恋慕と使命と旅立ち――7
パンデムへの旅立ちが明日に迫り、俺とセシリアは必要な荷物をまとめていた。
今日の夕食はいつもより豪勢だった。旅立つ俺たちに向けての、ジェームズとポーラの心遣いだろう。
ジェームズとポーラのためにも、セシリアを守り抜き、できるだけ速やかに事態を解決しなければ。
「衣服はこれで揃ったな」
「魔導兵装の整備道具もしまいました。荷造りは完了ですね」
「ああ。では、明日に備えて早めに寝るとしよう」
「はい!」
それぞれのトランクケースの蓋を閉め、俺とセシリアはベッドに向かう。
先にベッドに横たわり、俺はセシリアを手招きする。
「さあ、セシリア」
「あ、えっと……」
セシリアが顔を赤らめ、躊躇するようにモジモジしはじめた。
俺は嘆息する。
「ふむ。やはり今日もか」
一月ほど前から、セシリアはこのような症状に見舞われていた。なんでも、俺の側にいると鼓動が早まり、胸が締め付けられるように感じるらしい。
当初は俺も狼狽え、医者に診てもらおうとしたのだが、ジェームズとポーラが必要ないと判断した。『嫌な気持ちはせず、むしろ幸せな感じがする』とセシリア自身も言っていたので、いまは経過観察しているところだ。
しかし、ともに眠ろうとするたびに症状が現れるので、流石に心配になり、俺は先日、セシリアにこう提案した。
「別々に眠ったほうが、心が安らぐのではないか?」
セシリアの答えは早かった。
「平気です! 心配されなくても大丈夫です! むしろダメです! 別々に眠るなんてとんでもないです!」
全力の拒否だった。
セシリアが構わないのならそれ以上言うことはないのだが……必死すぎてはいなかっただろうか?
当時のことを思い返して「うーむ」と唸っていると、鼓動を鎮めるように長く息を吐いて、セシリアがベッドに潜り込んできた。
「し、失礼します」
「なぜかしこまるのだ?」
「おおおお気になさらず!」
それは無理だ。やはり気になる。
だが、セシリア自身、症状の原因がわからないそうなので、俺に知る術はない。
なので、俺は割り切ることにした。
知る術がないのなら悩むだけ無駄だ。症状の悪化に気をつけながらも、普段通り過ごすのが最適だろう。
「うむ」と納得の頷きをしていると、セシリアが部屋の明かりを消した。
「お、おやすみなさい、イサム様」
「おやすみ、セシリア」
就寝の挨拶をして、俺はまぶたを伏せる。
と、隣から「すぅー……はぁー……」と呼吸音が聞こえてきた。どうやらセシリアが深呼吸しているらしい。
どうしたのだろうか? まるで、なにかを覚悟しているような、自分を勇気づけているような気配がするのだが……。




