友の子孫と子孫の事情――5
何度も繰り返すうちに、セシリアの錬は着実に上達していった。
「せぁああああああっ!!」
八回目の挑戦で、セシリアの木剣が、俺の木刀に裂傷を刻んだ。
俺は目を見張る。
「いまのはよかった。イメージが固まってきたようだな」
「はい。コツがつかめたかもです」
額の汗を拭い、セシリアが笑みを見せた。
弟子の成長が嬉しくて、俺の口元も自然とほころぶ。
「セシリアさんは、スゴいね」
エミィがふと呟いた。
エミィは尊敬と羨望が入り交じった目をしている。
「頑張ってるし、成果も出してる。ちょっと羨ましい」
エミィの眼差しと言葉で、俺は思い起こした。
エミィはホワイトガードの団員を目指し、日々努力しているらしい。
だからこそ羨ましいのだ。目に見えるほどの速度で成長するセシリアが。
「ふむ」と思案して、俺は口を開いた。
「エミィもやってみるか? アレックスの子孫なら、武技に適性があるやもしれぬ」
アレックスも俺と同じく武技の達人だった。あいつの血を継いでいるなら、エミィに武技の才があってもおかしくない。
提案するも、エミィは首を横に振る。
「あたしには無理だと思う。アドナイ家の者は身体能力に優れてるけど、あたしは全然。あたし、アレックス様から、なにも受け継いでないの」
エミィが自嘲するように苦笑した。
アレックスの身体能力は馬鹿げていた。自分の四倍以上巨大なゴーレムを、素手で叩きのめしたこともある。
アレックスの子孫にも――アドナイ家の者にも、その才は受け継がれていたらしい。思えば、ギースも筋骨隆々だったからな。
だがエミィは、ギースと打って変わって小柄で華奢。筋肉がついているようにも見えない。エミィ自身が言っているように、高い身体能力は受け継がれなかったようだ。
しかし、武技の才が継がれていないとは限らん。
俺は目に魂力を集めて『審眼』を用い、エミィの魂力量を確かめる。
しばらく観察して、「うーむ」と腕組みした。
「魂力量は常人以下。武技の適性は低いとしか言えぬ」
「でしょ? あたしには、才能がない」
「だが、魔力量は桁外れだ。スキールに匹敵するやもしれぬ。魔力量を活かせば、相当な実力者になれるだろう」
自虐するエミィに、審眼で得た情報とともに、俺は助言を送る。
俺の助言を耳にしたエミィは、どういうわけかビクリと肩を跳ねさせた。
「どうした?」
「な、なんでもない! それより、あたしもセシリアさんの鍛錬、手伝うよ」
取り繕うように、エミィが笑みを作る。
露骨に話題を逸らされて、俺は首を傾げた。
なぜエミィは動揺したのだろうか? 気にはなるが……話題を逸らしたということは、触れてほしくないということだ。追求するのはやめたほうがいいだろう。
そう判断して、俺はセシリアの稽古を再開した。




