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新世代魔法少女オレガ・マギカ〜魔法師になれなかった俺ですが、何故か魔法少女になって幼馴染の魔法少女達とイチャイチャしちゃってます〜  作者: 藤本零二
第二章〜波乱の学園生活〜

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第8話「対決!魔法少女対ゴブリン軍団」


 門司港もじこうレトロエリアで逃げ遅れた人の案内を一通り終えた俺、マジョリティブラックは、マギキュリィツヴァイことユウキと、ヴァルキリールビーことユウナと合流した。



「これで一通り、見回りは終わったかな?」


「ああ、後はユウト、レッドと合流して、ユリア先輩に報告すりゃ、アタイらの仕事は完了かな!」


「いやいや、和布刈めかりエリアでゴブリン達が討伐されるまでは任務完了とはならんっちゃろ」


「ああ、それもそうだな」



 その時、マジョリティレッドことユウトから、通信が入った。



『……<ザザッ!!>…こえるかっ!?ブラッ…!?<ザザッ!!>……ァイッ!<ザザザッ!!>…ビーッ!!』


「っ!?レッドか!?どうした!?」


『…<ザザッ!!>良…ったっ!!通じ…っ!!<ザザザザッ!!>…』


「なんだ?やけに雑音交じりだが、レッドは何処にいんだ?」


『オレは…っ、あっ!見つけたっ!!」



 と、最後の方はレッドの声が直接耳に入ったので、声のした方へと視線を向けると、そこには焦った表情を浮かべながら、全速力で飛んできたと思わしきレッドの姿があった。



「レッド!?」


「なっ!?おい、レッド!どうしたんだ、んなに慌ててっ!?」



 降りてきたレッドに駆け寄りながら、そう尋ねると、レッドが必死な形相でこう答えた。



「ヤベぇっ!!こっちにもゴブリン達が現れたっ!!今はユリア姐が一人で対応してくれとーけどっ、緑川先生とも連絡取れねぇし、一体どうなってんだか!?」


「落ち着いて、レッド!まずは深呼吸っ!」



 ルビーに言われて、レッドは一度大きく深呼吸すると、ここに来るまでにあったことを話してくれた。



「なっ!?旧巌流島(がんりゅうじま)渡し船乗り場にゴブリンが…!?」


「んなバカなっ!?だって、警報アラート鳴ってねぇじゃん!?」


「ううん、ツヴァイ、確かに緑川先生との通信が出来んくなっとっちゃん…」


「外部との通信が出来んってことは、警報アラートが鳴らんかったのも理解出来る。あれだって、電波を使っとるわけやし…」


「さっきレッドと一瞬通信が出来たんは、距離が近かったけんやろうね。それでもノイズが酷かったけど…」


「いや、ブラックもルビーも!落ち着いてる場合じゃねぇだろ!?外部と通信出来ねぇんなら、どうすんだ!?ユリア先輩が危ねぇんだろ!?」



 ツヴァイの言う通りだ。

 緑川博士からは、俺達は戦うなと言われている。

 だけどこの状況は…!



「頼む!ツヴァイ!ルビー!それにブラック!オレに力を貸してくれっ!!」



 どうすべきか悩んでいると、突然レッドが俺達に向かって土下座をした。



「今のオレ、一人だけやとゴブリン達とは戦えんっちゃんっ!でも、オレら四人なら、何とかなるかもしれん!勿論危険なのは分かっとーし、助けが来たらすぐに退避する!やけん、」


「皆まで言うな、レッド!!」



 レッドのセリフを途中で遮ったツヴァイは、レッドを起こしながら、こう続けた。



「アタイはやるぜ!ユリア先輩には色々世話になったんだ!それに、アタイらのこの力は、人を助けるためにあるんだ!!だから、アタイは行くっ!!」


「ツヴァイ…!」


「…緑川先生には戦うなって言われとーけど、緊急事態やもんね」



 今度はルビーがため息をつきながら、レッドに賛同した。



「勿論、わたしも行くわよ?やけど、わたし達はあくまでも実戦は素人、ヤバいと思ったら、逃げることを優先するけんね?勿論、ユリア先輩を連れて」


「ああ!それは勿論!サンキュー、ルビー!」


「後はブラックだけだが…、当然、行くよな?」



 ツヴァイに言われるまでもなく、俺も決意を固めていた。



「ああ、勿論。恋人達を守るのは、男としての俺の義務、いや、使命やけんな!」


「今はオレ達と同じ女の子やけどな、ブラック?」


っせーちゃ(うるせぇ)!とにかく、早く行くぞっ!あ!あと博士には後でちゃんと皆で謝るぞ!」


「「「オーッ!!」」」



 こうして、俺達の関門かんもんデートは、ゴブリン討伐へと変わるのだった。





 現場へは『転位』魔法ではなく、『飛行』魔法で向かった。

 座標が分かっているので、『転位』魔法を使った方が早く到着出来るのだが、転位先の状況が分からない以上、転位した場所がもし敵陣のど真ん中だった場合、転位した瞬間、敵に襲われるなんて事態になりかねない。

 そのため、『飛行』魔法で現場へ向かったわけだが…



「なっ、なんだありゃ…っ!?」



 空から見えてきた、現場である旧巌流島(がんりゅうじま)渡し船乗り場は、地獄絵図と化していた…!



「あんっ♥あんっ♥あはぁあああああんっ♥♥♥」


「イぐ…っ♥イ゛っぢゃぅうううううっ♥♥♥」


「お゛ぉお゛ぉおおおっ♥♥おほっ♥おほぉお゛っ♥お゛ほぉおおおおおおお゛んっ♥♥♥」


射精してぇっ♥♥()()()()()()様のせーえきっ♥わらひのにゃかにっ♥いっぱい射精してえぇへぇえええええんっ♥♥♥」

 


 俺達が駆け付ける前に、現場に到着していたと思われる、門司港もじこうレトロエリアで働く民間の“戦闘魔法師”の女性達が、裸にかれて、そこかしこで犯されていたのだ…!



「ひ、酷い…っ!」


「な…っ!?何でだ…っ!?ゴブリンは雑魚じゃねぇのかよ!?何で先輩達がいとも簡単にやられてんだよっ!?」



 魔生物であるゴブリン種は、魔生物の本能として、人間種の女性は子孫を残すために必要な母体で、それは相手が“戦闘魔法師”であろうと関係無く、人間種の女性に対しては敵意を向けることが出来ず、そのために、女性“戦闘魔法師”からすれば、雑魚同然の敵とされている。


 逆に、相手が人間種の男性や、その他の種の魔生物のオスであれば、生存を脅かす敵として、容赦無く殺意を向け、熟練の“戦闘魔法師”でも苦戦する程の強さを見せつけるという。



 そんなゴブリン達だからこそ、その殲滅は、女性の“戦闘魔法師”が行うようになっている。

 “戦闘魔法師”であれば、犯されるリスクよりも、短期殲滅出来るメリットの方が大きいからだ。



 なのに…、この惨状は一体…っ!?



「あっ!あそこっ!!あそこにユリア姐がっ!!」



 レッドが指差した先には、かつて巌流島がんりゅうじまにあった、宮本武蔵と佐々木小次郎の対決した様子を現した像があって、その二つの像の間に、不気味な暗緑色をした十字架が建っており、その十字架には、一糸(まと)わぬ姿のユリア先輩が、全身を十字架の色と同じ暗緑色の触手で拘束された状態ではりつけにされていた…!



「ユリア先輩っ!!」


「ちっくしょう!!よくもユリア姐をっ!!」



 激しい怒りに燃えるレッドとツヴァイが、今にも飛び出していきそうだったのを、ルビーが制止した。



「待って、二人ともっ!!ユリア先輩の前っ!!」



 はりつけにされたユリア先輩の正面には、ユリア先輩を下から舐め回すように見上げる、一匹のゴブリンがいた。

 


「アイツは…っ!?」



 その一匹は、明らかに見た目が他のゴブリン達と違い、老人のように年老いていて、左手に仰々しい杖を持っていた。



「まさか、アイツは…、」


『ほほぅ…!これまた威勢のいい、一際若い女子おなご達がやってきたのぅ…!』



 突然、俺の背後からそんな声がして、振り向いた瞬間、



「うわぁあああああああっ!?!?」


「「「ブラックっ!?」」」



 俺は、下から生えてきた暗緑色の触手に絡めとられ、身動きが取れなくなっていた。



『フォフォフォッ!こんな単純な術にも気付かず、けられんとは!かなり尻の青い“魔法師”のようじゃのぅ…ッ!』



 下にいたハズの年老いたゴブリンが、いつの間にか空中にいる俺の目の前にいて、触手に捕まった俺を見ながら、そんな風に笑っていた。



「てめぇっ!!」


「ブラックを離しやがれっ!!」



 レッドとツヴァイが、年老いたゴブリンに向かって、拳を繰り出すが、二人の拳が当たる直前に、年老いたゴブリンの姿が消えた。



「なっ!?」


「消えたっ!?」



『フォフォフォ!お主ら、なかなか奇妙な衣装をまとっておるが…、フォフォ!なかなか良いデザインでは無いかッ!気に入ったぞ、実にわし好みじゃッ!』



 消えたと思われた年老いたゴブリンは、今度はさっきまでレッドとツヴァイがいた場所に現れていた。



「わたし達を変な目で見んなっ!!」



 そこへ、“戦装具ヴァルキリアーム”のソードを構えたルビーが、年老いたゴブリンの背後から斬りかかったが、それは空を斬るだけに終わった。



『フォフォフォ!お主もなかなか変わった装備を持っておるのぅ?そういう意味でも実に興味深い…ッ!』



 年老いたゴブリンは、俺達から少し離れた空中に浮かびながらそう言った。



「く…っ!?動きが速い…!」


「てめぇがゴブリン達の親玉か!?」


『フォフォフォ!その言い方は正確では無いがのぅ。一応、名乗っておくか。

 わしの種族名はゴブリンマジシャン、個体名はまだない。

 そして、わしは、今ここにおる“ネオゴブリン帝国”の民のリーダー、ということになる』



 レッドの問にそのように答えた年老いたゴブリン、いや、ゴブリンマジシャン。



「“ネオゴブリン帝国”?なんだそりゃ?」



 ツヴァイの疑問に、ゴブリンマジシャンはこう答えた。



『その名の通りじゃよ。

 わしら、ゴブリンよりさらに進化した種である“ネオゴブリン”による帝国、それが“ネオゴブリン帝国”。

 その侵略の足がかりとして、手始めにこの“第12魔法都市”の門司港もじこうエリアを制圧し、わしらの存在を、お主ら人間達に知らしめようと思ってのぅ…ッ!』



 ゴブリンマジシャンが不気味な笑みを浮かべる。



「んなことよりっ!ブラックを離せっ!!『ファイアアロー』っ!!」



 レッドがゴブリンマジシャンに向けて炎の矢を放つも、やはりその攻撃は当たらず、ゴブリンマジシャンは再び姿を消して、今度は触手で捕らわれた俺の背後に現れていた。



『フォフォフォ!そう言われて逃がすとでも思うてか?こんな極上の娘、なかなか手に入らん素晴らしいはらみ袋じゃ!我が玩具コレクションとして、永遠に慰み者としてくれようぞ…!』


 

 そう言いながらゴブリンマジシャンは、俺の右胸を鷲掴みにしてきた。

 


「んあ…っ!?やっ、やめろぉ…っ!?」



 その瞬間、全身に電流が走ったような衝撃があり、俺は変な声を出してしまった。



『フォフォフォ!胸をんだだけでこの反応…ッ!感度もいいようじゃのぅ!』



 ゴブリンマジシャンは、俺の反応に気をよくしたのか、さらに激しく俺の胸をみしだき始めた。



「ちっくしょう…、てめぇ…っ!!んぐぅ…っ♥」


『フォフォフォッ!!いい声で鳴くのぅッ!文句を言いつつも、しっかり感じておるではないかッ!!』


「んぐぅっ…、クソが…っ!」


「てめぇええええっ!!」


「ブラックから離れろぉおおおおっ!!」



 レッドとツヴァイが怒りから大声で叫ぶが、ゴブリンマジシャンは、俺を盾にしつつ、俺の胸をさらに激しくみしだきながら、レッド達を挑発するようにこう言った。



『フォフォフォ!おっと、いいのかのぅ?そのまま攻撃すれば、この女子おなごに攻撃が当たってしまうぞ…?』


「んぐぅ…っ!?や、やめ…っ、あぁんっ♥」



 くそ…っ、胸を触られただけでこんなに感じるなんて…っ!?

 ゴブリンに触られているというだけで不快なのに、恥ずかしい声まであげさせられて…!

 俺は、怒りと屈辱からどうにかなってしまいそうだった…!


 何とかしてこの触手から逃れたかったが、胸を触られて無理矢理感じさせられているせいで、全身に力が入らなかった。



 一方、俺を人質に取られてしまって、身動きが取れないレッド達は、ゴブリンマジシャンを強く睨みつけることしか出来ないでいた。



「ちっくしょう…っ!」


「この卑怯者…っ!」


「アナタ…、絶対に許さんけんね…っ!」



 三人の表情には強い怒りと憎しみが浮かんでいた。



『フォフォフォ!何、心配せずとも、お主らを仲間外れにしたりはせぬよ』



 すると、俺を拘束しているのと同じ暗緑色の触手が、今度は三本地面から生えてきて、レッド達を捕らえようとした。



「ちぃっ!?『ファイアブラスト』っ!!」


「『バスターナックル』っ!!」


『BUSTER KNUCKLE ATTACK!』


「このぉおおおっ!!」



 レッドは自身を中心として、周囲に炎を放つ魔法『ファイアブラスト』で、ツヴァイはマナを収束させた拳で、ルビーはソードで、自身を捕らえようとして迫ってくる触手を破壊しようとしたが、燃やしても砕いても切り刻んでも、触手は復活し、レッド達を捕らえようとその動きに追尾する。



「くそっ!?なんだこの触手!?燃やしても燃やしても再生してきよる!?」


「しかも!アタイが避けても追ってきやがるし!?」


「おまけに…っ!?ゴホッ、ゴホッ…!?何この花粉みたいな粉…!?」



 ルビーが言うように、触手は攻撃される度に、暗緑色の微小の粉を撒き散らしていた。



『フォフォフォ!その粉こそ、この周囲一帯の電波を狂わせておる物質であり、同時に…ッ!』



 ゴブリンマジシャンの説明の途中で、その粉を浴びていたレッド達に異変が現れた。



「んん…っ!?な…、なんだ…っ!?」


「はぁ…、はぁ…、はぁ…!か、身体が熱く…っ!?」


「んぅう…っ!?な、何これぇっ!?」



 三人は顔を赤らめながら、無意識で、股間に手を当てていた。



『フォフォフォフォッ!それこそがわしら進化したネオゴブリン種の能力ッ!

 その触手の粉はのぅ、わしらネオゴブリン種の体液に含まれるのと同じ媚薬成分が含まれておるのじゃッ!!』


「な…っ!?」


「び、媚薬…、だと…っ!?」


『そうじゃ!わしらネオゴブリン種の放つ媚薬は特別製でのぅ!人間種のメスには効果抜群で、それを浴び続ければ、あっという間に発情状態になり、わしらネオゴブリン種の種が欲しくて欲しくてたまらなくなり、彼女らのようにすぐ股を開きたくなるのじゃよッ!!』



 俺達の真下では、明らかに異常な程に発情した女性“戦闘魔法師”達が、自ら懇願するように、ゴブリン達のモノを、自らのナカに受け入れていた。



「そんなの…、聞いたことが無いっちゃんっ!」



 ルビーの言う通り、ゴブリンにそんな特性があるなんて話は聞いたことが無かった。

 あれば、それ相応の対策がされていたハズだが…



『じゃから言ったろう!これは、わしら進化したネオゴブリン種の力じゃとッ!!わしらは、これまでのゴブリン種とは違うのじゃよッ!!』



 ゴブリンマジシャンがそう叫び、左手に持っていた杖を高く掲げると、レッド達を襲っていた三本の触手の勢いがさらに強くなり、逃げるレッド達をあっという間に捕らえてしまった。



「あぐぅ…っ!?」


「きゃあぁっ!?」


「いやぁああっ!?」


『フォフォフォッ!!最初の勢いは良かったが、発情して動きのにぶくなったメスなど、まな板の上のこいも同然、あっさりと捕まりおったわッ!それとも、わしのモノが欲しくて、ワザと捕まったのかのぅ…?フォフォフォフォフォッ!!』


「くそ…っ!?レッド…!!ツヴァイ…!!ルビー…っ!!」


『フォフォフォ!さぁ、ゴブリン達よッ!この女子おなご達をたっぷりと可愛がってやるがよいッ!!』



 ゴブリンマジシャンがそう叫ぶと、三人を捕らえた触手にゴブリンやグレートゴブリン達が集まって来て、触手を登り始めた。



『グゲゲゲゲゲッ!』


『ケケケーッ!!』



 そして、レッド達の元まで登って来ると、その汚らしい手で、レッド達の身体を触り始めたのだ。



「な…っ!?クソっ!?来んなっ!?きぁんっ!?」


「やめ…っ!?きゃあぁああっ!?触んなぁっ!!」


「いやぁああああっ!?気持ち悪い気持ち悪いっ!!やめてぇええええっ!?」



 レッド達の悲鳴が響き渡る。



「クソッ!?やめろっ!!レッド達から離れろーっ!!」



 俺はレッド達を助けるために、触手を振りほどかんと全身に力を入れた。



「このぉおお…っ!?」


『フォフォフォ!無駄じゃよ!何度やっても、この触手は女子おなごには振りほどけん!この触手にも、当然、わしらネオゴブリン種の体液が含まれておるでの!

 媚薬の効果でお主の身体をじわじわと発情状態にしていき、自ずと力も入らなくなり、やがてはわしのモノを欲しがるだけの可愛い可愛い孕み袋(ペット)わし専用の牝犬メスイヌへと成り下がるのじゃッ!!フォフォフォッ…、』



 ゴブリンマジシャンが俺の背後で何かを言っていたが、そんなことはどうでも良かった。

 ただ、俺の目の前で、レッド(ユウト)ツヴァイ(ユウキ)、そしてルビー(ユウナ)を、俺の大切な恋人達を、ゴブリン共に犯させるわけにはいかないと、その怒りで頭の中がいっぱいだった…!



「うぉおおおぁああああああああっ!!」



 そして、怒りが頂点に達した瞬間、俺の中で何かが弾けた。



「うぉりゃあぁああああああああっ!!!!」



 ぶちぶちぶち…っ!



『…フォ?』



 俺は、両腕を思いっ切り開いて、拘束していた触手を力任せに引き千切った。



『なッ…、なんじゃとぉッ!?』



 そして、俺の背後で驚愕の表情を浮かべていたゴブリンマジシャンに対し、俺は振り向きざまに、広範囲魔法を放った。



「『シャドゥバースト』っ!!」


『ぬぉ…ッ!?』



 俺の放った魔法は、俺を捕らえていた触手ごとゴブリンマジシャンを巻き込み、大爆発を起こした。



『ガは…ッ!?』



 ゴブリンマジシャンにとって、想定外の事態だったのか、避けることも出来ずに、俺の魔法をまともに食らい、その爆風に飛ばされて、地面に叩きつけられていた。



『『『グゲゲゲッ!?』』』



 触手を登り、レッド達に群がっていたゴブリン達もまた、ゴブリンマジシャンがダメージを受けたことに驚いたようで、その動きを止めた。


 俺は、そのスキを見逃さなかった。



「『シャドゥアロー』っ!!」


『『『グギャァアアアアアッ!?』』』



 俺は、レッド達に群がるゴブリン達を狙って、無数の『シャドゥアロー』を放った。


 俺の魔法は、威力調整が上手く出来ず、命中精度にもまだ難ありだったのだが、レッド達がピンチというこの状況で、俺は極限の集中状態、所謂ゾーン的な状態に入ったためか、俺の放った『シャドゥアロー』は寸分違わず狙い通りにゴブリン達をち抜き、おまけにその威力も、いつもより遥かに強力になっているようだった。


 その結果、レッド達に群がっていたゴブリンとグレートゴブリン達、その全てを一撃で葬り去り、そのついでに、レッド達を捕らえていた触手も破壊し、レッド達を解放した。



「大丈夫か!?レッド!ツヴァイ!ルビー!」



 触手から解放された三人の元へと向かう俺。

 対して三人は、俺に抱きつかんばかりの勢いで向かって来て、感謝の言葉をくれた。



「ああ!なんとかな!ただ、まだ、ちょっと身体が変っちゃけど…、でも助かったぜ、ブラック!きゃん…っ♥」


「さっすがアタイらのブラックだ!ますます惚れ直しちまったぜ!あん…っ♥」


「うんうん!ありがとね、ブラック!んん…っ♥」



 見た限り、三人共媚薬の効果はまだ抜けていないようだが、衣装などに大きな乱れは無く、衣装越しに身体を触られただけで済んだようだ。

 いや、だからと言って、連中を許すつもりは毛頭無いが。


 俺以外の男が、しかも人間種ですらないゴブリン種のオス共が俺の恋人達に触れたこと、死して償ってもらう…ッ!!



「いや、わたし達に群がってた連中はもうすでに全滅しとーけどね…、ん…っ♥」


「いや、ここにいるゴブリン共は全員同罪だ。必ず殲滅する…っ!」


「おおっ、そんなカッコいい顔も出来るんだな、ブラック…♥ますます惚れ直したぜ♥あんっ♥」



 三人は、媚薬の効果で股間をもじもじさせながら、時折喘ぎ声をあげるため、それが控え目に言ってもエロかった。

 男の姿だったら、間違い無く勃起していただろう。…危なかった。


 ん…?あれ?


 そこで俺は一つの疑問を抱いた。


 なんで俺には媚薬の効果が出てないんだ…?

 少なくとも、俺は三人みたいに身体が火照ほてったり、股間や胸の先端がムズムズする、というような感覚は無い。

 ゴブリンマジシャンに胸を触られていた時は不覚にも感じてしまっていたが、そういう感覚になったのは触られていた時だけで、今は何とも無い。

 俺の身体には、薄っすらと触手からにじみ出ていた粘液、ゴブリンマジシャンの言う媚薬とやらが付着していたが、それによって発情状態になっている、というようなことは無さそうだ。


 いや、そんなことよりも、ゴブリンマジシャンに散々胸をもてあそばれていたことを思い出して、再び怒りが込み上げてきた。



「というか、ブラックの魔法すげぇな!触手が再生してねぇじゃん!んぐ…っ♥」


「え?あ、そういえばそうやな…」



 レッドに言われて気付いたが、確かに、俺の魔法で破壊された触手は、その後再生せず、根元から消滅していた。

 


「あの触手、闇の魔力が弱点だったりするのか…?」



 俺がそんな風に考えていると、先程、俺の魔法で地面に叩きつけられていたゴブリンマジシャンが、左手に持った杖にもたれかかりながら立ち上がり、叫んでいた。



『な…、何故じゃッ!?

 何故お主には媚薬が効いておらぬのじゃッ!?それにっ、お主の魔法…、闇属性じゃと!?あり得んッ!!人間の身で、闇属性の魔法を扱うなど…、そんなことあり得んのじゃッ!!』


「そんなこと、俺が知るかっ!」   



 俺は一言そう返すと、『飛行』魔法で急降下し、ゴブリンマジシャンの目の前に降り立つと、地面、正確にはゴブリンマジシャンの影に手を当てて、魔法を発動した。



「『シャドゥバインド』っ!」



 すると、ゴブリンマジシャンの影から、黒い腕のような触手が出現し、ゴブリンマジシャンの全身に絡み付いて、その動きを封じた。

 『シャドゥバインド』は、対象をその影の上に縛り付けて、一定時間動けなくする闇の魔法だ。



『ぬぉおおおっ!?しッ、しまったぁあああッ!?』


「これで、てめぇはもう動けねぇぞ?」


『お…ッ、おのれぇえええええッ!!』



 そうしてゴブリンマジシャンの動きを封じた俺は、先程の怒りを込めた拳を振り上げ、思いっ切りゴブリンマジシャンに叩き付けた。



「乙女のおっぱいをタダでんだ罪っ!その罪の重さを身体で味わえっ!!『シャドゥパンチ』っ!!」


『ブる゛ぅワ゛ァぁああああああアアアアアアアッ!?!?』



 その場から動くことが出来ず、避けることも防御することも出来ずに俺の渾身のパンチを食らったゴブリンマジシャンは、白目をきながら、口から緑色の血を吐き、断末魔の悲鳴をあげた。


 しかし、まだその身体をたもっていることから、ゴブリンマジシャンは完全には死んでいない。



「レッド!ツヴァイ!ルビー!」



 このまま俺がトドメを刺しても良かったのだが、すでにトドメの準備していたレッド達に後を任せることにして、俺はその場から離れた。



「おぅっ!」


「任せろっ!」


「了解っ!」



 レッドは、炎をまとわせた右足を伸ばし、左足を畳んだ体勢で、必殺の魔法を放った。



「『ファイアトルネードキィイイイイイック』っ!!」



 ツヴァイは、マナを収束させた右腕を一度グッと引き、左手を前に出した体勢でゴブリンマジシャンへと向かって、必殺の魔砲を放った。



「『バスターナックルソニック』っ!!」


『BUSTER KNUCKLE SONIC ATTACK!』


『ぬぉおおおおおおおおおッ!?!?』



 右足を伸ばした状態で回転しながら、全身を炎の竜巻と化して突っ込んでいくレッドと、光の槍のごとく超高速で突っ込んでいき、衝突の瞬間に前に出していた左手を引いて、マナをまとわせた右手を突き出すツヴァイ。



『グギャギャギャァアアアアアッ!?』



 両者の攻撃をまともに受けて、身体に二つの穴を穿うがたれたゴブリンマジシャンに、ダメ押しの一撃とばかりに、ルビーが炎をまとわせて巨大化させたソードを振り下ろした。



「『終焉の大地(ダンガイノツルギ)』っ!!」


『グル゛ギャギャギャァアアアアアアアアアアッ!?!?』



 ルビーのソードで一刀両断にされたゴブリンマジシャンは、そのまま炎に焼かれて燃え尽き、カラン!と一つの魔石になって消滅した。



「はぁ…、はぁ…、どうだ…っ!きゃんっ♥」


「はぁ…、はぁ…、乙女の怒り、思い切ったか!?あうぅっ♥」


「はぁ…、はぁ…、んんぅっ♥だ、ダメ…、もう…、限界かも…」



 ゴブリンマジシャンにトドメを刺したところで、限界を迎えたのか、レッド達はその場で倒れ込んでしまった。



「レッド!?ツヴァイ!?ルビー!?」



 慌てて俺は三人の元へ駆け寄ると、三人は頬を赤く染め、とろんとした瞳で俺を見つめてくると、



「えへへ〜、ましゃとぉ〜、ちゅっ♥」


「ましゃと、だいしゅき〜、ちゅっ♥」


「ましゃと、しゅきしゅき〜、ちゅっ♥」


「んぐぅっ!?」



 俺は、三人から立て続けにキスをされてしまった…!

 それも、唇に…っ!!



「「「ましゃとぉ〜っ!!」」」



 そして、そのまま俺は三人に押し倒されてしまった!!



「ちょっ!?三人とも…、落ち着い…、」


「「「ちゅ〜♥♥♥」」」


「んぐぅううううっ!?」



 発情状態の三人から受ける抱擁と濃密なキスの嵐!

 ここはまだ戦場で、側にはまだゴブリン達がいるという状況下で、こんなことしている場合じゃないというのに、俺は彼女達を引き剥がせなかった。


 誰がどう見ても美少女な三人から香る少女特有の甘酸っぱい発情臭と、甘くとろけるような味の唾液、甘くあやしく響く喘ぎ声、そして何より柔らかくて弾力のあるおっぱいおっぱいおっぱい!

 

 視覚嗅覚味覚聴覚触覚、五感全てで味わされるこの極楽地獄に、男の身体とか女の身体とか関係無く、耐えられる人類はこの世には存在しないだろう…!



 それぐらいに濃密で、濃厚なスキンシップが、永遠にも続くかと思われたその時、



『グゲゲゲゲゲーッ!!』



 一体のグレートゴブリンが、レッド達の発情臭にあてられたのか、目を血走らせ、大量のヨダレを垂らしながらこちらへ向かって来る気配があった(俺の視界は三人で遮られているので見えない)。



「むぐぅっ!!むぐぅおおおっ!!」



 俺は、なんとか三人にピンチを伝えようと、三人の口でふさがれた口で叫んだが、三人の目には俺しか映っておらず、万事休す…、と諦めかけたその時、



「『ファイアボゥル』っ!!」


『グゲゲゲゲゲーッ!?』



 何処かからか飛んできた炎の魔法により、レッド達に襲いかかろうとしていたグレートゴブリンが一瞬で燃え尽きた。



「もっ!?もがもが…っ!?」



 一体何が起きたのかと思っていると、上空から一人の女性の声が聞こえてきた。



「やれやれ、モテモテだねぇ〜、ブラック君は。この戦いが終わったら、ぜひとも、ボクもその仲間に入れてもらいたいものだよ」


「ぷは…っ!ま、マジョリティウインディ!!」



 俺達を助けてくれたのは、チーム“雪月花”の一人、生徒会副会長を務める王子様系女子、マジョリティウインディこと、風霧花音かざきりかのん先輩だった。



「ウインディ先輩!助けに来てくれたんですね!?」


「んん…、あれ?ウインディ姐さん…?」


「ん〜……、え!?な、なんでウインディ先輩がここに!?」



 と、そのタイミングで、正気に戻ったらしい三人が、俺から離れて、助けに来てくれた先輩に声をかけた。

 


「ああ、君達や門司港もじこうレトロエリアにいる“戦闘魔法師”の先輩達との連絡が取れなくなったと博士から聞いてね。

 それで、緊急事態だというわけで、ボク()も出動した、というわけさ」


「ボク()、ってことは、ローズ先輩とホーク先輩も来てるんですか!?」



 ウインディ先輩と、マジョリティローズこと野薔薇雪音のばらせつな先輩、そしてマジョリティホークこと鷹橋月音たかはしつきね先輩、この三人を合わせてチーム“雪月花”と呼ばれている。



「ああ。それに、ローズ君達だけじゃないよ?他にもあと三人、頼れる仲間が来てくれている!」


「え?」


「あっ!あれはっ!!」



 ツヴァイが指差した先には、ツヴァイと同じデザインで、色違いの衣装(首元やスカートを彩るラインの色が、ツヴァイは赤色に対して、その少女は水面みなもを思わせる深い水色をしていた)を身にまとった少女、つまり“魔砲少女”がいた。

 


「『バスターナックル』っ!!」


『BUSTER KNUCKLE ATTACK!』



「ショウカ先輩っ!!」



 ツヴァイと同じ籠手こて型のデバイス“マギアナックル”で、ゴブリンを粉砕している、見た目がギャルっぽい少女を見て、ツヴァイがそう言った。



「ショウカ先輩?」


「ああ!今年三年になる先輩で、美咲松果みさきしょうか先輩だ!先輩の変身デバイスも完成してたんだな!」



 ユウキ達の所属する組、“魔砲少女クラス”(通称、“翠山みどりやま組”)は、“魔法少女クラス”と同じく今年から新たに作られたクラスで、通常の授業は一年だけで行われるが、実技の授業では、“魔法少女クラス”と同様に、“魔砲少女”に選ばれた二年生と三年生の先輩も一緒に受けることになっているという。



「そう、それでボクらと同じ三年生から“魔砲少女”に選ばれたのが、ショウカ君率いる風紀委員三人組、通称、チーム“松竹梅”の三人さ!」


「んー?カノンっち、なーんかあたいらのこと話してたー?」



 と、そこへゴブリンを粉砕したばかりのショウカ先輩がやって来た。

 見た目も喋り方もギャルっぽいが、これで風紀委員なのか…



「ショウカ先輩!デバイス完成してたんですね!」



 ツヴァイがショウカ先輩に話しかけると、ショウカ先輩は、左手にはめた“マギアナックル”(よく見れば、ツヴァイの赤色に対して、青色のデザインだった)を見せながら、こう答えた。



「そうなんよー!マジギリ完成間に合った感じでー!やけん、あたいら試運転も無く、ぶっつけ本番でこの現場に派遣されたみたいな〜?まぁ、いちお(一応)VRとかでイメトレはしとったけん、なんとかなっとーけどね〜♪

 あ!ちなみに、変身時のあたいの名前は“マギキュリィフィア”ね!よろぴく〜♪」


「フィア先輩ですね!了解です!」


「ちなみに〜、あっちの弓矢型のデバイス“マギアアロー”で戦っとーのがチヅルっちで“マギキュリィフュンフ”、あっちの斧型のデバイス“マギアアックス”で戦っとーのがメイっちで“マギキュリィゼクス”ね〜」



 ショウカ先輩改め、フィア先輩の指差す先で、二人の“魔砲少女”が戦っているのが見えた。

 “チヅルっち”と呼ばれた先輩は、フィア(ショウカ)先輩と同じくギャルっぽい見た目なのに対し、“メイっち”と呼ばれた先輩は、ザ・お嬢様と言った雰囲気をかもし出していた。

 この三人の“魔砲少女”が、チーム“松竹梅”、というわけか…


 そして、その二人の先輩に加えて、チーム“雪月花”の残り二人の先輩“魔法少女”達が戦っている姿も見えた。

 ここから見ている限りだと、ゴブリン達の数は明らかに減ってきていて、殲滅するのは時間の問題のように思われた。



「ま、そんなわけだから〜、ユウキっち達はゴブリン連中に襲われた“戦闘魔法師”の人達の介抱してて〜

 あ!ブラックっちとはまた後で改めて話そうね〜♪」


「え、でも…、」


「フィア君の言う通りだよ、ここはボク達に任せたまえ!」



 確かに、ここは戦闘経験の浅い俺達よりも、まだ学生とはいえ、それなりに実戦経験も積んでいる頼もしい先輩達に任せた方が確実かもしれない。

 と、その前に先輩達には言っておかないといけないことがあった。



「あ!ウインディ先輩!」


「ん?何だい、ブラック君?愛の告白なら、この戦いが終わった後で、いくらでも聞いてあげるよ?当然、ボクの答えはイエスだけどね♪」


「い、いえ!そうではなく!ヤツら、ゴブリン達の体液には女性を発情させる媚薬効果があるみたいなので、気を付けて下さいっ!」



 俺の言葉を聞いて、それまでは少しおふざけモード(俺達を安心させるための気遣いだと思うが)だったウインディ先輩の顔が、急に真剣なものになった。



「…っ!なるほど…、それで百戦錬磨の先輩方が、こうも簡単にゴブリン共にいいようにされていたわけか…!合点が言ったよ」


「うげっ!?それマジ!?鬼ヤバじゃーん!?」



 対してフィア先輩の方は、表情には特に変化が見られなかったったが、その雰囲気からは本気でヤバいという気配が伝わってきた。



「ふむ…、ボクは()()()()があるから、多分ゴブリンの媚薬に対しても問題無いと思うけど、フィア君や、他の皆は危険かもしれないね…」



 これは後から聞いたことになるが、ウインディ(カノン)先輩は、毒などが効かない特殊体質を持っているようで、そのおかげで、ネオゴブリン種の媚薬も、ウインディ(カノン)先輩には効かないようだ。



「ある意味、ボクという存在そのものが媚薬と言っていいからね」



 とはカノン先輩の言だ。

 確かに、カノン先輩には女子は勿論、男子も狂わせる魅惑のオーラを放っているのは間違い無いが…

 


 閑話休題。



「そうだね〜…、出来るだけ連中の体液を浴びないようにって、チヅルっち達に伝えてくるよー!」


「ああ!ボクはローズ君達に伝えてくる!ブラック君、貴重な情報ありがとう!君達も気を付けてくれたまえ!」



 そう言って、ウインディ先輩とフィア先輩は、それぞれの仲間の元へと飛んで行った。





 さて、残された俺達だったが。



「「「………」」」



 先程まで発情していて、俺に散々抱き着いて、その豊満な身体を擦り付けたり、濃厚な口付けをしていたレッド達は、顔を真っ赤にして、もじもじと恥ずかしそうに俺の顔を見てきた。



「あ、あのさ…、ブラック…、」


「えっと…、その…、さっきは、なんつーか…、」


「ご、ゴメンね…?その…、無理矢理襲っちゃったりして…」


「いや、別に気にしとらんよ。発情状態で我を失ってたんやけ仕方ないっちゃろ。それに…、まぁ、俺もいい思いしちまったし…」



 年頃の男子として、美少女三人から抱き着かれて、嬉しくないわけが無い。

 経緯はどうあれ、俺としては気持ちの良い経験をさせてもらった以上、レッド達に謝られるのは何か違う気がする。



「と、ともかく!三人とも正気に戻ったんやし、そのことは一旦置いといて、今は俺達のやるべきことをやろう!」


「あ、ああ!そうやな!」


「だ、だな!」


「ええ、そうね!まずはユリア先輩の無事を確認しましょう!」

 


 俺達は気を取り直して、ユリア先輩の元へと向かった。

 ゴブリンマジシャンに捕まり、一糸(まと)わぬ姿で拘束されていたユリア先輩は、宮本武蔵と佐々木小次郎の像のちょうど中央あたりにうつ伏せで倒れていた。


 先輩を拘束していた十字架と触手は消えており、どうやら例の触手はゴブリンマジシャンの魔術によって生み出されたものだったようで、ゴブリンマジシャンの消滅と同時に触手と、その触手によって作られた十字架も消滅したようだった。



「ユリア姐っ!」


「ユリア先輩っ!しっかりしろ!!」


「ん…、んぅ……?」



 真っ先に駆け寄ったレッドとツヴァイが、ユリア先輩を抱き起こした。

 幸い、ユリア先輩は命までは奪われていないようで(ゴブリンの目的が女性を捕らえはらませることだから殺しはしないと思っていたが)、そのことにひとまず安堵した。


 だが、意識は朦朧としているようで、ユリア先輩の目はうつろで、焦点が合っていないようだった。



「ユリア姐!大丈夫か!?しっかりしてくれ!!」


「ユリア先輩っ!!」


「えっと、こっからどうしたらいいと…?わたし達、回復魔法とか使えんし…!」



 回復魔法が使えるのは、主に“水の魔法師”になるが、残念ながら俺達四人の中に“水の魔法師”はいない。



「とりあえず、服…は無いから、何かユリア先輩の身体を隠せるものを探して…、」



 俺が周囲に何か布のような物は無いかと探していると、不意にユリア先輩と目が合った。



「う……、あ……、あぁあああ……!」


「え?ユリア先輩…?」


「ちょっ!?ユリア姐!?」


「うわっ!?」



 すると、突然、ユリア先輩の瞳に生気が戻り、先輩を抱えていたレッドとツヴァイを押しのけ、俺に向かって飛びかかってきたのだ。

 それは、さながら肉食獣が獲物に襲いかかるような、そんな勢いがあった。



「うわぁあっ!?」


「あ…ああ…!マサト君…!マサト君っ!!アタシを……っ!!抱いてぇえええええええっ♥♥♥」


「ゆっ、ユリアせんぱっ、んぐぅっ!?」



 発情モードに入ったユリア先輩は、強引に俺の口を、その柔らかい唇でふさぐと、自身の舌を俺の口内に差し込んできて、俺の舌を味わうように絡ませてきた。



「んむぅっ!?ん゛…っ!?ん゛っ!?んん゛ぅ…っ!?」


「れろれろ…♥ちゅぱちゅぱ…♥ちゅ〜♥♥」



 ユリア先輩は、一心不乱に俺の舌を舐め回し、俺の唾液を掻き出して、自身の口内に取り込み、飲み干していく。


 そんな様子を、レッド達は呆然としながら見守っていた。



「お…、おお…♥」


「す、すっげ…♥」


「わぁ…♥だ、大胆…♥」


「むっ…!?むぐぅうう!!むぐぅうううっ!!」



 俺は「見てないで助けてくれ!」と叫びたかったが、ユリア先輩に唇をふさがれていて、声を出せなかった。



「ん…♥はぁ…♥はぁ…♥」



 そうこうしていると、ユリア先輩の手は俺の胸と股間に移動し、衣装の上から、女の子の大事な部分を触り始めたのだ。



「んぐぅううっ!?!?」



 全身に電流が走ったような衝撃があり、俺は思わず背中をらせて感じてしまった。


 ユリア先輩の愛撫あいぶは、ゴブリンマジシャンにされた時とは違い、相手を思いやった、とても優しい手付きで、それでいて、的確に女の急所を攻めてきて、こんな状況ではあるが、控え目に言っても、とても気持ちよかった…!!



(な…っ!?なんだこれ…っ!?これ、マジでヤバい…!?これが…、女子のイく感覚…っ!?)



 俺だって思春期の男子なので、一人自慰行為に励んだことはある。

 だが、()()は…、この感覚は…っ!そんなモノとはわけが違う…っ!!


 これが…、女子のイくという感覚なのか…っ!?



「いや〜、分かるぜ、マサトのその気持ち…♥」


「あぁ…、アタイも初めて一人でシた時は…♥」


「も、もう!二人共っ!ここでそんな話ははしたないっちゃ!」



 完全に傍観者と化している三人達が、顔を赤らめながら、そんな話をしている。



「むぐ…っ!?ぷはっ…!!ちょっ、そ、そんなことより…!助け…っ、ひゃんっ♥」



 その後も、俺はユリア先輩に際どく攻められ続けること数分……



「本当に申し訳無い…っ!!」



 ようやく正気に戻ったユリア先輩が、俺に土下座で謝罪してくれているわけだが、裸の女性に土下座されているというシチュエーションがまた何ともエロ過ぎる…



「あ、頭を上げて下さい、ユリア先輩っ!先輩のせいじゃありませんから…!」


「だが…、無理矢理女子を襲うなんて…、アタシのやったことはゴブリンと変わんねぇよ…」



 そう言って頭を上げたユリア先輩だったが、そうすると今度はユリア先輩の生おっぱいが目に入ってきて、俺は慌てて目をそらした。



「い、いえ…!それは違いますよ!先輩は、そのゴブリンの媚薬の効果で、いわば洗脳状態にあったようなものですから、先輩が悪いわけじゃ無いです!!」


「だが…、それならマサト君はどうしてアタシの顔を見てくれないんだ…?アタシの顔も見たくないくらい許せない、ってことなんじゃないのか…?」


「そ、それは!先輩が服を着てないからですよ!前を向いたら、先輩のおっ…、胸が見えちゃいますから!!」


「ふふ♪アタシは別に見られても構わないよ…?というか、もうそれ以上に恥ずかしいことをシてしまった後だしな♪」

 

「…っ!?」



 そう言ってはにかんだユリア先輩の表情に、不覚にも俺はドキッ!としてしまった。



「はいはい、ブラックもユリア姐も、ラブコメはその辺にしとくっちゃ!」



 俺とユリア先輩の間に、レッドが割って入った。



「それよりも今は他の“戦闘魔法師”の姐さん達を介抱するのが先決っちゃ!」


「だな。“雪月花”先輩達や“松竹梅”先輩達が頑張ってくれてんだから、アタイらもその頑張りに報いねぇとな!」



 レッドとツヴァイの言葉に、ユリア先輩が、胸と股間を手で隠しながら、表情を引き締め直してこう言った。



「二人の言う通りだな。にしても、“雪月花”と“松竹梅”の六人が来てくれたのか…、先輩として情けねぇ限りだが、あの六人に任せとけば、この場は何とかなりそうだな」



 ユリア先輩の言う通り、ゴブリンマジシャンを欠いた、自称“ネオゴブリン帝国”のゴブリン達は、“雪月花”先輩達と“松竹梅”先輩達の活躍で、難なく片が付いた。


 懸念していたゴブリン達の媚薬に関してだが、カノン先輩とショウカ先輩が残りの先輩達に伝えてくれたおかげで、体液を直接浴びぬようゴブリン達から距離を取った戦い方をしたおかげで、六人は大事に至らなかったようだ。

 それでも、わずかに付着したゴブリンの体液のせいで、カノン先輩以外の五人にはほんの少しだけ媚薬の効果が出てしまったようだが、()()()()()()()()で、治ったらしい。


 何故カノン先輩がそんなことをしたのかと言うと、



「昔から姫を救うのは王子様のキスだと相場が決まっているからさ!」



 と、いうことらしい…



「というか、マサト君、君だってボクと同じじゃないかい?発情したユウト君達や、ユリア先輩達が正気に戻ったのは君がキスをしたからだろう?」



 確かに、言われているとそう言う見方も出来なくは無い…、のか?

 

 俺、というかマジョリティブラックやカノン先輩とのキスが、ゴブリンの媚薬を打ち消す中和剤となったのか?


 俺とカノン先輩の共通点は、どちらにもゴブリンの媚薬が効いていなかったことだ。

 そのことが、ゴブリンの媚薬効果を中和したのかどうか定かでは無いが、門司港もじこうレトロエリアの事件は、これにてひとまずの解決となった。



 また、和布刈めかりエリアの方も、別エリア担当の“戦闘魔法師”達が増援にやって来たことで、不利だった戦況を盛り返し、時間はかかってしまったが、なんとかリーダーであるゴブリンマジシャンを含めて、全てのゴブリン達を殲滅出来たとのこと。



 門司港もじこうレトロエリアに比べて、和布刈めかりエリアの方は、避難指示が遅れたために、男性の死者を含めて、一般市民の被害が多数出てしまったことは残念だった…


 ゴブリン達に犯された“戦闘魔法師”達や一般の女性達は、皆、媚薬の効果で酩酊めいてい状態にあったため、数日の入院が必要とされた。

 また、ゴブリンの仔をはらんでいないかの検査も入念に行われ、その結果、不幸中の幸いと言うべきか、ゴブリンの仔をはらんでいた女性はおらず、数日後には全員、無事に退院出来た、とのこと。



 こうして、いくつかの謎はあったが、突如としても門司港もじこうに現れた“ネオゴブリン帝国”を名乗るゴブリン達の襲撃は一応の幕を閉じたのだった……





 全てが終わったかに見えた“ネオゴブリン帝国”による襲撃事件だったが、マサト達の知らない裏側で、“ネオゴブリン帝国”の侵略計画は、密かに続いていた……



 “第12守衛隊”に所属する“戦闘魔法師”で、和布刈めかりエリア担当のリーダーである黒髪ロングに眼鏡をかけた20歳の女性、龍焔優海りゅうえんゆみ


 彼女は、和布刈めかりエリアに現れたゴブリンマジシャンとの戦闘中に、捕らわれた仲間達をかばって、自らもゴブリンマジシャンの毒牙にかかったが、その後の増援部隊によって助けられ、数日の入院生活の後に回復し、仕事に復帰していた。



 その日は復帰初日で、ゴブリン襲撃事件の調書をまとめる作業を行った後に、自宅へと帰ってきた。


 ユミは一人暮らしで、自宅のマンションには当然、ユミ以外の誰もいないハズなのだが、ユミは帰宅と同時に玄関で服を脱ぎ捨て、その場で正座をし、頭を下げながらこう言った。



「ただいま戻りました、()()()()



 すると、部屋の奥から、肌の色が緑色であることを除けば、見た目はほぼ人間に近いゴブリンが現れて、一糸(まと)わぬ姿で正座をして頭を下げるユミに向かって、こう言った。



『ああ、おつとめご苦労だったな、我が牝犬(ペット)よ』



 彼の名は、“ゴブリンプリースト”。

 一般のゴブリンから進化したゴブリン種であるゴブリンマジシャン、そのゴブリンマジシャンからさらに進化した種である。


 

『して、我が牝犬(ペット)よ、仕事場では特に怪しまれるような事はしなかっただろうな…?』


「はい、我が主様を裏切るような行為は、一切しておりません」



 ゴブリンプリーストの問に、ユミは頭を下げたまま、そう答えた。



『そうか。ならば良い。

 では、そのまま身体をみそぎ、我がベッドにて待機しておけ』


「はい、ご主人様」



 ユミは、ゴブリンプリーストに命じられるがままに、立ち上がると真っ直ぐに風呂場へと向かい、身体を念入りに洗ってから、寝室へと入って行った。



 その様子を眺めながら、ゴブリンプリーストは一人ほくそ笑んだ。



『ククク…、全ては計画通り…ッ!

 人間共は、和布刈めかりエリアと門司港もじこうエリアでの我らが陽動作戦にまんまとひっかかり、こうして、()()の侵入を許し、“戦闘魔法師”のメス達は、優秀なネオゴブリンを産むための孕み袋(ペット)へと堕ちた…!』



 実は、ゴブリンマジシャン率いるゴブリン達の襲撃は、その後の全滅も含めて、全てが陽動作戦で、その裏で複数のゴブリンプリースト達が“第12魔法都市”内に侵入し、潜伏するための作戦だったのだ。


 また、優秀な“戦闘魔法師”の女性をゴブリンの媚薬漬けにし、常時発情状態の身体とすることで、ゴブリンから逃れられなくし、優秀なネオゴブリン種の仔をはらむための作戦も兼ねていて、その作戦は和布刈めかりエリアにおいては上手く行き、ユミを初めとした、複数の女性“戦闘魔法師”達が、他のゴブリンプリーストの孕み袋(ペット)として飼われることとなった。



『ゴブリンマジシャン達が全滅し、しかも犯されたメス達は一切妊娠していないとなれば、人間達は安心し、事件は解決したと思い込み、油断するだろう。

 だがッ!真の種付けは、これからなのだ…ッ!

 我が進化したネオゴブリン種の種を、優秀な牝犬(ペット)達のはらに仕込み、より進化したネオゴブリン種の仔を産ませる…ッ!

 そうして、人間達が気が付いた時には、この都市は、我が“ネオゴブリン帝国”の傘下となっているのだ、フハハハハハハハッ!!』



 ゴブリンプリーストの不気味な笑い声が、夜のマンションの一室に響き渡るのだった………

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