大奥への召し
この章には、性別違和や身体の再構築に関する描写が含まれます。
苦手な方はご注意ください。
乃雅が「偽りの仮面」を脱ぎ捨て、
大奥へ向かう決意を固めるまでの物語です。
静かな気持ちで読んでいただければ幸いです。
尾張の国、清洲に、まことの美が宿ると噂される青年がいた。
彼の名は乃雅。
すらりと伸びた手足、雪のような白い肌、そして見る者を惹きつける大きな瞳は、「清洲一の美少女」とまで讃えられた。しかし、その美しさは彼にとって、いつしか偽りの仮面となっていた。
幼い頃から、自分の身体と心の間に深い違和感を抱いていた乃雅は、誰にも言えない秘密を胸に秘めて生きてきた。男として生まれた身体に、女の心を宿す自分。その葛藤は、美しく着飾るたびに、彼の心を深く切り裂いた。
そんな乃雅の運命は、ある日突然、大きく動き出す。
将軍家から、大奥への上り(あがり)を命じられたのだ。それは名誉であると同時に、乃雅にとっては一つの救いにも思えた。このまま男として生きる人生を偽り続けるか、それともこの機に乗じて、心と身体を一致させる新たな人生を歩むか。
決意は固かった。
大奥へ上がるため、乃雅は性別適合手術を受けることを心に決めた。
乃雅は、将軍家や権力者の依頼を受け、秘密裏に性別適合手術を専門に行う「隠れたる名医」がいることを知る。その名は清太郎。
元は「清洲一の美少女」と噂された美しい青年で、自らも性別適合手術を受けて女となり、和葉と名を変え、大奥へ側室として上がった過去を持つという。そして、故郷の和歌山に帰り、師匠である華岡青洲の元で医師として生きることを決意したと聞く。
乃雅は、清太郎が院長を務める「清仁堂病院」を訪れた。
彼は、冷静沈着かつ卓越した技術を持つベテラン外科医でありながら、手術を単なる処置ではなく、「一人の人生を再構築する神聖な儀式」と考えているという。
乃雅は清太郎と向き合い、その深い眼差しの奥に、同じ道を生きた者だけが持つ理解と静かな強さを感じた。
ここでなら、偽りの仮面を脱ぎ捨て、本当の自分として生きられるかもしれない。乃雅の心に、小さな希望の光が灯った。
序章は、乃雅の人生が大きく動き出す前夜でした。
大奥という閉ざされた世界と、
身体を再構築する“隠れたる名医”の存在が、
これから物語を大きく揺らしていきます。
次章では、乃雅が初めて清太郎と向き合います。
引き続きお付き合いいただければ幸いです。
注意事項
作者により作成されたフィクションです。登場人物や出来事はすべて創作であり、実在の人物や歴史的事実とは関係ありません。
現代の医学とは異なる描写:物語に登場する「通仙散」や手術方法、器具などは、江戸時代という設定に合わせて描写されたものです。
現代の医療行為や医学的な見解とは異なりますので、あくまで物語の中の描写としてお楽しみください。
詳細な描写について:もし、特定の描写が不快に感じられる場合は、ご容赦ください。




