表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/116

友の子孫と子孫の事情――1

「――それで、その子を助けたら家に招かれたと」

「うむ」


 夜。パンデム北東部にあるホテルのロビーにて、俺はティファニーに繁華街での出来事を伝えていた。


 飲食店の店主が暴行にあっていたこと。


 店主を(かば)うため、エミィが暴漢(ぼうかん)たちに立ち向かったこと。


 暴漢たちがエミィに危害を加えようとしたので、俺とセシリアが助けたこと。


 エミィがアドナイ家の者だったこと。


 そして、助けられたエミィが、お返しとして俺たちを家に招待したこと。


「エミィは俺とセシリアを一晩(ひとばん)泊めてくれるそうだ。部屋を取ってくれたティファニーには悪いが、俺たちはエミィに甘えたい」

「構いませんよ」


 勝手を言う俺に、それでもティファニーは気分を害さず、(にこ)やかな表情をしていた。


「エミィちゃんは『白騎士』アレックス様の子孫。イサムさんは、かつての仲間の子孫と過ごしたいんですよね?」

「ああ」


 (うなず)くと、ティファニーが目を細めた。


「だったら、わたしはイサムさんの気持ちを優先します。キャンセルするのは流石(さすが)に申し訳ないんで、わたしはホテルに泊まりますね」

「かたじけない」

「いえいえ、お気遣(きづか)いなくー」


 俺が礼を言うと、ティファニーは手をヒラヒラと振る。


 ティファニーに別れの挨拶(あいさつ)をして、セシリア・エミィと合流するため、俺はホテルをあとにした。





 セシリア・エミィと合流し、俺たちはパンデムの西にある住宅地を歩いていた。


「もうすぐ着くよ」


 先を行くエミィの知らせに、否応(いやおう)なしに期待が高まる。


 エミィの両親もまたアレックスの子孫。友の子孫に会えるのは、やはり楽しみだ。


 ただ、気になることがひとつあった。


 周りの建物が民家ばかりなのだ。


 魔王討伐の報奨(ほうしょう)として、勇者パーティー(俺を除く)には貴族位が与えられた。だとしたら、デュラム家と同様、アドナイ家も高級住宅街にあるものではないだろうか?


 セシリアも俺と同じく不思議に感じているらしく、首を(かし)げている。


 エミィが足を止めた。


「ここがあたしの家」

「ここが……」

「ですか?」


 俺とセシリアはポカンとした。


 三角屋根を持つ二階建て。周囲に溶け込むような一軒家。


 エミィが示した自宅が、どう見ても民家だったからだ。


「アドナイ家は貴族位を得たはずではなかったか?」


 困惑のあまり尋ねると、エミィは自嘲(じちょう)するように苦笑した。


「貴族位は、一〇〇年前に剥奪(はくだつ)された。いまのアドナイ家は平民なの」


 俺とセシリアは言葉を失った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ