1時限目
新作でっすっ!
読んでくれたら嬉しいですっ!
寒い風が吹くあの日。
俺はある選択をした。
それが善か悪か分からないが、今にとっては思いもよらぬ出来事だった。
何故あの時そうしたのか。
◇◇◇
中学3年の2学期中盤。
台風50号が通り過ぎた翌日の朝は木枯らしが荒れ狂い、いつもより寒かった。
そのため、今年初のマフラーデビューをし、家から出た。
俺が通う小波第1中学校まではおよそ5分のところに家があり、弟が通っている小学校までは1分の距離だ。
細い道をくぐり抜け、大きな道路に出る。
俺の他にも緑色のださいリュックを背負い、登校している生徒もちらりと見えた。
小波中は品川区の中で最も生徒が通う中学として、認定されたとニュースで見た。
なんせスポーツが強すぎる。
サッカー部を始め、野球部、テニス部、バスケ部、剣道部、陸上部は全国大会優勝を成し遂げ、サッカー部は2連覇を達成している。
俺は一応、テニスのシングルで全国を制覇した。
別に前々からスクールに通っていたわけでもなく、楽そうだったから入った部活で全国優勝するという小波中で史上初らしい。
そのせいで、部活では後輩から慕われ、同級生からは嫌われるという普通ならあまりない状態に置かれた。
そんな事に浸っているうちに、校門前まで着いた。
校門前では生活委員が挨拶当番をしている。
「「「「おはようございます!!」」」」
4人からしっかりと挨拶され、会釈だけして、そこを通り抜けた。
そこには唯一テニス部で仲がいい森口の姿が会ったが、また教室前で話すだろうと思い、下駄箱で履き替え、教室に向かった。
教室に入ると、あまり人はいない。
俺の席は廊下から1番近い後ろの席。
教室にいたのは、4〜5人のオタク組と委員長とおっとり女子が数名だった。
「裕太おっはよぉ〜」
おっとり、柔らかい声で後ろから声をかけてきたのは前の席の能美だった。
後ろでとめたポニーテールは男心をくすぐってくる。
身長は俺よりも少し高く、胸も大きい。
俺は手を振って返し、能美は前の席へ座る。
俺も朝の準備を終わり、本を取り出して、しおりを抜き取った。
「裕太っていっつも本読んでるよね〜」
「...まあ何もすることないしな」
「けど、裕太って結構有名人だよ?初心者でテニス全国大会優勝ってまじぱなくない!?」
「それは知らんがお前の方が有名人だろ」
「そ、そうかな...?ありがと」
「うん」
能美は生徒会長でありながら陸上女子のリレー全国大会優勝のアンカーだった。
そのせいで、今は日本代表まで選ばれ、もう高校は決まっていて、いっつもほんわかしている。
しかも、勉強も出来て、成績はオール5だとか。
前のテストでは「全部満点だった!」と自慢してきて、ぶん殴りそうになった記憶がある。
そんなあいつでも意外と優しく、男子からの人気も高い。
彼氏の1人や2人いたっておかしくはない。
「おっ裕太と雛おっはー!」
俺と能美に挨拶してきたのは噂をすればなんとやらの能美の彼氏 久我夏樹だ。
一応、俺の数少ない友達でもある。
親友とまでは言いがたいが、クラスの中ではずば抜けて仲がいいだろう。
「おはよ」
「おっはよぉ〜!今日は寒いね〜」
俺は軽く一言、能美は言葉のキャッチボールでもしたいのか、話題を提示する。
「そうだなーカイロ二つあるから一つあげようか?」
「ほんと!?ありがと〜!!」
能美は夏樹からホッカイロを受け取り、温めさせている。
温かくなったのか、顔がほぐれ、今にも崩れ落ちそうな満面の笑みをこぼした。
こんな笑顔を見ると余計に優しくしてしまう。
夏樹はもう能美と付き合って、3ヶ月が経とうとしている。
俺が知ったのは9月に入って、早々。
一学期で転向した中川から聞いた情報だった。
絶対に他言するなよと言われても、本人が日本にいない以上誰も被害にあったりしないため、あっさりと本人に聞いた。
まあ、ぶん殴られたけど。
そんなことを前々から知ってたが、いずれはバレると思っていたが、その予想は当たり、つい先月にクラスのムードメーカー的役割の紫吹にバレた。
そいつが、クラス中に広め、今では誰でも知ってる名カップルにまでなったとか。
別に今では全く問題なく、他愛のない会話を楽しみながら朝のホームルームが始まった。
◇◇◇
数学は全くもって和差積商だけで十分だと思う。
まじ、関数とか意味わかんない。
何で点P動くん?
何でそんな兄弟で競走したがるん?
1限目は数学で、先生の授業をぼーっと眺めてるだけの状態だった。
俺の他にも寝てるやつが2、3名いて、俺状態のやつは5名くらいだ。
ちなみに寝てるやつに紫吹くんも入ってます。
教科書のページをパラパラめくりながら、黒板に書いてある文字を板書する。
その作業がどんだけ退屈か、そしてどれだけ憂鬱か、知ったこっちゃない。
テストではある程度結果を残すほうだが、授業でやる気はない。
先週、テストをしたばっかで今は新しい単元に入っている。
いちばん嫌いな関数だ。
けど受験では絶対に出る関数問題はある程度難易度ならできる方だ。
夏の辛さを改めて、思い返した。
よく頑張ったなと自分で自分を褒めてやりたいくらい。
あの勉強量はマジでやばかった。
ほんとに死んじゃう。
と、ここで授業終了の鐘が鳴る。
俺は解放された。数学という魔の領域から。
そして、また俺は長い旅に出る。
キーンコーンカーンコーン
もう8年弱聞き続けたこのチャイム。
完全下校五分前のチャイムだ。
教室には俺以外の誰もいない。
あるとすれば、きちんと整理された机やイスたち。
本に没頭していたせいか、置いてかれたらしい。
まあこんな事はいつのまにか当たり前になっていた。
終学活後の掃除は隅々までホウキではかれていて、机も雑巾で綺麗になっていた。
窓もきちんと戸は閉まっていて、カーテンも束ねられている。
俺はきりのいいところでしおりをはさみ、教室を出た。
トントンと響く階段の音も聞き慣れ、今では鬱陶しいくらいだ。
俺の周りには誰もいず、教職員はとっくのとうに職員室にこもり、コーヒーを飲んでいる頃だろう。
この学校の部活動も今日はテスト期間なため、全部活休み。
俺みたいに勉強を理由に残る生徒は多いと聞くが、俺の学年にそんな奴は一人もいない。
雨が降ると予報されていた今日の天気はまさかの外れ、快晴だった。
現在5.58分は思ったより暗く、街灯がきらきらと輝きを放っている。
冷たい手で玄関を開け、外に出た。
が、そこは俺の教室だった。
綺麗に並べられている机やイス、俺がいつも置き勉している教科書さんもある。
何故か、窓は開けられ、カーテンも束ねられていなかった。
そこには、帰ったはずの能美と夏樹がいた。
2人とも表情は俺と同じで、なぜ、この場所にいるのか分からない雰囲気だった。
「なんで、おまえらがここに...?」
「俺らもわかんねぇんだよ。俺は普通に家にいたらこの通り服も制服に変えられてよ」
「私もそんな感じ」
そんな事を話しているとホワイトボードにモニターが映し出された。
そこには、俺たちよりも体の大きい大人だった。
だが、その人物の顔はフードをかぶっていて、見てなかった。
よくラノベで見るあれだ。
「どうも、チームレクチャーズの諸君。私は会甸戦争の監督の風上宏誠だ。よろしく頼むよ。呼び出しといて、悪いんだが、今から君たちには会甸戦争をやってもらうよ。君たちはチームレクチャーズのチームメイトだ。仲良くやってくれよ」
「エデンウォー?なんだそれ?」
「あぁまだ説明が無かったね。君たちにはこの学園をエデンとして、私から君たちに支配権を託すよ。そして、このエデンは毎時間事にボーナスとして君たちにポイントを配布するよ。このポイントは夜が明けてから、日本円として、1ポイント1000円として使えることが出来るよ。今獲得できるポイントは1ポイントだけど君たちが戦争に勝ち続けたら、ポイントが上がり、制覇したものには1億ポイントと願い事チケットを差し上げる。それが会甸戦争さ」
「おぉ!勝ち続ければポイントをゲット出来て、それが私たちの生活に使えるってことですよねっ!」
「それ最高じゃん!」
俺以外の2人は参戦する気満々だ。
別に俺も、新作のラノベを買いすぎたせいでとても金欠なので結構参加する気はある。
「俺と雛は参加するけど、裕太はどーする?」
「俺も参戦するよ」
「サンキュー!それじゃおっさん。3人登録お願いします!」
「分かったよ。永富裕太くん。能美雛ちゃん。久我夏樹くん。の登録を確認したよ。登録をした時に、これを身につけなきゃいけないから右腕に身につけてね。あとここは架空の世界だから、自分の持ち物とかはゲームみたいにウィンドウから開けるようになってるよ」
ウィンドウから俺たちはブレスレットを取り出し、右腕に身につけ、このブレスレットは赤く光った。
俺のブレスレットには
永富裕太 Mypts 0ポイント
と書かれている。
二人のブレスレットにもそう書かれている。
「よし。あとは君たちが一夜に3回開催される戦争に勝つだけだよ。このチーム以外にも全国に強敵が待っているから。負けないようにね!最後に君たちには初心者応援ボックスをプレゼントするよ」
俺たちの元に1着のメールで件名が『初心者応援ボックス』というものだった。
開けると、剣、弓、槍、銃、斧、ハンマーの6個の武器一式と回復薬が10個、ガチャチケが5枚入っていた。
「そこにあるガチャチケットはウィンドウからのガチャで使うことが出来るよ。これで僕からの説明が終わりだよ。最後に一つ言っとくことがあります。」
風上は俺たちが思いもよらぬことを言い出した。
「戦争に負けたチームメンバー全員は一生現実に帰られなくなるので気をつけてくださーい」
そう言い残した風上が映るモニターは消えた。
これからもよろしくデーす!