混乱と裏切りと戸惑い――7
俺の姿を捉え、エリュが目を丸くする。
「もう来たの? バイパー・ダンサーが足止めしてくれたはずなのに」
「あれならすでに破壊した」
「むぅ……自信作だったのに……」
悪びれることなく、エリュが頬を膨らませた。
「もうやめろ、エリュ。発明は人々の暮らしを豊かにするためにあるのだ。人々を傷つけてどうする」
「意見の食い違いだよ、イサムくん。ボクにとっての発明は、自分が楽しむためにすることなんだ。言ったでしょ? ボクは好きなことをトコトン突き詰めたいんだ、って」
俺が説得するも、エリュは聞く耳を持たない。
それどころか、俺に要請してきた。
「魔導兵装との実証実験ができなかったからさ? イサムくんが代役を務めてよ」
「なに?」
俺は眉をひそめる。
エリュが無邪気な笑顔を浮かべた。
「『剣聖』のきみを倒せれば、顕魔兵装が如何に優れているかわかるしね!」
俺は拳を握りしめ――ふ、と力を抜いた。
諦めとともに息をつく。
説得は不可能か……やむなし。
ならば、これ以上の被害を出さないため、エリュを止める。
覚悟を決め、俺は疾風を用いた。
エヴィル・クリムゾンの主はエリュだ! エリュを倒せば混乱は収まる!
エリュ目がけ、一足跳びする。
「ボクじゃなくてエヴィル・クリムゾンと戦ってもらわないと困るよ」
エリュが不満げに嘆息して、「でも」と続けた。
「こっちの性能も確かめられるし、まあ、いっか」
隣にある兵器に、エリュが手を伸ばす。
酒樽ほどもある円筒に、車輪をつけたような兵器だ。円筒にはいくつもの銃口が、円を描くように取り付けられている。
円筒の横から伸びた取っ手を握り、エリュが並ぶ銃口をこちらに向けた。
「火を噴け、『ミリオン・ボルト』!」
銃口のひとつから稲光が迸る。
稲光は雷の槍となり、俺を貫かんとしてきた。
審眼で雷槍の軌道を見切り、焦りなく破魔で打ち消す。
銃撃は終わらなかった。
ふたつ目の銃口から雷槍が放たれる。
さらに、三発、四発、五発、六発、七発八発九発一〇発……と、断続的に雷槍が射出された。
絶え間ない銃撃! ここまでの速度で連射できる魔銃は見たことがない!
俺は瞠目し、エリュへの接近を諦め、回避行動をとった。
雷槍の乱れ打ちから逃れるために横っ飛びした俺に、エリュが歯を見せるように笑う。
「スゴいでしょ! ミリオン・ボルトは連射機構を搭載した、世界初の魔銃! ボクの最新作だよ!」
宝物を見せつける子どものように、エリュは自慢げだった。
純粋な笑顔が残虐な行動と酷くちぐはぐで、俺は顔をしかめる。
そんななか、頭上のエヴィル・クリムゾンが、俺を狙って火炎弾を放ってきた。
雷槍を回避した勢いそのままに、俺は速度を緩めずジグザグに走る。
火炎弾が俺の軌跡を追いかけるように着弾し、岩場を爆砕していった。
エヴィル・クリムゾンの爆撃は続く。次々と射出される火炎弾はまるで無尽蔵だ。
俺はエリュに背を向け、エヴィル・クリムゾンの戦力を分析しながら、石柱や岩塊を遮蔽物として火炎弾を凌ぐ。
いつまでも俺を仕留められないことに苛立ったのか、エヴィル・クリムゾンが次の手を打ってきた。




