表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/116

恋慕と使命と旅立ち――7

 パンデムへの旅立ちが明日に迫り、俺とセシリアは必要な荷物をまとめていた。


 今日の夕食はいつもより豪勢(ごうせい)だった。旅立つ俺たちに向けての、ジェームズとポーラの心遣(こころづか)いだろう。


 ジェームズとポーラのためにも、セシリアを守り抜き、できるだけ(すみ)やかに事態を解決しなければ。


「衣服はこれで揃ったな」

「魔導兵装の整備道具もしまいました。荷造りは完了ですね」

「ああ。では、明日に備えて早めに寝るとしよう」

「はい!」


 それぞれのトランクケースの(ふた)を閉め、俺とセシリアはベッドに向かう。


 先にベッドに横たわり、俺はセシリアを手招(てまね)きする。


「さあ、セシリア」

「あ、えっと……」


 セシリアが顔を赤らめ、躊躇(ちゅうちょ)するようにモジモジしはじめた。


 俺は嘆息(たんそく)する。


「ふむ。やはり今日もか」


 一月(ひとつき)ほど前から、セシリアはこのような症状に見舞われていた。なんでも、俺の(そば)にいると鼓動が早まり、胸が締め付けられるように感じるらしい。


 当初は俺も狼狽(うろた)え、医者に()てもらおうとしたのだが、ジェームズとポーラが必要ないと判断した。『嫌な気持ちはせず、むしろ幸せな感じがする』とセシリア自身も言っていたので、いまは経過観察しているところだ。


 しかし、ともに眠ろうとするたびに症状が現れるので、流石に心配になり、俺は先日、セシリアにこう提案した。


「別々に眠ったほうが、心が安らぐのではないか?」


 セシリアの答えは早かった。


「平気です! 心配されなくても大丈夫です! むしろダメです! 別々に眠るなんてとんでもないです!」


 全力の拒否だった。


 セシリアが構わないのならそれ以上言うことはないのだが……必死すぎてはいなかっただろうか?


 当時のことを思い返して「うーむ」と(うな)っていると、鼓動を(しず)めるように長く息を吐いて、セシリアがベッドに潜り込んできた。


「し、失礼します」

「なぜかしこまるのだ?」

「おおおお気になさらず!」


 それは無理だ。やはり気になる。


 だが、セシリア自身、症状の原因がわからないそうなので、俺に知る(すべ)はない。


 なので、俺は割り切ることにした。


 知る(すべ)がないのなら悩むだけ無駄だ。症状の悪化に気をつけながらも、普段通り過ごすのが最適だろう。


「うむ」と納得の頷きをしていると、セシリアが部屋の明かりを消した。


「お、おやすみなさい、イサム様」

「おやすみ、セシリア」


 就寝の挨拶(あいさつ)をして、俺はまぶたを伏せる。


 と、隣から「すぅー……はぁー……」と呼吸音が聞こえてきた。どうやらセシリアが深呼吸しているらしい。


 どうしたのだろうか? まるで、なにかを覚悟しているような、自分を勇気づけているような気配がするのだが……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ