユウトから勧められた特撮作品なんかを観て楽しんだりしているという。
だから今日話題に出た特撮作品やアニメ作品の名前をメモして、後日配信サイトで見るつもりなのだという。
何て真面目でいい娘なんだろう…!と思わず抱きしめたくなったが、俺より早くユウトとユウナがユウキを抱きしめていたため俺は抱きしめ損ねてしまった。
しかし、ユウキ自身はそれでいいのかもしれないが俺としては何かモヤモヤする…
そう思って、じゃあユウキ自身の趣味は無いのか尋ねてみたところ、
「アタイの趣味か〜…、釣りは結構好きだな!」
現在、海は魔物や魔生物が生息しているため、釣りにしても漁にしても国から許可を得た者かつ護衛戦闘魔法師付きという条件でないと出来ない。
趣味としての釣りは、魔物や魔生物がおらず安全が確約されている魔法都市内の川や池、湖か、国営の釣り堀で行うようになっている。
ユウキは月に数回程度、そうした場所に行って釣り竿を垂らすのが密かな趣味だという。
「ユウキの釣りの腕前は確かだぜ!オレも何回か一緒に行ったことあるっちゃけど、オレは全然釣れんかったのに、ユウキだけは大漁だったってことが結構あるけんな!」
「それはユウトが釣り下手なだけ、っていうか、釣り竿垂らしてから飽きるのが早過ぎるんだよ…」
「しゃーねぇっちゃろ!ジッとしとられんっちゃもん!」
「確かに…、ユウトには釣りは似合わんかもな〜」
「やとしたら、【アカユウトリオ】で漁師兼戦闘魔法師をやるって話は難しいかも?」
「ん?ユウナ、それ何の話?」
「ああ、えっとね、ユウトちゃんが来る前に話しとったんやけど……、」
それからしばらくの間ユウキの趣味である釣りの話で盛り上がり、その後はひょんなことから三人共に犬が好きだという話になって、どんな犬が好きかとか、最近話題の犬の動画などの話をしたりして盛り上がった。
そうして皆の腹が膨れてからは、余った料理をユリア先輩から頂いた保冷バックに詰めて、駅の荷物配送サービスに預けて桜寮宛に転送してもらった。
荷物配送サービスとは、観光地の駅やホテルなんかに常設されている魔法科学技術を使ったサービスで、『転移』魔法を使って任意の住所に荷物を送り届けることが出来るサービスだ。
これのおかげで、最低限の荷物で観光地巡りが出来るというわけだ。
手軽になった俺達は、日が暮れるまで門司港レトロエリアをぶらぶらすることにした。
門司港レトロは、核戦争や魔獣災害の影響で、一時は見る影も無い程に廃墟街と化していたが、第12魔法都市の建設と共に、かつての観光地であったレトロ街を復興のシンボルとしようという流れが起こり、現在のレトロエリアは、最新鋭の魔法科学技術によってかつてあった建物をほぼ当時の見た目のままに再現されたエリアとなる。
ただ、資料の焼失などもあって、完全に当時のままの再現とは至らず、その分は向かいの旧下関市にあった旧唐戸市場を移設してきたり、その隣にかつてあった水族館も近々移設予定だという。
つまり今の門司港レトロエリアは、かつての門司港と下関が合わさった、新しい関門レトロ街とも言うべき街並みへと進化していっているわけだ。
そんな古さと新しさの混じった街並みを眺めながら、俺達はのんびりとした平和な日常を楽しむのだった。
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マサト達がそんな風にデートを楽しんでいた頃、門司港レトロエリアから少し離れた所にある海岸沿いに立つ神社、和布刈神社で、不穏な出来事が起きていた。
和布刈神社は、関門海峡の目と鼻の先にある神社で、普段はそこまで参拝客の多い神社というわけでは無いが、古くからある歴史ある神社として地域の人々から厚い信仰を向けられる神社だ。
そんな和布刈神社だが、海のすぐ側にあるというだけあってマナ結界が目に見える距離に張ってある。
その日、たまたま二人組の女性カップルがその和布刈神社を訪れていて、二人の将来の願掛けも兼ねてお参りをし、その帰りにおみくじを引いて境内から海を眺めながらそのおみくじの内容について二人で語り合っていると、不意にピシリ!という何かガラスの割れるような音が聞こえた。
「え?何、今の音?」
「分からん、波の音っぽくは無かったけど…?」
二人がキョロキョロと周囲を伺っていると、再び今度はより長くピシピシ…っ!という音と、その後にパリィンっ!!という何かが割れる大きな音が聞こえた。
「ええっ!?何々っ!?」
「…あっ!あれっ!!」
一人が指差した先、海岸線にかかったドーム状のマナ結界、その海面から二メートル程の高さの場所の結界が外側から粉々に砕け散っていたのだ。
「けっ、結界が!?」
すると、二人のスマホから同時にビーッ!ビーッ!というけたたましい警報音が鳴り始め、直後に自動音声による警告が聞こえてきた。
『警告っ!!門司港和布刈エリアのマナ結界の破損を確認!!周辺区域にいる人達は念の為直ちに避難をっ!!』
「いっ、一体何が…っ!?」
少女達が呆然としていると、マナ結界の破損箇所から、濃い緑の体色の人間の姿を模した怪物が突然何体も侵入してきたのだ。
「な…っ!?」
「ゴブリンっ!?」
『『『『ケケケケーーーッ!!』』』』
それは不思議な光景だった。
マナ結界は目に見えるが、それは薄っすらとした膜のようなもので外側の景色を見えなくするものではない。
なので、マナ結界が上空を覆っていても空は見えるし、海岸線を囲むように覆っていても海の様子は分かる。
だが今二人の少女の視線の先、つまりマナ結界の向こう側の海の様子は至って普通の景色が広がっているのに、マナ結界の破損箇所からは無数のゴブリンと呼ばれる魔生物達が次々と侵入してきている。
それは、虚空からゴブリンが湧き出しているかのようだった。
「や、やばいよカヨちん!逃げなきゃっ!!」
「う、うん!!」
二人の少女達は慌てて逃げようとするが、運悪く、侵入してきたゴブリンに、手近な獲物として目を付けられてしまった…
『『ケケケーーーッ!!』』
「「きゃあああああああああっ!?!?」」
その日、平和だった日曜日が突如として地獄と化すのだった……




