表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/116

混乱と裏切りと戸惑い――6

 演習場の舞台は阿鼻叫喚(あびきょうかん)(てい)()していた。


 逃げ惑う生徒たち。


 粉砕された岩場。


 あちこちで立ち上る黒煙。


 演習場に(わざわ)いをもたらした元凶は、宙を羽ばたいていた。


 コウモリのそれに似た翼。


 爛々(らんらん)と光る双眸(そうぼう)


 幾本(いくほん)もの牙が並ぶ大口。


 丸太の如き太さの、腕と脚。


 (むち)のように長い尾。


 ドラゴンの姿をしたバケモノだ。


 バケモノの肉体は、胴体にある逆三角形の器具を中心として、炎で形成されていた。逆三角形の器具には魔族核が埋め込まれている。あのバケモノも顕魔兵装なのだろう。


 魔導兵装には、魔剣・魔銃・魔精の三つが存在する。あのバケモノは魔精型の顕魔兵装ということか。


 演習場の外周から状況を確認しつつ、俺はそう推察(すいさつ)した。


 生徒たちは混乱のただ中にあるが、ケガを負った者はいない。おそらく、演習場の効果によるものだ。


 演習場は巨大な魔導具で、内部にいる者が一定以上のダメージを負うと、障壁(しょうへき)で守る仕組みになっている。


 魔精型の顕魔兵装に襲われながらも、演習場の術式を維持してくれている者がいる。その者のおかげで、生徒たちは助かっているのだ。


「うーん。これじゃあ、実験にならないよ。逃げ回ってないで反撃してほしいなぁ」


 舞台の中央にいるエリュが、残念そうに唇を尖らせた。


 エリュの隣には、大砲のような兵器が置かれている。


 エリュは腕組みして(うな)り――なにか(ひらめ)いたかのように顔を明るくした。


「そうだ! 演習場の障壁が解除されれば、()物狂(ものぐる)いで挑んできてくれるかも!」


 エリュの視線が演習場の外周:南部に向く。


 そこにはひとりの女性教師がいた。女性教師は必死の形相(ぎょうそう)で、目の前にある台座に手をかざしている。彼女が演習場の障壁を発動してくれているのだ。


「『エヴィル・クリムゾン』、やっちゃえ!」


 エリュが、宙で羽ばたく魔精――エヴィル・クリムゾンに命じる。


 エヴィル・クリムゾンが大口を開け、火炎弾を吐き出した。


 岩石ほどもある巨大な火炎弾が、女性教師に迫る。


 女性教師は恐怖に顔を引きつらせ、それでも逃げようとしなかった。自分より生徒たちを優先したのだろう。


 火炎弾はもはや女性教師の目前。彼女が消し炭になるまで()はない。


 させぬ。


 俺は体を前傾(ぜんけい)させ、風を超えた。


 自らを神速へと導く武技『縮地(しゅくち)』。


 一瞬で女性教師のもとまで移動し、火炎弾に袈裟斬(けさぎ)りを見舞う。


「破ぁっ!」


 両断。


 魔力により発生した事象を打ち消す武技『破魔(はま)』により、火炎弾は大気に散った。


 俺は振り返り、青ざめた顔をしている女性教師に尋ねる。


「無事か?」

「は、はい」

「きみのおかげで生徒たちが傷つかずにすんだ。よく持ちこたえてくれたな」


 女性教師に礼を言って、俺はエリュとエヴィル・クリムゾンを見据えた。


「あとは俺に任せろ」


 演習場の外周から飛び降りる。


 タンッ、と軽い音を立てて着地した俺は、疾風を用い、一〇秒と経たずしてエリュのもとにたどり着いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ